段々と週に一度ペースが戻ってきているので、この調子で頑張りたいと思います。
パブ、シーホーク。ヤーマスに店を構えるが、この酒場はその中でも特異な存在である。端的に言えばドフォーレ商会所有の店ではなく、フルブライト商会が出資している店であり、ドフォーレ商会からすると苦々しいとしか思えない店である。
もう少し噛み砕いて言えば、シーホークという店はフルブライト商会のスパイの巣窟であり、事あるごとにドフォーレ商会の邪魔をしているのだ。
もちろん表立ってそんな事をすれば、ヤーマスの法を作っているドフォーレ商会は嬉々としてシーホークを潰しにかかるだろう。だが裏道というのは当然の如くあるものであり、シーホークはその隙間を縫うようにヤーマスにて活動している。
例をいくつかあげれば、シーホークはヤーマスの貧困層に施しをしている。働く場所がなく困っている者や、親に捨てられてひもじい思いをしている子供に定期的に食べ物を恵んでいる。ここだけ見ればただの善行だが、もちろんそれで済まさないのがフルブライト商会の手先である所以であり、隙を見てそのような人間をドフォーレ商会に対するレジスタンスへ紹介したりしている。
他にも物資をウィルミントンから運ぶ途中で、野盗に
これでいてヤーマスに治安の悪さを申し立てているのだから、面の皮が厚いと言わざるを得ないだろう。ドフォーレ商会としてもそんなあからさまな言葉に耳を貸す訳がないが、フルブライト商会は他の場所でも事あるごとにヤーマスの治安の悪さを言いふらしている為、世間に疎い者ほどヤーマスは敬遠される町となっている。
もちろんドフォーレ商会もやられっぱなしではない。同じ手段をウィルミントンに仕掛けてはいるが、小さなものはまだしも大事にすればフルブライト商会の腕利きによって裏工作が潰されているのが現状だ。それでも総資金で言えばドフォーレ商会の方が勝っている辺り、彼の商会がフルブライト商会よりも儲けているという証拠だろう。すなわち局所的にはフルブライト商会の方が有利だが、世界的に見れば成功しているのはドフォーレ商会だといえる。
その一因となっているのはドフォーレ商会の手の長さだ。ドフォーレ商会は金にあかせて強者を雇い、その暴力にものを言わせて世界各所で強引な取引を締結しているという事実がある。フルブライト商会は聖王縁という自負もあり、そこまで極端な行動が表立ってできないのだ。そのような悪辣な行為が表に出てしまえばフルブライト商会は信頼を失い、あっという間に力を無くしてしまうだろう。
そのような手段がシーホークにとれないのは、この店が表立ってヤーマスの法に何一つ触れていない為である。決められた税は払っているし、表面上ヤーマスに対して何も不利益な事はしていない。もちろんそれは表面上だけの話ではあるが、フルブライト商会としてもこの店はドフォーレ商会に対する最重要拠点である為、全力でこの店を守っている。誰かとも知れない者に金を渡されたならず者が幾度となくこの店を襲撃したが、結果としてシーホークが存続しているという事実でここがドフォーレ商会とフルブライト商会の最前線であるという事が分かるだろう。
ちなみにだが、店を襲ったならず者は当然ながらヤーマスに引き取られる。シーホークが雇っている護衛が情報を聞き出そうとしても、襲撃失敗からほとんど間も無くヤーマスの警護隊が現れてならず共をしょっ引いてしまうのだ。その裏で何が動いていたかが判明した事は、もちろんない。
そんな清濁併せた境界線であるその店は本日の営業が終わり、後片づけをしている最中であった。店主であるトラックスは売上を計算し、その息子であるライムは黙々と食べ物や酒で汚れた店を掃除している。この時までこの日は静かな一日を過ごしていた。もちろんそんな事が珍しい訳ではない。ひっきりなしに襲われてはそれこそフルブライト商会が大きな顔をしてヤーマスに介入する口実になる為、ならず者共の襲撃はたまにという程度に抑えられており、まあ一見して問題ない程度に営業ができているのである。
静かに仕事をしていた親子だが、ぴくりと同時に反応し、店の出入り口を見る。そこに人の気配を感じたのだ。かといって荒々しい雰囲気はなく、実際穏やかなノックが為された。
「開いてるよ」
トラックスが言うと、静かにドアが開かれる。現れたのは美女と美少女、旅の荷物と武器を携えた二人組。
「あの、夜分遅くにすいません」
「お邪魔しま~す」
敵意なく言う女性達にライムは興味を無くし、また黙って仕事に戻る。そしてトラックスといえば、にこやかな笑顔にやや苦みを混ぜた顔で口を開く。
「お客さん、今日はもう店じまいですよ」
「それは本当にすいません。でも、ここ以外に当てがなくて……」
申し訳なさそうに言う美女に心の中で首を傾げるトラックス。もう夜遅いとはいえ、夜間まで開いている宿はいくらでもある。それを無視してここ以外に当てがないとはどういう意味だがを測りかねた。
そして続いた言葉にトラックスは思わず目を見開き、ライムは一瞬動きを止める。
「あたしの名前はエレン、それでこっちはエクレア。意味は通じますよね?」
フルブライト商会が後援している、四魔貴族を倒した英雄となれば無下にもできない。仕事が一段落するまで店の隅にある席でゆっくりして貰い、急いで残りの仕事を片付けるトラックス。
「私は甘いものが飲みたいな~」
「こら、エクレアっ!」
「……お待ち」
図々しく言うエクレアにエレンがたしなめるが、この奔放娘はもちろん本気で反省する訳がない。今までの旅でエレンも薄々気が付いているが、それでも叱るくらいはしなくてはいけないのが年長者の役目だろう。
そんな彼女たちに陰気なまま飲み物を持ってきたのはライム。エレンには温かい紅茶を、エクレアには砂糖を溶かしたホットミルクを運んでくる辺り人はいいのかも知れない。
「あ、ありがとうございます」
「……どうも」
「美味し~! 気に入ったよ、このホットミルク」
恐縮しきりのエレンに、相変わらず愛想の無いライム。そのあたりを無視してニコニコ笑顔でホットミルクを飲むエクレア。
「エクレア!」
「は~い。お兄さん、ありがとうね!」
エレンに促されてお礼を言うエクレアだが、ライムはちらりと彼女たちを見て軽く会釈をすると父親であるトラックスの所へ向かってしまう。
「……父さん、残りは僕がやるよ」
「そうだな、頼めるか? あまり客人を待たせるのもアレだしな」
そう言って帳簿をライムに渡すトラックス。引き継いだ仕事を続けるライムに、苦笑いで自分用の酒を持ってエレンたちの席に向かうトラックス。そのまま同じテーブルへつくと、手に持った酒を軽く呷る。
「いやはや、愛想のない息子で申し訳ない」
「んーん、優しい人だと思うよー」
自分の息子を苦笑いで評するトラックスだが、エクレアはそれをあっさりと否定する。
表面だけニコニコしていようが内面が黒ければ意味がなく、幸か不幸かエクレアはそういった人間を多く知っていた。その点、愛想がなくても人を気遣えるライムのような人間は彼女的には好印象だったらしい。
息子を褒められるという滅多にない言葉に少しだけトラックスが破顔するが、すぐに表情を引き締める。
「それで、エレンさんとエクレアさんという事は、フォルネウスを倒した英雄と思っていいのですな?」
「……フォルネウスを倒したのは事実ですけど、英雄とかは勘弁して下さい」
「そーいううざったいのはいらなーい」
確かめるように聞いたトラックスだが、対するエレンやエクレアの顔に苦みが走る。その反応に思わず目を丸くするトラックス。
「と、言うと?」
「別に英雄になりたい訳じゃないって事です。四魔貴族が世界を荒らしているから倒そうとしているだけで」
「私は修行の為だね。鍛えるって楽しいし!」
おおよそフォルネウスを倒し、他の四魔貴族を相手取るとは思えない軽い言葉に思わず言葉がつまるトラックス。
だがしかし、表裏のない言葉だからこそその真偽は容易に分かった。彼女たちは何一つ嘘を言っていない。四魔貴族を倒した後の栄誉に興味はなく、打倒することこそが目的なのだと。
「なるほど。稀有な性格をお持ちのようだ。
それで、そんな貴女方はいったいどんな用でシーホークに来なさったのかな?」
トラックスの言葉に視線を鋭くするエレンとエクレア。
「あたしたちはフルブライト会頭の要請で、四魔貴族を倒した者としてヤーマスの情報収集を依頼されました。
面倒事は嫌だったので、表面上に集められる情報だけ集めてとっととヤーマスを去ろうかと思いましたが、そこで目にしたのはグレート・フェイク・ショーといったドフォーレ商会の所業です。
あの醜悪さは四魔貴族級です。無視はできません」
「一応用事があるから長居はできないけど、ハイサヨウナラって終わらしたくなかったの。一発ガツンと引っ叩かないと気が済まないわ!」
「それでフルブライト商会関係者であるシーホークを頼りたいと思いました。フォルネウスを倒した英雄の名前を使って構いません、情報を集めてフルブライト会頭に送り、ついでにドフォーレ商会に痛い目を遭わせられればいいなと」
なるほどとトラックスは納得する。ヤーマスという町はほとんどドフォーレ商会の縄張りだと言っていい。それに敵対すると決めた以上、今までの宿は危険だと考えたのは正しい判断である。いつ毒を仕込まれるか分かったものではない。
だがしかし、諸手を上げて協力できない都合という物がシーホークにもあるのだ。
「言いたい事は分かりました。だが、全面的な協力は出来ませんな」
「へ? どーしてよ?」
「シーホークはヤーマスの法に従っているのです。酒が入ってドフォーレ商会の愚痴を言ったり、
まさかドフォーレ商会に危害を加える手伝いは出来ないのです」
道理だ。率先してドフォーレ商会に弓を引けば、ドフォーレ商会は満面の笑みを浮かべてシーホークを潰しにくるだろう。あくまでヤーマスの法に従っているからこそ苦虫を噛み潰したように店の経営を認めているのだ。
また、やたらめったらドフォーレ商会を邪魔する訳にはいかない理由もある。
「それにこれも切実な話ですが、例えばドフォーレ商会を物理的に潰されるとこの町の流通が完全にマヒします。
言いたくはありませんが、ヤーマスはドフォーレ商会がなくして存在できないのです」
「じゃあ、やられっぱなしで黙ってろっていうの!?」
「そうは言っていません。つまり、ドフォーレ商会の悪行だけを狙って潰さなければいけないのです」
ドフォーレ商会もまともな物品を流通させている。そこには手を出さず、聖王が禁じた薬物や暴力による支配、そしてモンスターと手を組んで行う悪行を阻止しなくてはならないのだ。
迂遠な手しか取れない現状にエクレアの顔が呆れに染まる。
「めんどくさっ!」
「どこかの商会や会社がドフォーレ商会を買収するのが理想的なのですが、世界一とも言えるドフォーレ商会を買収することは並大抵では不可能でしょうなぁ」
だからこそ草の根の活動をせざるを得ないのだとトラックスは締めくくった。
彼の話を静かに聞いていたエレンは、疑問に思っていた事をトラックスにぶつける。
「それで、グレート・フェイク・ショーは潰してもいいものなの? それとも悪いものなの?」
「……それが、グレート・フェイク・ショーというものが行われているのは知っているのですが、その内情まで知ってはいないのです。どうにもキナ臭く感じますし、貴女方が気に入らないとなればその想像は間違っていないとは思いますが、実際どのようなものなのでしょうか」
真顔で聞くトラックスに、苦みだらけの顔で先程見た醜悪なショーの内容を話すエレンやエクレア。
聞くトラックスの表情がみるみる嫌悪に染まっていく。
「そんなショーが……。それはむしろ潰さなくてはいけないものですね」
「店主さんもそう思いますか?」
「あ、自己紹介が遅れましたね。私はシーホークの店主、トラックス。そしてあっちは息子のライムです」
そう言えばそんな事さえしていなかったと、今更ながら自己紹介をするトラックス。カウンターの奥で帳簿と格闘していたライムが彼女たちをみると、ペコリと申し訳程度の会釈をする。エレンとエクレアも軽く会釈を返すと、ライムはまた黙々と仕事に戻ってしまった。
その間にうむむむと悩み顔を表に出すトラックス。
「早く手を出したいのは確かですが、そこまで大がかりな組織となると防衛に割かれている人員もそれなりのものでしょう。こちらも数が欲しいですな」
「具体的には?」
「3日……いや、2日待って頂きたい。フォルネウスを倒した英雄がグレート・フェイク・ショーを襲うという
連携は取れないですが、数は揃う筈です。
それまで貴女方はフルブライト会頭に頼まれた情報収集をするといいでしょう」
そこでいったん話が終わる。と、思いきやふと思い出した口調でエクレアが口を開いた。
「そういえばさー。ドフォーレ商会に対抗する怪傑ロビンとかいう変態がいるって聞いたけど」
「へ、変態っ!?」
「あたしも聞きましたけど、黒尽くめで顔を黒いマスクで隠しているとか聞きました。
正体を隠したいのは分かりますけど、傍から見たらただの変態じゃないですか」
「ん、んんー。へ、変態、ですか……」
思わず言葉が詰まってしまうトラックス。その息子であるライムも変態という単語が出た時、一瞬だが動きが止まっていた。
変に動揺する親子に気が付かず、エレンは話を続ける。
「その怪傑ロビン? とかいう人って何年もドフォーレ商会と戦っているんでしょ? 何とかして仲間に引き込めないかしら?」
「それは難しいでしょうな。怪傑ロビンは特定のレジスタンスに所属しない、独立したレジスタントなのです」
「どういう意味ですか?」
ロビンの格好から話が変わり、調子を取り戻すトラックス。
「怪傑ロビンはどこの誰なのか、本当に誰も知りません。長い間活動を続けているレジスタントの誰かだという説もありますが、憶測の域が出ていない。
また、怪傑ロビンの活動は多岐に渡ります。ある時は麻薬の取引現場を押さえ、またある時は老人をいたぶるドフォーレの者共をコテンパンにしました。
活動内容は場当たり的にドフォーレ商会の悪行を止める事なのは一貫していますが、いったいどのようにしてその情報を集めているのかも分かっていないのです」
「それってあり得るのー?」
「実際、そのように活動しているのですから仕方ありません。もしかしたら怪傑ロビンはドフォーレ商会にとって、フルブライト商会よりも脅威的な存在な可能性はあります」
「そんなのがいて、ドフォーレ商会をどうにかできないの?」
「それは単独で動く限界があるのではないでしょうか。怪傑ロビンはたった一人ですので、手が足りないというのは当然あるかと思います。
それに先程も言いましたが、物理的にドフォーレ商会を潰せばいいという訳でもありません。怪傑ロビンはその辺りも分かっているのでしょう。
そして怪傑ロビンに今回の計画が伝わる保証はありません。差し当たり、当てにしない方がいいかと」
そう締めくくり、話を終わらせるトラックス。
いい具合に夜も更けてきた。彼はエレンたちに店の一室を宿代わりに提供すべく、案内をするのだった。
ところ変わってドフォーレ商会、その執務室。
「くそっ! 四魔貴族を打倒した英雄の取り込みに失敗するとはっ!!」
ドフォーレ商会の会頭は癇癪を起こして取り乱していた。モンスターすらも配下に置くドフォーレ商会にとって、同じくモンスターを支配する四魔貴族は言わば商売敵。それを敵対視するエレンやエクレアは是非とも懐に入れたい人材だった。その為に部外者には見せなかったグレート・フェイク・ショーに招き、ドフォーレ商会の実力を見せつけた筈だった。
しかしながら利に聡い人間ならば理解できるという、ドフォーレ会頭の思惑は見事に外れる羽目になった。モンスターを利用すれば四魔貴族の撃破もより楽になるはず、そう考えてフルブライト商会よりもドフォーレ商会を選ぶだろうという目論見は見事に外されたといっていい。彼女たちはドフォーレ商会の経営する宿を出て、シーホークの世話になっているという情報は入手している。それはつまり、フォルネウスを倒した英雄がドフォーレ商会よりもフルブライト商会をとったという事に他ならない。
金やその利権に靡かない、というのはドフォーレ会頭にとって理解できない事である。事実、15年前までヤーマスはフルブライト商会によって支配されており、その税の行先は彼の商会だった。そこを混乱の隙に奪い取ったドフォーレ商会は潤沢な資金を手に入れ、それを元に傭兵を雇い、その金と暴力で今やフルブライト商会を超える資産さえ手に入れている。彼にとって金とはすなわち力なのだ。それなのに特に世界最高峰と謳われる武芸者はほとんどドフォーレ商会に寄りつかない。例えばサザンクロスはバンガードに居ついたし、流離いの剣士であったトルネードはロアーヌで職を得たという。この事実はドフォーレ会頭には心底気に入らない。最も優れている自負があるのに、優れた者からの評価が得られないのだ。
商人として考えるのならば、ドフォーレ会頭も間違っているとは言えない。しかしそこには、強くなるのに必須である信念というものがまるで考慮されていないのだ。例えどれほど天賦の才があろうとも、信念なく磨かれる強さは精々が一流止まり。そこまでの連中ならば金に釣られもするだろうが、世界に名を轟かせる超一流の面々は譲れないナニカを抱えている。いや、譲れないナニカを抱えなければその域に辿りつけないといっていい。成り上がり者であるドフォーレ会頭には、信念というものがまるで理解できなかった。
事実として、フルブライト商会に愛想が尽き始めていたエレンやエクレアを取り込む事に失敗し、逆にフルブライト商会を頼る結果になってしまった。四魔貴族と戦うという信念を持つ者が人道に外れる所業を見ればそうなるだろうと、少し見る目があれば分かりそうなものなのに。そういった発想がドフォーレ会頭にはない。
「このまま黙って消えてくれればいいのだが……」
こうなった以上、ドフォーレ会頭としては英雄の謀殺もやむなしなのだが、その手段がない。まだ元の宿に居れば打つ手もあっただろうが、シーホークの内部にまで手を伸ばして四魔貴族を打倒した者を暗殺する手段は持ち合わせていないのだ。
ならば黙ってヤーマスから立ち去ってくれるのが一番いい。下手に騒ぎを起こされては事である。
の、であるが。そう簡単に世の中の事が運べば苦労はない。
ドフォーレ商会がエレンたちを取り込む事に失敗した翌日には、新たな凶報が彼の商会にもたらされていた。
「グレート・フェイク・ショーを襲うだとっ!?」
気を遣おうとも、ここはヤーマス。ドフォーレ商会に漏れない情報はほとんどないといっていい。例外として怪傑ロビンの正体など入手していない情報も無くはないが、レジスタンスに流れる情報のほとんどは入手する事ができる。それを潰さないのは、イタチごっこのようにより深くにレジスタンスが潜ってしまうから。ならばまた情報を集める手間をかけるよりかは、得た情報で迎撃する方が効率がいいという判断である。
しかしそれはそれとして、エレンやエクレアがグレート・フェイク・ショーを襲うという情報は無視できない。あそこは郊外の土地であり、ドフォーレ商会の大きな闇の一つである。それが表沙汰になるのは看過できず、大きなダメージになりかねない。
証拠を隠すかとも一瞬思うが、襲撃はもう明日に迫っている。隠そうとも隠しきれるものではないだろう。
ならば。
「全面戦争か」
ニタリと獰猛な笑みを浮かべるドフォーレ会頭。
持ちうる戦力の大半を投入し、攻め込んでくる者達を迎撃する。そしてドフォーレ商会の所有物件を害した罪として、フォルネウスを倒した英雄を吊るし上げてその責任をフルブライト商会にまで取らせる。
ここまで来て引く選択肢はありはしない。
大きな戦いは、もう間近に迫っているのだった。