今回は朱の戦姫の所まで飛ばします。
「(何なんだコイツら?!)」
内心ルクスは今現在の自分の目の前で起きた状況に困惑していた。
「ガアアアアアアアアアアアアァァァァァァ!!!!」
「ピュギャアアアアアアアアアァァァァァァ!!!!」
自分の目の前にいるのは、『巨大な鎧を纏ったような生物』と『刃のような翼を持った巨大な鳥』が暴れていたのだ!
話は先日の夜。『ピラミッドのような遺跡<ルイン>』で謎の『巨人の像』を見つけ、謎の『白いスティック』を手にした日の晩に寝床をくれた酒屋の娘と再会した時、彼女の手荷物のポシェットをいきなり近くにいた猫が奪いルクスがその猫を追いかけ初めたのが全ての発端だった。
そのまま猫と追いかけっこを繰り広げていたルクスは何故か、貴族や上流社会のご令嬢が住まう。
城塞都市『クロスフィールド』・王立士官学校<アカデミー>。
そのアティスマータ新王国が設立させた機竜使い<ドラグナイト>を育成する『女学園』の『女子寮』の屋根に、しかも『入浴室』の屋根に登ってしまい(ルクス本人は猫に追いかけるのに夢中で気付かなかった)、あろうことかその時屋根を踏み破ってしまい、ちょうど入浴中だった令嬢達のいるところに落ちてしまい。『痴漢』やら『覗き魔』やら『下着ドロ』と呼ばれながら逃げていた(弁解する余裕も無く、装甲機竜<ドラグライド>を纏った少女達に追いかけられた<襲われた>からだ)のだが遂に捕まり、牢屋に閉じ込められたのだ。
そして学園の学園長であり元皇族のルクスの数少ない顔見知りである。『レリィ・アイングラム』から『他国に負けない機竜使い<ドラグナイト>を育成する手助け』として学園で働かせようとしたのだ。
ルクスは王都のコロシアムで月一で行われる装甲機竜<ドラグライド>を用いた公式模擬戦<トーナメント>で『無敗の最弱』と呼ばれる凄腕だったのだ。
だが、それに異議を唱える者がいた。ルクスが入浴室の屋根を踏み破って入浴室に落ちて最初の犠牲者になった少女、『新王国第一王女リーズシャルテ・アティスマータ』である。彼女は男性であるルクスが女学園に編入する事に反発し(女学園なので生徒の大半は反対しており彼女は代表)。ルクスと模擬戦をし、その実力を認めたら働く事を認めると言ってきたのだ(実力重視の学園ならば仕方ない事なのだが)。自分に負ければ犯罪者として牢獄行き、勝てば無罪放免で働いて良しの、ほぼ選択の余地無しの条件なのでルクスも了承した。
リーズシャルテが決闘を学園長室の前で立ち聞きしていた野次馬達に伝えその場を去り、ルクスも部屋を退室すると自分の“妹”である『アイリ・アーカディア』と再会し、小言を言われた。
そして学園敷地内にある装甲機竜<ドラグライド>の演習場。観戦席では多くの生徒達が観戦し、ルクスとリーズシャルテが対峙するリングと観戦席の間には強靭な挌子が張られ、更に生徒の機竜使い<ドラグナイト>数名が常に障壁を展開しており巻き添えの心配は無い。
ルクスは遺跡<ルイン>から十数年前に発掘された装甲機竜の中でも三種の汎用機竜、飛竜機竜<ワイバーン>、陸戦機竜<ワイアーム>、特装機竜<ドレイク>の内の一つ飛竜機竜<ワイバーン>を纏ったが、リーズシャルテは世界にそれぞれ一種しか存在が確認されておらずその機体性能は汎用機竜を遥かに凌ぐ稀少種の装甲機竜、神装機竜《ティアマト》を纏ってルクスとの戦いが始まった。
汎用機竜を使っているにも関わらずルクスは神装機竜のリーズシャルテと互角以上の戦いを見せ、その実力に敬意を持ったリーズシャルテは神装機竜にのみ装備された特殊能力『神装』を用いた。《ティアマト》の『神装』は重力を制御する《天声<スプレッシャー>》を放ちルクスの動きを封じた。
だが突然《天声<スプレッシャー>》が解除された。ルクスはリーズシャルテを見て直感する、神装機竜には根本的な危険がある。それは、暴走。リーズシャルテの顔色は憔悴と動揺に染まるが一刻も早く模擬戦を終わらせようとするが。その瞬間異変が起きた。
演習場上空から人ならざる闖入者が突っ込んできた。人類の天敵とも言われる『幻獣種<アビス>』が現れた!十余年前に遺跡<ルイン>から時おり現れるようになった謎の幻獣。人間・動物見境無く襲い掛かり尋常じゃない強さと不可解な生体、そして特殊能力。ほとんどの大国は遺跡<ルイン>近くの関所に砦、城塞都市を幾重にも置き機竜使い<ドラグナイト>を配備している。この城塞都市<クロスフィールド>も遺跡<ルイン>と王都の間にある防衛拠点なのである。
パニックになる生徒達を女教官達が落ち着かせ避難させようとする。幻獣種<アビス>が観戦席を狙おうとするもルクスの奮戦で幻獣種<アビス>を粉砕する事ができたがーーーーーーーーー。
脅威はまだ終わっていなかったーーーーーーーー。
突然地面が盛り上がりその中から『巨大な生物』が、空から『刃のような翼を持った巨鳥』が現れ大気を奮わすほどの大声を上げる!その大きさは城塞都市を遥かに凌ぐ巨体。その姿はまるでおとぎ話か伝説に出てくる怪物達。ルクスのお陰で恐怖から解放された気分だった生徒達の心は一瞬で『絶望』に変わった。生徒達の中には「こんなの夢だ」とか「ああ私死ぬんだ」、「もう終わりだ」と絶望に染まる生徒達と教官達。
『巨人な生物 古代怪獣ゴルザとメルバ』は城塞都市の近くの山に攻撃を始める。ゴルザは額から振動破のような物を飛ばし、『光のピラミッド』が姿を表す!
「何だあれは!?遺跡<ルイン>か?!」
「シャリス!何かアイツらあの遺跡<ルイン>を狙ってない?!」
「Yes.どうやら今のところ我々には興味を示していないようです」
シャリスと呼ばれた蒼髪に凛々しい顔立ちの少女に茶髪なポニーテールにした活発そうな少女ティルファーの近くに装甲機竜を纏った冷静な雰囲気漂う黒髪の少女ノクトがルクスと同じ銀髪に灰色の瞳をした『ルクスの妹アイリ・アーカディア』を連れてきた。そんな中、レリィ・アイングラムは先日、王都で囁かれている『ウワサ』を思い出していた。
「(『この星に“大異変”が起こり“大地を揺るがす怪獣ゴルザ”、“空を切り裂く怪獣メルバ”が復活する。“大異変”から世界を守れるのは“守護神ティガの巨人”だけ』王都で眉唾に囁かれているウワサの怪獣。あの二体がゴルザとメルバなの?)」
ゴルザはピラミッドを破壊しその中にいた“二体の巨人の像”を白日に晒す。生徒達と教官達は“二体の巨人の像に驚くがルクスだけは違う箇所を見ていた。
「あれ?“もう一体の巨人”は?」
幻獣種<アビス>との戦いでワイバーンを消耗させてしまい。動けなくなったルクスと暴走ギリギリのリーズシャルテはリングに降りてことのあらましを見守っていた。
巨人の像が完全に姿を表すとゴルザとメルバは、巨人の像を破壊する!像を破壊した二体は今度は学園の方に近づく。
「!?やめろ・・・・・・」
「ルクス・アーカディア?」
「やめろ!!!」
ルクスは思わずワイバーンでゴルザとメルバに果敢に挑もうとする。リーズシャルテや他の機竜使い<ドラグナイト>も動こうとするが、二体の威圧感に圧倒されてしまい、一瞬遅れる。ゴルザは蝿でも払うかのようにルクスを攻撃するがルクスはそれを回避、しかしメルバの瞳から放たれた光線が迫ってくる!ルクスは障壁を張って防ごうとするも限界だったワイバーンでは防ぎきれず光線を受けてしまった!
「ルクス・アーカディア!!!」
「兄さん!!」
『!!??』
リーズシャルテが、アイリが、シャリス達が、桃色の髪の少女が、蒼色の髪の少女が、ワイバーンが燃えて落下するルクスの姿を捉えた。
ルクスは自分が落下している事を理解している。何とかしようにも身体はまともに動かずどうしようもなかった。
「(もう駄目なのか・・・・・・)」
薄れる意識の中、ルクスの目の前に『白いスティック<スパークレンス>』が現れた。スパークレンスはルクスに呼び掛けるように光り、ルクスは思わずそれを手にする。するとあの時の“声”が再び頭に響く。
『ルクス・・・光を掴め!ティガへとなれ!』
「(僕に・・・僕に光を掴む“資格”なんて無い・・・でも・・・今光を手にして皆を救えるなら・・・・・お願いだ・・・僕に・・・・・・)僕に光を!!!!」
ルクスがスパークレンスをかざすとスパークレンスの先端が開きそこから光が溢れる。ルクスが落下した直後、ゴルザとメルバの目の前に光が降りて来た!
『!!!!』
『!!??』
二体はその光を睨み。リーズシャルテ達はその光を刮目する。光は一気に“人型”になりその勇姿を現す!
そこにいたのは銀の身体に赤と青紫のラインが入った胸にクリスタルとプロテクターを装備した巨人だった!
『ヂェアッ!!』
「何だ!あの巨人は?!」
リーズシャルテが驚き、他の機竜使い<ドラグナイト>達も驚いていた。巨人はゴルザとメルバに向かって構えた!その姿を見てレリィは直感する。
「(まさか、あれが“ティガの巨人”?)」
巨人、ティガはゴルザに向かいゴルザのチョップや膝蹴りをゴルザに叩き込む!襲い掛かるメルバに蹴りを叩き込む!メルバは仰向けに倒れゴルザは額から振動破を放つがティガはゴルザの頭部を抑え振動破を阻止する。そのままゴルザと取っ組み合いになる。メルバは翼は開きティガに襲い掛かる。
『ウワッ!』
ティガは地面に転がりその隙にゴルザが振動破を放つがティガはバク転で次々発射される振動破をかわす。メルバが刃を生やした腕でティガに襲い掛かるがティガは腕を抑える。その隙に再びゴルザは額から振動破を放ちティガの背中に当たる!
『ウワァァァァッ!!』
膝をつくティガの頭をメルバが抑え殴り飛ばす!
『グワアアッ!』
倒れるティガにゴルザとメルバが近づく。リーズシャルテ達は敵か味方か現状分からないティガに加勢するか迷っていた。
ティガは膝を付いたまま構え、ゴルザとメルバを見据える。二体一で自分達の勝利を確信しているのかゴルザとメルバは勝利の雄叫びを上げるが。
ティガの額が赤く光る。するとティガの身体が赤一色になる。これが状況に応じて姿を変える、ティガの『タイプチェンジ』の一つ、パワーに優れた『パワータイプ』だ!
『デアッ!』
パワータイプティガ(Pティガ)は二体に向かう!ゴルザは振動破を放つぎPティガは片手で防ぎメルバも瞳から光線を放つもこれも両手で防がれる。
『ハアッ!』
ゴルザはPティガに襲い掛かるがPティガはゴルザにカウンターの要領で肘鉄をゴルザの腹部に浴びせる!仰け反ったゴルザの胴体を両手でガッチリ抱き締め鯖折りをする!
ゴキゴキゴキゴキゴキゴキ!!!
ゴルザの背中から骨の砕ける音が響く!
『ギャアアアアア!!!』
悲鳴を上げるゴルザの頭を背負い投げの要領で投げ飛ばす!
『ヂェアッ!!』
地面に叩きつけられるゴルザ、次はメルバが襲い掛かる!Pティガは襲いくるメルバに回し蹴りをするがメルバは上空へと飛び上がる!メルバは上空を飛んで行きゴルザは地面を掘って退散する。
「あっ!アイツ逃げるぞ!」
リーズシャルテはPティガに思わず伝える。Pティガがゴルザを追おうとするもメルバが光線で攻撃する。
『グワッ!』
メルバは上空を旋回し、ゴルザは完全に地面に潜った。するとPティガの胸のクリスタルが赤く点滅する。
ピコンピコンピコンピコンピコン
「何?このピコンピコンって?」
「Yes.あの巨人の胸元から聞こえてきます」
「何だか、良い予感はしないな」
そう、このカラータイマーが点滅する時はティガの活動時間が残り少ない事を告げているのだ。メルバはPティガに向かって中点直下する!
『ピヤアァッ!』
するとティガの額が今度は青く光る!今度は青紫に染まった姿に変わる!これが速さと俊敏性に優れた『スカイタイプ』である!スカイタイプティガ(Sティガ)は飛び上がりメルバに向かって蹴りを放つ!先程と違い速い攻撃にメルバはかわせずモロにくらい地面に落下する。
Sティガはヨレヨレで立ち上がるメルバに向かい両手を広げ両手と胸のクリスタルにエネルギーを貯め両手を頭上に上げて合わせまるで手裏剣でも投げるかのようにエネルギー弾を放つ!これがティガ全タイプな共通する技『ハントスラッシュ』である!
『ピギャアアアアア!!!』
『ハントスラッシュ』を受けたメルバは跡形もなくコナゴナになった!
「やっ・・・やったのか?」
リーズシャルテの声を皮切りにシャリス達や他の生徒達も歓声を上げる!
『・・・・・・』
Sティガは無言でリーズシャルテ達を見据える。リーズシャルテ達は今度は巨人が敵か?と身構えるが、ティガは彼女達に向かって静かに頷き。
『ヂュワッ!!』
と大空の向かって飛んでいった。
唖然、呆然と巨人の去っていった方向を見据えるリーズシャルテ達。だが、“ルクス・アーカディアは死んだ”と思った彼女達は悲しみを浮かべる。しかしノクトが。
「皆さん、あれを・・・」
リーズシャルテ達はノクトが指差した方へ目を向けるとそこには!
身体を引きずりながらこちらに手を振るルクス・アーカディアの姿があった!リーズシャルテ達はルクスの元へ向かうがルクスは手に持っていたスパークレンスを眺める。
「僕が巨人になったのか?」
『ルクス・・・光を掴め!ティガへとなれ!』
「ティガ・・・あの巨人の名はティガと言うのか?」
これが『ルクス・アーカディア』、『ウルトラマンティガ』の最初の戦いであった。
次でバハムートのパワーアップを御披露目してからティガ編終了させようと思います。原作一巻を目安にしたいと思います。