柔らかく、そして濡れているデク   作:海棠

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天下に水より柔弱(じゅうじゃく)なるは()し。

(しか)堅強(けんきょう)なる者を攻むるに、(これ)()く勝つこと莫し。

其の()って之を()うる無ければなり。
                          「老子」第78章より抜粋





本編(第一期)
覚醒


人は生まれながらに平等ではない。時間は平等だとか言うが長い目で見れば平等じゃない。

4歳にして彼、こと緑谷出久が知った現実だ。

世界総人口の約8割が何らかの特異体質となった超人社会において、それらの特殊能力は『個性』と呼ばれ、当たり前のものとして存在している。

個性が前提となった社会では、生まれ持った個性によって人生の成功が約束されている場合も少なくない。そして逆に無個性は差別される運命であることも少なくない。

少なくとも、緑谷出久は個性を持った人間だった。

ただし・・・人よりも個性が覚醒するのが遅かったが。

 

「な、何するのかっちゃん」

「うっせぇ!! このクソナードがッ!! こんなきめぇことやってんじゃねぇ!!!」

いつものごとくノートを奪い去って爆破するかっちゃんこと爆豪勝己。そしておろおろするクソナードこと緑谷出久。

クラスの皆はいつものことだと思って周りからその光景を眺めていた。

 

しかし、今日は違った。

どこからかシャボン玉が飛んできた。

全員が不思議に思ってそのシャボン玉を見つめる。爆豪と緑谷も動きを止めてそのシャボン玉をじぃっと見つめている。そしてそのままシャボン玉は爆豪の目の前までふわふわと移動するとパチンッとはじけた。

次の瞬間、異変が起こった。急に爆豪が目を押さえたのだ。

 

「グァアアアアアアアアアッ?!!!」

全員に動揺が走る。もちろん出久も例外じゃなかった。

 

「み、見えねぇ!!」

「な、なにが?」

「急に真っ暗になりやがったッ!!! なんにも見えねぇ!!!」

「えぇええええええええええ?!!!」

さらに次の瞬間、爆豪は吹っ飛ばされた。上に吹っ飛ばされ、机やいすを巻き込んで床に落ちた。そしてピクリとも動かなくなった。周りにいた生徒の一人が駆け寄って様子を見た。どうやら伸びているだけらしい。

すると皆が一斉に緑谷の方を見ていた。

・・・え、えぇ?! もしかして僕、疑われてる?!!

そう思った彼はさっきの出来事は僕じゃないと言おうとした時、クラスメイトの一人が声をかけてきた。

 

「お、おい、緑谷」

「ぼ、僕じゃないよ?!!」

「違う違う! ・・・お前の後ろにいるソレ、なんだ?」

そう言いながらクラスメイトは彼の後ろの方を指さした。彼はどっと冷や汗を噴出した。そしてぎぎぎ・・・と首を後ろの方に向ける。

 

そこには壁から半透明的に浮き出るようにして『白い人型のなにか』が姿を現していたのだ。

 

「うわぁああああああああああああああああ?!!!」

彼は思わず後ずさりして叫んだ。するとその来訪者は彼が自分を認識したことに呼応したのか壁からその全貌を現した。

 

その姿は人間のようだった。白い体の上半身には紫色の錨のマークが刻み込まれていた。肩には己を象徴するかのようなが描かれており、細く長い腕は少し広げられていた。下半身は鉄の棒が入り組んだようになっており、恐らくそれらが骨組みとして駆動しているのだろう。単純なようで難しそうな感覚を緑谷は受けた。そして関節部はすべて球体でそれらが人形っぽさを際立たせている。面長な顔には左右それぞれに5つの穴があり、円を半分に割ったような目は緑谷のことをジィっと見ていた。たぶんここにいる生徒たちに訊いたら別々に印象を持っているだろう。それほどまでにその来訪者は不可思議な存在だった。

 

「ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアア?!!!!!!!」

そして緑谷は叫び声をあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・この場にいた誰が予想したであろうか。

これは彼こと緑谷出久がヒーローになる物語の序章(プロローグ)だということに。




ジョジョの奇妙な冒険Part8「ジョジョリオン」より「ソフト&ウェット」
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