どうかよろしくお願いいたします。
「バカな…」
絶句するキャプテンの前に座り、素知らぬ顔でいる詩人。場所はバンガード市長の執務室。
今、この場には他の人間はいない。その代わりにキャプテンが絶句する物が机の上に転がされていた。
ドフォーレ商会、会頭。その封蝋印である。
「まあ、信じるか信じないかは好きにすればいいが、現実としてドフォーレ商会会頭の封蝋印はここにある。これを以ってモニカ姫の手勢がドフォーレ商会会頭を暗殺した証拠と思ってくれていい。
ああ。ちなみにこの情報はシーホークを通じて東から進軍してくるトーマスカンパニー率いるツヴァイク軍にも提供したからな」
詩人はそう言って立ち上がると、その部屋から軽やかに出ていく。残されるのはキャプテンと、ドフォーレ商会会頭の封蝋印。
残されたその封蝋印を呆然と見るキャプテン。確かにこの封蝋印がここにあるという事は、少なくとも彼はドフォーレの最奥までの侵入を果たしたのであろう。そのあり得ない前提がある上ならばドフォーレ商会会頭を暗殺できたとしても不思議ではない。
仮にそうでないとしたとしても、ドフォーレ商会会頭が封蝋印を失っているのは確かなのである。こと情報伝達において、混乱の極致にあるという事は確実だ。重要な命令書に会頭の印がなければ、虚偽の命令と思われても仕方がないのだから。そしてそのような状況は、重要な事態になればなるほど丈夫な芽を出して怪しげな花を咲かせるだろう。
その上でトーマスカンパニーにもその情報が流れているという事。かのツヴァイク軍は元より捨て石であるという認識をバンガードは持っていて、それはフルブライトも共通認識であったと思っている。強制的に出兵させられた、疲弊しつつあるかつての強国の軍程度でドフォーレ商会の本丸を落とせる訳がないと。しかし、この時点でドフォーレ商会会頭の命令が機能不全に陥ってしまえば、ヤーマスを攻め落とす可能性もあり得る話であり、最大の戦功を掻っ攫われる事にもなりかねない。
どうするべきが最上か。多分確からしい情報しかないキャプテンは一晩中頭を抱えて悩み、そして命令を下すのだった。
西部戦争と言われたこの戦争。後世のある吟遊詩人によってはこう語られる。
――悪逆非道を為したドフォーレ商会、モンスターと手を組み人を贄に捧げて儲けた地位と金。
それはやがて聖王の逆鱗に触れ、フォルネウスを倒した英雄の義憤を買う。贄にされかけた人を助け、世界にその悪行を知らしめた。だがこの世には善人もいれば悪人もおり、悪人が数多く集まったヤーマスもまた強い。
しかし正義はそれに屈しない。侯国の姫がその猛将を遣わして、悪行の中心であったその者を討ち取った。猛将は万を超える軍を一人で壊滅させ、最奥にて震える極悪人に誅罰の刃を振るう。
かくして散った悪の華。そしてその子供は正義の子、かねてより父の悪行に心を痛めていた優しき子。彼は聖王十二将を祖にもつフルブライトに助けを求め、バンガードやベントといった正しき者と共に人の心に巣食う悪を退治した。
訪れた平和に、ようやく人の心に喜びが戻ることと相成らん――
「つまり、どうなるの?」
時は詩人とキャプテンが話を終えてから半日と少し、場所はバンガードからウィルミントンへと向かう途中の道。行きと違い、極端に急ぐ必要がない為に無理のない速度で5頭の馬が駆ける。例えるなら早足程度、人を上に乗せても馬がそこまで疲れない速度だ。かっぽかっぽと揺れる馬の上でエレンが首を傾げる。
彼女たちバンガード組は、ドフォーレ前軍を撃破した後でバンガードへ帰投。たった5人で2500の軍を敗走させるという快挙を成し遂げた訳だが、次の瞬間にはそんな事実は霧と消えた。彼らがバンガードへと戻るのと時をほぼ同じくして、ドフォーレ本隊が突如として軍事行動を開始。
3000の軍が突如とて統率を失う。ここまではギリギリ想像できなくもない。だが、3000の正規軍が突如としてお互いがお互いを殺し合い、死屍累々の惨状を築き上げたという事を想像できる訳がない。生き残りが数十名バンガードへ投降したが、それぞれがそれぞれ言う事が滅茶苦茶だった。ある者は突然先程まで親しく話をしていた者が剣を抜いて襲い掛かってきたといい、またある者は悪魔が現れて自分達の殺し合いを望んだといい。事実など掴める訳がない。
まあエレンたちは詩人が何かやらかしたとは分かったのだが、その容赦の無さにエクレアを除いて思わず顔が引きつったものだ。もちろん、その詩人さえ知らない者には混乱するしかない状況だ。そのままとにかく厳戒態勢を敷いて数日、ふらりとバンガードに戻ってきた詩人はドフォーレ商会会頭の暗殺に成功した事をエレンたちに告げ、旅の支度を整えるように言うとキャプテンと会合を為した。その翌朝にはバンガードはヤーマスへ向けて進軍を開始し、エレンたち6人はウィルミントンへと戻っている訳である。
「力で成り上がったとなれば、纏め上げた力を失った時に空中分解を起こすものだ。ドフォーレ商会がまさにそれ、後継者もまともに決めていなかった上に戦争の真っただ中で頭を失えば戦意も保てない。
ヤーマスは今頃、内部抗争で荒れ狂っているだろうな。このまま戦おうとする者と、なんとかして降伏して最低限の利権を守りたい者。これだけでも纏まる訳がないのに、我こそがその旗頭になりたがる。まともな自衛能力があるのかも疑わしい」
詩人は軽く答えながら弓を引き、放った矢で遠くにいたモンスターを射殺した。昨日今日でモンスターの数が減る訳もなく、リンも弓を使っているしエレンもたまに氷でできた斧をトマホークで投げつけている。
そうした事をしていないのは遠距離攻撃能力を持たないユリアン。そしてやや体調を崩しているエクレアと、彼女を気遣う事を第一としたモニカだ。やや熱っぽい顔でくらくらしながら、それでもエクレアは好奇心旺盛に詩人の先を読む。
「それでそのままその混乱したドフォーレ商会を倒しちゃおうってコト?」
「まあな。攻め入るまでにドフォーレが纏まれば交戦なり降参なりできるだろうが、どちらにせよバンガードとツヴァイクの二面攻撃には耐えきれないだろう。どちらか一方だって命令系統がしっかりしてなきゃ怪しいものだ。
ドフォーレ会頭が自分が死んだ後まで考えていれば話はまた違ったんだろうが、所詮は成り上がり。少しだけ調べたが、その辺りの引き継ぎは全く無し。万が一の時の後継者だけでも決めておけばよかったものも、それで自分の力が削がれるのを恐れたせいでそれも無し。会頭だけを暗殺すればいいっていう、楽な状況だった訳だ」
それが楽と言えるのが想定できない布陣であるが故の状況だったのであるが、この詩人はそれをやってのける。個人の戦闘能力だけでなく、それ以外も非凡であるという証左であろう。
エクレアはそれに頓着するでもなく、少し考え込んで別の所を深く聞く。
「後継者を決めるって、大事なんだ」
「死ぬと想像しているならな。自分の遺志や能力を後世に継がせる事ができないなら、出来の良い後継者がいるのは救いだろう。複数いれば頭痛の種にもなるかも知れないが」
「誰も居なければその後釜を争って自滅する、という理屈ですね」
リンが神妙に言葉を継いで、締める。
そしてそれとはまた別の場所が気になったのは心優しいモニカである。
「それで、その…。ドフォーレ商会の人たちは仕方ないとしても、ヤーマスに住む罪のない人々はどうなるのでしょうか?」
「ああ、そこらへんはフルブライトが出資しているシーホークに情報を流して、丸投げした。
あの町にはレジスタンスとかもいるし、極端に悪い方向にはいかないだろ」
「バンガードやツヴァイクが攻め込めば混乱するんじゃないか?」
「上が戦争を起こしたんだ、全部が全部無傷っていうのはいくらなんでも虫が良すぎる。
とはいえ、攻め込む側もその後に治める事を考えれば無意味な虐殺をする訳もない。死人が出ない訳にはいかないだろうが、な」
「随分と優しくするわね、アンタ。人助けとか向いてる気がするわ」
八方丸く収めたと言わんばかりの成果を口にする詩人に、エレンは呆れたような軽口を叩く。
しかし詩人はその言葉に能面のように表情を無くし、エレンを見返す。そして、彼女に向けて矢を番えた弓を向けた。
「冗談。俺ができる事は――」
「ちょ…」
「――殺す事だけだ」
それだけを言い、詩人は矢を放つ。それはエレンの髪を掠めて、遠くまで飛んでいき、そこにいたモンスターを一矢で仕留めた。
ウィルミントンに着いた時、とうとうエクレアが倒れた。強いとはいえ巧みとはいえ、彼女はまだ幼いといえる年齢だったのだろう。体力が強行軍についていかず、風邪をひいて熱を出してしまった。
こうなればエクレアが体を治すまで待つしかなく、一行はウィルミントンにしばらく滞在する事になる。ちなみに詩人がウィルミントンでいつも利用する宿ではなく、フルブライトの屋敷にお世話になる事になっていた。これにはいくつか理由があり、そのうちの一つにエクレアの世話がある。体調を崩した彼女を世話する手は多い方がよく、昼夜を問わず動く人間がいるフルブライトの屋敷はその点で優秀だった。
その他にも理由はもちろんある。例えばモニカ一行は5500ものバンガードに侵略せんとする軍を蹴散らし、敵の大将であるドフォーレ商会会頭の御印まで取っているのである。普通に勲一等であり、最重要の働きをしたといえる。フルブライトの屋敷に泊まるなどはおまけ程度の価値しかなく、その名誉もモニカに贈られるとあっては詩人もフルブライトに対する貸しや借りなど考える事もなく、モニカの雇われとして遠慮なく寛いでいた。
他にもウンディーネが彼らの、とりわけ女性陣との接触を望んだ意味もある。リンは見捨てられた地である東の、更にそれを超えた場所の術を持つ。ミューズにも基礎から術を教えるし、アウナスと相対すると公言しているエレンやモニカ、エクレアへは厳しく教えるつもりだったようだ。エクレアは体調を崩して倒れてしまったが、モニカへは特に異常とも言える熱意を注いで教鞭をとっていた。ウンディーネが四魔貴族の強さを肌で感じたというのもあるし、モニカが持つ術の才能にも惹かれたのだろう。彼女が教えた術師が四魔貴族を倒したとなれば、彼女が四魔貴族を倒したというのとはまた別の箔がつく。教える方にも熱が入るというものだ。
ともかく、そういった諸々の理由を合わせて彼らはフルブライトの屋敷に泊まっているのだった。
「だから遠慮しなくていいぞ」
「…ゴメンナサイ」
エクレアを見舞いに来た詩人だが、彼女のいつも以上にしおらしい様子に苦笑する。奔放な彼女にふさわしくなく、弱りきったその姿は普段のワガママ娘には結びつかない。
体調を崩してその影響が心や体にも現れているのか、もしくは他に理由があるのか。詩人に少女の心の裡は分からないが、体力をなくして倒れてしまった愛弟子に鞭打つ程に彼も鬼ではない。ベッドの側に立てかけられた氷の剣を見つつ、それもどこか心配しているようだと考えてしまうのは親馬鹿ならぬ師匠馬鹿だろうか。
だが、エクレアが倒れなくても出発できない理由が他にもある。
「とにかく今は焦らないで、ゆっくりと体を休めればいい。そうじゃなくても――」
―いいから、アンタはウィルミントンで待ってろって言ってんのよ!
―そういう訳にもいかないって言ってるだろう!? なんで俺たちを連れて行かないのか、訳を言えよ訳を!!
―そんなのあたしの勝手よ!!
―じゃあついて行くのも俺たちの勝手だろうが!!
「――あれじゃあ、火術要塞へ向かえもしない」
はぁ、と疲れたため息を吐く詩人。怒声が安静にすべきであるエクレアの寝室にまで響いてきていた。
バンガードからウィルミントンへと戻る途中でその騒ぎは表面化していた。すなわち、アウナス討伐のメンバーだ。
エレン、エクレア、リン、ようせい、詩人。ここは問題なく、シャールとミューズは不参加を表明している。問題となっているのは残り2人、ユリアンとモニカだ。より厳密にいえばユリアンが口論の的になっている。
四魔貴族を倒す事に中心的な役割を果たしている、というか意欲的なのはエレンとユリアンたちである。その中でフォルネウスを倒したという実績を持つエレンがユリアンの参加を理由も言わずに頑なに拒み、ユリアンがそれに反発するといった事が表面化し始めた。アウナスに向かうという話に障害がなくなっているのだから、それも当然の話ではあるのだが。
とにかくエレンの反対、というか拒絶の声は半端ではない。おおよそ関係がないリンやようせいは挟める口がなく、仲裁できるであろうウンディーネやフルブライトは口を挟む理由がない。
今までは詩人も静観の構えだったが、日に日に悪化する様子を見るに誰かが止めなければ止まらない暴走状態に陥ってきているのは窺えた。そうなれば、その役目は不本意ながら詩人以外にこなせる人員はいない。彼がなんとかしなくてはいけないのだ。
(なんで俺がこんな事を……)
心で愚痴を言いながら立ち上がり、エクレアの寝室を辞そうとする詩人。
その背中に声がかけられる。
「詩人さんっ!」
「なんだ?」
エクレアがベットから上半身だけ起こし、詩人を呼び止める。
質感のいい寝間着に着替えた彼女はやはり幼くて、筋肉もムキムキについているとは言い難い。その筋肉は質がいいからこそ力は出せているのだろうが、こうして風邪で倒れた様子を見るにエクレアはまだあどけない少女に過ぎなかった。
それを微笑ましく見る詩人。しかしエクレアの表情は強張っている。
「エレンさんを怒らないであげて」
「……どうした、急に」
「詩人さんが焦っているのは分かるよ。エレンさんがその邪魔をしているのも」
エクレアが当たり前のように言ったその言葉に詩人は驚いた。焦っている時、それを相手に悟らせないように特に注意はしてきたのだ。戦闘中に露見すればそれはすなわち隙になるが故に。
フルブライトに対する怒りも、ドフォーレに対する容赦のなさもその裏返しであったと詩人は自分で気が付いていた。今はとにかく早く南方に向かわなくてはいけない理由が彼にはあり、それが対外的な理由で邪魔されるのだから荒っぽくもなると自覚はしていた。
しかしそれがまさかエクレアにバレるとは。しかもごくあっさりと。
思わず硬直してしまった詩人だが、構わずエクレアは彼に話しかける。
「エレンさんも余裕がないだけだと思うの。だって――」
「――だから! アンタがついて来たって死ぬだけなの!! だから、来んなって、言ってるでしょ!!」
「死ぬ覚悟くらいできてるって言ってるだろ! 戦わせろよ、それすらもダメなのかよっ!!」
「ダメだって言ってるでしょ!! 死ぬ前提で来る奴なんて邪魔なだけっ!!」
「死ぬかもしれないのはエレンだって同じだろ!?」
「うっさいわね、こっちは死んでもやらなきゃいけないだけよ!!」
「そんなのこっちだって同じだよっ!!」
ぎゃんぎゃんぎゃんぎゃん騒がしい。この声がホールだけではなく屋敷中に響いているのはエクレアの寝室に届いている時点でおおよそ察しはつくだろう。
義理でこの場にいるものは皆辟易としていた。モニカはオロオロとしっぱなしだし、ようせいはつまらなそうに彼らを無視してお菓子をつまんでいる。リンは苦笑を浮かべるのも飽きたのか無表情だし、シャールは終わらない言い争いに見切りをつけてミューズを連れてこの場を去っている。他に迷惑を被っている家中はいるだろうが、そこら辺はフルブライトが止めているのだろう。彼はエレンに多少以上の借りがある。屋敷が騒がしい程度は甘んじて受けなければならない。
かといってこのまま続けば怒鳴り合いが続くだけである。それを止めたのはエクレアに焦っていると評された詩人だった。
「そこまで」
一言で威圧のこもった声を出せる者が他にどれだけいるか。そんな声をあげながら詩人は2人が言い争っているホールへと歩を進めた。
思わず言葉を止めてしまったエレンだが、余計な口出しをした詩人に文句を言おうとしてそれもやめる。視線を彼に向けた時に、詩人の色無い表情と手が添えられた剣を見てしまったから。詩人が
ユリアンも
他の面々も顔色を悪くして黙り込むのを確認して、詩人は騒ぎ立てた2人を見やる。そこには紛れもなく呆れの感情があった。
「まずお前ら、周囲の迷惑を考えろ。
「…………」
「…………」
気まずそうに視線を逸らす辺り、自覚はあったらしい。ここでまだ感情的に騒ぎ立てるようなら、本当に
そうならない事にまずは安堵し、それを表に出さないように表情を引き締めながら言葉を続ける。
「そして時間もない。意味のない言い合いをしていないで、とっとと議論を結べ」
「…………」
「…………」
またもや沈黙だが、先程とは意味が違う。先程までの気まずそうな様子から一転、不転身の意志を込めた目つきになる。これが2人共なのだから始末に悪い。
決して譲らずの両者を見つつ、詩人は諦めながら提案を出す。
「分かった。こういう時の作法は決まっている、決闘だ」
「けっ――」
「――とう?」
意外な言葉を聞いたと言わんばかりに呆けた言葉を出す2人だが、詩人は淡々と言葉を続けていく。
「そうだ、決闘。この場において俺が正式に取り仕切る事を表明する。
作法に従い、猶予期間は3日。すなわち、3日後の正午に執り行う。場所はフルブライトの館の鍛錬場。真剣で、代理人を立てる事も認める。勝敗はいずれかの敗北宣言か、死をもってのみ決定する。そして敗者は勝者に従う。
異論は?」
「…………」
「…………」
「異論は?」
「「ない」」
思わぬ展開に一瞬言葉に迷ってしまった2人だが、重ねられた詩人の言葉に頷く。
要は相手を力で黙らせればいいという話だ。単純といえば単純。そして四魔貴族に挑むにはこれ以上ない指標となる。力で超えなくてはならないのが四魔貴族なのだから。
勝てば要求が通る、例えそれが理にそぐわない事であっても。その特権に負けた2人は同時に決闘を承諾し、一瞬だけ視線を交錯させた。
負けない。そう、視線でぶつかり合う。
そして視線を離す。
エレンはそのままホールから出て行って、ユリアンはモニカへと向かった。
「ユリアン……」
「心配いりませんよ、モニカ。俺が勝ちます」
「――勝ちは願いません、ユリアン。でもしかし、どうか無事でいて下さい。命より大切なものはないのですから」
「……」
モニカの言葉に返さず、目礼するユリアン。
そして詩人の傍によってきたようせいとリンは思い思いに言葉を吐き出す。
「前々から思ってたんだけ――思っていましたけど。この茶番なんなんですか?」
「これは――ただでは済みませんよ。詩人さんがそれを分かっていないとは思いませんが」
ようせいは退屈した声。リンは心配そうな声。
そのそれぞれに手をポンと置いて、詩人は苦笑しつつ口を開く。
「まあ、いいじゃないか。これで3日後に決着が着く」
ただし。その苦笑いの奥には、鋭い視線が煌めきながら輝いていたけれども。
泣いても笑っても。3日後には全てが決まる。
超えなくてはいけない壁は迫ってくる。それを実感せざるを得ない3日になる事を、まだ詩人以外は誰も気が付かないのだった。
今年は更新出来て、後一回かなぁ。
クリスマスと年末年始は休ませて下さい。