この作品ではハヤトの未来は少し違う設定にするつもりです。
『異世界帝国 バトランティス』。傷無達の使うH・H・G<ハート・ハイブリッド・ギア>があり、男性は“衰退”し、“女性しか”存在しない世界。傷無の恋人である千鳥ヶ淵愛音の故郷であり、かつて傷無達と異世界戦争を繰り広げていたが和解し、機械神を相手に共に戦った。
そしてここに、“バトランティスの救世主”である光の巨人、“ウルトラマンガイア”が再びバトランティスの大地に現れた!
ーヴァイスナイトVS三大ウルトラマンー
「ウオアァッ!」
「ディヤッ!」
「シュワッ!」
「ジャッ!」
白い騎士 ヴァイスナイトとガイア・ティガ・ダイナがお互いを見据えて構えた。
「うおおおおおおおおおッッ!!!」
ヴァイスナイトが左手から破壊光線を放つ!
「ハァッ!」
「シュアッ!」
ティガとダイナがバリアを張り光線を防ぐ。
「シュゥワァッ!!」
二人の上に飛び越えたガイアがヴァイスナイトに飛び蹴り、肘鉄、正拳、回し蹴りをしてヴァイスナイトの両手を掴む!
「ぐうぅっ!!!」
「《ヴァイスナイト! お前が機械神に恨みを持っていることは分かった! だが何故俺だけではなく、ティガやダイナの世界にまで進行したんだ!!》」
「俺は許さない! “光”に選ばれたお前達を!! そして何よりも、何故お前は守れた!?」
「《何っ!?》」
「俺は守れなかったのに! 何でお前は守れたんだ!? 俺とお前は! “同じ筈”なのにっ!!」
「《何を・・・っっ!!??》」
ガイアに変身した傷無の頭に“ビジョン”が入り込んだ。
「(これは・・・? ガイア、アグル・・・君達が見せているのか? まさかこれが、“ヴァイスナイトの記憶”だと言うのか・・・??)」
「うおおおおおおっっ!!」
「ウワァッ!?」
ヴァイスナイトがガイアを押し飛ばし、ガイアに横凪ぎに斬り付けようとするが。
「ウッ、フッ!」
ガイアは後方宙返りでかわすと。
「シュワァァァァァァァァァァっ!!」
「シャァァァァァァァァァァァっ!!」
ガイアの後方にいたティガとダイナが『ゼペリオン光線』と『ソルジェント光線』をヴァイスナイトに向けて放つ!
「グゥアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」
ティガとダイナの必殺光線を食らってヴァイスナイトは吹き飛んでしまい、仰向けに倒れる。
「「「(コクン)」」」
ティガとダイナとガイアはお互いに頷き合う。
「くぅっ・・・! ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・!」
ヴァイスナイトはヨロヨロと立ち上がる。
「「「っ!」」」
ガイア達はヴァイスナイトに向けて構えるが。
「許さない・・・! 赦さない・・・! 憎い・・・! 憎らしい・・・!! このままで、済むと・・・思うなよ・・・!! フンッ!!!」
ヴァイスナイトは身体が“白い光”に包まれると消えてしまった。
「「「・・・・・・・・・・・・ぐうっっ!!」」」
ピコン、ピコン、ピコン、ピコン、ピコン、ピコン、ピコン、ピコン・・・!
ティガとダイナとガイアのカラータイマーが鳴り響き、片膝を付く。
「うぁっ・・・!」
「ぐぅっ・・・!」
「あぁっ・・・!」
三人のウルトラマンはそのまま変身解除し、『神装機竜 バハムート』を纏ったルクス・アーカディアと、『百武装<ハンドレット> 飛燕・閃光』を纏った如月ハヤト、『HHG<ハート・ハイブリット・ギア> エロス』を纏う飛騨傷無が異界の空に現れた。
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
黒い鎧を纏う三人は、お互いに相手を見て沈黙するが、傷無が切り出す。
「助けてくれてありがとう。君達も、“ウルトラマンに選ばれし者”なんだな・・・?」
「うん、僕はルクス・アーカディア」
「俺は、如月ハヤトだ」
「飛騨傷無。俺達はどうやら異世界に飛ばされたようだな・・・」
「待って、あそこに大きな都市があるよ。それに城みたいな建物がある」
「それにスッゲェ大きな塔があるぜ」
「っ!!」
辺りを見渡したルクスとハヤトが指差す方を見ると、傷無の目に見たことがある都市と城、そして巨大な塔が目に入り、愕然となった。
「傷無・・・?」
「どうしたんだ?」
「『創世の御柱<ゲネシス>』・・・! それにあの都市は、『バトランティス』・・・!? まさか、この世界はっ!?」
すると、城から桃色の光がこっちに向かってきた。
「・・・・・・ぃさまーーーーーーーー!!」
「っ! あれは・・・!」
「兄さまーーーーーーーー!!」
「“グレイス”っっ!!」
傷無に突っ込んだ少女を受け止めた傷無は少女の勢いで空中回転しながらも、その少女、傷無の恋人“千鳥ヶ淵愛音の妹”であり、異世界帝国“バトランティス”の皇帝、グレイスであった!
「兄さまっ! 兄さまっ!! 本当に兄さまなのじゃな!?」
「あぁ! 俺だ、俺だよグレイス・・・!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁん、兄さま!! もう会えぬと思っていたぞーーーーーーーー!!」
傷無の胸元に顔を埋めて泣きじゃくるグレイスの頭を傷無は愛しそうに優しく撫でていた。
「「(ポカーーーーーーーーン)」」
しかしルクスとハヤトはポカンとしながら傷無とグレイスを見ていた。突然やって来た露出の激しい美少女が現れて、先程まで共に戦った少年と仲睦まじく抱擁していれば当然と言える。話掛けようとすると、グレイスの横に空中ディスプレイが現れ、“紫色の髪をした美女”が現れた。
《グレイス様! 突然飛び出さないで下さい!》
「ゼルっ!」
《傷無・・・って、“ゼル”などと気安く呼ぶなっ!》
「わ、悪い“ゼルシオーネ”・・・」
傷無を見て一瞬頬を緩ませた“ゼルシオーネ”と呼ばれた美女は直ぐに睨んで言い直させ、ゼルシオーネは咳払いをする。
《んっんん・・・・・・グレイス様、とりあえず傷無と、そこの光の巨人になった二人も連れて王宮に来て下さい》
「おぉ、そうじゃな! ゼルよ、直ぐに兄さまの歓迎の宴の準備をするのじゃ!」
「待ってくれグレイス」
「どうしたのじゃ兄さま?」
「さっきの白い騎士、ヴァイスナイトの事で色々と説明しなければならないし、あの二人にもこの世界の事を話さないとな」
「フム、兄さま以外の男は初めて見るのぉ・・・」
グレイスは灰色の髪の中性的な美少年 ルクスと精悍な顔立ちの黒髪の少年 ハヤトをようやく目に入れた。
「ん? グレイスはアタラクシアでは男子生徒と接点は無かったのか?」
「ウム、妾は兄さま一筋じゃからの! あ、勿論姉さまも愛しておるぞ。男では兄さまが一番で、女では姉さまが一番じゃ!」
「アハハハハ、ありがとう・・・それじゃ俺は二人にこの世界の事を話しておくな」
傷無はルクスとハヤトに近づいて説明をする。
ー数分後・バトランティス帝国上空ー
きゃーーーーーーーーっ!! きゃーーーーーーーーっ!!
「傷無さまーーーーーーーーっ!!」
「バトランティスの救世主さまーーーーーーーーっ!!」
「ガイアさまーーーーーーーーっ!!」
「アグルさまーーーーーーーーっ!!」
バトランティス上空を飛ぶ桃色と3つの黒い機影に向かってバトランティス帝国国民は大歓声を上げた。主に傷無と傷無と共にいるウルトラマンガイアとウルトラマンアグルに対して。
「凄いなぁ傷無は。まさに英雄扱いだ・・・」
「それにしても、この世界って本当に女性だけなんだな。どうやって子孫を残しているんだ?」
「あぁ、かつては男性も居たようだが、あの『創世の御柱<ゲネシス>』が女性だけでも子供を作る事を可能にしてな、だが生まれてくるのは女の子だけ・・・」
「そうか、それで男性は“衰退”したんだね・・・」
「同じ男としては、何とも世知辛いなぁ・・・」
「それに、“身分の高い人は露出の激しい服を着る”のがこの世界のしきたりって傷無から聴いてはいたけど・・・//////」
「ちょっと困るよな・・・//////」
先程から露出の激しいグレイスの格好にルクスとハヤトは悲しきかな男のサガでついついチラ見してしまう。
「ム、お主ら、兄さまの仲間と思うから見逃してやるが、本当はバトランティス皇帝の妾の柔肌をそう容易く見るものでは無いぞ・・・!」(ギロリッ)
「「し、失礼しました! グレイス皇帝陛下!!」」(ビシッ)
「まあまあグレイス、そろそろ王宮に付くぞ」
睨まれたルクスとハヤトは思わず敬礼し、傷無がグレイスを宥め、四人は王宮の中庭に着地するとそれぞれの鎧を解除すると、先に来ていた多くの女性達が敬礼した。そこに傷無と敵対し、後に戦友として共に戦った仲間達の姿があった。
「グラベルっ! アルディアっ!」
「傷無・・・っ!」
「はぁ~い傷無♪」
“イズガルドの英雄”・“褐色の獣”と呼ばれ、金色の短髪に褐色の肌をしたスポーティーなグラマラス美少女 グラベル、かつて傷無達がバトランティスと敵対していた時『フォトンエロス』となった傷無と激戦を繰り広げた強者だが、その凛々しい目元に涙を溜めて傷無を見つめていた。もう一人は、傷無達が初めて出会ったバトランティス側のHHG装着者、緑色の長髪に芸術的なプロポーションをし、“戦闘狂”としても名高い戦士 アルディアが明るく手を上げた。
「飛騨君・・・!」
「久しぶり・・・」
金髪碧眼の西洋人形のように高貴で美しい妖精のような美少女、バトランティス親衛隊 一番隊隊長で剣を持てば『剣聖』とまで言われる実力者のハーキュラスと、二番隊 隊長でスポーツ選手のように鍛えられ、スリムでしなやか茶色のロングの美少女、メルクリア。ハーキュラスは嬉しそうに頬に笑みを浮かべ、メルクリアは少し素っ気ないが口元は少し笑っていた。
「久しいな傷無!」
「また会えて嬉しいですわ・・・!」
「・・・久しぶり///」
「よぉ、傷無!」
「クレイダ! エルマ! ルノーラ! ラムザ!」
親衛隊隊長ゼルシオーネの懐刀である“懲罰四剣<クアルトウム>”、金髪に眼帯のクレイダと、おっとり白髪のお嬢様風のエルマ。かつてバトランティスから脱出し、一時的にガイアの力を失った傷無と戦い(二人と戦った後でアグルになった)、某フルなメタルでパニックの軍曹曰く、【獲物を前に舌舐めずり、三流のやる事だな】で傷無にぼろ負けした二人「「(何か悪意を感じる!!)」」と、傷だらけの長身に長い髪、死神と異名を持つが内気で恥ずかしがり屋の少女 ルノーラと、好戦的でさばさばした性格の炎を自在に操る赤い髪の少女、ラムザが手を振っていたがゼルシオーネに睨まれ手を引っ込める。
「全く、相も変わらずの気の抜けた顔を晒して・・・!」
「手厳しいな、ゼルシオーネ・・・」
「手厳しくもなる! 一体何が起きたのだ!?」
「そうじゃ兄さま。説明してたも・・・」
「あぁ、でもその前にこの二人の事情も聴いておかないとな」
傷無が、ルクスとハヤトを前に出す。二人はそれぞれ、『スパークレンス』と『リーフラッシャー』を取り出して自己紹介を始めた。
「はじめまして、僕はウルトラマンティガ、ルクス・アーカディアです」
「俺は如月ハヤト、ウルトラマンダイナだ」
「先ずは、二人の“世界”で起こった事を話してもらおう・・・」
~バトランティス王宮会議室~
一時間後、ルクスとハヤトの“世界の情勢”と“ヴァイスナイトの襲撃”を聞き終えた一同。ちなみにルクスとハヤトはパイロットスーツだったが、グレイスが特注で作らせた、傷無と同じアタラクシアの男子制服を着用している。
「フム・・・“神装機竜”と“超古代の魔獣 幻神獣<アビス>”に、“百武装<ハンドレット>”に“侵略者<サベージ>”か・・・」
「何処の世界も、我々の世界と似たようなモノだな」
「異世界と戦争をしていない分は俺達の世界より幾分かマシだけどな・・・」
「そして平行世界に存在する、兄さまと同じ“光の巨人 ウルトラマン”じゃな」
「ウルトラマンティガは、僕達の世界の超古代の存在だと思います・・・」
「ダイナは突然宇宙から飛来した存在だと思う・・・」
「傷無と共にいる、地球<レムリア>の大地と大海から生まれたウルトラマン、ガイアとアグルか・・・」
「そしてウルトラマンに“選ばれた者”を狙う、機械神に自分の世界を滅ぼされ、その復讐を私達に奪われたヴァイスナイト・・・」
「はた迷惑な逆怨みよね・・・」
「グレイス皇帝陛下、おそらくヤツは近い内に再び現れると思います」
「では、それに備えねばな・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
皆が話し合いを続けている一方、傷無は浮かない顔色であった。
「傷無?」
「っ、なんだハヤト?」
「ボーとするなよ、とりあえずグレイス皇帝陛下が防備を固める事にしたから、俺達は部屋で休んで構わないってさ」
周りを見るとグレイス達は防備を固める為に忙しなく動いており、暇なのは傷無達だけだった。
「わかった」
傷無はルクスとハヤトと共に、侍女の女性に部屋まで案内してもらった。
ー傷無・ルクス・ハヤトの部屋ー
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
傷無はバルコニーで外を眺めていると、ルクスとハヤトが話しかける。
「傷無・・・」
「ルクス・・・」
「何か悩んでいるの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「俺達は同じウルトラマンに選ばれた者だ。少しは相談に乗るぜ」
「・・・・・・・・・ヤツと戦っているときにヤツの、ヴァイスナイトの記憶が流れてきたんだ」
「ヴァイスナイトの・・・?」
「ヤツか何故あそこまで俺を憎んでいたのか、それはヤツの復讐相手、機械神を倒しただけじゃなかったんだ」
「「・・・・・・・・・」」
傷無は淡々と語った。ヴァイスナイトの過去を。
ヴァイスナイトは自分たちと同じ“平行世界の地球”の人間だったこと。
幼い頃に親に捨てられ、姉と二人で暮らしていた事。
ヴァイスナイトの世界は、“女性しか扱えない世界最強の兵器”が有り、“女尊男卑”の世界であり、その兵器を扱える“世界で唯一の男”となった事。
兵器を操るパイロットとなる為にその兵器専門校に入学させられ、そこで多くの仲間達を得た事。
そして実の姉はその兵器関連で重役に付いていた事。何から何まで傷無と同じ“人生”を歩んで来た二人は機械神と遭遇した。
傷無は幸運にも“仲間達”や協力する事になった“母親”と、“二人のウルトラマン”と共に全てを“取り戻し”そして“守れた”。しかしヴァイスナイトは全てを“奪われ”そして“守れなかった”。
話を聞いてルクスとハヤトも悲痛な顔を浮かべる。
「ヤツと俺は瓜二つだ。だからかな、もしも俺が守れなかった時、アイツのような復讐鬼になっていたかもしれない・・・」
「傷無。僕もその気持ち、分かるよ・・・」
「俺も、“守れなかった悔しさ”なら少しは分かるな・・・」
ルクスは話した、自分はかつて世界の大半を支配した“アーカディア旧帝国”の末席の皇子だったが、実の父親である皇帝から冷遇され、気にも止められなかった皇子であり、国を変えようとしたが失敗し、多くの人間達を死なせた事。
元皇族だったが故に国民達から冷ややかな目で見られ、迫害を受けた事とそのせいで母親を失い、全てに憎しみを抱いたが幼なじみの少女のお陰で立ち直り、“アティスマータ新王国”から“国民への奉仕<雑用>”をするように義務付けられた。
そして機竜使い<ドラグナイト>の仲間達に囲まれ、初めて“誰かに必要とされる”、“誰かに認められる”嬉しさを知った。
ハヤトも話した、侵略者<サベージ>が初めて地球に襲来した日、家族で旅行をしていたハヤト達は侵略者<サベージ>の攻撃で両親を失い、それからは幼い妹と共に孤児院で過ごしながら、剣の修行を行っていた事。
「僕やハヤト、それに傷無だって多かれ少なかれ、大切な人を失った・・・」
「ヴァイスナイトの気持ちも解らなくもない。だけど、イヤだからって、憎しみの捌け口として俺達の世界を破壊して良い理由にはならないだろう・・・!」
「それは分かっている・・・でも・・・!」
ルクスやハヤトの言いたい事は頭では分かるが、それでも心、感情が納得できないでいた。
バタンッ!!
「「「ッッ!!!???」」」
「情けないぞ、兄さまッッ!!」
「グ、グレイス!?」
部屋の扉を蹴破りズンズンと近づくグレイスは傷無の手を握り引っ張って部屋を出る。
「お主らも来い!!」
「「は、はい!!」」
「お、おいグレイス! 一体何処へ・・・?」
「いつヴァイスナイトが現れるか分からん状況だから言わなかったが、今の兄さまはヤツと戦う気概が無くなりそうになっておる!!」
「・・・・・・・・・」
無言になる傷無を無視してグレイスは空中ディスプレイを出してゼルシオーネとグラベルを映す。
《グレイスさま?》
《どうしました?》
「ゼル! グラベル! “あの子達”を兄さまに会わせるぞ!!」
《えっ!!??》
《何故にですか!?》
「何故も何もない! これから兄さまを連れていくからな!!」
《ち、ちょっと》
《グレイス様・・・!》
ディスプレイを消したグレイスは傷無の方を振り向き。
「兄さま!」
「な、何だ?」
「兄さまがヤツ<ヴァイスナイト>に同情する気持ちは分かる! しかしヤツの蛮行を見過ごして言いわけが無かろう!」
「・・・・・・・・・」
「全く! かつては“レムリアの魔王”、“光の魔人”とまで言われた兄さまがこの体たらくとは!?」
「イヤそれはお前らバトランティス側が勝手に言ってただけで・・・!」
傷無の言葉を無視してグレイスは傷無を引っ張って“ある部屋”への扉を開くとそこには。
2つのベビーベッドに眠っている二人の“赤ん坊”が侍女らしき女性にオシメを換えて貰っていた。
「この子達は・・・?」
傷無とルクスとハヤトは赤ん坊を見ると、1人は紫色の髪に色白い肌をし、もう1人は褐色の肌に金色の髪をしていた。
「何か、見たことある髪の毛だね」
「あれ? 傷無、この世界<バトランティス>って“女の子しかいない世界”なんだよな?」
赤ん坊の下半身を見たハヤトが傷無に聞く。
「あぁ、そうだけど」
「この子達二人とも、“男の子”だぞ!」
「「何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!?」」
「(ヒソヒソ)こら! 兄さまにルクス・アーカディア! 赤ちゃん達が起きてしまうぞ!」
「嫌だってグレイス。バトランティスでは“創世の御柱<ゲネシス>”が子供を生み出すけど女の子しか生まれない”って・・・! しかもこの子達の母親は一体・・・!?」
「それはのぅ兄さま・・・」
「グレイス様っ!」
「あぁ、傷無まで!」
部屋にゼルシオーネとグラベルが慌てて入ってきて、ルクスとハヤトと傷無はギギギと首を動かす。
「・・・まさか」
「イヤまさかね・・・」
「ゼル・・・グラベル・・・ま、まさか・・・」
「その・・・傷無・・・あの時の“究極改装”の時の」
「クッ・・・不覚だった・・・!」
傷無の脳裏に、機械神達との戦いが終わり、“衝突面<エントランス>”が閉じる事でバトランティスとの繋がりが消えてグレイス達と離れる僅か数日の間に、グラベルとゼルシオーネとの“究極改装”を思い出す。
「もしかして、あの時の・・・?」
「が、頑張った・・・!//////」
「・・・当たってしまうとはな/////」
グラベルは顔を赤くしながらも誇らしくし、ゼルシオーネは憎まれ口を叩きながらも口元が緩みそうになるのを必死に耐えていた。
「マジ・・・かよ・・・」
「傷無・・・・・・」
「お前・・・凄いな・・・」
傷無は愕然となり、ルクスとハヤトは傷無にある種の尊敬の目線で見ていた。
「全く! グラベルは未だしもゼルが妾を差し置いて兄さまと子供を生んでいたとはな!」
グラベルは傷無に惚れているのを知っていたが、片腕であるゼルシオーネまで抜け駆けしていた事にグレイスは憤慨する。
「・・・・・・・・・」
「二人が妊娠していると知った時なんてもう大変じゃったのじゃぞ。出産なんてもはや文献レベルでしかなくてあらゆる古代の記録をひっくり返しながら調べたのじゃ・・・」
「そうだっのか・・・」
「グレイス様や懲罰四剣が出産に立ち合ってくれてな、懲罰四剣の奴らなど目を回したり泡を噴いたり白目を剥いて気を失っていた・・・」
「私の時はアルディアだったが、アルディアのヤツ目を開けたまま気絶していたな」
グラベルとゼルシオーネはそれぞれの子供達を抱き上げる。
「出産の時は身を引き裂かれるような激痛と苦痛に苛まれたが、こうして生んだ我が子がこんなにも愛おしいものなのだな・・・」
「そうだな、お腹を痛めて生んだ子供とはこんなに、心から大切だと思える・・・」
自分の子供達を抱き抱えるグラベルとゼルシオーネのその顔は我が子を慈しむ“母親の顔”だった。
「そうか・・・俺の・・・子供か・・・!」
傷無も感激したように二人が抱える我が子の顔を覗き込む。
「傷無・・・」
「抱いてやれ・・・」
「良いのか?」
「良いも悪いも無いじゃろう兄さま」
「その子供達は傷無の子供なんだからね」
「抱いてやるのは当然だろう」
ゼルシオーネやグラベルから赤ん坊を両腕で抱き抱えた傷無は子供達を見つめる。
「ア、アウ・・・ア・・・!」
「キャッキャッ・・・!」
子供達は傷無を見て嬉しそうに微笑んでいた。
「ありがとう・・・ゼル・・・グラベル・・・本当に、ありがとう・・・!」
傷無は涙を流しながら子供達を愛おしそうに抱えた。
ゼルシオーネとグラベルは傷無の子供(それも男の子)を生んだ設定にしています。
そして次回はヴァイスナイトとの決戦にしたいです。