詩人の詩   作:117

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ロマサガ3のエレン主人公で回っていました。
おかげでいくつか設定が固まりました。

代わりに投稿が遅くなって申し訳ありません。
最新話をどうぞ。


009話

 

 

 

 魔龍公 ビューネイ

 タフターン山にあるゲートを拠点とする。タフターン山の高所には常に霧が立ち込めていて、それを突破してビューネイの巣に乗り込むのは極めて困難。

 聖王は巨竜ドーラの力を借り、その背中に騎乗して空を支配するビューネイと対決。撃破し、そのままビューネイの巣へ乗り込んだ。

 

 魔戦士公 アラケス

 ピドナの魔王殿最奥にあるゲートを守護する。最奥に至る扉は聖王によって封印が施されており、侵入するにはその封印を解かなくてはならない。

 力と技とに優れた戦士であり、四魔貴族との戦いで最も苦戦したと伝えられる。最終的にアラケスの魔槍を奪い取ることに成功した聖王により、武器を失ったアラケスは打倒された。

 

 魔炎長 アウナス

 南方にある、方向感覚を狂わせるジャングルに存在するゲートに居を構える。アウナスはそこに火術要塞を作り、侵入者を阻んでいる。

 聖王はあらゆる生物と話ができるという妖精の力を借りてジャングルの木々に導かれ、火術要塞を発見。妖精によって与えられた弓によって、近づく者全てを燃やすアウナスを撃退した。

 

 魔海候 フォルネウス

 深海に沈むゲートに海底宮を築き、海を支配する。

 通常の船では容易に沈められ、聖王も7度挑み7度撃沈の憂き目に遭う。8度目には動く島、バンガードを船として挑戦する。フォルネウスもこれを沈めることは能わず、海底宮に乗り込んだ聖王によってアビスへと追い返された。

 

 

「…分かってはいたつもりだったけど」

 ヨハンネスから与えられたノートをしまい、嘆息するエレン。四魔貴族を倒す以前に、その膝元に辿りつくこそさえ困難だと改めて痛感する。

 ユーステルムでのモンスター退治を終え、それなりの金銭を手にしたエレンと詩人はランスへと帰ってきた。詩人は何かやることがあるようで、頻繁に宿を離れていた間に、エレンはゲートと四魔貴族について調べていた。

 だが結果は芳しいとは言えない。どうしたらいいのか、そのとっかかりさえ見えないのだから。

「どうだ、目星はついたか?」

 と、そこで詩人が帰ってくる。沈んだエレンの表情を見るに答えは分かっているが、まあ礼儀というか作法というか。そういった類のものだろう。

「さっぱり。どうしたらいいのか、それすらも分からない」

「せめてどのゲートにするかを決めたらどうだ? 同時に全部を見るから混乱するんだ。一つに絞って考えた方がいい場合も多いぞ」

「一つに、ねぇ。そう言われても…。あんた、以前から聖王家とかヨハンネスと交流があったんでしょ? どれがいいのか意見はないの?」

 自分では限度があると見切りをつけたエレンは詩人に話を聞いた。昨日今日でゲートを閉じる事を決めた自分よりか、詩人の方が的を得た意見が出る気がする。

 ふむ、と考えた詩人だが、やがて結論を出した。

「フォルネウスに的を絞ったらどうだ?」

「その心は?」

「バンガードは実在する。他は辿り着くのも困難だが、フォルネウスに限ってはバンガードが動けば問題の大部分は解決する。

 そういう意味で、まずはバンガードを動かすということに力を注いでもいい」

 なるほど、とエレンは思う。確かにタフターン山の霧を突破する方法も、ジャングルにある火術要塞を探し出す方法も、魔王殿に施された聖王の封印を解除する方法も、その全てに心当たりはない。

 だが、バンガードを動かす方法ならばヨハンネスの調べたノートに記載されていた。優れた玄武術師と、術増幅装置であるオリハルコーン。これに現存するバンガードを組み合わせれば、海底宮に乗り込むのも不可能ではないと思われる。

「分かったわ。まずはフォルネウス、最初の段階としてバンガードを動かす事を目標にしましょう」

「なら、まずはバンガードに行かなくてはな。

 ランスからだと陸沿いに歩いていくか、ピドナから船に乗るかだが……。ピドナを経由して行くか。ちょうど、ファルスまでに野盗が出現している。荷物運びに金が出るし、行きがけの駄賃として壊滅させれば更に儲かるだろ」

「また、金?」

 呆れるエレン。だが、詩人は真面目な顔でエレンを諭す。

「金は大事だぞ。金があればどうにかなる事でも、金がなくてはどうにもならない事は世の中に多い。

 ユーステルムで装備を整えたが、あれだって結構な金額がかかっただろ。エレン、お前はちゃんと自分の手持ちを確認してるか?」

 そう言われると反論しにくい。エレンは村から飛び出してきた身であるため、装備といえるような装備は身に付けてなかった。モニカ護衛の報酬で下賜された2000オーラムが原資だ。

 命を守るためにケチってはいけないと、防具には特に金をかけた。軽鎧にブーツ、ガントレットや兜も購入した。手足につける防具は体術を主に使うエレンにとっては武器にもなるため、消耗するのも早い。それに加えて小さいとはいえ斧も数を揃えていて、それにもそれなりの金がかかっている。しかもトマホークに使ってしまえば多くは使い捨てになってしまう。もちろん回収できる斧もなくはないが。

 また、生活する為にも金はかかる。宿代に、たまには酒の一杯でも飲まないとストレスが貯まる。町から町へ移動するにも食料や防寒具といった物は必要になる。

「装備にかかった金は700オーラムくらいだったか。生活費やその他諸々の雑費で50オーラムは出ている。ユーステルムで稼いだ金が500オーラムだったから、既に赤字だ」

「なんであんたは、あたしよりあたしの財布事情に詳しいのよ!」

「エレンが無頓着過ぎるんだよ。ちなみに先に言っておくが、その程度の装備で四魔貴族に勝てるとか甘い考えは持ってないよな?

 ピドナに武器工房があるから、そこで諸々揃えるぞ。そこでも金がいる。稼げる時に稼がないと、いつか自分の首をしめる羽目になる。

 前にも言ったが、自分を鍛える旅で一番の難題は路銀だからな」

 そう言われてしまえば反論はできない。

 寄り道に近いが、確かに手持ちがなくなってしまえばどうにもならない。そうなる前に、稼げる時に稼ぐという詩人の話は筋が通っている。

 それに今の自分の実力で四魔貴族に勝てるとも思えない。どうあっても鍛錬の場は必要だ。それを考えればなるほど、自分を磨きつつ稼げる機会は逃さない方がいい。

 それによく考えたら、確かピドナにはサラがいる。こうなってしまった以上、一度顔を合わせておくのも悪くはない。

「分かったよ。ファルス経由でピドナへ行く。それでファルスでは野党の掃討をして金を稼ぐ。それでいいんだろう?」

 方針は決定した。

 彼らは明日にでもファルスに旅立つことになる。

 どんな敵を相手取るのかも気づかずに。

 

 

 ランスからファルスまで荷物を持った商人を護衛しながら進み、まさか一日でつくはずはない。また、大量の荷物を大量の人員で運んだ方がコストがかからないのは道理。エレンと詩人が請け負った仕事も、そんな理由で大きく膨れ上がった商隊の護衛だった。もちろん商人が多くなるにつれ、護衛の人数も多くなる。野盗が活発になっているという情報があればなおさらである。

 商人6名、護衛13名。約20人の人間がファルスに向かっていた。今日はその初日の夜、詩人とエレンは今日は夜の番ではなく、体をゆっくり休める為に火にあたってその冷えた体を温めていた。

 その表情は、暗い。特にエレンは深刻である。間抜けな話、今日初めてエレンは人間と戦うということに気が付いたのだった。

 シノンの村は田舎である。正直、野盗が襲う価値などほとんどない。エレンが今まで相手にしたのは専らモンスターである。そして人間と相対した時、エレンはこの上ない無様をさらしてしまった。

 野盗を相手にして腕が鈍るのは当たり前。止めなんかさせるはずもなく、命乞いをする野盗から不意打ちを喰らう始末。

 詩人がいなくては殺されていたか、野盗に捕らわれて慰み者か奴隷にでもされていただろう。そんな醜態だった。

「…人間相手は、辛いか」

「………」

 返事はできない。エレンが醜態をさらしたそのツケは、詩人が払っている。エレンが殺した野盗がいない代わり、その全てを詩人が殺していた。

 本来なら捕えて野盗の根城でも聞き出したかったのだが、今回は詩人でさえそんな余裕はなかった。何せ、捕えた野盗は当然ながら逃げる。その見張りが必要だが、詩人はエレンのフォローで手一杯だったのだから。

「殺したくなかったら、殺さなくてもいい」

「え?」

 だから詩人の次の言葉にエレンは信じられず、顔をあげた。

「人を無理に殺せば心がきしむ。…それはよく分かっているつもりだ。そんな無理は、しなくていい。

 それよりこれも一つの鍛錬だと考えるんだ。いかに相手を傷つけずに無力化するか。死なないで怪我で済む範囲はどこか。

 そういった経験はきっと役に立つ。…いつか人を教える時に。そういう鍛錬だと思えばいい」

 目から鱗とはこの事か。敵と戦う際にそういった考えがあるとは思いもしなかった。

 しかし同時に、気になることも言っていた。

「あんたは、初めて人を殺した時に心がきしんだの?」

「…」

「辛かったんだ。苦しかったんだ。それを、あたしにしなくていいと言ってくれるんだ。

 …ありがとう。本当に、ありがとう」

「…もう寝ろ。明日は野盗を捕えるぞ。捕まえた野盗の見張りは任せるからな」

 ランスを旅立った、最初の夜が更けていく。

 もっと大変な明日になる。それに気が付かない訳にはいかない夜になった。

 

 

 

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