光に選ばれし勇者達   作:BREAKERZ

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最弱無敗の古代巨人<ティガ>Ⅲ

ー6年前 アーカディア帝国ー

 

それはまだ『アーカディア帝国』が存在していた時代、ルクス・アーカディアは十二の若さで『帝国史上最年少で機竜使い<ドラグナイト>の免許』を取り、その表彰の為に宮廷に招かれた機会を利用し、『一応』父親である皇帝陛下に、『男尊女卑の制度強化法案』、『軍事拡大による重税』、『貧しい市民を使った劇薬の人体実験』等、その全てを取り下げてほしいと奏上したが、皇帝陛下はルクスの話に耳を傾ける処か話すら聞いてくれなかった。

 

そして、王宮の離れの屋敷で黄昏ている第七皇太子殿下に声を掛けたのは同じ銀髪の第一皇太子殿下であった腹違いの兄『フギル・アーカディア』だけだった。フギルは自分の考えを真摯に聞いていてくれた。帝国は腐敗してしまった。汚職、格差、圧政、重税、弾圧と数え上げたら切りがない位に狂った国をルクスは憂いていた。

フギルも自分と同じ考えを持っていたが、「自分達にはどうすることもできない」と現実に見切りを付けそうになった。だがルクスはそんな兄に自分の考えを淡々と話す。「兄は自分のようにこの帝国を憂いている」と信じていた。

 

 

 

だが、この時のルクスは知らなかった、兄フギルの恐ろしい『本性』を。

 

 

ー現在 学園の医務室ー

 

ルクスは幻神獣<アビス>との戦闘と古代怪獣ゴルザとメルバとの巨人<ティガ>へと変身した初戦闘で気を失っていたルクスは倒れる前にリーズシャルテ達が自分に向かって降りてくるのを思い出していた。寝ているベッドの近くに二本の機攻殻剣<ソード・デバイス>が、枕元には巨人<ティガ>に変身する時に使った白いスティック<スパークレンス>が置かれていた。リーズシャルテが自分の看病をしており、リーズシャルテはルクスを『信頼できる人物』と考え、自分の『秘密』をルクスに話す。リーズシャルテの下腹部に『ある印』があった、それがルクスに決闘を挑んだ理由。

 

『旧帝国<アーカディア帝国>の紋章』が刻まれていた。

 

『新王国の姫の身体に旧帝国の印がある』。そんな事が世に知られれば『裏切りの証』か『血統の詐称』かあらぬ疑いを招きかねない高度に政治的な事実であった。震えるリーズシャルテを見たルクスは自身の機攻殻剣<ソード・デバイス>に誓って誰にも口外しないことを誓った。そしてルクスはリーズシャルテの計らい?で整備士見習いから城塞都市王立士官学園<クロスフィールドアカデミー>に士官候補生の生徒として編入する事になった。唖然とするルクスにリーズシャルテは自身を級友らしく『リーシャ』と呼ぶ事を許された。

 

その翌日。ルクスは妹の『アイリ・アーカディア』から『ゴルザとメルバ』との戦いで心配を掛けたのでたっぷり小言を言われて精神ボロボロの状態でリーシャのクラスに編入するとそこには。

 

学園長にしてアイングラム財閥の長女のレリィ・アイングラムの実妹でルクスの幼なじみ、桃色のふんわりとした髪を二つのリボンでまとめられ、ぼんやりとした雰囲気に幼さの残る顔に小柄な身体に不釣り合いな豊満な胸をした少女『フィルフィ・アイングラム』と再会した。フィルフィは幼い頃の名で『ルーちゃん』と呼びルクスに『フィーちゃん』と呼ばせていた。お陰でクラスメート達に少し笑われた。

 

授業が終わるとクラスメート達がこぞってルクスに近づき、国民に雑用と言う名の奉仕を義務付けられ付いた名が『雑用王子』のルクスに依頼と言う名のデートの申し込みをする女子が殺到した。

元々ルクスはルックスは良い上に機竜使い<ドラグナイト>としても優秀なので女学園故に異性と関われない令嬢達から狙われるのは仕方ないことだ。

 

そして騒ぎを納めるために茶髪のポニーテールをした活発そうな少女、二年でクラスメートのティルファー・リルミット(彼女はルクスの起こした騒動でルクスを追い回し、『ゴルザとメルバ』の騒動では生徒達の避難を率先して行っていた、因みに彼女はルクスを『ルクっち』と呼ぶ)が雑用依頼の箱を出して騒動を納めた。のだが。

 

リーシャがルクスを『専属の世話係』をやってほしいとその対応で困っているルクスを庇うフィルフィとで睨み合いが始まり(睨んでいるのはリーシャでフィルフィがボーッとしていた)、それを止めたのは。

 

腰まで届く水色の長髪にすらりとした細身の身体、端麗な顔立ちに冷たい瞳をした完璧な美術品のような美貌の少女、北の大国、ユミル教国からの留学生で伯爵令嬢の『クルルシファー・エインフォルク』だった。

 

彼女はルクスを案内すると言って連れ出し屋上に向かいある程度の話をするとクルルシファーはルクスにある『二つの依頼』をする。

 

「『黒き英雄』を探して、私はその人に用があるの。それともう一つは、『あの巨人』の事を調べてほしい」

 

「『巨人』って、あの怪物達を倒した?」

 

「ええそうよ、私はあの『巨人』に興味があるの」

 

そう言ってクルルシファーは屋上を去って行った。『黒き英雄』と『巨人』、ルクスにとって他人事ではない二つの依頼を受けた。

 

その夜、女子が全員入浴が終わった大浴場を掃除しているルクスは以前レリィから聞いた『噂』を思い返していた。レリィ曰く。

 

『三週間程前に王都近くに隕石が落下して、その隕石から謎の物体が発見されたの。その物体からある『予言』があったそうよ。“大地を揺るがす怪獣ゴルザ”と、“風を切り裂く怪獣メルバ”、そして“守護神ティガの巨人”ってね。勿論王都の学士達は眉唾と言ってたけど、あの時現れた怪物達が怪獣ゴルザとメルバで二体と戦ったのがティガの巨人だと思うわ』

 

ルクスは懐にしまってあるスパークレンスを取りだし、思わず口ずさむ。

 

「何故、君は僕を選んだの?僕に『守護神の力』を得る『資格』なんて無いのに」

 

すると大浴場の扉が開きルクスは慌てるがそこにいたのは。

 

ルクスと同じ銀髪に灰色の瞳をし、銀髪をセミロングにしたルクスの妹、一年の『アイリ・アーカディア』と彼女の友人の黒髪のボブカットで感情の乏しい表情をした一年の『ノクト・リーフレット』が現れ、更に蒼髪の男っぽい口調の麗人、三年の『シャリス・バルトシフト』だ。

 

実は三年のシャリスと二年のティルファーと一年のノクトは学園で衛兵の手が回らない場所を中心に警備などを行っている自警団『三和音<トライアド>』であるのだ。

 

アイリから雑用が終わったら女子寮の大広間に来て下さいと言われ、ルクスはこれを了承する。

 

雑用が終わったルクスは大広間に行きアイリの案内で食堂へ向かう。食堂の扉を開けるとそこには。

 

アイリや三和音<トライアド>にクラスメート達や他のクラスの生徒、クルルシファーにフィルフィやドレスアップしたリーシャがルクスの編入祝いが行われていた。

 

唖然とするルクスにドレスアップしたリーシャは言う。

 

「わたしたちはお前を歓迎するぞ。ルクス・アーカディア・・・此度は大義であった」

 

そう言ってルクスにグラスを持たせ、シャリスが音頭をとる。

 

「それでは、ルクス・アーカディアの編入を祝って、乾杯!!」

 

『乾杯!!』

 

ルクスは涙混じりに微笑みながらリーシャに言う。

 

「ありがとうございますリーシャ様っ、嬉しいです・・・!!」

 

その顔を見てリーシャは照れ笑いを浮かべる。ルクスの懐のスパークレンスもルクスを祝福するように淡く輝いていた。

 

 

 

 

 

 

後日、廊下で寝ていたルクスをフィルフィが自分の部屋に連れ込み(勿論善意)、同じベッドで寝て、起きたルクスと討論にな、そしてそれを兄を探していたアイリに見られてしまい、アイリの兄への信頼が少し落ちたのは言うまでもない。

 




今回でティガを終わらせようとしましたが、モチベーションが上がらずこうなってしまいました。次回こそ終わらせたいです。

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