最初は本編が始まる数年前、主人公が中学生の頃から始めます。
“宇宙怪獣”は、“異世界怪獣”に変換します。
その少年は母親から実験を受けていた。
「どう、“傷無”?」
「お母さん、ボクどうなっちゃうの?」
真っ白でなにもない実験室、そこで日々、母親は自分の息子、“傷無”を使って実験に明け暮れた。
『ハート・ハイブリッド・ギア』と言う異世界のテクノロジーを活用した、最新鋭の技術の塊らしい。
コアと呼ばれる小さなカプセルのような物を傷無の体の中に埋め込む手術をされ、そのコアの力によって鎧のようなプロテクターと武器が自分に着装されるということ。
母親は傷無の脳波を調べる実験の最中に、機械に不具合が生じ、傷無の脳波にある映像が現れた。
『暗黒の空』
『岩とマグマの大地』
『異形の巨大生物』
そして、その生物と戦う『赤く輝く光の巨人』
幼い傷無はその巨人を見てふと呟く。
「ウルトラ・・・マン?」
『・・・・・・』
『巨人』は傷無の存在に気付いたのか、傷無の方を向き、ジッと見つめる。すると、傷無の意識が遠退き、現実に戻ると、その光景を忘れていた。
そして再び母親との実験の日々が始まった。自分が実験をすると母親が喜ぶ、ただそれだけが、幼い少年の誇り。母親に頼られていることが誇らしかった。世界で唯一ハート・ハイブリッド・ギア所持者であることが自慢だった。母親の役に立っていることが嬉しかった。
だが・・・・・・。
「お母さん、待って!!」
その少年は、去り行く母親の背中を追いかけた。
「“傷無”、あなたのスペックでは、もうこれ以上の“実験”は意味がないわ。あなたはもう必要ないの」
背を向けたまま母親は、我が子に見向きもせず去って行く。
「まって!お母さん!ぼく、もっとがんばるから!だから!!」
転んでしまいそれでも必死に母親に手を伸ばす幼い少年に、母親は何の感情も籠っていない冷徹な言葉を浴びせる。
「じゃあね、傷無。さようなら」
「お母さん!お母さーーーーーーーーん!!!」
傷無と呼ばれた少年の必死の声は空しく響いた。
ハッと“飛弾傷無”は幼い頃の記憶を夢に見て目を開く。
「久しぶりに見たな・・・」
黒髪の短髪に整った顔立ちの少年、傷無は同じように母親に捨てられた“姉”と住んでいる家の窓から街を見た。
“超大型浮体式海洋構造物<メガフロート>・日本”。フロートとは海の上に作られた巨大な都市である。東京フロート、大阪フロートなど、各都道府県が作ったフロートが接続し、巨大な構造体となったのが、このメガフロート日本だ。
その大きさは東京二十三区に匹敵する巨大さだが、アメリカなどの超大国に比べれば規模は小さく、メガフロートの大きさはその国の国力を表し、各国がそれぞれに独自のメガフロートで、世界の海を漂っている。
国土を失った世界中の国家は今や、そのメガフロートが国そのものであり、国土の全てである。メガフロートの乗組員と住人が現状安否が確認できる国民の全て。
世界中の海を航海するメガフロートに領海の意味はない、世界地図も存在しない、全ては世界が一変した“あの日”から始まった。
『第一次異世界間衝突』
十五年前に、何の脈絡も前兆も無く唐突に世界中で異世界との衝突面<エントランス>が出現し、そこから魔術と科学が融合した“魔導兵器”と“超巨大生物<怪獣>”が現れ、未だに各国を蹂躙している。傷無自身、先日年の離れた姉(五歳位)と、本国からメガフロート・日本にやって来た。異世界との衝突面<エントランス>が開いてたった二週間で、百の都市と五千万人の命が失われ、人類は異世界の軍隊に対してまったくの無力だった。こうして異世界とのファーストコンタクトは最悪の形で終わる。
そして約半年後、『第二次異世界間衝突』が発生した。
第一次とは比較にならない規模の衝突は、各大陸、島国、例外なく衝突面が発生し、異世界の魔導兵器と怪獣が押し寄せてきた。人類の通常兵器では対抗することはできず、瞬く間に軍隊は滅ぼされ、世界は支配された。
各国は箱舟や戦闘の切り札としてメガフロートを建設し、都市機能・政治・経済、全ての社会機構を備えたミニチュア、それがメガフロートである。本来の国土を捨てた各国は、メガフロートで海の上を漂う移動国家となった。しかし、メガフロートに乗れなかった国民は、旧国土に取り残されたまま、その人々がどうなったか、現在では知る術はない。陸地は電波遮断され通信も出来ず、本国に近付くと魔導兵器、怪獣、艦隊が現れ、安否の確認もできない。
メガフロートに住まう人々は再び本国を取り戻し、残された人々を救い、自分達の街や家に帰る事を願っている。
「ん?・・・・・・あれは・・・!」
ふと傷無が空を見上げると、そこに衝突面<エントランス>が現れた。そしてその中から“巨大な結晶”が現れ、浮遊していた。“ソレ”が何か知っている傷無は、嫌、メガフロート日本に住む人々全員が知っていた。直ぐに避難勧告が発令され、人々は避難しようとする。
浮遊していた結晶は地上に近付くと目映く光り、周辺の建物を破壊する。地上に到達した結晶はメガフロートの道路を破壊し、結晶を内部から破壊しながら“ソレ”は現れた。
『ギュワアアアアアアァァァァアアアアアア!!!』
頭頂部が鋭利に伸び、顔の周りや肩に鋭利な武器を持ち、両手にはこれまた鋭利な鉤爪を持った怪獣。
『異世界戦闘獣 コッヴ』
コッヴは鋭利な鉤爪を振り回し、建物を破壊する。傷無は避難の波に飲まれ、一人取り残された。傷無はコッヴを睨み破壊されるメガフロートを見て拳を握る。
「どうしたら・・・どうしたらいいんだぁぁああああああああああ!」
傷無が叫ぶと、傷無の周りの景色に異常が起きる。
『飛び散る建物の破片』、『舞う土煙』、『風で飛ぶ新聞』、全てが時が止まったかのように凍り付いた。
「・・・・・・・・・???」
戸惑う傷無の足元の道路が、傷無を囲むように円型に光り、大きな穴となった。
「うわあぁっ!?」
傷無はそのまま落下し、穴は塞がった。奈落の底に落ちるように落下する傷無。
「うわあぁぁぁああああああ!!」
悲鳴を上げる傷無、暗い穴が光りに満ちる。
「何処に向かってんだよおおおぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
光る穴から出ると、空に浮かぶの目の前に幼い頃に出会った『光の巨人』が目の前にいた。
「君は!?・・・そうだ・・・思い出した! 君はウルトラマン!」
『光の巨人 ウルトラマン』はジッと傷無を見つめる。
「ウルトラマン!地球が危ないんだ!俺は、“君”になりたい!俺は“優れた人間”でもなければ、“特別な存在”でも無い!・・・でも、君の“光”が欲しい!俺に力を!!」
ウルトラマンは傷無に向けて両手を伸ばす。
「俺を・・・試しているのか?・・・」
傷無もウルトラマンに向けて両手を伸ばす。すると傷無の身体はウルトラマンに近付き、ウルトラマンの胸の宝石に吸い込まれる。すると傷無の身体を光が包む。
「この“光”・・・とっても暖かくて・・・俺を包んで・・・違う、“光”が俺の中に入ってくる・・・!」
傷無の身体は“光”に包まれ、目が眩み再び景色が目に入ると、傷無がメガフロート日本を“見下ろしていた”。
コッヴの目の前に赤く輝く光りが現れる。
『ッッッ!!!!????』
目が眩み、怯むコッヴ。光は人の形になり、降り立つ。
『ヅアっ!!』
そして、メガフロート日本に住む人々は見た。その“巨人”を。銀の身体に赤い模様が入り、金のラインが走り、胸に青く光る宝石を付けた巨人を。
道路を揺らし現れたその“巨人”にコッヴは雄叫びを上げる。
『ーーっ!!ーーっ!!ーーっ!!』
ー???ー
その光景をメガフロートのある場所で見ていた、黒髪に服の上からでも解る程の完璧なセクシーボディの女性と金髪に眼鏡の小柄な少女も見ていた。
『光の巨人・・・?』
「・・・・・・」
眼鏡の少女は端末越しに呟き、黒髪の女性はジッと“巨人”を見つめる。
ーメガフロート日本ー
現れた“巨人”、“ウルトラマン”は自分の身体を戸惑うように見つめ、コッヴは雄叫びを上げて走り出す。
『・・・!!』
“巨人”はコッヴに向かって走り出す。
『デュワっ!』
コッヴと組み合うウルトラマンはパワーのあるコッヴに押し出され、投げ飛ばされる。
『ウワァッ!』
投げ飛ばされたウルトラマンは転がり、四つん這いになり、その腹部をコッヴが蹴り上げる。
『グワッ!』
『ギュワアアアアア!!!』
蹴られながら立ち上がろうとするウルトラマンをコッヴは更に蹴り上げる。
『ウワッ!!』
倒れるウルトラマンを更に攻撃しようとするが、寸前でウルトラマンは転がり、攻撃を交わし転がりながら立ち上がる。
『(負けない!俺は、ウルトラマンなんだ!!)』
ウルトラマンとなった傷無は構え、コッヴに立ち向かう。
コッヴは鋭利な鉤爪で攻撃しようとするが、ウルトラマンはその腕を受け止めて、肘鉄で攻撃し腹部を乱打する。
『デュワっ!タァッ!タァッ!タァッ!タァッ!タァッ!!』
更に蹴りをおみまいし、後ろに引かせる。
『ーーっ!!ーーっ!!』
コッヴは鉤爪で攻撃するも、ウルトラマンはバックステップで交わし、コッヴの頭頂部を手刀で攻撃するが鉤爪に捕まる。
『デュワっ!』
鉤爪から離れ攻撃しようとするがコッヴは攻撃を交わされるが、回し蹴りをおみまいする。
『ギュワアアアアア!!!』
コッヴは鉤爪を使い攻撃するが、ウルトラマンに受け止められ、反撃を食らう。後方に下がるコッヴの頭頂部が光り、エネルギー弾をウルトラマンに浴びせる。
『ウワアアアアアアっ!!』
次々と放たれるエネルギー弾にウルトラマンは後ろの建物を壊しながら倒れる。
『ギュワアアアアア!!!』
これ幸いと倒れたウルトラマンにのし掛かるコッヴ。両手の鉤爪で動きを封じ、口で食いちぎろうとするが、ウルトラマンは何とか防いでいた。
『グウウウウウウウッ!!』
ウルトラマン<傷無>の脳裏に幼い頃に見た、ウルトラマンの技が浮かんだ。
『デュワアアアッ!!』
『ギュワアアアアア!!!』
のし掛かるコッヴを蹴り飛ばす。蹴り飛ばされたコッヴは転がる。
『デュワっ!ハアッ!』
起き上がったウルトラマンと同じく起き上がったコッヴが構え向き合う。
『ギュワアアアアア!!!』
コッヴは再びエネルギー弾をウルトラマンに浴びせようとするが。
『デュワっ!デヤッ!ハアッ!』
エネルギー弾を腕で弾き飛ばす。
『ジュワッ!!』
両手を大きく広げ、赤い閃光がウルトラマンを包むと、力を込めるように蹲るとウルトラマンの頭頂部に光が集まり赤い光の鞭のようにしならせた“光の刃”、『フォトンエッジ』がコッヴを貫く。
『ーーーーーーーーッ!!!!!』
『フォトンエッジ』を浴びたコッヴは内側から爆発し、塵となった。
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
ウルトラマンの戦いを見ていた人々から喝采がウルトラマンに送られる。
ピコン!ピコン!ピコン!ピコン!
胸の宝石が青から赤く点滅し、警報のような音が響いた。
『ジュワッ!!』
ウルトラマンは自身の身体を光らせるとその姿を消した。ウルトラマンの足元に、傷無がいた。
「・・・・・・・・・」
傷無は自身に起こったことに戸惑うが、目の前に“小さな光”を見つけると、近くに落ちていた小瓶に光を入れる。
「俺が・・俺が、ウルトラマンになったのか・・・?」
戸惑いながら、傷無はその場を離れた。
ー傷無の家ー
その日の夕方、運良く被害は少なく、傷無の家にも傷ひとつ無かった。
「ああうん、こっちは大丈夫だから、姉ちゃんも心配しないで・・・あぁ、あぁ、それじゃあね」
別のフロートで仕事している姉と連絡を終えた傷無は小瓶の中の光を見つめる。
「俺が、ウルトラマンになるなんてな・・・ウルトラマンってだけじゃ物足りないな・・・・・・そうだ、“ガイア”・・・この地球を守るウルトラマン。お前の名前は『ウルトラマンガイア』だ!」
小瓶の光が強く光る。まるで喜ぶかのように。
「・・・ッ!?」
すると、傷無の頭に何かが走った。それは新たな怪獣の“気配”だと、傷無は直感した。
「行かなくちゃな・・・一緒に戦おうぜ!『ウルトラマンガイア』!!!」
小瓶を持って高く掲げると傷無の身体が光に包まれ、何処かに飛んでいった。
傷無は知らない、この事件から数年後に待ち受ける、自分のハート・ハイブリッド・ギアの隠された機能と“姉”の仕事。自分の運命に大きく関わってくる少女達、自分と戦うことになる女戦士達、地球と異世界の戦争に自分自身がその身を投じていくことを・・・。
そして、自分の母親と“殺し合う残酷な運命”を・・・。
傷無の強化はいずれ。