ダーウィンズゲームの最終進化的少年   作:橋本 掴

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無理矢理カナメたちと絡ませてもらうつもりです。


日本へ

「Do not kill me!What did I do!(殺さないでくれ!俺が何をしたっていうんだ!)」

 

 ここはひっそりとした住宅街の路地裏。そこで腰を引かせながら男は目の前でナイフを携えている少年に命乞いをしていた。

 

「I will surrender!I will surrender!So do not kill me as you ask!(降参する!降参するから!だから頼む殺さないでくれ!)」

 

 男の声に反応して、少年のスマートフォンと男の懐に仕舞っているスマートフォンが震えた。

 MASASI WIN!

 少年の勝ちというわけだ。

 だが、少年はナイフを下げることはしなかった。そのまま一瞬のうちに男との距離を詰めた少年は逆手に持ったナイフで男の首を掻っ切る。

 悲鳴にもならない断末魔を上げて男は流れるように倒れた。

 

「Sorry ...... but this is an order(ごめん......だけど、これが命令なので)」

 

 ダ―ヴィンズゲームはもう終了している。男は消えない。人通りこそ少ないが、ここだって一応住宅地だ。じきに男を見つけるものだって出てくるだろう。

 今、目の前で倒れている男は、どうやら聖職者らしく、紳士的な服にキリスト教を象徴する十字架を下げていた。

 仏教しか知らないことを申し訳なく思いながら少年、つまり江郷昌志は手を合わせる。アーメン。

 少年は時計を確認する。腕にはめるような最新式の時計じゃない。だいぶ使い古された懐中時計だ。

 

「予定より五分早く、任務完了......か」

 

 辺りに音が戻ってきている。そろそろ移動しないと見つかってしまう。

 少年は自分の頬に触れた。首を切った際に返り血が飛んでいたのだ。

「......」

 もう、血を見ても何も感じない。そのことに少年は少しだけ罪悪感を覚えた。

 

 ■

 

「I just came back(ただいま帰りました)」

 

 アメリカには裏の世界というものが存在する。きっとほかの国にもあるのだろうが昌志が知っているのはこの箇所だけだった。

 

「おお、昌志か。ターゲットは殺したんだろうな」

 

 ドアを開けると見慣れたリビングがあった。簡素なテーブルが三つつなげてあり、そこに十数個の椅子が置いてあるだけの質素すぎる部屋。

 正直、だいぶこの仕事で儲かっているのだろうし派手とまではいかなくてももう少しは家具などを設置してみてもいいのではないのだろうか。

 もちろん声には出さず、心の中だけでつぶやいた後、昌志は視界を前にただす。テーブルには一人の男しか座っておらずほかのメンバーは全員出払っているのかいつものざわざわとした空気はない。

 昌志は口調を日本語へと変え今回の報告をすることにする。

 

「はい。ちゃんと首と胴を離れさせました。死亡したことは間違いないです」

「そうかそうか。お前がちゃんと任務をこなせているおかげで俺も鼻が高い」

「恐縮です」

 

 決して昌志だけが、兵士にされたわけではなかった。当たり前だ。一人だけを兵士にするのならわざわざ日本のような国から、わざわざ金を払ってまで貰う必要はない。

 アメリカに住むどこかの家の子供を誘拐すれば、いいのだから。

 だが、そんなことは行われなかった。

 初期のころにいたメンバーが言ったそうだ。

 俺らで一人ずつ子供を育てて成績で競うことにしない?、と。

 ちょうどその初期メンバーは英語以外に話すことのできる言語がばらばらだったため、その国から一人ずつ養子を貰うか奪うかして育成するということになったのだ。

 昌志はそうやって日本から養子として、兵士として迎えられた。

 

「ただ......殺したその時にはもうダ―ウィンズゲーム事態は終了していて、レクイエムは発動できませんでした」

 

 レクイエム。それは昌志のチームだけで用いられる業界用語だ。ダ―ウィンズゲーム中にポイントが全損したら発生し、そのものの存在を抹消させるという恐ろしいシステムなのだが、名前がないのも考え物だろうとした昌志の監督、つまりこの机の上で真昼間にも関わらず酒を飲んでいる狩野白詩が命名したものだ。

 日本人とアメリカ人のハーフで、金髪に黒色の目を持った彫りが深いイケメン......だと昌志は思うのだがぼさぼさの髪型にぼうぼうに伸びた髭を見るとそうとも言えないのかもしれない。

 それでも三回ぐらい髪をなでるとぼさぼさの髪は見事に整うほどのサラサラヘアーなのだからやっぱりイケメンと定義されるべきなのだろうか。

 そんなことを真剣に考えていた昌志に丁度飲み終わったらしいワイン瓶を机に置き、自分で命名したレクイエムという言葉が使われてうれしかったのか、陽気な口調になった白詩が言う。

 

「ああ、ちゃんと殺したんなら大丈夫だ。相手は結構なお偉いさんだったからな。ニュースで報道でもされたらもっと気前が良くなるかもしれん」

 

 そう言ってアメリカ人を彷彿とさせる豪快なガハハと声を上げて笑う白詩を尻目に、昌志は横に掲示されている依頼表に目を向ける。その中で新しく貼られているもののうち一つだけ手書きでテキトーに書いてあるものを昌志は手に取った。

 

「狩野......朱歌......日本人ですか?」

 

 白詩に聞いてみる。すると、白詩からは今まで飲んで、陽気だった雰囲気が消え去り真面目な口調で昌志に話し始めた。

 

「ああ、それは俺からの特別な依頼だ。この任務は別に受けなくてもいい。受けるとしたら日本に飛んでもらう羽目になるしな。だけど......まあ受けてもらうと俺はありがたい。報酬金もゼロだし正直お前にとってはデメリットしかないけど受けてくれるか?」

 

 昌志はこんな白詩を見るのは久しぶりだった。昌志は昔、訓練をつけていた時の頃を思い出す。

 狩野朱歌に狩野白詩。お互い苗字は狩野だが......まさかな。

 

 昌志は表情を緩めた。そんな当たり前のこと、なんでいまさら聞いてくるのだろうか。

 

「もちろんです。私はあなたの兵士ですよ。あなたの依頼を受けずして何が兵士ですか。任せてください。必ず成功させて見せますから」

 

 昌志は訓練の結果、白詩に身を売られる前の記憶のほとんどを失っていた。かろうじて自分は養子だということを覚えていたが、それももしかしたら白詩などとの会話で得た知識なのかも知れない。

 だからこそ、昌志は白詩に心酔していた。生まれたばかりのひな鳥が初めて見た生き物を親だと思い込む刷り込みのような感じで昌志は白詩に慕っていた。

 だからこそ白詩のいうことは絶対に正しい。絶対に正義だと思い込むようになっていたのだ。

 白詩はそのことに罪悪感を覚えながらも、心から自分を慕ってくれていることにどこかうれしさを感じていた。

 




なんかだいぶ原作にはない設定を盛り込みましたが大丈夫ですよね......。大丈夫ですよね......?
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