早朝の鎮守府の執務室は異様な雰囲気に包まれていた。
「お、お茶です…………」
「あら、ありがとう」
「…………」
祥鳳はなんとかこの気まずい空気を脱却しようと、お茶を出したが、効果は示さなかった。
原因はこの民間軍事会社"鎮守府"の提督である八幡であろう。
普段から彼は愛想はよくない。滅多に感情を大きくは出さない彼が、今は露骨に不機嫌そうな顔をしている。
どうしてそんなに不機嫌なのか。
参謀としてしばらく別の鎮守府に赴き、何日も作戦を練り続け、そして帰ってきたら帰ってきたで、普段と変わらぬ執務を1週間し、ようやく昨日ベッドにつき、熟睡できるかという時に朝早くから起こされたのが原因なのだろうか。現に、彼の頭はボサボサで、服装は寝巻き用のジャージ姿、そしてなによりもひどい顔色である。
ただ祥鳳はそんなことが不機嫌な理由ではないと知っている。疲れているのはいつものことであるし、いくら疲労が酷くても鎮守府の雰囲気を悪くするような行動はとらない。
では、何が原因なのか。
「久しぶりに会ったのに、そんな態度はないんじゃない?武尊」
「なら、わざわざ定休日の朝早くから訪ねてくるんじゃない、大鳳」
この大鳳と呼ばれる女性に原因があるらしい。
ーーーー
事の発端は朝の6時である。
八幡は帰ってきてからいつまで経っても休もうとはしないため、艦娘たちが気を使って依頼を断り、提督である八幡を半ば強制的に休ませることにした。
当の彼も、相当な疲労だったらしく格別反発せずにその休みを受け入れた。そして、夕飯をこれでもかと食べた後、彼はジャージに着替えて、そのままベッドに倒れこむように眠りについたのである。
目覚まし時計もかけず、任意で起きることができるはず…………であったが、その幻想は6時に打ち破られた。
鎮守府に客が訪れたのだ。
「武尊はいるかしら?」
その姿はとても小柄で一見、少女と見紛うほどだ。
その客は鎮守府にやってきて早々、そんなことを大きな声で言った。普段は提督が対応するが、今は爆睡中。なら長門だが、彼女は不在であったさらには、秘書艦の叢雲は昨日の夜遅くに出撃しているのでまだ休憩中。広瀬は朝早くはいない。結局対応することになったのはそこにたまたま居合わせた祥鳳であった。
「すいません、今提督はお休みですので日を改めて…………」
「あら、ここにいるのね?」
「いるにはいるんですけど、今はお疲れなので…………」
「大丈夫、あいつタフだから」
強引、という言葉がぴったりなほどその客は八幡に面会しようとした。無論、提督を休ませてあげたいと思う祥鳳は止めにかかるが、少々押しが弱い性格が災いして、大鳳に押し切られてしまい、渋々執務室まで案内する羽目となった。
そして、執務室の奥にある私室の扉まで足を運んだ。
「て、提督、お客さんです…………」
「…………んぁ、いま出る」
ほぼ掠れている声を聞いて、祥鳳はとても申し訳ない気分となった。
「とりあえず、ロビーで待たせといてくれ…………」
そう言うと同時に彼は扉を開けた。
そして開けた瞬間、
「久しぶり、武尊」
「…………」
すぐさま武尊は扉を閉めようとしたが、客が素早く足を入れ、それを阻んだ。
「久しぶり、武尊」
「…………何の用だ、大鳳」
ここまで露骨に嫌そうな顔をする提督を祥鳳は見たことがなかった。それと同時に、そんな顔をさせる大鳳という艦娘はどんな人物なのか、とも思った。
「久々の再会よ?もう少しは喜んだら?」
「…………なら、こんな朝早くからくるんじゃない」
やっぱり今日の提督は不機嫌なようだ。言葉の1つ1つに棘がある。
「この時間は起きてたでしょ?朝からトレーニングするために」
「それは昔の話だ。今も前線でバリバリ戦っている君と違って、今の俺は身を引いて指揮する立場にいる。そんな暇ありやしない」
「そういえばそうだったわね。でも、想像つかないわ。武尊がデスクワークやってるなんて」
言葉の端々から伝わる2人の親密さ。祥鳳もこの八幡という男と出会って1年は経つが、未だに敬語でしか話さないし、彼の前に立つと緊張してしまう。無論、彼のことを怖がっているわけではないし、彼が見た目や言動の割に優しいことを知っている。しかし、彼の功績を知ってるとどうしても体が固くなってしまうのだ。
だが、この大鳳と呼ばれる女性はどうだろうか。
いかにも不機嫌そうな八幡に対して、固くなるどころか軽口を叩いている。祥鳳が知る限り、彼に対して物事をズケズケと言える人物は、幼き日から一緒に育ってきた長門か、一時期は同じ鎮守府にも務め、一緒に戦った熊野、秘書艦の叢雲ぐらいだ。
「すまない祥鳳、お茶を淹れてきてくれないか」
「は、はい!」
急に名前を呼ばれた祥鳳は、弾かれたように執務室に備えられた小さな台所へと足を運んだ。
「それで、何の用だ?まさかここで働きたいとかいうんじゃないだろうな」
「それも悪くないけど、一応大本営直属の艦隊の主戦力だからね。簡単に辞められないわ」
大本営直属、という言葉を聞いて祥鳳は危うく湯呑みを落とすところであった。大本営直属の艦隊といえば、選りすぐりの艦娘によって構成され、さらには装備や訓練は最新のものであるし、何人もの指揮官が支持するようなものだ。その主戦力ともなれば、並々ならぬ実力者であるということだ。
「それにあんたが直々にお願いしてきた赤城の指導役でもあるから」
「ふむ、どうだ?なかなか切れる奴だろ?」
「ええ、ちょっと真面目すぎるのがたまにキズだけど、充分な戦力よ」
赤城。
一時期はこの鎮守府に派遣として、やってきてとてもお世話になった人だ。祥鳳も同じ空母として彼女からは色々学んできた。
そんな彼女をまるで教え子のように話せるのは、この2人が実績と実力ともに充分なほど持ち備えているからこそだろう。
「そうか。なら、いい」
「あんたにしては珍しく気にかけているのね」
「珍しく、は余計だ。一応、一緒にいたからな」
他愛のない会話が、しかし祥鳳にとってはとても興味深いものであった。
事務的な会話以外はほとんど彼と交わしたことがないものだから、いったいどんな風に話すのだろうかと、聞き耳を立てながら彼女は急須にお湯を入れる。
別に彼のことを全く知らないわけではない。仲間からは色んな話は聞いているし、少なくとも悪い人ではないことも十分承知している。しかし、こんなにトゲのある話し方をする人だとは思わなかった。
「お茶です」
「あら、ありがとう」
礼を言いながら大鳳は湯呑みを受け取る。
朝早くから突然訪ねたり、八幡を叩き起こしたりと少々豪放な部分が目立つが決して悪い人ではなさそうだ。
「それで、本題に入るけど」
「ああ、そうしてくれ」
「最近、新装備ができたと言う話、知ってる?」
「いや、聞いたことはない。祥鳳、君は聞いたことがあるか?」
「わたしも知りません…………」
「ま、そりゃそうよね。で、実はその装備持ってきているの」
持ってきている、と大鳳は言ったもののそれらしきものは何一つ見当たらない。ほとんど手ぶらの状態のはずだ。
もしかしたら、大掛かりな装備なのかもしれない。と、考える祥鳳の思惑とは大きく異なるものが彼女の懐から取り出された。
「これよ」
そう言い、ことんと小さな箱を机の上に置いた。
てっきり外に置いてあるから取りに行くのだろうと考えていた祥鳳は、かなり拍子抜けしていた。それは八幡も同じなようで、怪訝そうな顔でその箱を見つめている。
「…………すまんが、ここにきて俺を揶揄っているわけではないんだな?」
「失礼ね、これ持ち出す許可取るの大変だったんだから」
大鳳の手が、その小さな箱を開けた。その中にはさらに小さい輪っかが一つ。
その形を祥鳳は見たことがあった。
「指輪、ですか?」
「ええ、そうよ。これが妖精さん自慢の最新の装備」
「…………あ。思い出しました!確か練度の高い艦娘がつけると、さらに力が解放されるって話ですよね」
「そういや隼鷹とかが言ってたな。結婚みたいだなと俺が言ってたのも覚えてる」
花見の時に少しながらその話題が出ていたのだ。千歳が脱ぎ始めようとして、有耶無耶になっていたが。
「あなたたちの言う通りよ。正確に言えば、練度は99に達している人。つまり、相当な手練れな艦娘ね。そして、その相手となる人とセットで指輪をつけて書類に名前とかを書くのよ」
「それだけでいいのか?」
「それだけって、その書類なんて言われてるか知ってるの?」
「さあ」
「"ケッコンカッコカリ"、よ」
その言葉を聞いてたちまち八幡は眉をひそめた。
「なんじゃそりゃ」
「妖精さん曰く、絆によって能力をさらに解放するんだって」
「絆って、また…………」
「不思議な力なんて今に始まったことじゃないでしょ?私たちだって、謎が多いんだから」
当たり前の話だが、艦娘が一体どのようにして人知を超える力を得ているのかは科学的に証明できない。いわゆる、超能力とか言う、オカルトの領域だ。
「それで、そんな大層な装備を持ってここに何しに来たんだ?わざわざそれを見せびらかすために来たんじゃあるまい」
「そうね、もう単刀直入に言うわ。私と"ケッコン"してくれないかしら?」
「え!?」
思わず声をあげたのは祥鳳だ。対して八幡は表情を変えない。
「理由は?」
「この指輪、実はそんなに多くないの。今使っているのも3組だけ。もちろん、その3組の様子だと効果はバッチリ」
「なら、わざわざ俺に頼む必要もないだろ」
「でも、3組だけじゃまだその効果は本物なのかはわからないでしょ?研究者の話だと、艦娘の相手の強さにも関係があるんじゃないかって言われてるの」
「それとこれとでなんの関係がある」
「しらばっくれてるんじゃないの。生身で深海棲艦と戦う部隊を率いていた知り合いなんてあんた以外誰がいるのよ」
「はぁ…………それは君が使わないといけないのか?」
「そうね、最初は大和が候補に上がったけど既婚者だし、それに色々あってるから却下。他の娘は"カリ"だなんてついているけどやっぱり抵抗はあるみたい。それで白羽の矢が立ったのが私」
まるで面倒ごとを押し付けられたかのような口調だ。
「相手は自分が選んでいいとは言われたけど、そんなに男の知り合いだなんていないのよ」
「それで俺か」
「そ、ダメかしら?」
大鳳の言葉に八幡は答えない。ただ黙って考え込むばかりだ。
祥鳳には一抹の不安があった。
もし大鳳の話を受け入れるのであるのなら、"カリ"とはいえケッコンするわけだ。それがこの事情も知らない他の艦娘が知ればどうなるだろうか。
無愛想、変人などと言われてるが八幡を慕う者は少なくない。金剛のように明確な好意を向ける者はもちろん、叢雲や熊野だって好意があるのは周知の事実だ。榛名だってあるかもしれない。そんな彼女らが黙っているわけもない。
もし彼女らが動くのであれば大騒ぎでは済まないだろう。
しかし、八幡はそんなことを知る由もない。
祥鳳はひとりはらはらしながら自分の提督がどのような答えを出すのかを待っていた。
「狙いは本当にその新しい装備の効果を調べることなのか?」
「そうよ」
「本当に、か?」
八幡は目を鋭くして大鳳に問うた。
その瞳の奥は疑いの様子がこもっている。
大鳳はしばらくはその目を見つめ返していたが、やがて両手を挙げて、
「はあ、あんたに嘘は通用しないわね」
「わかってたのなら初めから本当のことを言え」
「だって本当のこと言ったら絶対あんた受け入れないんだもの」
「俺が受け入れたくなくなるような内容なのか」
「そんなところ。この指輪の性能を調査したいというのは建前。私とケッコンさせて、あんたを大本営に引き込むのが本命よ」
いとも容易く大鳳はことの内容を話してしまった。
聞いている祥鳳と八幡が困惑するくらいだ。
「大本営としては、あんたくらいの人は戦力として欲しいだろうし、佐久間さんとしてもいい後継者なのよ。それにあんたさえ来れば、長門や叢雲とかの実力のある艦娘も引き込まれるわけだし」
「その件は前も話した。そんな気は毛頭ないと」
「まあ、あんたにとって酷な話だとは知ってるわ。でも、いい加減乗り越えたら?」
大鳳の言葉に、八幡は若干表情を曇らせた。
八幡は過去に親友を含めた部下を全員失くす経験をしている。
「君は納得してないだろ?望んでもないケッコンなんぞする必要があるものか」
切れ者と知られる八幡にしては随分と露骨な話の逸らし方だった。
「こんな仏頂面で、捻くれ者なものを好いているほど、君も物好きじゃあるまい」
「そんなことはないわよ」
「そうだろ、だから…………は?」
「私も案外物好きかもね」
偽りのないまっすぐな言葉に八幡は絶句していた。
普段表情の硬いこの男も、こういう直球な言葉には弱い。
「ね、問題ないでしょ?あとはあんたが意思を固めるかどうか」
「なっ…………」
この話は"断る"と一言だけ言えばそれで終わるのだが、彼の根底にあるお人好しが彼を返答しづらくさせた。
無論、少し振られたくらいでめげるような人ではないと八幡もわかっている。が、真正面から拒否するのもなんとなく申し訳ない気分にさせるのだ。
「お、俺は、この仕事に誇りを持っているし、何より責任がある。簡単に辞められるものか」
「なら、みんな一緒に大本営に来たらいいじゃない。前とは違って、私たちが身の狭い思いをしなくてもいいし、あんたと反りの合わない連中もいない。なんの問題もないわ」
「それだと意味がない。俺らは民間軍事会社"鎮守府"だからこそ、一般の人にも頼られるし、艦娘が集まる。それが大本営所属になってしまえば本末転倒だ」
「ま、たしかにいい評判ばっかりね。こっちと違って身が軽いから迅速に対応してくれるし、何よりも依頼料が安い」
「ああ」
「でも、その代償はあるんじゃない?」
この時、祥鳳は大鳳が言わんとしていることを一部理解していた。
この鎮守府は、さっき大鳳の言った事柄から依頼する人が後を絶たない。基本的に出撃はローテを組んで行ってはいるが、空母の人数が少ないため必然と祥鳳たちに負担がかかりがちだ。それでも毎日毎日海に赴く必要がない分マシではあるが。
もっともしわ寄せが来ているのは提督の方だ。日々装備の確認や艦娘たちの状態、編成などはもちろん、戦いの指揮や依頼人への対応をしなくてはならない。さらに、ここには事務長のような金庫番もいないため、燃料や弾薬の管理も彼が一切合切行なっている。
秘書艦である叢雲や補佐の広瀬が手伝ってはいるが、酷使されているのは間違いない。
「あんたのその顔。疲れ切ったあんたなんて初めて見たわよ。頑張りすぎじゃない?」
「生まれつきの顔だ」
「馬鹿言わないの。本気で心配してるのよ」
「ならいらん心配だ。命を賭けて戦っている艦娘と比べて俺の執務は可愛いもんだ」
「あんたの場合は命を削ってるから問題なのよ」
「…………」
両者の間に何とも言えない沈黙が広がった。
祥鳳からしてみれば大鳳の言葉を否定も肯定もできなかった。
「何故、そこまで俺に構う?」
「さあね。いろいろ助けてもらったから、とだけ言っておくわ」
この時、大鳳の目に何やら熱っぽいものがあった。それがなんなのかはわからないが、少なくとも八幡に伝わったとは言いにくい。
「そうか。が、心配もいらん。たしかに今のデスクワーク中心の仕事は大変だ」
八幡は青白い顔に微かに笑みを浮かべて言った。
「だが、それ以上にここで過ごす時間が楽しい。戦場しか知らなかった俺からしたら、とても得難いかけがえのない場所なんだ」
祥鳳、大鳳ともにこの八幡という男がこれほどまっすぐな目で、まっすぐな言葉を発した瞬間を初めて見た。
呆気にとられている2人をよそに八幡は、
「だから、ケッコンカッコカリの件は申し訳ないが受けられない」
「…………」
いつまでもぽかんとしている大鳳に怪訝な目を向けながら、
「なんだ、そんなに俺の言葉がおかしかったか?」
「違うわよ。あんたもそんな顔するのね」
「どういうことだ。顔は生まれてから一度も変わってないと言っていただろ」
「ま、いいわ。今回のこと断られたって伝えておく」
「ああ、そうしてくれ」
「気が変わったらいつでも言ってちょうだい。元帥も大歓迎するわよ。もちろん私もね」
そう言い彼女は微笑を浮かべた。
「また昔みたいに広瀬君や熊野と馬鹿騒ぎできる日が来たらいいわね」
「…………そうか」
そう言い大鳳は立ち上がり、執務室から出ようとした。
「帰るのか?」
「んー、そう思ったけど、少しここを見学していくわ。熊野や広瀬君にも会いたいしね」
「ふむ、なら案内役を。祥鳳頼めるか?」
「は、はい」
「あと、俺はしばらく寝ているから困ったら叢雲に言ってくれ」
「分かりました」
祥鳳が応じるのを聞くと、八幡はふらふらと私室に入っていった。少し八幡の健康状態が気になるが、祥鳳はとりあえず大鳳の案内をすることにした。
「大変そうね、あいつも」
「やっぱりそう見えますか?」
自分たちの提督はいつも顔色が悪い、このことは祥鳳たちの知るところだ。ただいつもそんな顔色のために、それが普通なのではないかと少しながら思っていたのも事実だ。
「あれでも、疲れ知らずな人って言われてたんだけど…………さすがにデスクワークは話が違うのかしらね」
廊下を歩きながら、大鳳は呟くように言った。
「私たちも力になりたいと思ってはいるんですが、なかなか提督の負担を軽減させられなくって…………」
一部の艦娘は自分の艤装の管理くらいは自分で行なっているし、演習は全て自分たちで行うようにはしている。
「ま、あいつのことだから、全部やっちゃうのよね?」
「そ、そうですね」
やっぱり変わらないわね、と苦笑しつつ、大鳳は祥鳳の方を向いた。
「1つ頼めるかしら?」
「私にできるのなら…………」
「なら大丈夫ね。これからも武尊を支えてあげて。時には強引に手伝ってあげなさい」
「強引に?」
「ええそうよ。あいつは絶対に自分から助けてだなんて言わないのよ。だからみんなが知らないうちに追い詰められたりするの」
そのとき祥鳳はどきりとした。普段は何もないかのように執務をしている提督の姿は急にいつ壊れるか分からない危ういものではないかと。
「あいつは何も言わなかった。私にも広瀬くんにも熊野にも。表面だと泰然自若としてるけど中身はいつのまにかボロボロで」
大鳳は昔を思い出すかのように、しかしどこか悔やむ様子があった。
「大鳳さん?」
「あ、ごめん。とにかく、頼むわよ。何も言わないとぶっ倒れるまで働くから」
そう告げると、熊野と広瀬の姿を見つけてそちらの方に駆け寄って行った。広瀬と熊野は思わぬ友の再会に驚いた顔をしたが、すぐに会話に花を咲かせ始めた。そうなれば祥鳳が入り込む余地もない。
「提督のことは任せてください」
祥鳳は小さく、大鳳に向けてまた自分に言い聞かせるように告げた。
その姿は普段のおどおどした姿とは違い、凛とした1人の艦娘であった。
もう一つ閑話を投稿してから、次の話に移りたいと思います。