柔らかく、そして濡れているデク   作:海棠

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濡れている者は雨を恐れない。
              ロシアのことわざより抜粋






彼の名前は『ソフト&ウェット』

あの後は大変だった。僕は泣き叫びながら家まで全力疾走だったし、その横を人型の何かはスーッとついてきてさらにパニックを起こすわお母さんがそれを見てびっくりするわで散々だった。次の日学校が休みだったのでお医者さんや専門家の人のところまで尋ねるとどうやら『個性』だということがわかった。どうやら皆よりも遅く発現したらしい。だしても遅すぎである。ふざけんなと言いたくなった。お母さんは泣きながらよかったねと僕を抱きしめてくれた。

 

「・・・」

「・・・」

「「・・・」」

そして今、僕は自分の部屋の椅子に座って対面していた。ご丁寧にも彼(?)はベッドにきっちりと座っていた。膝に拳を乗せて正座で座っていた。

 

「あの・・・」

「・・・」←少し顔をあげる

「君って…やっぱり、僕の『個性』、なの?」

「・・・」コクッ

「そ、そうなんだ・・・」

沈黙。

 

「な、名前とか・・・あるの?」

直後、僕は後悔した。何バカみたいなことを言ってるんだ。この人(?)僕の個性じゃないか、と。

すると、彼(?)は左の手のひらを右の人差し指でなぞり始めた。

 

「・・・?」

すると彼はペンを持つようなしぐさをした。ここで僕は理解した。あぁ、この人(?)はペンと紙が欲しいのか、と。

僕は紙とペンを用意すると彼に手渡した。すると彼は慣れたような手つきでノートにさらさらと何かを書いた。

そして書き終えると僕にノートを手渡した。そこには英語の筆記体でこう書かれていた。

 

「・・・Soft(柔らかく)(そして)Wet(濡れている)…? これは、君の名前?」

「・・・」

すると彼は僕の本棚というよりCDの入ってる棚から一枚のアルバムを取り出してきた。見るとプリンスのフォー・ユーだった。そのうちの一つを指さしてくる。そこに書かれていたのはソフト&ウェットだった。

 

「・・・あぁ、なるほどねぇ。そっから名前をとったんだ」

「・・・」コクッ

「・・・いいよ!

「・・・?!」

僕が急に大声を出したのか彼は少したじろぐような動作を見せた。僕は慌てて次の言葉を紡ぐ。

 

「ご、ごめん。・・・でも、その名前いいよ! すごくいいと思う! なんていうんだろう…すごく印象に残りやすいよね!! それにシャボン玉って柔らかくて(?)濡れてるし!! ピッタリの名前だと思うよ!!」

「・・・」コクコクコクコク

僕がそう言うと彼は興奮した表情(たぶん)と動き(明白)でうなずいた。

 

「・・・ところでさ」

「・・・?」

「僕は君のことをまだよく知らないんだ。どういう『個性』、なの?」

「・・・」シュッシュッビシッバシッ

すると彼は空中に向かって拳を突き出したり足を突き出したりした。なんとなくだけど言いたいことは伝わってくる。

 

「殴る蹴るはできると…」

ぼくはこのことをすぐにノートに書き込んでおく。自分の個性を把握しきれてないのは大問題だからね!!

 

「あと他には何かできる…?」

「・・・」

すると彼は手のひらからシャボン玉をぷくっとだすと壁の方に飛ばした。そしてパチンッとはじけた。

 

「・・・」

「・・・」

「「・・・」」

再び沈黙。

 

「・・・」スッ

すると彼は壁の近くによると壁をノックするように叩くような動作をする。

僕はそっと壁に近づくと壁を手の出っ張っている骨の部分でコンコンと叩く。

 

「・・・アレ?」

僕は違和感を感じてもう一回叩いてみる。しかし起こるべきことが起こらなかった。僕はその事実に気付いて思わず壁に拳を叩きつける。しかし、起こらなかった。

 

「『音』が、ない・・・!!」

僕は思わず彼の方を見る。彼は空中でふよふよと浮きながら僕の方を見ていた。

 

「音を奪う能力なの?! ・・・いや、違う。あの時シャボン玉がはじけたとき、かっちゃんの目が見えなくなっていた・・・。・・・ん、『奪う』? いや、まさかそんなことがあるのか・・・? でも、これくらいしか考えられない…」ブツブツ

僕はぶつぶつとしばらくつぶやくとある一つの結論に達した。そして恐る恐る彼の方を見る。

 

「・・・もしかして、君の能力、いや、僕の個性ってシャボン玉がはじけたときにそこから何かを『奪う』能力なの?」

少し間をおいて彼はコクリ、と頷いた。僕は目を見開かざるを得なかった。

 

「ということは・・・、様々なものを奪えるって事かい?!! さすがに個性は難しいだろうけど…」

僕はそう言って彼の顔を見る。そして気づいたことがあった。

 

「・・・顔、変わってない?」

そうなんだ。顔がいつの間にか変わってるんだ。いつの間にか顔に穴がなくなって耳(?)が長くなってるんだ。

 

「・・・?」

どうやら本人も自覚がなかったみたいである。僕は手鏡を彼に手渡す。すると彼は驚いたようなしぐさをした。そして耳(?)をしきりに触っている。あとは顔をペタペタと触っている。

すると急に眠気が襲ってきた。僕はふわぁとあくびをする。すると彼は鏡を机の上において僕をベッドまで運んだ。

 

「・・・おやすみ」

「・・・」コクッ

僕の意識は闇に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

僕はゆさゆさと揺さぶられる感覚を感じた。僕は布団の中に閉じこもる。するとバサッと布団を剥がれた。

僕が目をこすってぼーっとあたりを見渡すとそこには顔をのぞきこんで来る白い人がッ!!

 

「ファッ?!!」

僕は驚いて跳び起きた。眠気なんか吹っ飛んでいた。再びその白い人を確認するとソフト&ウェットだった。

 

「・・・なんだ、君か。なんかびっくりして損した・・・」

僕はそう言いながら服を着替え始める。するとドアがノックされた。

 

『出久~、勝己君が来てるわよ~?』

「え、あ、うん」

なんでかっちゃんが?

僕は疑問に思いながら玄関まで歩いていく。

そしてドアを開けるとそこには今にも爆発しそうなかっちゃんがたたずんでいた。

 

「・・・」スッ

僕はそっとドアを閉じようとした次の瞬間

 

ガッ

 

「・・・え?」

僕は恐る恐るドアの下の方を見る。

何とかっちゃんは一瞬のスキをついてドアの間に足を置いてしめれなくしたみたいだ。

 

「?! ?!!」

僕は一心不乱にガンガンとドアをかっちゃんの足に割と勢いをつけてたたきつけ始める。

 

「なにしやがる、クソナードォ!!」

「どうか、どうかお帰りくださいッ!!」

「テメェに話があるんじゃゴラァ!!」

「どうせろくでもないことだとわかるからしなくていいよ!!」

「早く開けねぇと爆破するぞゴラァ!!」

「やめろぉおおおおおおお!!!」

「こら勝己ぃ!!」

「ゲェ!! BBA!!」

「だからババァって言うなって言ってるでしょうが!!」

その後、かっちゃんの声は離れていった。

・・・まるで嵐みたいだったな、と僕は思った。

 

 

続く






最近洋楽のCDを買い集めています。

とくにエミネムはいい買い物だったなぁ、と思っています。
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