ー士道sideー
「おいホントにマジかよーーーー!!」
『熔鉄怪獣デマーガ』と出会ってしまった士道は、自分でもこんなスピードが出るのかと思ってしまうほどの速度で逃げていた。
やっぱり人間、死ぬ気でやればどんな事でもできるんだなぁ、と的外れな事を考えながら、天宮市の街を駆け抜ける。
『グバァアアアアアア!!』
デマーガは士道を追っているのか、それとも適当に歩いているのか、街を破壊しながら闊歩していた。
そこに、『風間ワタル』と『貴島ハヤト』が操縦するXioの戦闘機『スカイマスケッティ』が現れ、機銃でデマーガを攻撃した。
が、デマーガが口から熔鉄熱線を放ち、スカイマスケッティは回避するが僅かにかすり、ダメージを受け、デマーガの後方に墜落した。
「ワタルさん! ハヤトさん!」
何度か顔を合わせている二人が落とされたのを見て、士道が声を張り上げた。
興奮したデマーガが、熔鉄熱線を辺りに放ちながら暴れる。
「なんだよっ! ASTとか自衛隊は動かないのかよっ!」
グルマン博士から、ASTの存在を教えられている士道は、現れない彼らに悪態をつくが、ASTはあくまで『空間震を起こす存在』を討伐する組織であり、怪獣災害に対してはXioの領分と言う事で動けないのだ。
まあそれは両陣営の上層部の、安い縄張り争いのようなモノだが。
『グルルルルル・・・・』
「ぁ・・・・!」
と、そこでデマーガと士道の目が、バッチリと合わさったーーーー。
「やっべ・・・・・・・・!」
『グバァアアアアアア!!!!』
デマーガが睨み叫んだ。完全に士道を獲物として狙っている。
「うわぁぁっ!」
士道は腰を抜かし、最早これまでかと、諦めようとした。
その時ーーーージオデバイザーが振動して、謎の音声が発せられた。
『ユナイト・・・・ユナイト・・・・!』
「えっ!? 何だよ、こんな時に!」
士道が音声に戸惑っていると、デマーガが熔鉄光線を吐き出した。
とても逃げられない。士道は思わず顔を背け、思わずジオデバイザーを盾にするように突き出した。
ーーーーその時、ジオデバイザーの画面に人の姿が浮かび、X字の光輝きが発せられ、金色の縁が描かれる。
「えっ?」
士道がジオデバイザーの変化に声をもらすと、光りは辺り一面に広がり、士道は直視できずに目を閉ざした。
ー???sideー
「(まったく。ASTも自衛隊も頼りにならないわね)」
真紅の軍服をシャツの上から肩掛けた赤い髪の少女は、怪獣が現れ、街や人に被害が出ているのに関わらず、Xioの対処すべき事で自分達には関係ないと言わんばかりの連中に悪態をついていた。
「司令。怪獣の足元に高エネルギー反応が出ました」
SF映画のような場所で、デマーガを観測していたオペレーターから報告を聞いた長身の金髪の男性が、その場所の中心にある椅子に腰掛けた、責任者と思われる少女に、デマーガの足元(士道がいた地点)から現れた光の事を報告すると、少女はメインモニタに映るその光を見据えた。
銀色と赤のメカニカルな巨人が直立し、胸にはX状の青く発光する結晶体が燦然と輝いている。
ーカミキsideー
Xio日本支部基地・オペレーション本部では、誰にも止められずに大暴れするデマーガの姿を目の当たりにして、『神木正太郎(カミキ)』と『橘さゆり』に、オペレーターの『松戸チアキ』が報告する。
「新たな怪獣!・・・・いえ、巨人が出現!」
「ーーーー巨人・・・・!?」
モニターに視線を戻すと、二人も巨人の姿を目の当たりにし唖然となった。
ー士道sideー
目を開けた士道の視界に広がるのは、まるで電子回路の中にいるような空間に、自分は立っていた。
「・・・・・・・・ぇっ? 何だこれ? どうなってんだ?!」
戸惑う士道の耳に、凛々しい声が響いた。
『説明は後だ! 行くぞ、士道!!』
「えっ誰ッ!? つか、何で俺の名前をーーーーえぇっ!!?」
士道は自分の身体を見下ろすと、驚愕した声を出した。
何故なら、自分の身体が、明らかに人間の身体でなく、サイズが明らかに人間の大きさでない巨人となっていたからだ。
「なんじゃこりゃあああああああああああああああああああああっ!!! つか高っ! どうなってんだよこれっ!!」
巨人は腰が引ける。
「高い高い高い!!」
『高くない! 巨大化したんだ! だから落ちない!』
「巨大化って何・・・・」
「グバアアアア! ギャギャギャギャギャギャ!」
戸惑う士道の前に、デマーガが、突如出現した自分と同等の背丈の巨人を敵と認識したのか、肉薄して来る。
『「うわっ! うわっ! 来るな来るなーーーー!!」』
両手を出して振って、デマーガに来るなと言う士道だが、デマーガは構わず、巨人<士道>の腕に噛みついた。
『ぐっ! ウワァ! アァっ!!』
巨人<士道>はデマーガを腕から外し、抑え込もうと抵抗するが、士道自身が戦闘向きでないのもあって、簡単にデマーガに突き飛ばさ、アスファルトに倒れる。
『グワァオオオオ!!』
更にデマーガは巨人<士道>に、顔を突きだそうとするが、巨人<士道>が頭を抑える。
『テァッ!』
巨人<士道>は足でデマーガを押し出して、下がらせると、何とか起き上がろうとするが、
『ギャギャ!』
『うわぁっ!!』
デマーガが頭を振って、巨人<士道>を押し飛ばした。
『コラッ! しっかりしろ! そんなんじゃ戦えないぞ!』
『「はぁっ!? “戦う”?! 俺が?! 何でだよっ!!?」』
『他にする事があったなら言ってみろ!!』
巨人らしき声が士道を叱咤するが、ほぼ逃げ腰になっている士道にはほとんど意味がなかった。
起き上がった巨人<士道>に、デマーガが熔鉄光線を放つ。
『ウワアアアアアアアア!!』
巨人<士道>が大きく吹っ飛ばされ、背後のビルを巻き添えにしてばったり倒れる。
『「ウワアチチチチチチ!! あちぃよ!」』
『落ち着け! あの熱線をくらっても平気だろう?』
確かにそうだった。
熱量は感じたが、身体は火傷したような外傷は無かった。
『「本当だ・・・・」』
『君と私は『ユナイト』した。心を一つにすれば、あの怪獣と戦えるんだ!』
『「そ、そんな事突然言われたって!」』
『できる! 先ずは深呼吸だ!』
「うわあああああああああああ!!」
『『「っ!!」』』
近くで悲鳴が聞こえ、巨人<士道>が目を向けると、文系の士道と同い年の少年が、瓦礫に囲まれて動けない状態だった。
『「っ! アイツって、同じクラスの“岸和田”!!?」』
士道と同じ、来禅高校の一年生でクラスメートの岸和田だった。
『ギャギャギャギャ!!』
「っ!」
デマーガが、岸和田に向けて、熔鉄熱線を放とうとした。
『「岸和田!!」』
『グゥアアア!!』
横から巨人<士道>が飛び込んできて、その身を盾に岸和田を光線から守ったのだった。
「えっ・・・・!? 僕を・・・・守って、くれたの・・・・?」
熱風で倒れる岸和田は起き上がると、。巨人<士道>と目が合い、身を挺して自分を守ってくれたのかと、戸惑いがちに見つめた。
『「マジかよ・・・・? 俺が、やったのか?」』
『ああ。ファインプレーだったな!』
巨人<士道>だが、熱線が直撃したのに、対したダメージを受けている様子だった。
『グバアアアアアア!!』
デマーガが巨人<士道>に向かってくる。
『来るぞ!』
『「何だかよく分からないけど、やれるだけやってみるか!」』
どうやら士道の中で吹っ切れたのかヤケクソになったのか、腰を据えて、ジオデバイザーを構えると、デバイザーが輝る。
『良し! 行くぞ、士道!!』
ジオデバイザーがX字の光を放つと、巨人<士道>が立ち上がると、胸元のX字の結晶体が光輝く。
『シュッ! イィィィィサァァァァ!!』
『グバアアアアアア!!』
巨人<士道>が駆け出すと、デマーガに向けてミドルキックを繰り出して、デマーガを下がらせると、頭を掴んで殴り付けた。
『シュァッ!』
『ギャギャ!』
頭を上げたデマーガに、すかさず腹部に拳を叩きつけると、頭を掴んで膝蹴りを放つ。
『シュッ!』
さらにデマーガと戦う巨人<士道>。
その様子を、カミキ隊長達Xioも、司令と呼ばれた少女とオペレーター達も、天宮市の市民達も、駐屯地でドローンからの映像を見ているAST隊員達も、その目に見つめた。
天宮市の市民達は、その巨人の戦いを応援していた。
『グバアアアアアア!!』
デマーガが熔鉄熱線を放つが、巨人<士道>はそれを転がりながら回避すると、デマーガにタックルをぶつけた。
『グバアアアアアア!!』
『ウワァアッ!!』
デマーガは押し出されながらも、尻尾で巨人<士道>を攻撃し、巨人<士道>は倒れる。
ーーーーピカンッ! ピカンッ! ピカンッ! ピカンッ!
巨人<士道>のの胸元のX字の結晶体が赤く点滅し始め、士道のいる空間も、赤く光った。
『タイムアップか!』
『「何だよタイムアップって!?」』
『「我々の『ユナイト』は限界のようだ!」』
巨人と士道が『ユナイト』している制限時間が、迫っていた。
次回、X編終了。いつになるやら・・・・?