民間軍事会社"鎮守府"   作:sakeu

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リクエストで朝潮があったので、朝潮が新たに鎮守府に、やってきました。


閑話1"尊敬"

 ある日の朝、俺は窓から漏れる陽日によって目が覚めた。

 どうやら、今回もソファで休憩するつもりが寝落ちしてしまったらしい。それに昨日は海上自衛隊との会議があり、余計に疲れた。しかし、ここまで寝ていた以上、また起き上がるということは至難の技だ。俺はもう少し眠ることにした。

 と、がちゃんとドアの閉まる音がした。思わず眉をピクリと動かす。

 …………きっと、叢雲か長門か。

 どちらにせよ、必ず起こしてくるだろう。だが、少しの間でも長く寝たい…………起こされるまで目を閉じておくことにしよう。

 

「司令官、朝です!起きてください!」

 

 聞きなれない声に驚き跳ね起きると、

 

「おはようございます!司令官、朝のコーヒーですっ!」

 

 直立不動で真面目そうな少女が、湯気の立つコーヒーカップを俺に差し出していた。

 朝潮。朝潮型1番艦駆逐艦の彼女はつい最近、この鎮守府に入社した新参者である。対面しての印象は絵に描いたような真面目さ。どのような命令にも二つ返事で了承する。しかし、真面目すぎる故、突拍子のないことをしたりする、長門と似たような真っ直ぐで生真面目な艦娘である。

 

「それと、着替えも準備して起きました!」

「おお、そうか…………は?」

 

 流れるように言われたため、一瞬ツッコミが遅れた。言っておくが俺の着替えは執務室の隣の部屋にある私室にあり、誰もが入れるわけではない。そもそも、執務室に朝潮がいること自体、おかしい。

 思わず目を丸めて朝潮を見るが、相変わらず直立不動のままである。

 真面目さを表すかのような黒髪ストレートにサスペンダー付きのプリーツスカートという格好。一言でまとめれば小学生の格好である。

 軍事会社と小学生というあまりにもアンバランスな組み合わせ、この鎮守府ではもはや当たり前となっている。

 

「と、とりあえず、コーヒーを頂こうか」

「どうぞ、司令官!」

 

 朝潮からコーヒーカップを入れ、一口すする。…………甘い。それに濃ゆい。どうやら、インスタントコーヒーを使ったようだが、粉末の量が多すぎたようだ。それに砂糖も多い。

 

「…………コーヒーの淹れ方は教えてもらったか?」

「はい!長門さんから教えて頂きました!ついでに司令官は朝はコーヒーを飲むことが好きだということも!」

 

 あまりにも目をキラキラさせながら言うものだから、コーヒーにケチをつけにくい。それにしても、長門からかぁ…………叢雲からなら変わっていただろうか。

 

「コーヒー、ありがとな」

「はい!喜んでいただいて何よりです!」

 

 どこまでも真っ直ぐ過ぎて、こちらが心配になってくる。

 …粉末が溶け切れていないせいで、口の中がジャリジャリするが気にしていても仕方あるまい。それよりも他に気にするべきことがある。

 

「なぁ、朝潮。どうやってこの部屋に入ったんだ?」

「はい!長門さんに頼んだら部屋を開けてくれました!」

「…………長門かぁ」

 

 軍人気質な彼女ではあるが、甘党で、可愛いものが好きという意外な一面も持つ。それ故、どこか駆逐艦に甘いところがある。たしかに愛くるしいことは認めるが、息を荒げながら駆逐艦たちの演習を眺めているのもどうかと思う。

 

「はぁ…………とりあえず、朝食を食べるか?」

「はい!」

 

 朝からげんなりとする俺とは対照的に朝潮は、一切背筋を上げることなく元気な声で応えた。

 

 

 ーーーー

 

 

 かちゃかちゃと食堂で朝食を食べる音が響く。

 この食堂も人が増えるにつれ賑やかになってきたな。最近は間宮さん1人では間に合わないらしく、鳳翔さんも手伝っている。

 それにしても、この食堂で朝食を食べたのはいつぶりだろうか。というか、最後に朝食を食べた日すら思い出せない。

 

「鳳翔さん、ご飯おかわりいただけますか」

 

 はいはいと、鳳翔さんが俺の茶碗にご飯をよそう。やっぱり、ここのご飯は美味しい。

 

「あんた、会議でやらかしたんだって?」

 

 俺の向かいの席で叢雲が焼き鮭をつつきながら言った。ちなみに朝潮は横で一心不乱に朝定食を食べている。よっぽど美味しいのだろうか、頰に米粒をつけながら頬張っている。

 

「もぐもぐ…………んっ、やらかしたも何も俺は事実を述べたつもりだ。それをやらかしたと言うのは、俺からしたら心外だ」

 

 行儀が悪いと思うが、今はこの絶品の朝食を食べたく、もぐもぐしながら話してしまう。

 

「別に馬鹿正直に言わなくてもいいでしょ?世の中、正直者が馬鹿を見るんだから」

 

 と、ほぐした鮭を口に運んだ。

 それにしても、隣にその正直者の筆頭がいるのにも関わらず酷い言い様である。

 

「それで、なんであんたの隣にその新人がいるのかしら?」

 

 なんと、いきなり朝潮の方に話を振るのか。そもそも、それは俺が知りたい。

 

「…………なんでも、執務を手伝いたいそうだ」

「はい!この朝潮、司令官の手伝いを全身全霊でやらせてもらう覚悟です!」

「はいはい、ありがとな。あと、ほっぺにご飯がついてるぞ」

「はっ、ありがとうございます!」

 

 と、頰についた米粒を取って、再び定食を食べ始めた。こういうところを見ると、やっぱり子供だなぁと思う。

 

「美味いか?」

「はい!大変美味しいです!前にいたところよりも断然美味しいです!」

 

 ほんと、幸せそうに食べるなぁ…………人が幸せそうに食べる姿は見てる者も幸せにすると言うが、今回はそうだと思える。

 

「危ない匂いがするわね…………」

「は?」

「朝潮に向ける視線よ。最近は小さい子に欲情する大人が多いじゃない」

「失敬な。どちらかと言うと娘を微笑ましく見つめる父のような視線だろ」

「どっちにしろ、うちの上司がそう言うことで捕まることだけは勘弁してほしいわね」

 

 誠に理不尽な言い草だ。少し見ただけでここまでの言われようとは。

 

「それにしても、朝潮。なんで、司令官の手伝いをしようと思ったわけ?」

「はい!司令官がかつて"軍神"と言われた理由が知りたく、司令官の手伝いをすることで知ろうと思った次第です!」

 

 箸を進める俺と叢雲の手が止まる。それに対し、朝潮は目を爛々と輝かせたままである。

 

「今、なんて…………?」

「ですから、司令官がかつて…………「ストップ、ストップ!」分かりました」

「そうじゃなくて、それをどこで知った?」

 

 なるべく小声で朝潮に聞く。叢雲はまだ凍りついたままだ。

 

「前勤めていたところの司令官から聞きました。素晴らしい活躍だったと。私も軍人である以上、司令官から学びたいこともたくさんありますので!」

「そ、そうか…………だが、なるべくその話題は人のいないところでしてくれ」

「なぜでしょうか?とても誇らしいことだと…………はっ!なるほど!ご謙遜なさっているのですね!さすがです!」

「いや、そう言うことじゃぁ…………」

 

 相手が朝潮なので、妙に噛み合わない。しかし、これ以上大きな声で言われると、他の艦娘の耳に入る可能性もある。

 

「そ、それよりも、司令官、会議でとんでもないことを言ったそうじゃない」

 

 ここに来て、叢雲の助け舟が入る。できるならもう少し早めに出して欲しかったな。

 

「とんでもないことと言われてもだな、こっちは当たり前のことを言ったつもりなんだが…………」

「そりゃあ、変人にとって当たり前ことを言われてもねぇ…………」

「変人…………?」

「知らなくてもいいぞ、朝潮。この世の中は理不尽なことでいっぱいだ、と言うことだけ知っていればいい」

「はっ!分かりました!」

 

 本当に俺のことを変人と呼ばれるのに納得いかん。どこをもってしてこの生真面目な好青年を変人と呼ぶのやら…………

 

「ま、長門からこれを貰ったから、今確認しましょ」

 

 と叢雲が取り出したのはボイスレコーダーだった。たしか、会議の内容を長門が知っておきたいと言われて、俺が録音したものだが…………

 

「なんで、君がそれを持ってんだ?」

「長門が聞いておいた方がいいってね」

「そこまでおかしなことを言ったか俺…………」

 

 と、頭の中から昨日の会議の内容を探る。しかし、疲労の極みであった昨日は何をしたのかも思い出せない。てか、会議ってどこであったけ?うーん…………全く思い出せないな、これではとんでもないことを言ったのではと心配になってくる。

 

「これは…………司令官の貴重なお話なんですね!」

「うーん…………ま、そう言うことでいいわ」

 

 そして、叢雲はボイスレコーダーの再生ボタンを押した。少しのノイズの後に、会話が流れてきた。

 

 "では、本題から入らせていただきます"

 

 生真面目な声が聞こえてくる。あぁ、思い出した。たしか、黒スーツに、分厚い黒ぶち眼鏡の小男だったな。いかにも、杓子定規のような男だった。

 録音してもいいかと聞いた時に、苦笑いとともに許可を得たっけ。

 

 "まず、あなたのことで1つ。ぜひ、海上自衛隊に入隊してもらい、そこで艦娘たちの指揮をとっていただきたい"

 "それは前にも言いったように、もう戻る気はさらさらありません"

 

 少々かすれ気味の声が聞こえる。うむ、相当疲れがひどかったからな。それにしても、俺の声はこんな感じだったのか。

 

 "…………艦娘たちの戦いは激化していく一方です。もちろん、艦娘たちに頑張ってもらわなければならないことはありますが、彼女たちが悲惨な目に遭わぬように、有能な指揮官も必要なのです。そこで、あなたの出番です"

 "いやぁ…………他にも有能な人は探せばいるでしょうに"

 "深海棲艦と生身で戦う部隊の指揮をとり、そして唯一深海棲艦を討ち取ったあなた以上の人がですが?"

 "……………………"

 "こほん、すいません。しかし、実績も能力もあるのは事実です"

 "買い被りすぎです。それに一度身を引いた以上、戻るわけにもいきません"

 "そうですか…………"

 

 至ってまともな会話だ。どこをもってしてとんでもない、とかが出てくるんだ?

 

 "では、次の話に移らせてもらいます。ここの"鎮守府"のお話になりますが、最近は随分と所属する艦娘たちが増えてきたようですね"

 

 男性のトーンが変わり、雰囲気が冷ややかになった。

 

 "…………と言いますと?"

 "いえいえ、特に何も。しかし…………そこまで艦娘が増えると、妙な噂が立つんですよね…………例えば、テロとか"

 

「ちょっと、何なのよ!」

 

 堪らず叢雲が声をあげた。その気持ちは分からなくもない。艦娘たちのアフターケアもせずにふんぞり返っている自衛隊が、今度は艦娘たちを受け入れるこの鎮守府に対してテロを疑っているのだ。腹も立てる。

 

「まぁ、落ち着け」

「とんでもないことって、あんたじゃなくて相手のことだったのね…………!」

 

 創設時からいる叢雲のことだから尚更頭にきてるのだろう。いつもの冷静さを欠いている。

 

 "ハッハッ!冗談も上手いですね。うちがテロだなんて。一体どこからの情報です?"

 

 男性に対しての俺の反応は場違いなものであった。疲労も蓄積すればこうなるのか…………

 

 "いや、情報もただの噂ですので…………"

 "へぇ、一国を守る自衛隊が根も葉もない噂を信じてしまうものなんですか?"

 "…………国を守るためにも艦娘が必要なのです"

 

 ここに来て、男性のいや、自衛隊の本音が漏れ出た。つまりは、艦娘を譲ってほしい、と。疑われたくないのなら、俺か艦娘を差し出せ。何とわかりやすい要求。

 

 "それは俺にではなく、艦娘たちに聞くべきでしょう"

 "しかし、それでは彼女たちは戦ってくれないのです!ですから、彼女らの上司のあなたから説得していただきたいのです!"

 

「…………司令官、どう言うことなのでしょうか?」

 

 朝潮が素朴な質問をした。

 

「つまりは、日本は艦娘たちを欲しがってるんだよ」

「なら、どうして始めに司令官に来て欲しいなどと?」

「俺が自衛隊の方に行けば艦娘たちも付いてくる、そう考えたんじゃないかな?」

「なるほど、それほど司令官は信頼されているのですね!」

「信頼されてる、のかな?」

 

 "できません。それは俺のすることではないですから"

 "それでは、何のために艦娘がいるか分からないじゃないですか!"

 "じゃあ、艦娘は戦いだけしていればいい、と?"

 "…………そうです。そのために彼女たちはいるんですから。あなたも分からないわけではないでしょう?"

 "すいません、質問が悪かったですね。じゃあ、艦娘、ではなく人として彼女らは戦いだけしていればいい存在なんですか?"

 "……………………ッ!"

 "俺からの話は以上です"

 

 そこで録音は終わっていた。ふむ、疲れた頭にしては妙に冴え切ったことを言っている。疲労も極限まで来ると失言ではなく、核心を突いたことを言うようになるようだ。

 

「これで終わりだな。どうだ?朝潮、何か得たものはあったか?」

「はい!さすが、軍神と名高い司令官は部下のこともきちんと考えていらっしゃるんですね!感服いたしました!」

「普段もこのくらいの言葉を言ってくれたら、少しは変人と言われないのにね」

「なんだと、叢雲。それでは俺がまるでいつも変なことしか言ってないみたいじゃないか」

「そう言ってるのよ。でも…………この言葉を聞いて安心したわ。艦娘ではなく人として、ね」

 

 そんなことをしていたら、時間が迫っていた。早く書類を片付けないとまた、昨日のように冴え切った俺になってしまう。

 素早く食器類を返却棚に戻して、執務室に向かう。それに続くかのように朝潮も後ろについて来ていた。

 まぁ、こうして朝潮の手伝い、もとい観察が始まった。

 

 

 ーーーー

 

 

「この書類にサインを!」

「はいはい、えーっと、漁師から護衛依頼か…………」

 

 基本的な依頼者は国家や大手企業がおおいのだが、最近は漁師からの依頼も増えてきた。こちらとしては、着実に信頼を得ていると考えれるので素直に嬉しい。あと、お裾分けしてもらえるのもいい。

 

「こちらが報告書になります!」

「はいはい…………金剛がもうそろそろ改装できるな…………橘さんに話をつけておくか」

 

 改装するのは橘さん、ではなくて妖精さんの力を借りて行われる。なんでも、橘さんも妖精が見えるらしい。

 しばらく、書類を眺めていると、朝潮が不思議そうにジーッとこちらを見ていた。

 朝潮は朝からも変わらず背筋を綺麗に伸ばして、こちらを見つめられるとさすがに緊張して、精神的に疲れる。たしかに、邪魔をしてはいないのだが…………

 

「なぁ、朝潮、ずっと俺を見ているが何かついてるか?」

「いえ!司令官の仕事ぶりに感心していたところです!」

 

 このままだと俺の全てに感心してしまうんではないか?なんの変哲も無い執務にまで褒められてしまうとそう思う。

 

「んー、さすがに書類仕事は他の人と大差ないよ」

「いえ!司令官は書類の内容を一目見て理解していらっしゃるところがすごいんです!」

「いや、慣れたら誰でもそうなるから…………」

「…………そうでしょうか?」

「そうだ」

 

 いつの日かこの娘は俺を完璧超人と思ってそうで不安になる。俺だって人間だからな?

 

「しかし、今日は書類が少ないな…………」

「えっ」

 

 俺のつぶやきに朝潮が驚いたように反応した。

 

「これで少ないんですか…………?」

「そうだな、昨日はこれの倍はあったし」

「これで多いと思った私は…………」

「そんな思い悩まなくても」

 

 君もいつか慣れるから、うん。

 

「しかし、それでは司令官のように…………」

「何も、俺のようにならなくていいよ。自分がなりたいようになればいい」

「はい!だからこそ、尊敬する司令官のように!」

「あちゃー…………そう言うことか」

 

 上司として尊敬されることは喜ぶべき事柄なのだろうが、自分のようになりたい、と思われるとなぁ。自分の嫌な部分も知ってるからこそ自分のようになって欲しくない、と思う人も多いはずだ。

 

「別に強制はしないが俺としたら、君には俺のようになって欲しくない」

「そうですか…………なら」

 

 残念そうに顔を俯ける朝潮。そんな朝潮の頭を撫でる。

 

「あー、ちょっと待って。どうかしたいかは君が決めるんだ。俺が言ったからそうしないじゃない。俺はここでもう少し色んなことを見てから、決めて欲しい。それを踏まえてなのなら、俺のようになろうとしても俺は文句を言わない」

「色んなことを見る…………」

「ああ。ここには色んな人がいるからな。そっから、色んなことを見たらいい。ここは戦うためにあるわけじゃないんだから」

「司令官…………」

「まぁ、いつでも俺を頼ってもいいさ。何か聞きたいこと、して欲しいこと、あったらなんでも言ってくれ。できる限りのことを俺はする。そのために俺はここにいるんだからな」

 

 "鎮守府"は軍事会社としてあるだけではない。艦娘たちが社会復帰するため、すなわちやりたいこと、なりたいことを見つけるためにある。だからこそ、昨日はそう言ったんだろうし、そんな考えのもとで俺はここで働く。

 

「でしたら、1つ頼みたいことがあります」

「おう!なんでも言ってくれ」

「もう少し、頭を撫でてください!」

「…………そ、そうか!ああ、少しと言わず、もっと撫でてやるぞ!」

 

 と、朝潮の頭を撫でる。為すがままの朝潮であるが、その顔は年相応に嬉しそうだった。うんうん、子供はこのように笑わなければ。

 

「司令官、報告…………何してるのよ」

「あえ?あ、いや、これは…………」

 

 叢雲の目には、頭の位置を朝潮に合わせて頭を撫でる不審者に映ったに違いない。だって、汚物を見るような目なんだもん。

 

「と、とりあえず、報告書を!」

「はい。あまり人前でそんな行動しないことね。変人のレッテルが変態にランクアップするわよ」

「ぜ、善処する…………」

 

 うむ、最近の世間の風当たりは強いようだ。頭も撫でることすら許されないとは。

 しかし、嬉しそうに頭を撫でられている朝潮を見ると手を止めるのも気が引け、結局俺は甘んじて、変態の名を背負うことになるのだった。

 

「あ、そうそう叢雲」

「何?捕まっても私は擁護しないわよ」

「なぜそうなる。って、そうじゃなくて、俺って仕事早いか?」

「まぁ、そこそこ有能なんじゃない。変態じゃなかったら尚良しね」

「やっぱり、そこそこだよなぁ」

「もう、変態ってことも否定しないのね」

「否定したところで何も変わるまい。まったく、こんな生真面目な好青年を変態扱いする理不尽な部下を持ったもんだ」

「なら、コーヒー淹れてあげないわ」

「美人で有能な部下だ」

 

 口ではやはり勝てぬ。コーヒーを盾にするとは…………しかし、自分で淹れても叢雲のようにうまくできぬ。叢雲のコーヒーが飲めぬのと変態のレッテルだと、わずかにコーヒーに分がある。紅茶とか長門ブレンドはもう飲みたくない。

 

「報告書読んだし…………あとは暇だな」

「なら、久しぶりに演習見に行く?今日は駆逐艦たちが演習してるわよ」

「それなら彼女らの頑張りを見てあげないとな。どうだ、朝潮。挨拶も兼ねて、行くか?」

「ふぁい!この朝潮、司令官にどこまでもついて行く覚悟です!」

 

 返事がふにゃけていたが、力強く、そして明るい笑顔を見せてくれた。その笑顔はやはり、俺の心が洗われるのであった。




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