詩人の詩   作:117

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悲報・エクレアの武器のバスタードソードをバスターソードと間違えて表記していた件。
近いうちに全部直します。

また、座談会について活動報告に書きました。ご一読して頂ければ幸いです。

では、最新話をどうぞ。


064話

 

 

 遠目に見えたモンスターは巨人だけだったが、近づくにつれて他のモンスターの姿も見えてくる。単に巨人が大きすぎたためによく見えただけで、他にモンスターがいなかったという訳ではなかったらしい。

 ボルカノも使役していた猪モンスターのショック。凶暴なタコ型モンスターで、スミや毒ガスといった攻撃も仕掛けてくるメーベルワーゲン。玄武術を操る、妖精に類するモンスターであるスプラッシュ。どれも甘く見てはいけない敵ではあるが、最も脅威と思えるのはやはり巨人。一つ目で人の数倍もの大きさを誇るサイクロプス。

 ここでエレンたちには二つの選択肢があった。一つはサイクロプスをできる限り回避して進む代わりに、他のモンスターと戦う事を仕方ないとする考え方。もう一つはサイクロプスを打倒して、その首を掲げる事で他のモンスターへの威嚇として戦闘を回避する方法。幸い、サイクロプスはそれほど数はいないらしく、避けようと思えば避けられるだろう。しかしこの氷銀河において一番強いモンスターはサイクロプスであるらしく、この巨人を避けて通るという事は他のモンスターと行動範囲が被ってしまうという事でもあるからだ。

 どちらがいいと、明確な答えがある訳ではない。ただ、エレンたちはサイクロプスと戦うという方針を選んだ。

「トマホーク!」

疾風打ち(ウインドインパクト)!」

「サイドワインダー!」

「落雷!」

 玄武術で作り出した氷の斧が投擲される。蒼龍術で編みこまれた風の刺突が繰り出される。ドビーの弓から放たれた矢は蛇に形を変えて襲い掛かる。そして巨人の頭上に電気を集め、雷を落とす。

 サイクロプスはその巨体で氷銀河を我が物顔で闊歩しているのだ、わざわざ真正面から相手をしてやる義理はない。物陰に隠れ、その的にして下さいと云わんばかりの大きな体に奇襲をかける一行。投擲された斧は右の腿に突き刺さり、風の一撃は脇腹を打ち据える。蛇の矢は左手の甲にかぶりつき、雷は全身を感電させて体を焼く。

―それがどうした―

 そう言わんばかりにサイクロプスはダメージを感じさせない動きで、己に襲い掛かってきた愚物を一つ目で探す。攻撃方向が分かってしまえば彼女等を見つけるのはそう難しい話ではなく、すぐにエレンたちは見つかってしまった。

「ちっ。ダメージは余りないわね」

 ブラックの斧を肩に担ぎ、真正面を相手取るのはエレン。サイクロプスはとにかくデカく、大きさだけは()()フォルネウスに匹敵すると思えた。

「上等じゃん、死ぬまで痛めつけてやればいいんだよ」

 片手にファルシオン、片手にシルバーフルーレ。双剣を扱うエクレアは不敵に笑うが、この巨体を削り切るには相当な労力が必要な事は考えていない。考えるより先に攻撃する、それがエクレアのスタンスであった。

「こーんな大きい相手に、丁寧に地上からしか攻撃しないなんてないよねー」

 ドビーの弓からアーメントゥームに持ちかえたようせいは、羽を動かし空を飛んでサイクロプスの隙を伺う。地上と空中の二面作戦を取るのは確かに間違っていないが、空中を担当するのがようせいだけとは少し心許ない。とはいえ、他に空を飛べる者がいないのだから仕方がないのだが。

「ぼくは接近戦は余り得意ではないのだ。玄武術で援護するのだ」

 ゆきだるまはサイクロプスに近寄る事を選ばない。距離を取り、術での援護を選択している。他の面々が前衛で戦える事を得意とするならば悪い選択肢ではなかった。

 そうして構える一同に陣形と呼べるものはなかった。各々が自分の長所を叩きつける力で押し通る戦法。あえて呼ぶならば自由に闘う(フリーファイト)と言えるだろう。

 サイクロプスは、自分に挑む小さい四人を見て嗤う。ああ、これで今日の糧ができたと。そんなサイクロプスに真っ先に飛び込んだのは、好戦的なエクレア。

「しっ!」

 狙いはエレンのトマホークが突き刺さった右の脚。相手はとにかく大きすぎる為、一番狙いやすいのは脚になるのは自然な流れだろう。そして少しはダメージを受けただろうその部位に攻撃を集中させる事により、四肢のうち一つを破壊してしまう事が狙いだ。

 笑止。そう言わんばかりにタイミングがあった迎撃の拳を繰り出すサイクロプス。力を溜めたその一撃を繰り出されながら、エクレアは自分の攻撃をためらう素振りは全く見せない。

「はっ!」

 合間を縫うように練気を発動させ、自分の体を地面から反発させたエレンは。次の瞬間にはエクレアを追い越して、サイクロプスの拳に向かって斧を振りかざしていた。流石にこの二人のコンビネーションは年季が違う。

 この体格差で真っ向からぶつかる選択を嫌ったエレンは、拳の上からその手の甲に向かって斧を振り下ろす。狙いは肉ではなく、骨。スカルクラッシュと言われる固い物質に衝撃を与えるその技は、骨や鎧といったものに余す事無く衝撃を叩き込む。

「ウボォォォーー!」

 骨が軋む嫌な音は聞こえない。それよりも痛みに呻いたサイクロプスの咆哮の方が大きい。

 そして晒した隙を見逃す程、エクレアもようせいも甘くない。

「もらいっ!」

「痛がっている暇なんてないよっ!」

 エクレアのファルシオンが脚の肉に喰い込み、ついでと言わんばかりに親指の先をシルバーフルーレで突き刺す。ようせいが繰り出したのは二段突き。素早い二連撃はサイクロプスの両肩に突き刺さり、血を流させる。

「落雷っ!」

 動きが止まったと見るや否や、ゆきだるまが再び雷を発生させて巨体を電撃で焼く。

 第二波の攻撃も成功。サイクロプスは苦悶の声をあげる。

 そのままサイクロプスは一つ目でギロリと自分の脚を削ってくれたエクレアを睨みつけた。まるで視線で呪い殺さんばかり。

 そこに魔力が集っている事に気がついたのは、遠目で戦況を見守っていたゆきだるま。エレンとようせいはいったん距離を離す事に気を取られており、その凶悪性に気が付いていない。

「いかん! エクレア、その視線から逃れるのだっ!!」

 ゆきだるまの声にエクレアは睨みつけられただけで何があるのかと眉を顰めるが、ぞわりとした悪寒に身が震えた。

 覚えがある。ボルカノと戦った時、最後のエアスラッシュはエクレアの首を狙っていた。魔力がそこを目掛けてくるその前兆、それと全く同じものをサイクロプスの視線からも感じたのだ。

 ならばこれは睨む事を利用した術の一種か。そう判断したエクレアはサイクロプスから離れる事を選択するのではなく、とにかくその視線から逃れるようにジグザグに動き回る。だがそれだけでは視線からは逃れられない。エクレアが動くよりも目を動かす方が圧倒的に労力が少ないのだから当然だ。

 しかし視線を動かしながら魔力を込めるというのは難しいようで、魔力の集中速度が明らかに下がった。しかしそれでも稼げる時間はほんの数秒だろう。逃れえないナニカはもう間近に迫っていると直感できた。

「ダンシングリーフ!」

 その僅かな時間でエクレアは術を完成させる。魔力でできた木の葉で自分の周囲を囲い、少しでもその視界から逃れようというその狙い。

 偶然と言えば偶然。自分の魔力でできたモノで周囲を覆う事により、自分以外の魔力をより感じやすくなった。結果、サイクロプスが睨みつける事で魔力を集中するという事象を理解してしまう。

 エクレアには、視線に込められた魔力が引き絞られるように面積が小さくなり、点に近づくのが分かった。その瞬間を見計らって、体を逸らして魔力点から逃れ切る。

 結果、避けきれずに凝視されたシルバーフルーレが一瞬で石化した。これが肉体に起きていたらと思うとぞっとするエクレアだが、とりあえず武器を犠牲に致死の攻撃をしのぎ切る。

 そしてエクレアのみに集中した数秒は、他の面々にとって余りに長すぎる時間だった。

 エレンは高く飛び上がり、エクレアのみに集中したサイクロプスの、その腹に短勁を叩き込む。ゆきだるまはサンダークラップを完成させ、圧縮した水球に帯電させたものを十以上も叩きつけて打撃と電撃を同時に浴びせかける。

 そしてようせいは、狙いすましたエイミングでその一つ目を正確に突き潰した。

「ギャアアアァァァーーー!!」

 もはや永遠に見えなくなった目を庇い、ゴロゴロと転げまわるサイクロプス。

 それでも敵がまだ周囲にいる事は分かっているのだろう、やたらめったら腕を振り回して誰も近づかないように攻撃する。

 だがしかし。見えていない攻撃に今更当たるような面々ではない。

 エレンは斧を担ぎながら。エクレアは石化したシルバーフルーレを捨てて。ようせいは槍を両手で構え。当たるはずの無い攻撃を避けつつ、着実に盲目の巨人に近づいていく。

 

 サイクロプスの断末魔が響くのは、それから程なくの事。

 

 

 

 サイクロプスの首を持ち歩き、その血を滴らせる事で雑多なモンスターを寄せ付けない。自分達はサイクロプスよりも強いぞという誇示は絶大で、他のモンスターに襲われる事はなかった。まあ他のサイクロプスには襲われるだろうが、それには遭遇しないように細心の注意を払っている。

 ちなみに誰もが嫌がるサイクロプスの生首を持ち歩くという仕事を負ったのはエレンである。これも年長者の役目と達観した表情で、サイクロプスの髪を持ってその首をずりずりと引きずるのだった。

 そうして順調に進む一行。戦いが無ければ会話が弾むのは自然だろう。

「結局さー。氷銀河とか雪の国ってどういう所なの?」

 エクレアが口を開くが、当然エレンやようせいに分かる筈もない。視線はゆきだるまに向く。

「分からないのだ」

「分からないんかーい」

 思わずツッコミを入れるエクレア。しかしその顔は笑っている。別に明確な答えを期待した訳ではなく、一つの世間話として話を振ったのだろう。

 それに気が付いてか気が付かずか、ゆきだるまは言葉を続ける。

「ぼくたちゆきだるまが生まれるところ。世界から弾かれたモンスターが生息するところ。真下には虚無が広がり、落ちたらどこまでも落ち続けて決して戻れない場所。

 聖王は世界の果ての先にある場所かも知れないと言っていたのだ。あるいは聖王の世界よりも、アビスに近いのかも知れないとも言っていたのだ」

 その言葉に思わず他の面々の表情が引きつった。気が付いたらアビスでしたでは、笑い話にもならない。

「まあ、いくらなんでもアビスと一緒にされるのは心外なのだ」

「だ、だよねぇ」

「けれど、君たちの世界とは違う世界かも知れないというのには納得なのだ。聞く話によれば、雪の国とは違い、寒くない世界だとか」

「寒い場所もあるわよ。雪の国に来るのに通ったランスって町は雪が多い町よ」

「ランス! 聖王が生まれた町だと聞いたのだ!」

「わたしが生まれ育ったのはジャングルなんだけどね、そこは暑いわよ。雪なんてないからこっちに来てビックリしたわ」

「雪が全くない場所もやはりあるのか!? 300年前に聞いた話だが、やはり本当なのだな」

 しみじみというゆきだるまに名案が浮かんだと言わんばかりにエクレアが声をあげる。

「そだ! ゆきだるまも一緒に来れば?」

「いいのかっ!?」

「いや、無理でしょ」

 喜びの声をあげるゆきだるまだが、エレンが一蹴した。そして至極当然の事を語り出す。

「ゆきだるまは火に近づけないって事は、雪が溶ける温度だと生きていけないって事でしょ?

 ランスだって人が生きている以上、火は多く使ってるし。命の危険がありすぎよ」

「あ、そっか…」

「ん、心配いらないのだ。これから取りに行く永久氷晶があれば、ぼくも雪の国から出ただけで体が溶ける事はないのだ」

「……まあ、雪の国から出れるのはいいけど。あたしたちは目的があって旅をしているのだし、ゆきだるまにかかりっきりにはなれないのよ」

「そうなのだな……」

 しょんぼりとするゆきだるまだが、エレンとしてもここは譲れない。ゆきだるまは外見が外見な為、人の世界に行けば騒動になるのは目に見えている。

 その騒動を抑えるにはエレンたちと行動を共にすればいいのだが、彼女たちは四魔貴族を相手にしているのである。最後までついて来いとはエレンには言えなかった。これはもちろんエクレアにも該当する話であり、エレンはエクレアが戦う事を嫌がったら安全な場所に置いていくつもりである。今のところ、その前兆はないが。

 とはいえ、もっと先を考えればまた話は別である。

「ん~。じゃあさ、四魔貴族を倒してゲートを閉じた後ならどう?」

「倒した、後?」

「そう。それなら世界中を案内できるんじゃん」

 エクレアの言葉に、はたと考え込むエレン。

 確かに四魔貴族を倒した後の事は何も考えていない。フォルネウスを倒しただけでもあの騒ぎだった事を考えればただで済むとは思い難いのだが、今から憂鬱になる事を考えなくてもいいだろう。むしろ、世話になったこのゆきだるまと気軽に世界を巡るというのも楽しそうな話だ。

 一緒にサラを連れていってもいいかも知れない。四魔貴族さえ倒せば宿命の子の重さはかなり減る。神王教団や詩人に気をつけなければいけないかも知れないが、それにしたって一ヶ所に留まろうが旅をしようが危険度は同じである。

 未来の楽しい事を考えれば心も弾むというものだ。

「悪くないわね」

「いいのかっ!?」

「ええ、いいわよ。こっちの用事が終わったら、また雪の国まで来させて貰うわ。そしたら一緒に世界を旅しましょう」

「やりー! 決まりっ!!」

「その時はジャングルにも来てよ。妖精の村でハーブティーをご馳走するわ」

 快くゆきだるまを受け入れる話を進める一行に、全員の声が弾んでいく。ずるずるとサイクロプスの生首は引きずっている辺り、和やかとは言い難いかも知れないが。

「それでさ、ゆきだるまってみんなゆきだるまじゃん? 名前ってないの?」

「うん。ぼくたちは雪が集った時に何故か産まれる存在なのだ。名前をつけるものはいないから、みんなゆきだるまなのだ」

「じゃあ、私が名前を付けてあげるよ。ゆっきーなんてどう?」

 また安直なとエレンは苦笑いを浮かべるが、ゆきだるまは茫然とした声をあげる。

「……名前。ぼくの、なのか?」

「そう。どう? ゆっきーって気に入らない?」

「そんなことないのだ! 名前を貰ったゆきだるまは滅多にいないのだ!! 嬉しいのだ!!」

「ふふふ。じゃあこれからはゆっきーね。よろしく」

「よろしくなのだ、エクレア」

「まあ、あなたが気に入ったのならいいけど。よろしくね、ゆっきー」

「うむ。よろしくなのだ、エレン」

「ゆっきー、ね。いい名前もらったじゃない」

「嬉しいのだ。……ところでようせいには名前はないのだ?」

 疑問を投げかけるゆきだるま。確かにようせいは妖精族であり、ようせいという名前ではないだろう。

 それに、あ~と困った声をあげるようせい。

「名前、無くはないんだけどね…。妖精族にしか発音できないし理解もできない言語なのよ」

 そして何が何やら分からない単語を口にするようせい。

 エレンやエクレアはもちろん、ゆっきーにも何を言ったのか分からない。

「分かった?」

「さっぱり」

「っていうか、今のは本当になんなのだ?」

「ようせいの名前って難しいのね……」

「まあ、今のは私の名前じゃないケド」

「「「オイ」」」

 揃ってしまったツッコミの言葉にようせいはケタケタと笑う。

「まあ、今みたいな言語だから発音も難しいのよね~。妖精族は生きているなら全てと話ができるから、言葉も複雑になるのよ」

「とりあえず、ようせいの名前が分からないのは分かったわ」

 やれやれとエレンは頭を振った。

 そこで少し緊張を湛えた声でゆっきーが声をあげる。

「そろそろ最初の目的地に着くのだ」

「それって……」

「うん。永久氷晶ができる場所、そこでは番人である風花というモンスターが守っているのだ」

「そいつを倒せばいいって事?」

「まあ、そうなのだ。ただし殺してはいけないのだ」

「?」

 やがて見えてくる氷像。女の姿をしたそれは、まるで掲げるようにして何かを手の中に収めている。

 そしてその周囲を舞うように踊っている女性型モンスターが三体。あれが風花なのだろう。

「よかった。永久氷晶はちゃんとできているのだ」

「え。永久氷晶ができていない可能性ってあったの?」

「うむ。永久氷晶ができるのは長い年月が必要なのだが、どのくらいかかるかは分からないのだ。

 ああやって風花が純粋な雪の結晶を集め、それを純水でできている氷像に蓄える事によって永久氷晶になるのだ」

 言うなれば風花次第なのだろう、永久氷晶ができるのは。それでも長い年月がかかると言っていたあたり、数十年やそこらで完成するものでもないと予想される。

 そして風花を殺してはいけないというのも分かる。永久氷晶の作成者でもある風花を殺してしまったら、次の永久氷晶ができなくなってしまう。正直に言ってエレンにしてみればそんな先の事はどうでもいいのだが、ゆっきーがそう言うという事はゆきだるまにとっては大事な事なのだろう。世話になっている身としては願いは最大限叶えたいとも思う。もちろん、自分や仲間の命には代えられないが。

 余り傷つけてはいけないと、エレンは斧をしまいエクレアは曲刀の峰を向ける。ようせいは槍の石突きで構え、ゆっきーはもりっと氷の手足を生やす。

「「「……へ?」」」

 これにはエレンはもちろん、エクレアとようせいも目を丸くした。

 もう一度言おう、ゆっきーの体から妙に肉感的な氷の手足が生えた。直前まで二頭身のゆきだるまだったものがだ。

 おかげで現在のゆっきーはゆきだるまに氷の腕と脚が生えているという状態になっている。

 極めてシュールだ。

「? どうしたのだ」

「いやお前がどうした」

 これが素なのだろう。ようせいが平坦な口調で問うが、ゆっきーは何を言われているのか分からないらしい。くりんと頭の部分を傾げる事で疑問を表現する。

 何度でも言うが、ムッキムキの氷の手足が生えている為、可愛らしさはカケラもない。

 そうこうしているうちに風花がこちらに気が付き、襲い掛かってくる。この辺りはやはりモンスター、人を襲う習性が根付いているらしい。

「来るのだ。細かい話は後にして、今は戦うのだ!」

「お前が言うな」

 相変わらず平坦な声で答えるようせい。どうやらまだ調子が取り戻せていないらしい。

 そして風花に見事な走法で近づいたゆっきーは、氷の拳を顔面に叩きつける。殺すなといった本人だが、イマイチ容赦がないようだ。要は死ななければいいのだろう、死ななければ。

 いまいち釈然としないまま、他の三人も残りの風花に踊りかかる。余り強くないモンスターだったらしく、あっさりと無力化する事ができた。

「ふぅ、終わったのだ」

 そういうゆっきーにもう氷の手足が生えていない。生きている以外は普通のゆきだるまだ。

「……」

「……」

「……」

「なんなのだ?」

「「「…………」」」

「なんなのだっ!?」

「いや、さっきのお前がなんなのだ」

「ようせい、口調移ってる」

 どこか冷めた口調で言うようせいに、方向はずれていると分かりつつも一応ツッコミを入れるエレン。

 そしてそれにまたもや頭部分を傾げるゆっきー。どうやら本当に何を言われているのか分からないらしい。

「えっと…。ゆっきー、さっきの手足はなに?」

「なにって、これがゆきだるまの手足なのだ?」

 そう言って体を大きく傾けて体の下を見せるゆっきー。そこには足首から先だけだが、氷の素足がついていた。

 言っては何だが、普通にキモい。リアル過ぎるソレは、デフォルトされたゆきだるまについていていいものではないだろう。

「え。みんな、ずっと、それで移動してたの?」

「? そうなのだ。手がないとかまくらもつくれないのだ」

 驚くより先に引くエクレア。こんな彼女を見るのも珍しいだろう。

 何に騒いでいるのか分からないゆっきーは変わらず頭を傾げていたが、やがてそうしていても時間の無駄だと思ったらしい。

 話を進める為に視線を永久氷晶へと向ける。

「まあいいのだ。じゃあ、永久氷晶を取るのだ」

 そう言って、ムキッとした氷の腕で氷像に掲げられた永久氷晶を回収するゆっきー。

 それをそのまま自分の体へと突っ込む。氷の腕が生えたゆきだるまが、その腕を自分へと突き刺す。シュールだ。

「これで第一段階は終了なのだ。この場から離れたら、風花に生命の水をかけて回復させるのだ」

「……」

「……」

「……」

「だから本当になんなのだっ!?」

 戸惑いが多分に含まれたゆっきーの声が雪原に響き渡る。それを無言でしか答える事しかできない三人。

 自分たちの、この違和感はきっとゆきだるまには理解できないだろう。なんと説明すればいいのかも分からないのだ。

 

 異文化交流の難しさを体感しつつ、心のどこかでゆっきーと一緒に人間の世界を旅する事は大変そうだなぁと思うエレンとエクレアであった。

 

 

 

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