詩人の詩   作:117

62 / 107
今日で投稿から11ヶ月になりました。
……我ながらよく続いているなぁと、びっくりです。


062話

 

 

 エレンが深刻な話をする一方で、エクレアはようせいと一緒に雪降る街を元気に歩いていた。

 人間社会に疎いようせいに、様々な事をお姉さん顔をして教えるエクレアは上機嫌であり、それを聞くようせいもフンフンと興味深そうに話を聞いている。

「宿はね、泊まる人数と部屋の数。それから食事の手配して貰うかどうかを受付で伝えるんだ。一日ずつ更新してもいいし、数日まとめて予約してもいいんだよー。いつもなら3日くらい泊まるし、今回もとりあえずそれくらいでいいかな?」

「なんで3日が目安になるの?」

「町に着いた日と、その次の日はお休みするの。2日目に支度を整えて、3日目に出発するのが一番早いスケジュールだからだね。もちろん情報収集をしたり、仕事をする関係で滞在期間が延びる事もあるからあくまで目安だけど。延長するのは簡単だしね」

 ちなみに、基本的に人懐こいエクレアは分かれた部屋で泊まる事を嫌う。なので宿の手配を任された今回は、当然のようにとる部屋は一つである。

 そしてエレンに頼まれた仕事を終えれば、後は自由時間。雪降る街に飛び出してあっちにふらふら、こっちにふらふらと町を散策して楽しむ。どうやら彼女たちは聖王廟には興味がないらしく、純粋に雪降る街を楽しんでいるようだった。

 しばらくすると段々と飽きがきたらしく、それ以前にまたもや体が冷えてしまう。

 適当に良さそうな喫茶店を見つけると、そこに入って体を暖める。

「ようせいって甘いものとか好き?」

「うん。ハーブティーに合うハチミツとか美味しいよね」

「じゃあ注文は私に任せてよ!」

 そう言ってメニューを見ても何が何だか分からないようせいの代わりに、エクレアがどんどんと注文をしていく。

 そしてやがて運ばれてくる品々。エクレアにはホットチョコレートドリンクに見合ったスパイスを溶かし込んだ豪華な飲み物で、代わりにお茶請けにはさっぱりしたジンジャークッキーを。ようせいには飲み物に南国で見つかったばかりという苦みがあるコーヒーというお茶に、たっぷりのミルクと砂糖を入れて。食べ物は小さなケーキとチョコレート、それからマカロンを添えたお菓子に重点を置いたラインナップ。

 甘いをコンセプトにしたそれは見る者が見れば顔をしかめるだろうが。甘い物が大好物である二人は嬉々として口に運んでいく。

「は~。あったまるぅ」

「おいしいね、甘いね、素敵ね!」

 甘味と暖気を思う存分堪能したら、再び外へ。ちなみにだが、ここの払いは全てエクレアが持っている。ようせいは現金を持っていないので当然と言えば当然だろう。西部で荒稼ぎをした為、エレンやエクレアはちょっと普通ではない額を手にしていた。

 そして次の払いもエクレアが支払うプレゼントである。

「じゃあ、武器買おっか」

「うん、ありがとー!」

 ようせいは身一つで逃げ出してきた身であるからして、当然武具は身に着けていない。体術もそれなり以上にできるし、エクレアから練習用のロングスピアを借りていたが、これから先はそれでは心もとないだろう。ここでいい武器や防具を揃えるのが正しい判断だ。

 彼女たちが目指すのはランス陸送隊。フルブライトから聞いた彼の商会とも関りがある会社であり、その為か他のランスの会社に比べて品物に粒が揃っているらしい。もちろんその分値が張る為に、一種の高級店といえるだろう。

 その店に辿りつき、早速品物を吟味する。とはいえ、ようせいの体のサイズは言うまでも無いだろう。オーダーメイドでない限り見合った鎧はないし、余りにも重いものだとようせいの特長の一つである素早さが犠牲にされてしまう。小さめのガントレットと防刃防寒機能が備え付けられた帽子、そしてガードリングといった装飾品で身を守るに留めた。

 一番重視するのは、防具よりも武器である。ようせいの得意武器である槍を見ていくうちに、やがて一つの槍に二人の視線が吸い寄せられた。

「……コレ」

「これかい? アーメントゥームっていう殺傷能力に優れた槍だよ。中々品薄でね、ようやく仕入れられたんだ。

 ――君たちにはちょっと扱いが難しい武器かもね」

 体格に恵まれている訳でもないエクレアと、その点は論外なようせいを見ながら店員は嫌味なくそう言う。

 確かに普通ならばその店員の意見は間違ったものではないだろうが、残念ながら彼女たちは普通の範疇から大きく外れていた。

「ようせい、どう?」

「うん、素敵ね。これ気に入ったわ!」

 そう言ってアーメントゥームを手に取ったようせいは、その場でブンブンクルクルと自分の身長よりも長い槍を振り回す。近くにある商品や壁、天井に床にも傷が一つもついていない辺りにようせいの技量の高さが光っている。

 それを見た店員は信じられないように目を瞬かせると、それでもなんとか次の言葉を口にする。

「でも、それは本当に値段が張るよ? たまたまツヴァイクから格安で仕入れられたけど、それでも4500オーラムもするんだ」

「ん、足りるね。ちょっとお高いけど仕方ないよねー」

 あっさりと金貨の山をくまちゃんバッグから取り出すエクレアに、店員の目が点になる。ドサドサと大金を気軽に積む美少女はにっこり笑うと、用は済んだと言わんばかりにバイバーイと手を振りながら店を後にする。後にはあっけに取られて目玉商品があっさりと売れてしまった店員が残されるのみだった。

 店から出た二人だが、ようせいは自分の準備の負担をエクレアに全部負わせてしまった事を流石に気にしているようだ。

「ごめんね、エクレア。お世話になりっぱなしで」

「いいよー。詩人さんにも武器防具はケチるなって言われてるし。お金を惜しんで死んじゃったら元も子もないじゃん?」

 カラっというエクレア。確かに財布は大分軽くなったとはいえ、それでもまだまだ余裕はある。

 バンガードから受け取ったお金とフルブライト商会から渡された支度金は大金であり、エクレアとエレンは銀行にお金を預金する位には稼いでいるのだ。

 しばらくお金に困る事はなさそうだが、それでも使えば減る一方なのは金銭の摂理。稼げる時に稼がなければと思う辺り、エクレアも大分詩人に馴染んでいるのだった。

 

 日が暮れた頃に沈んだ顔のエレンが宿屋へとやってきた。

「おかえりー。…どしたの、エレンさん」

「ん、なんでもないわ。エクレア、ようせい。今日は楽しかった?」

「さいっこー。雪は白くて冷たいし、お菓子は甘くて美味しいし、エクレアに武器と防具も買ってもらったし」

 にこにこ笑顔で話すようせいの言葉を聞いていたエレンだが、最後の言葉で少し慌ててエクレアを見る。

「やだっ!? アンタ一人でお金払ったの? あたしも半分出すわよ」

「え? いいの?」

「もちろんよ。ようせいはお金持っていないのは仕方ないし、必要経費は半分ずつなのがフェアでしょ?」

 そう言ってエレンはエクレアから武器と防具にかかったお金を聞き出し、ジャラジャラと金貨と銀貨で半額を支払う。

 お金にかなりキッチリしている辺り、やはり彼女たちは詩人の影響を大きく受けているのだろう。

「ありがとっ。それでエレンさん、氷銀河へ行く方法聞けた?」

「ええ、もちろんよ。五日後の夜、オーロラが出る日に北にある山の山頂に行けばいいみたい。

 一日でも辿りつく距離だとは思うけど、一応余裕を見て明々後日(しあさって)には出ましょうか」

「ん。りょーかい」

 だいたいエクレア自身が思い浮かべた予想通りの日程になりそうだと、コクコクと頷く。

 となれば、明日が休養日で明後日が買い出しだろう。阿吽の呼吸でその辺りは確認しないでもエレンは分かっているし、ようせいも先程エクレアからレクチャーを受けたばかりである。

「ちなみに明日はエレンさん、どうするの?」

「そうね。前来た時は行けなかったし、聖王廟でも見に行こうかしら。アンタたちはどうするの?」

「私は聖王廟は興味ないかな~。町も結構歩いちゃったしな~」

「雪は冷たいから、明日はいいかも…」

 エクレアもようせいも、どうやら目的がなくなったらしい。かといって折角の休養日に部屋にこもる事を良しとするはずもない子供でもある。どうしようかとちょっとだけ考えた後、パチンと指を鳴らす。

「そだ! ようせい、武器も買った事だし、手合せしない?」

「手合せ? いいよいいよ、やろうっ!」

「槍と槍でさ。どうせ後からエレンさんも参加するでしょ?」

「聖王廟から帰って、余裕があったら参加するわよ」

「決まりっ! じゃあ、明日は先にようせいと鍛錬場に行ってるね」

「鍛錬場?」

 人間の町に疎いようせいはそう言って首を傾げる。

 それにふんぞり返って説明するのは、今日一日ですっかり説明する快感を覚えてお姉さん風を吹かすようになったエクレアだ。

「大きな町にはね、武器や術を使って鍛える場所があるんだ。町中で戦ったら迷惑がかかるでしょ? でも訓練しないと腕が鈍っちゃうし。

 だから戦えるところを決めて、そこでならいくら戦ってもいいんだよ。もちろん、他の人に迷惑をかけちゃダメだけどね」

「ふーん」

 どこかピンと来ない表情と声で返事をするようせいに、エレンは苦笑してその小さな頭をなでる。

「行ってみれば分かるわよ」

「そうよね!」

「そうそう、行ってからのお楽しみでも面白いかもっ!」

 自身の説明がまるで意味を為さなかったのに、全然堪えていないエクレアにもエレンは苦笑を漏らす。

 そこでちらりと時計を見て、ドアの方を見る。

「さあ、そろそろ夕食の時間ね。たくさん食べて、今日は早めに休みましょうか」

「さんせ~。明日も楽しみっ」

「ごっはん、ごっはん!」

 ぞろぞろと食事処へと向かう三人。

 言うまでもないが、魅力に溢れた彼女たちはその宿の夕食の一時に、華やいだ雰囲気を添えるのであった。

 

 翌日。

 エレンは聖王廟へと赴いていた。観光をしたいというのは嘘ではなかったが、目的はもう一つある。そしてそちらの方が大事な目的だった。

 聖王廟にはそれなりの人影がチラホラと見えた。

(こんなご時勢なのに旅人はいるものね)

 そう思うエレンだが、頭を振ってその考えを振り払う。こんなご時勢なのにではない、こんなご時勢だからこそだろう。四魔貴族は暴れ、ドフォーレ商会といった世界最大勢力は悪徳を為し、ピドナでは未だ王が決まらない。人々は心の拠り所にと聖王に縋るのだろう。

 それが悪いとは思わない。戦える人間が全てではないのだ。自分とて、サラの事が無ければ戦おう等とは微塵も思わなかっただろう。

 ブラブラと適当に歩きながら、エレンは聖王廟の奥へ奥へと向かう。やがて聖王廟の最奥にある開かずの扉の前に着くと、そこにいた人物に片手を上げて挨拶をする。

「ハァイ」

「…肩に力が入っていませんね。流石はフォルネウスを倒した英雄、といったところでしょうか」

「偉ぶりたくはないけどね。事実は事実だろうけど、そのうちの一人って言葉が抜けてるわよ」

 四魔貴族とは一対一で勝てる相手ではない。当然こちらは仲間を集めるし、エレンはその中の一人でしかないと、自分で自分をそう認識している。

 まあ、もっとも。独りで四魔貴族を倒せるだろう詩人(おとこ)の姿も脳裏に浮かんだのだが。少なくともあり得ないと思えるような次元の強さではないと思っている。実際はどうかは分らないが、案外あの男なら無傷でけろりと四魔貴族を打倒してしまいそうで、くすりと笑みがこぼれてしまった。

 それを厳しい顔で見るのは、エレンを待っていた聖王家の当主。彼はこの先にあるものが四魔貴族に劣らない苛烈さを含んでいると伝え聞いているのだから当然だ。

「改めて、今一度説明いたします。聖王廟とは、聖王さまの墓標だけの為に作られたのではありません。

 聖王さまは300年後に起こる死食を見越し、その際に四魔貴族が再び現れる事を予見していました。その為、自身が身に着けた聖王遺物を一ヶ所にまとめず、世界各地に分けたのです。悪意あるものや怠惰なるものにその強力な武具が統一されないように、そしてそれぞれを使いこなす勇者たちが世界を守れるように。

 そしてランスに伝わる聖王遺物は聖王家には託されませんでした。聖王家を争いに巻き込むのを避けたのか、それとも他の思惑があるのか、聖王さまの御心は分かりません。

 ランスの聖王遺物を手に入れる条件はたった二つ。一つは聖王家の承認を得ること、そしてもう一つは――聖王廟に存在する試練を突破すること」

 当主の話を聞いて、こくりと頷くエレン。

「最後の確認です。この先の試練では命の保障はできません。

 それでも、この試練を受けますか?」

「もちろん」

 エレンは一瞬の躊躇もない。それが逆に当主の虚をつき、少しだけ呆けた顔をさせた。

 それでも顔を引き締め直すと、当主は背後にある開かずの扉に手を添える。そしてそれだけで300年の間開かなかった扉が、重さがないようにあっさりと音もなく開く。

「ご武運を」

「まっかせなさい!」

 エレンが扉を潜ると、開いた時と同じように背後の扉が閉じる。音もなく、あっさりと。エクレアに声をかけなかった理由が、試練には一人ずつしか挑戦できないという点であった。

 そして目の前には地下へと続く階段。墓所の地下への階段など縁起でもない話だが、エレンに言わせればレオニード城の方がよっぽど不気味だった。気楽な足取りで、しかし油断なく階段を下っていく。

 やがて辿り着いた地の底で、剣を携えた骸骨が立っていた。肩から左右に二本ずつの腕が生えており、計四本の剣を持っている。

「豪胆な挑戦者だ」

「そうでもないわよ。最近知ったんだけどね、あたしって結構臆病かも」

「然り。恐怖なき勇は死に近づくのみよ」

「アンタに言われると説得力あるわ」

 何せ相手は骸骨、アンデッドに部類されるだろう存在である。一度死んだ身となれば、言葉に含蓄を感じるというものだ。

 くすくすと笑いながら、エレンは決して油断しない。いつ襲い掛かられてもいいように警戒を続けている。

 まあ、その心配も無さそうではあるが。相手は骸骨の姿をしているが、聖王廟の試練を受け持っているだけあって邪悪な感じは受けない。むしろ聖なるものさえ感じる。

「――さて。答えは決まっているとは思うが、一応聞く規則なのでな。

 ここが最後の選択点。引き返すというならば、今ならば許そう。この先の試練は命を落とす事も想定している。

 それでもこのつらい試練を受けるかな」

「受ける」

 一言で答え切るエレンに、骸骨が四本の剣を構える。エレンもブラックの斧を肩に担ぎ、体術も繰り出せる自然体で相対する。

「ならば名乗れ。この試練に挑む汝が名を!」

「エレン・カーソン」

「受けた、我が名はロアリングナイト。聖王廟の第一の試練を与えるものなり。

 その生命の力、試させてもらおう――」

 雪降る土地の地下深くで、誰にも知られる事ない死闘の幕が上がる。

 地上には変わる事の無い静寂が届けられたままで。

 

 一方で喧騒が大きい地上の鍛錬場。

 だったのだが、今は一種異様な静けさに満ちていた。

「……よわ」

「あははは。間抜けな顔~」

 呆れた表情のエクレアと、十数人の男が気絶させられて白目の情けない顔を見て笑い声をあげているようせい。

 鍛錬場にやってきた二人だったが。屈強な男たちが汗を流している中に、まだ幼い美少女と体格からしてその少女の半分ちょっとしかない華奢なようせいが現れたのである。

 先に来ていた男たちはエクレアたちを嘲笑し、怪我をする前に帰れという始末。そしてそれをあっさり受け流す程にエクレアは大人である訳もなく、ようせいは新しいおもちゃを見つけた喜びで瞳をキラキラと輝かせていた。

「あまり酷い怪我はさせないようにね~」

 エクレアの、現状を把握できているならば至極真っ当なこの言葉に、男たちはキレた。痛い目を見せてやるとばかりに襲い掛かって、そして見事な返り討ち。体の小さなエクレアとようせいがばったばたと屈強な男たちをなぎ倒す様は、遠目から見ていた者たちを絶句させるには十分な光景だった。

 もっとも、こんな雑魚に反応などいちいちしてられない。エクレアは準備運動は終わりと云わんばかりに、男たちをなぎ倒す為にみねを使った曲刀を仕舞ってロングスピアを引き抜く。ようせいも刃を立てたら危ないだろうと石突きで戦っていたが、くるりと槍を回転させてアーメントゥームの穂先をエクレアへと向ける。

 奇しくもというべきか。エクレアもようせいも、無邪気な笑みを浮かべて対峙していた。

「んじゃ」

「やるよ~」

 軽い声。高速の一撃。ようせいの突きがエクレアへと向かい、エクレアはロングスピアを回転させて、アーメントゥームの横から叩いて落とし、体の直線状から逸らさせる。

 回し受けと呼ばれる槍の基本技の一つである。槍の突きは面である肉体に点の一撃が高速で迫るのだから、とにかく回避がしにくい。故に編み出されたのが避けるのではなく、側面に力を加えて相手の攻撃をずらすという方法である。これが発達し、回し受けという技術にまで昇華した。

「おー」

 突きが払われたようせいは緊張感のない声をあげながら、攻撃よりも早く槍を自分の体に引き寄せる。これを見るだけでも最初に繰り出された高速の一撃は、本気でなかったと分かる。

 そしてエクレアの反撃。槍の攻撃は大まかに突くか払う。そのうちの払うを選択したエクレアは、右から思いっきりロングスピアをようせいへと叩きつけた。

 比較的容赦のない一撃を叩き込むエクレアだが、ようせいも事もなさげに両手に持ったアーメントゥームでその攻撃をなんなく受ける。受ける瞬間に槍をたわませて、衝撃を緩和する繊細さも見せた程。

「う~ん。ようせいの方が槍は上手いかな?」

「そりゃ、わたしはこれが得手だし。遅れはとってられないわよ」

「っていうか。こんだけ強いのに、なんでようせい捕まったの?」

「……武器で襲い掛かってくる人間相手に遊んでたら、遠くから術かけられて。眠っちゃった」

「……気を付けよ?」

「……うん」

 ようせい族に標準装備されているいたずら心が疼いたら、その隙を突かれたらしい。全く持って自業自得としか言いようがない。

 まあ、今は一緒に旅をしているエレンとエクレアとがいるからその危険は少なくなっていると言っていいだろう。そしてまた、雑談で一時動きを止めているが、今現在は隙を見せたら命を落とすレベルでの鍛錬の真っ最中でもある。

 キラリと目を鋭く輝かせた二人は、周りの人々の目には留まらない速度での槍の応酬を繰り広げる。

 呆気に取られる人々を置いたまま、楽しそうに致死の一撃を繰り出し続ける二人だった。

 

「やってるわね」

 どれくらい時間が経ったか。休みつつ、エクレアは曲刀や小剣を使い、ようせいも体術を使う。そんな総合力を競う戦いの最中、声がかけられた。

「あ。エレンさん」

「やっほー」

 手を止めず、視線も向けず。ひたすら武器を振るう二人にエレンは苦笑する。

「あたしが来たんだから手を止めてこっちを見なさいって。ってか、注目度凄いわよ?」

「他の人がー」

「弱すぎてー」

 舐めた口をきく小さい二人だが、今までの戦いを見せられた上に実力行使に及ぼうとした面々の末路を知っているため、周囲の人々は口出しは出来ずにいる。というか、この二人を相手に気安く声をかけるエレンを何者かと好奇の視線すら浴びせていた。

 それを理解しつつ、相手をするだけ損と思っている辺りエレンも大概見下しているが、正当な評価でもあるため仕方ないだろう。

 そして手を止めたエクレアとようせいはエレンの方を見る。そして目を丸くした。

「どしたのエレンさん、ボロボロじゃん!」

「それもそうだけど! 見た事ない兜! キラキラ、キラキラっ!」

「いや~、流石ってところだったわね。軽く死にかけたわ」

「エレンさんがっ!? ホント、何があったのっ!?」

「キラキラ、キラキラッ!!」

「ま、後で話すわ。人が多い所で話す事じゃないし、それにそろそろ日も暮れるし。

 後、それからようせい。これはあげないからね」

「…がっかり」

 話しながらエクレアは空を見上げる。夕焼けにはなっていないが、群青に近い空色が夜が近づいている事を教えてくれた。

 こんな時間まで集中して鍛錬していた事もびっくりだが、エレンも何某かに時間をかけて、更には明らかに逸品である兜を入手しているのにもびっくりだ。

 びっくりし過ぎて、お腹がぐぅ~と鳴る。少し動き過ぎたらしい。

「お腹すいた~」

「はいはい。宿に帰りましょう」

 そう言ってスタスタと歩き出すエクレアと、苦笑しながら付いていくエレン。最後に続いたようせいは鍛錬場から出る直前にくるりと振り返り、場に残っていた人々に花がほころぶような笑みを浮かべて言葉を投げかける。

「ついてくるならイタズラしちゃうぞ」

 全員が全員、ぞくりと背筋が凍ったのは言う必要はないだろう。

 

 

 




さて。
ここまでお付き合いして下さっている皆様に、もしもあれば短編小説のリクエストを一ヶ月限定で受け付けたいと思います。2018年11月22日までです。
条件は、ロマサガ3か詩人の詩の関係であること。そして受け付けはメッセージのみという点です。(絶対に感想欄にリクエストを書かないで下さい)

数が多ければ必ず書くという訳でもないですし、面白そうと思えば断片的なものでも作品として書き起こすかも知れません。もちろん、そんな脇道に逸れていないで本編を進めて欲しいという意見でもOKです。

リクエストがあれば是非、連絡をください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。