詩人の詩   作:117

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一月も空いてしまいました。申し訳ありません。
これからも頑張っていきますので、どうかよろしくお願いいたします。


050話

 

 

 

 ラザイエフ商会って?

 こう聞けば、大概の相手は呆れるだろう。一般常識として、そのくらいは知っておけと。

 一般的な家の中を見渡せば、ラザイエフ商会が取り扱っている品々を見る事ができるはずだ。当たり前のように使っていた日常品もあるだろう。えっ? こんなものまで? という意外な品もあるだろう。もしかしたらそれだけでも新しい発見の連続で、楽しい時間を過ごせるかも知れない。

 ラザイエフ商会って何をやっているの?

 しかしこう聞けば、言葉に詰まる人間は案外多いのではないだろうか。ドフォーレ商会のように金と暴力を巧みに使う訳でもない。フルブライト商会のように伝統があり、聖王縁という訳でもない。ツヴァイクのように強国として有名ではない。神王教団のようにナジュ王国を滅ぼした経歴がある訳でもない。ピドナのように世界最古の都市という訳でもない。またロアーヌのように話題が多い訳でもない。もしかしたら、本拠地がリブロフにあるという事さえ知らない人間も多いかも知れない。そもそもリブロフという都市を知らない可能性もある。

 そんな人間も少なくないため、ここで一応注釈を加えておこう。

 ラザイエフ商会とはリブロフに本拠地を構える大商会である。商会で力がある順にあげていけば、五本の指で数えた時までにその名前があがるはずだ。

 何を売り出しているか。強いていえば、食品を扱っているといえる。リブロフは海に面した草原地帯である為、漁業や農業が盛んである。畜産はそこまででもないが、不得手という程手を出していない訳でもない。

 また東に砂漠があり、そこでは食料の調達が困難な為にその為の食品を特に近場のロアーヌなどから買い集める商売をしている。反対に砂漠で採掘される宝石などの希少品は、基本的にリブロフを経由して世界各地に輸出されるために関税でも潤っている。

 いわば、こういった売り買いの利益をあげる事で潤っているのがラザイエフ商会といえるだろう。大商会ばかりか中小の会社でさえ代名詞といえる商品があるにも関わらず、ラザイエフ商会にそれはない。これが人々の印象に残りにくい理由であり、そしてある意味特徴的といえるだろう。

 余っているものを安く仕入れ、欲しているところに高く卸す。言葉にすれば簡単だが、実行するとなれば筆舌につくし難い苦労や困難がある。最初の段階として世界的に有効な情報網や販路を持っていなくてはならず、普通に考えてこの時点で零から成り上がろうとする者にとっては絶望的な難易度だ。素直に秘境に行き、一発当てる方がいくらか現実的だろう。

 しかしそれらが一定以上あると、その様相をがらりと変える。ただ荷物を運ぶだけで儲けが出るのであるから、限りなく低いリスクで安定したリターンが得られるのだ。

 つまり、爆発力はないが安定性が抜群なのもラザイエフ商会と言えるだろう。そういった訳で安定志向が強くて目端が利く者がラザイエフ商会を志す事も少なくない。

 長々と説明したが、ラザイエフ商会にとっては中立が大切だというのはまあ理解して貰えただろう。どこかに肩入れして反感を買うより、どこにもいい顔をして売り買いに困らない程度に融通を利かせてくれる程度の距離感が一番なのだ。

 そんな大商会の下に、世界最大都市の一つであるピドナと最大勢力の一つである神王教団を敵に回したかつての仲間の娘が転がり込んできたのだから、特大の頭痛の種が埋め込まれたようなものだった。

 

「話は分かった。ひとまずこの屋敷で皆さまを匿おう。細かい話は後日つめるとして、今日のところはゆっくりして下され」

 ラザイエフ家に突如として転がり込んできた7人の男女。それがトーマスカンパニー社長の封蝋印が押された手紙で、ラザイエフ家当主であるアレクセイ宛に庇護を求めた手紙であった為に無下に扱う訳にもいかず。アレクセイはひとまず彼らを受け入れる旨の発言をした。

 ほっと安堵の息を吐いた来客者たちを部屋に案内するように女中に指示したアレクセイは、自分の仕事は終わりと言わんばかりに席を立つ。

 そして部屋を出ると、側に控えていた者に素早く小声で指示を出した。

「ニコライとボリスを呼べ」

「はっ!」

 そのままアレクセイは自分の執務室へとゆっくりと戻り、用意されていた紅茶を一杯飲む。

 僅かばかりの穏やかな時間を過ごした後、コンコンと部屋のドアがノックされた。

「急な呼び出しとは珍しいですね。どうかしましたか、お義父さん」

「邪魔するよ、親父。どうかしたのか?」

 娘のベラと結婚した義理の息子であるニコライ。彼より大分歳が下だが、強い意志を持った瞳をしている長男ボリス。

 先日まで末娘であるタチアナが家出をして行方不明になり、心身を弱らせてしまったアレクセイに代わってラザイエフ商会を切り盛りしていた二人である。今ではタチアナの行方が確認され、ある程度アレクセイの体調も治ったので主権はアレクセイに戻っているが、巨大な会社を運営するにあたっての行使できる権力は決して小さくない。この場にラザイエフ商会のトップ3が集ったといっていいだろう。

 とはいえ、家族でのお茶の誘いという事もこの家ではよくある話である。気楽にアレクセイの執務室に入った二人だが、彼らが入ってきた途端に目をスッと鋭くしたアレクセイを見て即座に意識を切り替える。

 すなわち、この話し合いは和気あいあいとした談笑を目的にした訳ではなく、ラザイエフ商会の重大事項を決定する場なのだと理解したのだ。

「状況が大きく動き出しての。ラザイエフ商会として指針をはっきりさせておきたいのじゃ。

 まあ、お茶でも飲みながら話を聞いておくれ」

 鋭い目をしたまま、自分の手でポットからお茶を淹れるアレクセイ。それはお茶を淹れる女中にすらこの場を見られたくないという意思表示でもあり、これからされる話の重要性をまた一段とあげる所作だった。

 ニコライとボリスは緊張を高めながら椅子に座り、アレクセイが淹れたお茶で口を湿らせながら話を待つ。

 そして語られるミューズたちの話。ピドナと神王教団を敵に回したラザイエフ商会の厄介者。ラザイエフ商会として、門前払いに近い扱いをしてもおかしくない相手である。トーマスカンパニーの手紙があるから会うだけは会うが、話を聞き終わった瞬間にお引き取りを願っても全くおかしくない。

 なのに、その厄介者を懐に入れてこんな話し合いの場を設けるという事は。

「動く気か、親父」

 ボリスが問う。ノーリスクローリターン、ラザイエフ商会の理想だ。それに準じるならば、今回のミューズたちは受け流すべき事柄だろう。しかしてアレクセイは彼女たちを懐に入れた。そうボリスが考えるのも不自然ではない。

「動くか、動かないか。それも含めて話し合いがしたいのじゃ。結論として今まで通りになる可能性もある。じゃが……」

「今の安寧が続くとは思えない、ですか」

 ニコライが言葉を引き継ぐ。

 死食が起こって15年。安定に主眼におくラザイエフ商会だからこそ、一番分かる事もある。

 世界は徐々にだが、確実に荒れてきている。アビスの力が流れ込んで邪悪な者が力を増す反面、それを打倒する為に戦う者たちにも力が集って小競り合いが発生していた。

 そして特に大きかったのがロアーヌで起きたゴドウィン男爵の乱。アレが最後ではなくむしろ始まりなのは、この三人の中ではほぼ確信的に思っている事である。大嵐の前の一風こそが先の内乱であったと見ているのだ。

 変わる世界情勢に対して今まで通りの対応では手緩い。だがラザイエフ商会は自分から動き出すのは苦手な部類に入る。保守的な動きはこれでもかと言わんばかりに得意だが、安定を崩す事が思考からして苦手な人間が集っているのがラザイエフ商会でもあるのだ。

 そこに投じられた一石。それも軽い小石ではなく、世界を揺るがす要石ともいえる。ピドナのルートヴィッヒと神王教団のマクシムスに狙われるとは、そこまでの大事なのだ。

「順当に行けば、まあミューズを売るのが妥当ですね」

「その選択肢もある。だが、それでルートヴィッヒや神王教団が恩を感じるかの?」

 一番勝ちの目が高そうな案をニコライが口にするが、アレクセイはそれを一言で切り捨てる。

 ルートヴィッヒはそもそもリブロフで力をつけた男だ。それを後押ししたのは当然ラザイエフ商会であるが、ルートヴィッヒはその事を恩に感じるどころかピドナでラザイエフ商会と親交が深かったクレメンスから実権を奪い、なお強欲に力を求めている。その際にお世話になったはずのラザイエフ商会に対して配慮があるどころか、ピドナで構築していた伝手を破壊した。こんな男にへりくだる様にかつての盟友の娘を差し出せば、更に調子に乗るのは目に見えていた。

 神王教団のマクシムスも信頼できるかといえば、否だ。確かにラザイエフ商会にとって砂漠に住まう神王教団はお得意様だが、ピドナにいるマクシムスに恩を売っても利益はほとんどない。それに夢魔の秘薬を使うような外道に力を貸したとしても、後々簡単に裏切られるだろう。

「でもよ、じゃあ戦いましょうって短絡に決められる相手でもないだろ?」

 比較的若いボリスの言葉に頷く老爺と中年。

 相手が信用できないから簡単に敵対の道を選べないのがピドナのルートヴィッヒと神王教団のマクシムスだ。マクシムスだけならばまだ勝機はあるだろうが、ピドナを支配するルートヴィッヒではラザイエフ商会といえども単一では流石に分が悪い。戦うと決めたとして、それなり以上の準備が必要だ。

「まず、ラザイエフ商会の立ち位置を明確にしたいと思う」

 鋭い瞳をしたラザイエフ商会会頭アレクセイが言う。もちろんこれは他言無用、この三人だけの共通認識だ。

 誰に味方し、誰と戦うか。場合によっては裏切るか。この情報は、漏れれば即座に負ける。そしてこの状況での負けはすなわち、ラザイエフ商会の衰退を意味している。

「儂は、今まで通りが一番じゃと思う」

「それはつまり、フルブライト商会と組むという事ですか」

「裏を返せばピドナや神王教団と敵対するっていう認識だな?」

 言葉を返すニコライとボリスの言葉に、アレクセイは首を横に振る。

「ラザイエフ商会は先頭に立つ事を得意とせん。どこかと組んで、そのサポートに回る方が得意じゃ。その意味で今まで通り、という訳じゃな。

 組む相手の筆頭はフルブライト商会なのは確かじゃ。しかし、フルブライトの若造がどう動くかを見極める必要もある。

 世界はここから大きく動く。場合によってはフルブライト商会の情報は高く売れるじゃろうて」

「……今まで通りに広く浅く、ですか。そして決定機が来た時こそ大きく動く」

「でもよ、今まで通りじゃあ深い情報までは手に入らねぇぜ? 取り残されるならまだしも、総スカン喰らうリスクもあるだろ?」

 眉を歪めて言うボリスの心配も尤もだ。フラフラとどこにでもいい顔をするコウモリに重要情報を渡すバカはいない。場合によっては確かに全員から白い目で見られかねない。

 だが、それをクリアしてきたからこそのラザイエフ商会だ。全員から嫌われないというのは簡単そうに見えるかもしれないが、実際は不可能に近い難易度がある。これから世界情勢が荒れるとしたら嫌われないといった事は更に難しくなるだろうが、そこがラザイエフ商会が最も得意とする分野なのだ。それを頼りにするというのは間違った選択肢だと言い切る事はできないだろう。

 それを諭すように、そしてこれからの方針を確かめるように。ゆっくりと、はっきりと、アレクセイは言葉を紡いでいく。

「今まで通り、と言っただろう。

 ラザイエフ商会はフルブライト商会と同盟を組み、そしてそのサポートをする形で前線から一歩離れた位置を保つ。矢面に立つのはフルブライト商会で、細かい事はトーマスカンパニーに任せる」

「フルブライト商会が動かなかったらどうします?」

「それはない。他ならともかく、アビスが関連すれば聖王十二将を祖に持つ事を喧伝しているフルブライト商会は動かざるを得ない」

 そう、フルブライト商会は例え動きたくなくても動かなくてはならない。

 何かを掲げて人を集めて力を持つというのはここが厄介なのだ。ある事には力を集中できる強みもあれば、それに引きずられるように事を起こさなくてはならない時もある。

 また、そういった側面があるからこそ動きを読んだり誘導するなどの事を可能とし、先読みで相手の動きを潰したり裏切りで得だけかっさらう事も起こりえるのだ。

「同時に他への布石も打つ。

 砂漠にいるティベリウスとは今まで通りに良い関係を築くが、ピドナのマクシムスには注意を払わねばならんな。場合によって潰し合わせる事も、和解させる事もできる状況が好ましい。我々がその状況を支配できれば更にな。

 ルートヴィッヒに甘い顔をする訳にはいかん。ここの対応も今まで通りでいいだろう。

 問題はロアーヌとツヴァイクだ」

 中堅国であるロアーヌと、強国であるツヴァイク。それなのにこの順番で言ったのは、ラザイエフ商会もツヴァイクが凋落するだろう事を確実視しているからだ。

 政治の腐敗が進むツヴァイクで起こった最上級の不祥事。それを抉るような策を立てたフルブライト商会とロアーヌ、ついでにトーマスカンパニー。ラザイエフ商会は後詰めとしての役割を背負った為に多くの利益を得るような事はないが、おこぼれの確約はしてある。直接的に大きな所から利益を搾ると悪感情を持たれやすく、ラザイエフ商会としても望むところではなかった為に落ち着くところに落ち着いたといえるだろう。

 さて。落ち目になるツヴァイクと、搾り取り大きくなるであろうロアーヌ。これらの対処は今までと変えなくてはならない。

「ツヴァイクは様々な物資が不足するじゃろう。それでもおそらく貴族は金を出し渋るし、うちで押さえている販路で細々とした物を高く売りつけてやろうか。贅沢品よりも日用品の方を多く用意するべきじゃな。

 買い付けはロアーヌでいいし、これから豊かになるロアーヌはツヴァイクとは逆に嗜好品や高級品も好まれるはず。砂漠からの仕入れは多くしておこうか」

「他にもウチで取り寄せられる良い品も用意しておきましょうか」

「俺は買い付けだな。ロアーヌから安く仕入れられれば言う事はないし」

 話し合いは進み、今までと同じように嫌われる事を恐れるように動いていく。しかし世界情勢を鑑みない訳ではなく、相手の状態を見て勘気に触れないように動くのだ。

 そして動く世界は机上の空論のみで都合よく回るようには出来ておらず、必ず不測の事態というのは起こるものだ。その為に彼らはいる。それに対応できる人員を配置する為に、また場合によっては自分で場を治める為に。

 この能力に優れているからこそ、ラザイエフ家はラザイエフ商会を動かすに足る者と自信をもって言えるのだから。

 

 

 ユリアンたちがリブロフについて数日が経った。

 それはラザイエフ商会が今後の動きを決める時間であり、そしてユリアンたちが訓練に使えた時間でもある。

「今日はこのくらいにしておきましょうか」

「あ、ありがとうございました……」

 ユリアンにとっては軽い運動だが、ミューズにとっては疲労困憊になるレベルの激しい動きだった。

 肩で息をするミューズに苦笑いを浮かべるユリアン。それもそのはず、今している体力作りは一般的な兵士の訓練とさほど変わらないのだから、ミューズの体力が足りないと言わざるを得ない。兵士はこの上で業務があるのだから、ミューズはそれ以下という事でもある。

 だがまあそれも仕方がないのかも知れない。ミューズは深窓の令嬢であった上に、ここしばらくは最愛の父を亡くしたショックで心が弱って寝たきりになっていた。悪夢の世界で弱った心を認めたおかげで多少は元気になれたが、元から少なかった上に落ちた体力がそう簡単に上がる訳がない。むしろ泣き言一つ言わない強さを賞賛すべきだろう。

 疲れ切ったミューズは一人で屋敷に帰るだろうから、ユリアンはもう一つの訓練に参加するべく足を進める。ミューズは体力作りを最優先にした為に借りたラザイエフ家の裏庭をランニングをして基礎体力をあげたり、素振りをして武器に慣れることを主にやっているが、シャールに稽古をつけて貰っている面々はその段階は過ぎている。裏庭の中央、ある程度動ける空間で技を磨く訓練をしているのだ。

 シャールの指導の元。武器を振って型を覚え、技を伝授し決定力をあげる。その上でできる限り術の研鑽も怠らず、特にシャールと同じ朱鳥術を扱うモニカはその実力をメキメキと伸ばしていた。

 その訓練に参加するべくユリアンはそっちの方に向かっているのだ。そしてそこに辿り着いたユリアンは、おやっといつもと違う光景に少しだけ驚いた表情を見せた。

 いつもなら容赦ない訓練に青色吐息の少年にモニカ、サラだが今日はそんな事はない。誰も彼もが体力に余裕を残した状態で、気楽に自主練に励んでいた。

「やあ」

「ああ、来たかユリアン」

 軽い調子で声をかけるユリアンに、引き締まった表情で答えるシャール。

 これは何かあったなと、鈍い者でなければ分かるだろう。

 ユリアンは過程をすっ飛ばして、端的に結論だけを聞く。

「何がありました?」

「ラザイエフから要請があった。神王教団でもピドナは油断ならないが、砂漠にある神王の塔にいるティベリウスは話が分かる人物らしい。

 一度込み入った話がしたいらしいが、その護衛に何人か着いてきて欲しいそうだ。明日には出発するから、今日のところは疲れが出ない程度にしておいた」

 もう少し歯に衣を着せぬ言い方をするならば、ただ飯喰らいをするだけではなく少しは役に立てという事だろう。ある程度以上に世話になっている身としてはもちろん嫌と言えるはずもない。

 だがもちろん全員で行く訳にもいかない。

「砂漠は過酷な環境だ。ミューズ様を連れていく訳にはいかない。そして私はミューズ様の護衛として離れる訳にはいかないな」

「ニーナも無理だと思います。彼女はここでミューズ様のお付きとして留守番をして貰うのがいいでしょう」

「あ、私もそろそろピドナに帰りたいな。私は一応トムの補佐係だし、ほとぼりも冷めた頃合いだからいい機会かも」

「サラが行くなら僕も一緒に行くよ」

 あっという間に話が決まっていく。ミューズ、シャール、ニーナは居残り組。サラと少年はピドナに帰る。ならば残りは言うまでもない。

「私とユリアンが適任ですね」

「と言うか、他に選択肢がないって言った方が正しいかも知れませんね」

 消去法でそうならざるを得ない。まあ、おおよそ予想できた事ではあるし、意外という程でもない。

 それにラザイエフ商会も護衛を出すだろうから、そこまで無茶な話という訳でもない。反対する理由はないだろう。

「ミューズ様はとにかく体力をつけなきゃ話が始まらない。ランニングと、武器を素振りするだけでしばらくはいい筈です」

「分かった。それだけなら私だけでもミューズ様の指導はできるな」

 一番に鍛えなくてはいけないのはミューズだ。ユリアンがいない間に訓練が止まってしまう危惧はあったが、どうやら次の段階にいくレベルにミューズは達していないらしく、今まで通りの訓練をする分にはシャールが監督しても問題はなさそうである。

「では、明日に備えて今日は早めに休んだ方がいい」

「そうですね、明日から砂漠の旅があるなら体調を整えないとな」

「はい。それでは私たちはこれで失礼しますね」

 そう言ってユリアンとモニカがその場を離れて休む為に屋敷へと戻る。

 

 翌日から始まるのは砂漠の旅。

 過酷な旅の前に彼らは英気を養うのだった。

 

 

 

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