では皆さま、良いお年を。
日が間もなく落ちる頃。宿の一室で、エクレアは詩人を真剣な目で見つめていた。
「強くなりたい」
「…」
「強くなって、大切な人を守りたい」
「…」
「だから、お願いです。私を強くしてください。今よりも、もっと。誰にも負けないくらい」
「…」
詩人は無言のまま。肯定も否定もしない。それでもエクレアの眼差しは強いままで、決して引き下がらない。
お互いに無言のまま、時間は進む。やがて詩人が口を開いた。
「強くなければ、何も守れない」
「…」
「強いだけでは、全てを壊す」
「…」
「守りたかったものまで壊してしまう。いっそ、強くなかった方がよかったと思う結末に至ってしまう」
「…」
「俺の体験談だ、覚えておけ。訓練は今まで通りにやってやる」
「イヤ」
「…おい」
「イヤ。今までのままじゃ足りない。もっと強くなりたい」
「…強情なやつ、だったな。お前は」
詩人は深くため息をついた。
「いいぞ。本格的に鍛えてやる。ただし、条件が二つ。
一つ。泣き言は聞かない。
二つ。もし俺と同じ結末に至る時には――」
冷たい瞳をした詩人は腰から剣を抜く。棍棒を使い、弓を使い、体術も使ったが、剣だけは今まで使った事がない。その詩人が剣を抜き、その刃をエクレアの首にあてて薄皮一枚を斬る。
その動きにエクレアは全く対処できなかった。だが、その動きをとても美しいとも思ってしまった。自分の首に迫るその刃は、詩人が今まで見せてきたどんな動きよりも流麗で堅実で、陳腐な言葉だが究極としか表現できなかった。
恐ろしさよりも先に感嘆が出る。そんな太刀筋に見惚れたのも一瞬である。
「――俺がこの剣で、首を落としてやる」
「喜んで!!」
「喜ぶなっ!!」
「だってだって、とっても素敵だったんだもん。ねえ、剣を教えてよ!」
無邪気が過ぎるとこうなるらしい。ちょっと以上に常軌を逸している。先程とは違う種類のため息を吐きながら詩人は剣をおさめる。
「悪いが、剣だけは教える気はない」
「え~。ケチ。いいじゃん、教えてくれたって! なんで剣だけは教えてくれないの?」
「場合によっては俺の復讐に支障をきたすかも知れないからだ」
「意味分からないんだけど。関係ないじゃん」
「あったんだよ、これが。面倒なことだけどな」
また違う種類のため息をはく。ため息の種類が多い男である。たぶん、苦労人なのだろう。目の前の少女が同行している時点で分かっていた話ではあるが。
話は終わりとばかりに詩人は席を立つ。
「今夜はキャプテンに呼ばれているし、そろそろ支度をしよう。
エレンも、もう一度術をかければ動けるようになるだろう」
「詩人さん、術も本当に凄いよね」
「強くなりたいなら術も覚えろよ」
「え~」
「…泣き言は聞かないぞ」
「は~い」
緊張なく答えるエクレアにやる気は感じられない。幼くて好き嫌いがあることは承知しているし、やる気がなくては身につかないということも理解しているが。前途多難なエクレアに軽い頭痛を覚える詩人だった。
戦艦の被害、三隻中一隻が大破。
陸軍の被害は過半数を超え、防衛能力に著しい問題あり。
「これがバンガードの現状じゃ」
「予想の範疇だな。フォルネウスが攻めてきた時点でバンガード壊滅もありえた。民間人に被害が無いだけ快挙だ」
顔をお通夜かと言わんばかりに曇らせるキャプテンに、グッドニュースを聞いたような口調の詩人。四魔貴族への認識の違いが伺える一幕である。そんな男たちをエレンとエクレアは醒めた目で見ていた。
「それも、あなた達がいなければ為されなかった快挙でもあります。特に詩人さん、あなたがいなければフォルネウスを退散させる事も難しかった」
「だが、俺はバンガードに仕えるつもりはない」
先んじて言われた言葉に、キャプテンはグッっと言葉を詰まらせる。エレンやエクレアはもちろん、特に詩人を味方に取り込む事ができれば大きな戦力として数えられる事になるだろう。
だがしかし、そのつもりは詩人はもちろんエレンにも全くない。彼や彼女には目的があるのだから、一つの都市に縛り付けられることは本意でない。エクレアは彼らについていく事しか考えていない。
結論としてバンガードは詩人たちを恒常的な戦力として数えることはできない。
「なら、ならば……どうしたらいいのじゃ…」
力なく言葉を呟くキャプテン。フォルネウスの姿と被害状況を聞いて、市民からは不安の声が多くあがっている。なんとかしてくれと押し寄せる声に応えたいと市長としても思う。
だが、あれほどの脅威に対する手段をキャプテンは知らない。そして思いつけない。例え詩人たちを抱き込めてもそれは根本的な解決にはならない。
どうしようもない。それを体現するキャプテンに、詩人はコツコツと指で椅子を弾きながら答える。
「まず、前提条件としてフォルネウスは動かない」
「――え?」
「それなりにダメージを与えたからな。治るまでは海底宮で治療に専念するだろう。四魔貴族の最優先目的はゲートだ。ならば最大戦力が負傷した今、万が一に備えて守りに全力を注ぐはず。散発的な襲撃さえ激減するだろうな」
「ほ、保証はあるのかの?」
「ない。が、自信はある。奴らは自分が一番大事なのさ」
(…基本、生き物ってそういうものじゃないのかなぁ)
自信満々に言い切る詩人に、エクレアは呆れてそう思う。エクレア自身がそう思う資格を前の戦いでなくしている事に本人は気が付かない。
エレンは真面目に話を聞いているが、エクレアは細かい話は分からないしどうでもいい。出されたクッキーをさくさくとかじり、ちょうどいい温度の紅茶を上品にすする。所詮、自分は交渉事に向いていない。ならば向いている詩人に全てを任せてそれに従うのが最適解。そう判断しているエクレアは話し合いに興味もない。
対してエレンは真剣に話を聞いている。もちろん、田舎娘である彼女が挟める口なんて一つもない。下手な言質を与えるなと、詩人にも前もって言われていることも合わさって、基本的には割り込まない。
だがエレンは自分に交渉力がないことは理解している。そんな弱点をそのままにしておいていいとも思わない。詩人とは一時的に利害の一致から行動していると考えているエレンにとって、いつか詩人がいなくなると想定するのは当然だった。そして詩人がいなくなった後、交渉力がないからと話し合いが避けられるはずもない。少しでも吸収しようと戦闘にも劣らない気迫で二人の話を聞く。そのひたむきさはエクレアにはないもので、エレンの美徳でもある。
そんなやる気の有る無しがきれいに分かれた二人に関わることなく、詩人とキャプテンの話し合いは続いていく。
「だが、いずれフォルネウスはやってくる。悪いがバンガードを動かすという夢物語に付き合っている暇はなくなったのう。成功報酬の1万オーラムは諦めてもらうが、仕方ないのう」
「確かに作戦の決定権はキャプテンに委ねるという約束をしていましたね。キャプテンがそう判断されるなら、こちらに否応はない。だが、このまま座して待っていてもバンガードは滅びるだけだ」
「……」
「海運によって発達されたバンガードは、海をなくして生きてはいけない。フォルネウスの脅威から逃れる為に逃げるとして、その先ではロクな生活が待っていない」
「……」
「そしてその責任は、バンガードを捨てる決断をした、もしくは残ってフォルネウスと戦い玉砕する選択をしたキャプテンにかかる。違うか?」
詩人の追及にキャプテンはふっと笑う。
「ああ、その通りじゃな。儂はそのどちらを選んでも終わりじゃろう。それで君はその他の選択肢を示してくれるのかな?」
「最初から言っている。バンガードを動かす。動かして、フォルネウスのいる海底宮に乗り込み、奴を打倒する」
「…それが、できればっ…!!」
「言っただろう? フォルネウスは海底宮に乗り込めるバンガードを敵視していると。フォルネウスとバンガードは共存しえない。バンガードが生き残るには、フォルネウスを滅ぼすしかないんだよ」
沈黙。
沈黙。
沈黙。
「…勝てる、かの?」
「知らん。少なくとも、俺は命懸けで海底宮のフォルネウスと戦う気はない。俺は、だがな」
詩人はちらりとエレンを見る。その視線に気が付いたエレンは力強く頷き返した。そして詩人が出した軽い合図と共に力強く宣誓する。
「あたしは、フォルネウスを倒す」
「お嬢ちゃん?」
「あたしは、四魔貴族を倒す、それが目的。だから、バンガードがフォルネウスを倒すのが目的なら、最大に協力するよ」
「ああ、エクレア。お前も戦えばいい。強くなるにはいい目的だ」
「私は構わないけど…詩人さんは戦わないんだ?」
「最悪、また負けたらお前らを担いで逃げる必要があるからな。見守ってやるよ」
ひらひらとやる気なく手をふる詩人。
「…彼女たちではフォルネウスに勝てないと思うのじゃが。一蹴されたのを見たばかりじゃぞ?」
「鍛えてはやるさ。どこまで強くなれるかはこいつら次第だが」
「むう…。確かに他に選択肢はない、か。しかし襲撃が少なくなると思われるとはいえ、今のバンガードでは外敵から身を守るだけで精一杯じゃ。その手伝いを詩人に頼みたいのじゃが、いかがかな?」
あの手この手で詩人を引き込もうとするキャプテン。それも当然であろう、無傷でフォルネウスを撃退した能力の持ち主なのだ。むしろあてにしない方が不自然な話である。
もちろん、それに容易く首を縦に振る詩人ではないのだが。
「俺はバンガードを動かすことに専念させてもらうよ。バンガードを守ることはキャプテンの仕事だ。だが…」
そこで少しだけ考え込む詩人。
言った通りにバンガードを守ることは彼の仕事に含まれない。含まれないが、詩人もまさかフォルネウスが攻めてくるとは思わなった。思った以上にフォルネウスがバンガードを危険視しているというのならば、自分がいない間に何かしらの方法でバンガードが堕とされても不思議ではない。
ただでさえ戦力が低下している現状だ。安全策を多くとるに越した事はない。
「そうだな…。ウィルミントンのフルブライト商会に助けを求めれば、防衛に関しては不安は少なくなるだろう」
「フルブライトに頭を下げろというのか!」
「最善策だ」
「う、うむむむむ…」
キャプテンは一層深く悩む。自衛が基本の世界で、他に助けを求めるのは赤っ恥だ。しかしバンガードは現状、手を借りなければならない状況に追い詰められているといえる。だからこそ詩人たちを傭兵という形で囲い込みたかったのだ。傭兵ならば自分の財布から金を出して臨時の戦力増強だと言い張ることも可能だ。しかし大きな勢力に力を借りるというという事は借りになる。下手すればそのまま傘下になってしまう。
手は借りたくない、けれど助けは必要。どうすればいいのか悩むキャプテンに詩人は嘆息する。
「繋ぎだけはしてやるよ。
フォルネウスが現れたからその討伐をしたい、共に四魔貴族を討つのに協力を申し出るって体面でどうだ? 足元は多少見られるだろうが、フルブライト商会としても四魔貴族を撃退するという功は欲しいはずだ」
「…なるほど。頭を下げるにしても協力を要請するという形にするのじゃな。ドフォーレ商会などもある中、最初に協力を要請するならフルブライト商会も悪い気はしないはず。
うむ、それでいこう。それで、繋ぎはしてくれるとは?」
「フルブライト商会には伝手がある。話くらいは聞いてくれるさ。ついでだ、優れた玄武術師の話も聞いておく。なんとかできるならしてやるよ。バンガードは防衛で手一杯になるだろうからな」
「おお、それはありがたい!」
「もちろん、別料金だが。イルカ像と玄武術師、バンガードを動かすのに必要なものは全部こちらで用意するんだ。いくらだす?」
「…イルカ像はもともとそちらの範疇じゃろうに。玄武術師の捜索費用として3000オーラム出そう」
「もう一声」
「ええい! 5000オーラムだ! 前金として半額渡してやる。しっかりと成果を出してくれよ」
そう言って大金をポンと出すキャプテン。それに薄く笑う詩人。
「了解だ。バンガードが動く船となったらその利益は計り知れないだろう。安い先行投資だと思っておけ」
体よく金を集める詩人に女性二人は思う。
がめついな、と。
「それじゃあ俺たちは今夜はバンガードに泊まり、明日一番にウィルミントンに向かう。そこでフルブライト商会に話を通しておくさ。
後は早めに優れた玄武術師とイルカ像を見つけ出す。そしてバンガードを動かしたら海底宮に乗り込めばいい。簡単な話だ」
そう言って席を外す詩人。それについていくエレンとエクレア。
「こういう訳だ。明日はウィルミントンへ向かうぞ。今日はよく休んでおけ」
「わかったわ」
「了解!」
月のない夜、明かりは微かな星が頼り。そんな中、三人は宿へ向かっていく。
彼らを尾行する人間がいることに、もちろん詩人は気がついていた。
深夜。
草木も眠る時間だが、彼らはそんな時間だからこそ行動する。
旅人であるとある詩人が聖王遺物である妖精の弓を持っているという情報が手に入ったのだ。そしてその弓から放たれた一撃はフォルネウスに手傷を与えた。
間違いないと判断し、闇夜に紛れて詩人の宿に侵入する。寝息をたてる詩人には目もくれず。立てかけてあった弓のみを狙い、盗む。そして素早く建物から逃げ出して、港へと向かった。
根城にしているのは倉庫の一つ。それはピドナのルートヴィッヒが持っている倉庫であり、ある種の治外法権が認められている。そこはバンガードであってバンガードでない場所なのだ。
そこで二人の男が待ち構えており、盗みを働いた男を待っていた。
「首尾はどうだ」
「ちょろいものさ。しょせん脳筋、盗まれるなんて考えていやしない」
「マクシムス様もお喜びになられるだろう。俺たちの覚えもよく万々歳さ」
くっくっと忍び笑いをもらす三人。
それに合わせて笑い声が一つ混じる。
「全く。使えない奴が相手にいるとやりやすくて仕方がない。そんな安弓に喰いついてくれるんだからな」
驚いて声がした方を見る男三人。その先には詩人が棍棒を携えて立っていた。
「聖王遺物を集めている輩がいると聞いてな、形だけ似せた弓を用意しておいた。まんまと引っかかってくれて笑いが止まらないよ」
その言葉に、盗んできた男を残りの男たちが睨みつける。偽物を掴まされ、後をつけられた。この間抜けと視線で責めるが、それで現状はよくならない。すぐに思考を切り替える。
現場は抑えられた。そしてここは治外法権。ならば遠慮する必要はない。無言で武器を抜く男三人。その行動に肩をすくめて応える詩人。
勝負は一瞬でついた。
男三人を死なない程度に叩きのめした詩人は、さてと前置きをして語り掛ける。
「マクシムス、とか言ったか。確か神王教団の幹部にそんな名前の奴がいたな。主犯はそいつか。
それにここはルートヴィッヒの所有物。奴も一枚噛んでいるな。使われているだけなのか共犯なのかは……まだ分からんか。
まあいい。お前らには知っている事を全部吐いてもらうぞ」
死なない程度に痛めつけられた男たちは悶絶している。こうなった時には自害して情報の漏洩を防ぐのも仕事のうちだが、両腕両足を叩き折られたために刃を喉に突き立てることも毒を取り出して飲む事もできない。
そして始まる詩人の拷問。まずは一人の男に狙いを定めて死なない程度に体を壊していく。
「お前たちの目的はなんだ?」
「っ…!」
「何故、聖王遺物を集めている?」
「っっ……!!」
「ジャッカルも関係しているはずだ。奴はどこにいる?」
「っっっ……!!!」
詩人の執拗ないたぶりを受けたその男は、それでも一言も口をきかない。そして強い意志で詩人を睨みつけるとニヤリと笑って初めて口を開いた。
「知るかよ、バァカ」
「……」
「覚悟しておけよ。ここで善良な人間三人を襲い殺したお前はただの殺人犯だ」
「……」
「バンガードもフォルネウスと戦う時にピドナと諍いを起こすこともないだろうな。そして顔に泥を塗られたピドナはお前を絶対に逃がさない。絶対に、だ」
「……」
「黙って聖王遺物を渡しておけばよかったと思っても、もう遅い。貴様はもう終わりなのさ」
「……何も分かってないな、お前は」
いっそ哀れな男に詩人は同情までした。
「何が分かっていないって? 俺たちは正規の手順をもってバンガードにきた善良な市民さ。それを嬲り殺したお前がどんな目に遭うかも分からないのか? ピドナを敵に回す意味が分かっていないのか?」
「この件がそのまま表沙汰になれば、まあありえる話だろうな」
そう言いつつ、詩人は倉庫に火を放つ。
「ここで起きるのはただの火災事故だ。それを引き起こすのはここをねぐらにしていた、自称善良な一般市民の三人だ。
焼け落ちた荷物に押しつぶされ、グチャグチャになった男たちの身元は普通の市民。なのに、一般人は入れないルートヴィッヒの倉庫にいた。ああ、お前たちの身分証はちゃんと燃えないところに置いておくさ。
ついでに…そうだな。バンガードの地図やらご禁制の品も燃えないところに置いておくか」
「なっ…!」
「バンガードはどう思うだろうな。ルートヴィッヒが強引な手法でピドナの実権を握った事は知られている。次は西に手を出してきたと思うか?
それを引き起こした神王教団に対してどう対応するかな? マクシムス様とやらにこれ以上の協力をするかな? 一心同体でなければ、もしかしたら全て神王教団に押し付けるかもな」
「お、お前……!」
「まあ、心配するな。俺が予想するとそこまで大事にはならない。せいぜい、馬鹿な神王教団の一部が暴走した一件として片づけられるだろうな。
責任は全部実行犯に押し付けられてトカゲの尻尾切り。そして賠償金で終わりだな。お前たちは身も名誉も汚泥にまみれて打ち捨てられる。まあ、こんな仕事をしているんだ。本望だろう?」
「っ…ああ、俺は身も心も御上に全て捧げている。俺たちのミスを俺たちが背負う。何か道理に外れてるか?」
「外道が道理を語るとは面白い。が、その通りなのがまた面白い。
そしていい情報も貰った。聖王遺物を集めているのはマクシムス、そしてお前もマクシムスもジャッカルの一味だな?」
「!?」
「赤サンゴの装飾品を身に付けていたのは失敗だったな。仕事に対するプライドだったんだろうが、こちらはまた一つ確証を得た。ありがたい話だ」
そう言って火の手が強くなってきた倉庫から外に向かって歩き出す詩人。
「死ぬにはよい夜だ。往生しろよ」
「なんかさー。昨夜、港で火事があったらしいよ。どっかのお偉いさんの倉庫から火事がおきたんだって」
「へー」
翌朝、早めの朝食を取りながらエクレアがそんな話をする。適当に相槌をうつエレンと、黙って食事を続ける詩人。
「でさ、そのお偉いさんの倉庫で、変なものが燃え残ってたんだって」
「変なもの?」
「うん。問題になるって兵士が言ってた」
「まあ、後ろ暗いことの一つや二つ、あっても不思議じゃないさ。俺たちには関係ない」
そう言って話を打ち切る詩人。
「早く食べてウィルミントンに向かおう。フォルネウスがいつ動くかも分からないし、急ごう」
「はーい」
「ええ、そうね。もっと強くならなきゃいけないし…」
火事とは関わらず、旅立つ三人。
そしてバンガードはもう一つ面倒事を抱え込むことになるのだった。
今年最後の更新がこんなに黒くていいのだろうか…。
……まあ、いいか!