「なぁ、來人。なんで俺達は自然公園に来ているんだ?」
「ん? “バイブス波”の異常反応が昨日の夜にここら辺であったからな。調査の為に来たんだろ?」
「まぁそうだけど・・・・」
そう。今俺達兄弟は休日の日曜日。サイタマの街から少し離れた自然公園、『アイゼンワンダーランド』に来ていた。
周りを見ると、ハイキングに来ていた家族の父親と息子が楽しそうにキャッチボールをし、母親が幼い赤ん坊を抱っこしてキャッチボールする父子を微笑ましく見つめており。
恋人同士の男女がベンチで愛を語らい。
愛犬を連れた青年がボールを投げて食わえて持ってきた愛犬の頭を撫で回していた。
「(うん。極めて平和な光景だな)」
何故俺達兄弟はここに来たかと言うと、今朝起きた俺は來人のベッドに入って寝ていた“同じ寮に下宿している子”を來人のベッドから連れ出して自分の部屋に寝かせた。
俺と來人のベッドは二段ベッドになっており、俺が上の段で來人が下の段。來人は直ぐに机からベッドに行けるから下の段にしたらしい。
まだ熟睡している來人を置いた俺は、居間に降りて、同じ寮に住んでいる“來人の彼女”に朝食を作ってもらい食べていると、テレビのニュースで俺達の街・サイタマの発展に尽力している『株式会社アイゼンテック』の社長、『愛染 マコト』が新たな新商品の紹介をしていた。
愛染誠は街の発展に尽力しているが正直俺は、あのハイテンションって言うか、エキセントリックな感じがどうも苦手だ、來人も、
「キャラが胡散臭い」
と言って、“他の同居人達”も。
「凄い人やと思うけど、なんやキモいわ」
「うるさくて、イヤ」
「ちょっと、苦手ですね・・・・」
とあまり良い感情は持っていない。
愛染社長が【石橋に 当たって砕けろ】ってオリジナル格言を紹介していた。“チャレンジ精神を持て”って意味だと言っていたが、砕けたら元も子もないだろうと俺は苦笑いを浮かべた。
そして朝食を終えてコーヒーを飲んでいる俺の元に、起きて寝巻きから私服に着替えた來人が大慌てで、【サイタマ郊外の山で巨大生物を見た】って動画を見せてきた。
普段ならこんなのフェイクだと思うが、來人は『バイブス波』の反応がその山にあったと知らせ、俺と“來人の彼女”は少し難しい顔になった。
何しろこのサイタマには、人知れず“危険な生物達”が潜んでいるから、もしかしたら“奴ら”関連かと思った俺は、とりあえず來人と二人で調査に向かおうと思い、“來人の彼女”に、“他の皆”には待機しといてくれと伝言を頼んだ。
ちなみに家を出る際、來人は“彼女”に髪を整えてもらい、“彼女”の頬に、チュッとキスをして、“彼女”は顔を赤らめ恥ずかしそうに慌てていたが、満更じゃない笑みを浮かべていた。我が弟ながら朝っぱらから凄い事やると驚嘆する。
そして現在。
「んで、反応があった『アイゼンワンダーランド』に来てみたけど、どうだ?」
「ん~。これは結構凄いかも・・・・! そういえば、昔からこの山には、『グルジオ様』が居るって伝説って言うか、おとぎ話があったよな?」
「あぁ、そう言えば・・・・」
このサイタマに昔から伝わる絵本のおとぎ話で聞いた事があったな。
むかしむかし、空から星が降ってきました。星から『グルジオ様』と呼ばれるモノノケが生まれ、戦で争っていた人々は皆、『グルジオ様』に飲まれてしまいました。
「って感じのおとぎ話だったな?」
「『グルジオ様』が落ちてきた星は、今で言うところの隕石だな。そして、もしかして『グルジオ様』は・・・・」
來人の仮説に、俺ももしかしてと思った。
「まさか、『グルジオ様』は、“奴ら”か?」
「もしくは、まったく“別の勢力”って事もあり得るぜ」
來人は『バイブス波感知器』を持って色々と計測を始めていた。端から見ると不審人物だな。
「おーおー! なんか『バイブス波』の反応がヤバい!」
「今ヤバいのはお前だよ。・・・・來人、覚えているか? 昔俺達兄弟と、星乃の三人で、良くこの自然公園で遊んでいたよな?」
「ん、そうだな。雲母ちゃんは俺の事を『ガリ勉』って言って、烈人の事は『ヘタレ』って呼んでたな」
「えっ? そうだったの?」
「あぁ。それよりもさ烈人。このデータ見ろよ」
來人が感知器と繋がっているiPadの画面を見せてくると、画面には衛星から表示された地図や、俺にはサッパリ分からないデータが表示されていた。
「プラズマイオンとバイブス波の値を見ろ! 凄い事になってるぞ!」
「イヤお前の言ってる事サッパリ分からん!」
感知器がピー!ピー!と音が流れると、來人は音が出た方角に向かった。
「こっちの方が線量が高い。行ってみよう」
「お、おい來人!」
來人は“叔父さん”と同じ、ヘンテコな所と研究熱心な所があるから、このままではヤバい事態に首を突っ込みそうな気がする。
まぁ、“奴ら”と戦う“俺達”のバックアップとして、“バイブス波”を応用して“奴ら”の索的、“俺達の衣服運搬”、“人目に触れないように退却経路の案内”等をしてくれる、頼れる奴なのは違いないけど、それでも兄ちゃんは心配だ。
ー???sideー
ここはアイゼンテックの研究室の一室。研究員である1人の女性がいた。美しい黒髪に穏やかそうな顔立ちで、研究員の証である白衣は、女性の豊満な胸元に押し上げられていた。
「あっ、これは社長!」
「やぁ! お仕事お疲れちゃん!」
女性の目の前にアイゼンテックの社長、『愛染 マコト』が笑みを浮かべて近づく。
「どうかな? この研究所には慣れたかな?」
「はい。皆さんとても親切にしてくれています」
女性は淑やかな笑みを浮かべ、愛染社長も笑みを浮かべ、女性の後ろに回り込み、肩に手を置く。
「所で、君に折り入って頼みがあるんだ」
「頼み、ですか?」
首を傾げる女性に、愛染社長はにこやかな笑みを浮かべる。
「うん。新規プロジェクトを立ち上げるのだが、君に是非参加してほしくてね」
「えっ? あ、ありがとうございます!」
社長からの直々の参加要請に、女性は光栄そうに喜ぶ。愛染社長は女性の前に移動し、握手を求めるように手を伸ばす。
「それじゃこれからよろしくね!」
「はい! 社長の期待に応えられるよう、頑張ります!」
女性は愛染社長の手を握り、頭を下げる。
「(うんうん。調べた結果、彼女の性格は温厚で穏やか、美しい黒髪、そしてこのはち切れんばかりの胸、まさにあの人の“刀”の1人にそっくりだね♪)」
愛染社長は頭を下げた女性を見下ろして、口元に歪んだ笑みを浮かべていた。
ー烈人sideー
感知器を頼りに山中を歩いていた俺達は、『この先 私有地につき 立ち入り禁止』と書かれているバリケードが立てられた道についた。
來人がそのバリケードを越えて行こうとする。
「待てよ來人! 立ち入り禁止って書いてあるだろ! ほらあれ! ここから先はアイゼンテックの研究所だ」
俺が慌てて止めるが、來人は真面目な顔で画面を見せた。
「でもほら、この数値見ろよ!」
画面上の地図では、研究所のある地点が赤く染まっていた。
「この数値は普通じゃない・・・・! あそこには何かあーーーー」
何かあると、來人が言いかけたその瞬間ーーー。
ピシャアァァァンッ!
「「っっ!」」
いきなり響いた音に俺達が驚くと、さらに驚く事態が起こった!
グワアァァァァァァァァァンッ!!
なんと、研究所が突如崩壊し、その下から真っ赤な巨大生物が現れた!
『ギュオオォォォォォォォォォォォンンッ!!』
“昆虫のような姿をした“奴ら””とは違う容貌の怪物は、身体が赤く染め上げられ、恐竜の骨格のようであった。そして俺は、その姿に見覚えがあり、ポツリと呟く。
「『グルジオ様』なのか・・・・?」
そう、怪物は、絵本に描かれていた『グルジオ様に』よく似た姿だったんだ。
「來人、ここは逃げようと思うけど、どうする?」
「誇り高い科学者の卵としては、巨大生物に遭遇だなんて滅多に無いから追いかけたいと思うけど・・・・」
『ギュオォォォォォォンッ!!』
身体と同じく血のように真っ赤な瞳をしたグルジオ様、嫌グルジオと、あまりの事態に半ば現実逃避気味になっている俺達の目が合ってしまった。
「うん、逃げよう」
「だな」
『ギュオォォォォォォンッ!!』
グルジオの雄叫びを聞いて、俺達兄弟は二人三脚のようにお互いの首に腕を回し走って逃げた。学校の体育祭やご町内の運動会の二人三脚で毎年優勝しているこの息のあった動きで山中を駆け巡る!
「來人! もっと早く走れ!」
「無理言うな! 俺は元々インドア派なんだよ!」
來人は頭脳は明晰だが、運動能力は俺の方が高い。それでも危険から逃げようといつもよりスピードが出ていた。
自然公園近くの陸橋にまで逃げると、俺達を追っていたグルジオが1度口を閉じると、歯の隙間から炎が溢れ、その口を開けて炎を吹き出した!
チュドォオオオオオオオオンンっっ!
「「うわぁああああああああああああっ!!!」」
吹き出された炎は俺達の近くの地面に着弾し、爆発が起きて、俺達は地面に転がる。
「イッテェ・・・・!」
「來人! 大丈夫か!?」
『ギュオォォォォォォンッ!!』
俺は倒れた來人を助け起こすが、グルジオが雄叫びを上げて俺達に向かってきた!
「ほら立て! 早く!」
「あ、ああ・・・・」
俺達が必死に逃げると、グルジオはついに自然公園近くにまで進撃し、炎を吹き出して暴れていた。
自然公園で遊んでいた人達が泡食って逃げ出していた。
「チクショウ! こんな時に何もできないなんて! こうなったら!」
「バッカ! 身体の大きさを考えろよ! 戦ったとしてもあの巨体だ! 烈人が“全力で殴っても”、小石を踏んだ位のダメージしか与えられないって!」
「じゃどうするんだよ?!」
「今考えてる!」
「うぇええええん!」
「「っ!」」
なんて俺達が喚き合いながら走っていると、グルジオの進行先に、逃げ遅れたのか親とはぐれたのか、男の子が泣いている姿が入り、止まった。
逃げ惑う人達の中に母親らしき人が子供を探しているような素振りをしていた。
「なんであんな所に!」
「っ!」
「あ、烈人!! たくっ!」
俺が子供を抱き抱えて、母親に渡すと、來人がグルジオに向かって石を投げていた。
「グルジオーーー! そんな不ッ細工な面でデカイ顔するなーーー!!」
來人! アイツ、グルジオを引き付けているのかよ?! グルジオが來人に向かって歩を進め始めた。
すると、來人の足がもつれ、倒れた。マズイ!
「あっ!」
俺が來人に向かって走り出すが、來人に向かってグルジオが、襲いかかろうとする。
「來人ーーーーーー!!」
「烈人ーーーーーー!!」
俺達が互いに手を伸ばすのと同時に、グルジオが火炎を放った!
グルジオの業火が迫る中、俺達は互いの手を強く握った!
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!」」
そして業火が、俺達を包み込んだ!
気がつくと、炎城兄弟は真っ白い光の空間の中に立っていた。
グルジオ、イヤ、『火炎骨獣 グルジオボーン』の放った火炎に呑み込まれてしまい、死んだかと思っていたが、気がついた時には彼らは謎の白い光の空間を漂っていた。
「どこだここは・・・・?」
「何だ? どうなっているんだ・・・・?」
助かったことよりも、この摩訶不思議な空間が自分たちの周りに広がっていることに、炎城兄弟は驚いていた。
「「うわっ!?」」
そんな二人の視界を、突然の閃光が塗り潰し、一瞬顔を背けるが、光が収まると、兄弟の目の前に“謎のアイテム”が出現していた。
『左右に取っ手がついてある円形の機械が2つ』。
『手帳のような型のケース』。
そして、円形の機械の中央のくぼみに、ちょうど収まる大きさの、『メダルのような丸い2つのクリスタル』。
2つのクリスタルはそれぞれ、特撮のヒーローのような姿の超人の絵が刻まれ、『火』と『水』と書かれている。
「何だこれ・・・・?」
「分からない・・・・」
見たこともない道具の数々に唖然とする烈人と來人。すると、五つのアイテムがまばゆい光を放った。
「「うッ!?」」
すると、二人の脳裏に、あるイメージが強く浮かび上がった。
何か隕石のようなものが地球上に落下し、大地に巨大なクレーターを作り上げた。
そのクレーターの中でグルジオボーンが咆哮を上げ、面と向かう二人の巨人が崩れ落ち、無数のクリスタルとなって弾け飛んだ・・・・。
弾け飛んだクリスタルには、超人やグルジオボーンのような怪物の絵と文字が刻まれたクリスタル。
そして、目の前の機械の使い方も、頭にイメージされた。
そこまでで炎城兄弟の意識が、元の空間に帰ってきた。
「見たか? 烈人・・・・?」
「ああ來人・・・・。もしかして、俺たちにこれを使えということか?」
二人は強烈なイメージによって、目の前の機械、『ジャイロ』の使い方が脳裏に刷り込まれていた。
「じゃぁ、1、2の3で行こう・・・・!」
「ああ!」
そう決めると、炎城兄弟は合図を唱える。
「「1・・・・」」
「「2・・・・」」
「「3! 俺色に染め上げろ! ルーブ!!」」
思わず口から出た決め台詞とともに、炎城兄弟は同時にジャイロに手を伸ばした!
まずは炎城烈人が、『クリスタルホルダー』を開き、その中から横に二本の角が生えた超人の『火』のクリスタルを取り出した。
「セレクト、クリスタル!」
クリスタルを胸の前に持っていくと、烈人は指で弾いて赤い二本角を伸ばし、ジャイロの中心にセットした!
《ウルトラマンタロウ!》
烈人の背後に、クリスタルの絵柄の超人のビジョンが現れ、炎が弾け、『火』の文字が現れる!
「纏うは火! 紅蓮の炎!!」
烈人が叫ぶと、ジャイロの左右のレバーを引っ張っていく。
くぼみの周りは水色と黄色の光が、1回引くごとにエネルギーがジャイロに充填されて、赤く染まっていき、三回目でジャイロから渦巻き状にエネルギーが溢れ出た!
《ウルトラマンロッソ! フレイム!!》
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」
烈人の身体を猛々しい火柱が包み、赤い巨人へと変身して右手を振り上げ、炎の渦を飛び出していく!
『シュワァァァァァァァッ!!』
ー來人sideー
來人はクリスタルホルダーから『水』のクリスタルを取り出した。
「セレクト、クリスタル!」
來人の方はクリスタルから青い一本角が出てきて、それをジャイロに嵌め込む!
《ウルトラマンギンガ!》
來人の背後に、身体の各所に水晶を持つ超人のビジョンが現れて水の波動に変わると、水が溢れ『水』の文字が現れた!
「纏うは水! 紺碧の海!!」
烈人と同じようにジャイロのレバーを引く來人。1回、2回とジャイロにエネルギーが集められ、くぼみの周りを蒼色に変わり、3回目で水の波動が放たれる!
《ウルトラマンブル! アクア!!》
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
來人の身体は激しい水柱に包まれ、青い巨人となって左手を振り上げて激流の渦を飛び出していった!
『ハアァァァァァァァァァァッ!!』
太陽をバックに大地に降り立った炎城兄弟は、神秘の光の巨人。『ウルトラマンロッソ フレイム』と『ウルトラマンブル アクア』へと変身したのである!
『『ハァァァァ・・・・!』』
ー???sideー
その頃。烈人と來人が下宿している寮の居間に集まった寮生達が、テレビで緊急放送された映像、グルジオボーンと二人のウルトラマンが対峙する映像を見て仰天していた。
「な、なんやこれぇ!?」
「ここって、確か烈人くんと來人くんが調査に行ってるって・・・・」
「っ!」
「あっ! “舞姫”!」
ー雲母sideー
「ここ・・・・よく“れっくん”と“らいくん”と行った・・・・」
星乃雲母もまた、自宅のテレビで映し出されたグルジオボーンと二人のウルトラマンの映像を見ていた。
ー烈人&來人sideー
『(マジかよこれ? 俺達が変身したのか?)』
『(い、一体どうなってんだ?!)』
俺の周りは炎の中にいるような空間になっていた。ちょっと下を見ると、軽トラックがまるでミニカーみたいに見える・・・・。
來人も自分の顔や身体をペタペタと触っていた。
『ギュオォォォォォォンッ!!』
「「(ゲッ!)」」
グルジオはまるで悔しそうに地団駄を踏みながら雄叫びを上げると、真っ直ぐに俺達に向かってきた!
『(うわっ来た! どうする來人!?)』
『(どうするって、もうやるしかないだろう!)』
來人が飛び出して飛び蹴りをグルジオを繰り出した。が、グルジオは身体の向きを変えて回避した。
『ギュォ!』
『(予測済みだ!) タァッ!』
かわされると予測していた來人、イヤ、ブルは着地してすぐに回し蹴りをグルジオの首に当てた!
伊達に俺の訓練に付き合っていないよな・・・・。後、子供の頃は結構特撮ヒーローの真似を良く二人でしていたっけ?
『ギュオォォォ?!』
『ハァッ!』
なんて俺が思い出に浸っている間、ブルはグルジオと押し合いを始めようとするが、力負けして俺の方に投げ飛ばされた。
『ウワァッ!!』
『ワワァッ!!』
俺達が倒れると、『アイゼンワンダーランド』の看板が倒れた。
『ギュオォォォォォォンッ!!』
なんだ? グルジオの目がまるで怒ったように赤く光ると、もの凄い勢いで迫ってきた!
『(来るぞ、退け!)』
『(イテッ!)』
倒れた姿勢のまま、俺はブルの首を退かし、思わずグルジオに向けて手を伸ばすと、手から小さな火炎弾が放たれ、グルジオに当たった。
『ギュオォォォォォォンッ!?』
グルジオが火炎弾に怯んだ。
『(烈人。今のどうやったんだ?)』
『(分からない、何かビュッと出た)』
『(それじゃ俺も)』
ブルが俺、ロッソを退かして立ち上がると、手をグルジオに向けて伸ばすと、掌から高圧水流、ウォータージェットが放たれ、グルジオの身体に当たった。
『(フム。烈人は火で、俺は水。纏っている属性の攻撃が出来るのか・・・・)』
『(イヤ何冷静に分析してんだよ?)』
『ギュオォォォォォォンッ!!』
『『(っ!)』』
俺達は向かってくるグルジオに左右から押さえ込んで、そのまま持ち上げる!
『『ウオォリャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアっ!!』』
そのままダブルブレーンバスターの要領でグルジオを地面に叩きつけた!
『ギュオォォォォォォンッ!!』
グルジオが痛みで悲鳴を上げた。
『(やったな!)』
『(この間テレビで見たプロレスの真似だがな・・・・)』
俺達がお互いに喜んでいると、グルジオはすぐに起き上がると、俺達をしっぽで叩きのめした。
『『ウワァッ!!』』
そして倒れた俺達にグルジオが火炎を放った!
『『ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』』
『ギュオォォォォォォンッ!!』
火炎により地面が焼け、煙が上がり、グルジオが雄叫びを上げている姿を見る。
『(來人! 何か良い方法を思い付かないか?!)』
『(あのなぁ! そんなホイホイ良い方法が簡単に思い付くかよ!)』
『(頭を使うのは來人の役目! 行動するのが俺の役目だろ! 頼りにしてるんだぜ!)』
『(・・・・たくっ、このアニキは!・・・・っ)』
悪態付きながらも、ブルは思考するように唸る。が、すぐに俺と自分を見る。
『(もしかして・・・・。烈人! 俺とクリスタルを交換してくれ!)』
『(えっ? そんな事できるの?)』
『(烈人と俺では光線の形が違う。ちょっと試してみたい事があるんだ!)』
『(分かった! 行くぜ來人!)』
『(ああ! 烈人!)』
俺達は今使用しているクリスタルを互いに送り合うと、交換した。
『『(セレクト、クリスタル!)』』
《ウルトラマンタロウ!》《ウルトラマンギンガ!》
お互いのクリスタルに、來人は一本角を、俺は二本角を出し、ジャイロにセットし直した。
『(纏うは火! 紅蓮の炎!!)』
《ウルトラマンブル! フレイム!!》
エネルギーをチャージし終えると、ブルの体色が赤くなり、炎の中から腕を振り上げた姿勢で立ち上がってきた!
『(纏うは水! 紺碧の海!!)』
《ウルトラマンロッソ! アクア!!》
俺もエネルギーをチャージして変身すると、ロッソの体色が青に変わり、水の激流の中を腕を振り上げた状態で立ち上がる!
そして俺の回りの空間が、まるで水の中にいるような空間に変わった。クリスタルをチェンジすると内部の空間も変わるのか。
『ハァッ!』
『シャァ!』
『ギュオォォォォォォンッ!!』
『(烈人)』
『(イテッ!)』
『(ゴニョゴニョゴニョゴニョ・・・・)』
『(うんうん。了解!)』
迫るグルジオを見ながら、ブルが俺の角を掴んで引き寄せると、耳元で作戦を伝える。
先ず俺が前に出て、グルジオが放つ火炎を、水の障壁を張って防ぐ! すると水が蒸発して煙を上げた。
こんな事もできるんだ。
『(よし! 水の障壁で火炎を防ぎ、水蒸気で目眩ましをして・・・・烈人!)』
『(おう!)』
ブルが力を込めるように踞り、姿勢を正すと、俺が横にバク転すると同時に、ブルの掌から火炎光線をグルジオに浴びせた!
『ギュオォォォォォォンッ!?』
『(アチ、アチチ!)』
飛び火した火が身体に少し当たるが、すぐに俺はブルに近づく。
『(やはりクリスタルを交換すると違う形の火が出るのか・・・・。俺達が変身したこの超人、ロッソとブルはそれぞれのクリスタルを交換して、属性が付与されたあらゆる光線技を駆使して戦うタイプって事なのか?)』
『(だから、この状況で何冷静に分析してんだよ!)』
『グゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・!』
『『(えっ? あっ・・・・)』』
唸り声が聞こえてそっちに目を向けると、いつの間にかグルジオが俺達の目と鼻の先にいた。
『・・・・ギュオォォォォォォンッ!!』
『『ウワッ!』』
叫び声を上げたグルジオに俺達は慌ててバク転して後方に逃げ、両手を広げて迫るグルジオの脇をでんぐり返しで回避した!
『ギュオォォォォォォンッ!!』
『ハァッ!』
『オリャッ!』
大口を開けて迫るグルジオの顔面に、俺は裏拳を叩き込み、ブルはスタンプキックをグルジオの腹部に叩きつけた!
『フッ!』
『セイッ!』
俺が正拳突きを繰り出すと、ブルは空かさず上段蹴りをおみまいした!
『『ハァアッ!!』』
俺達がタブルキックでグルジオを後方に押し出した!
ピコン! ピコン! ピコン! ピコン! ピコン!・・・・。
ビコン! ビコン! ビコン! ビコン! ビコン!・・・・。
俺達の胸元の結晶が赤く点滅し、警報のような音が鳴り響く。
『(ヤバい烈人、何か、急に胸がドキドキしてきた・・・・!)』
『(ああ俺もだ・・・・! そろそろ決めないとヤバそうだ・・・・!)』
俺達はグルジオの身体に迫り、ブルがグルジオの足を取って倒れさせると、俺達兄弟はグルジオのしっぽを持って、ジャンピングスイングでグルジオを投げ飛ばす!
『『(ウオォリャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!)』』
ドシィィィィィィィィィィィンッ!!
投げ飛ばされたグルジオは土煙を上げて倒れる。俺達はグルジオから距離を取る。
『(烈人。怪獣を水のバリアで覆ってくれ!)』
『(分かった!)』
俺は掌から水の玉をグルジオに放ち、すぐにブルは両手から炎の熱線を放った!
チュドォオオオオオオオオンンっっ!
グルジオの身体を水の玉がバリアとなって覆うと、熱線によって瞬間沸騰すると、爆発が起こった!
水蒸気爆発かよ!
爆発でグルジオが上空に吹き飛んだ!
『『(セレクト、クリスタル!)』』
俺達は空かさずクリスタルチェンジした!
グルジオが落下してくるまでに、俺達は最後の攻撃の構えを取る。俺、ロッソが両手を広げてゆっくり胸元に寄せ合わせながら巨大な火球を作り出し、両腕を回して十字に組む。
『(『フレイムスフィアシュート!!』)』
そして同時に、ブルが両腕に水を溜めて、両腕を回してL字に組んだ。
『(『アクアストリューム!!』)』
俺が放った火炎弾と、ブルが放った激流が、落ちてくるグルジオに、俺達の渾身の一撃が直撃した!
『ギュオォォォォォォンッ!!』
そして頭から地面に落下したと同時に、大爆発した!
チュドォオオオオオオオオンンっっ!
『(やった・・・・!)』
『(ああ、やったぞ!)』
怪獣に勝利した俺達は、拳を上下に打ち合わせて手の平を叩き合う。
『(決まったな、俺達・・・・あっ!)』
喜びブルだが、直後にその身体が薄れて消えていく。
『(お、おい!? しっかりしろ來人!)』
『(あぁ~・・・・)』
『(お、俺も? あぁ~・・・・)』
動揺した俺の身体も透き通っていき、脱力しながら消えた。
ー???sideー
グルジオボーンの消滅したのと同時に、何者かの手に、降ってきたクリスタルを掴んだ。そのクリスタルには、『魔』の一文字と、グルジオボーンの姿が刻み込まれていた・・・・。
『なかなか面白い余興だな?』
「・・・・・・・・」
その人物の後ろに、人ならざる異形の生物が現れた。その人物は、動揺1つせず、異形を見据える。
『貴様には感謝している。我々がこの街で活動しやすいように、裏で手を回してくれているからな。ほれ、約束の物だ』
異形はその人物に、“日本刀”を手渡した。先ほど騒ぎに乗じて、美術館から盗んできた刀剣だ。
「ーーーーーー!!」
その人物は、刀剣を見るとはしゃいだように異形に近づき、刀を鞘から取り出すと、刀身を見て笑みを浮かべる。
『確かに渡したぞ、“牛王吉光”をな』
異形はそう言って離れていった。
ー烈人sideー
「コラァ! 起きんかい! 起きんかい! 烈人來人起きんかい!! 烈人ーーー!! 來人ーーー!!」
バシンッ!!×2
眠っていた俺の耳に、怒鳴り声が響くと同時に、頬に鋭い痛みが走り、真っ暗だった俺の瞳に、見覚えのある女の子の顔が入った。
関西弁を喋る黒髪ポニーテールの女の子、『桃園 百花』。
透明感のある水色の髪をツーサイドにした“妹”と同い年の女の子、『天空寺 宙』。
桃色の髪を幾つか三つ編み状にした來人の彼女、『白雪舞姫』。
“ある事情で俺達と同じ寮に住んでいる女の子達”。
「っ・・・・“桃園”、“天空寺”、“白雪”? お前ら、どうして?」
「何が、どうして? や! あんな怪獣が現れてアンタらがここら辺におる聞いたから探しに来たんやで!」
「そうか・・・・っ! 來人は!?」
「隣にいるよ」
天空寺が俺の隣を指差したので見てみると、來人がガールフレンドの白雪の大きな胸部に顔を埋めていた。
「舞姫ぇ~、超疲れたぁ~、癒してくれぇ~」
「來人くん、無事で良かったです・・・・!」
白雪は相当心配していたのか、自分の胸元に顔を埋める來人に嫌な顔せず、むしろ來人の頭を抱き寄せていた。どちらかと言うと内気な彼女にしては大胆な行動だ。
初めて会った時から來人とお互いに一目惚れしたらしく、恋人として付き合っている。
まさか勉強&研究大好きで、恋愛興味0だと思っていた來人に彼女ができるなんて、俺も“叔父さん”も驚いた。まだ両親や妹には言っていないが。
「所で二人とも、何これ?」
天空寺が俺達の近くに落ちていた『2つのジャイロ』 と『クリスタルホルダー』を見せる。
「ああ実はな・・・・」
「待った烈人。その話は後にしよう。もうすぐ警察とマスコミが来る」
白雪の胸元から頭を離した來人が、遠くから聞こえるヘリコプターとパトカーのサイレンが近づいているのを教えた。
「そうだな。みんな、ここを離れよう」
俺達はその場離れた。何だかまた大変な事になってしまったが、この時俺は知らなかった。翌日、俺達兄弟とずっと疎遠になっていた『星乃 雲母』と、これから待ち受ける戦いの事を。
光の戦士の兄弟の力を受け継いだ兄弟が、『感情を食らう害虫』、『紛い物の黒き戦士』、『光の兄弟の妹』、『自分達の妹の真実』、そして、『暴走する宇宙の白血球』と戦う事になる。
ー『R/B・エグゼロス』ー
君の笑顔と勇気、それは希望と未来。守らなきゃ全部宝物。僕の君の声が重なり合えばきっと行ける。決して絆を諦めない。決して明日を諦めない。この瞬間起こった奇跡は嘘じゃない。繋がり重なる未来へ。
「「俺色に染め上げろ! ルーブ!!」」
ウルトラマンR/B<ルーブ>終了です。
ちなみに、あの『パチモンオーブ』が雲母達に勝手に点けたの評価を紹介しますが。
雲母・「ヒーローを真面目にやってない不届き者!」
百花・「姉へのコンプレックスから逃げる為にヒーローやってる不埒者!」
宙・「オタクのガキんちょがヒーローを気取るな!」
舞姫・「一流のヒーローはオドオドしない!」
あのパチモンならこれ位言うと思います。勿論、雲母達もあの『オーブの偽物』の事は蛇蠍の如く嫌っている設定です。