光に選ばれし勇者達   作:BREAKERZ

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ダイナ・ハンドレッドⅢ

「はっ・・・!!・・・う・・・俺は・・・」

 

「気がつきましたの?」

 

目を覚ましたハヤトはベッドに横たわっていた。そのベッドの傍らにクレア・ハーヴェイがいた。

 

「会長・・・そっか・・・俺負けたんですね・・・エミールたちの退学は・・・!「取り消しましたわ」お願いしますせめてもう少し・・・・・・え?取り消し?なんで・・・?」

 

戸惑うハヤトにクレアはため息混じりに話す。

 

「決闘<デュエル>を始める前にしたお話をもうお忘れですの?理由は一つ、わたくしが約束を破ったからですわ」

 

クレアは決闘<デュエル>で起こった事を説明する。

 

『ハヤトが全身武装した事』

 

『全身武装したハヤトが世界初の“飛行する”ハンドレットを纏った事』

 

『飛行したハヤトと“全身武装した”クレアが接戦を繰り広げるも“経験”と“技術”で辛くもクレアが勝利を納めた』

 

『決闘<デュエル>終了で初めての戦闘の疲労でハヤトが倒れてしまった』

 

そして現在に至る。

 

「・・・・・・・・・えっ? 俺が、全身武装を?」

 

「えぇ・・・貴方はそれでわたくしを追い詰めました。覚えていますか?」

 

ずいと近づいてきたクレアに頬を染めながら、ハヤトはしどろもどろに言う。

 

「うぅん・・・なんて言いますか・・・空を飛んでいてテンションが舞い上がっちゃってて・・・すみません・・・ほとんど覚えてません・・・」

 

「・・・・・・如月ハヤト」

 

クレアはハヤトの両肩を掴み詰め寄る。

 

「貴方はいったい何者ですの?」

 

「はい?・・・何者って俺は・・・」

 

煮え切らない態度にイラッと来たのか思わずハヤトを押し倒し。

 

「ぐえっ」

 

「初めての決闘で全身武装を行い、尚且つ世界初の“飛行能力”を発現させ、わたくしを追い詰める。普通ではありませんわ!さぁ、如月ハヤト、おとなしく白状なさい!

 

「ちょ・・・だ、ダメです!会長 これまずいって!」

 

「何がダメだとおっしゃいますの!?」

 

「この距離近すぎだって!!」

 

「? なんですの?距離が近す・・・ぎ・・・」

 

そこで初めてクレアが自分がハヤトを押し倒してるのに気づいた。

 

「(かああああああああああああ)」

 

クレアの顔が赤くなり。

 

「あ」

 

パァン

 

「いてーーーーーっ」

 

乾いた音が、夜の病院に響いた。

 

それから病室を出たクレアの前に、リディとエリカに抑えられたエミールがいた。エミールはハヤトに何かしたら許さないと言って病室に入ると顔に手形を付けたハヤトに「会長に何をしたの?」と疑われたが、ハヤトは「無実」と言っていた。

 

そして、クレアはリディの運転する車の中で。

 

「(ハンドレットの全身武装・・・天才と呼ばれたわたくしですら展開するのに一月はかかりました、それも“飛行能力”まで・・・反応値が高いからすぐに展開できるというものではないのです・・・けれど・・・もし彼が“あの子”とおなじヴァリアントであったならば)・・・可能性はありますわね・・・」

 

「クレア様?」

 

「リディ、エリカ、わたくしは決めました。如月ハヤト・・・彼をセレクションズにスカウトいたしますわ」

 

だか、リトルガーデンの近くの海域で人知れず、宇宙から飛来した“浮遊体”が海底火山を吸収しながら“何か”が生まれようとしている事に、誰も知らない。

 

そしてその翌日。ハヤトとエミールはリトルガーデンの街を歩いていた。エミールは自分が男に男装しているにも関わらずハヤトの腕に抱きつき、まるで恋人のように歩いていた。

ただでさえ、クレア以上の反応値を見せ、世界的エースのクレアと初決闘で接戦をし、さらに“世界初”の飛行ハンドレットを展開した事で有名になったハヤト、中性的な美少年(本当は美少女)のエミールが仲睦まじく歩いているのだ。目立たない訳がない。

 

するとクレアから電話がかかり、闘技場に向かうと。

 

「それで?わたくしが呼んだのは如月ハヤトだけですけど・・・?」

 

「会長はハヤトに何するかわからないからね!僕がハヤトを護らなきゃ!」

 

「エミール・・・」

 

「・・・・・・」

 

無理矢理付いてきたエミールにハヤトもクレアも呆れる。

 

「コホン・・・如月ハヤト、実はあなたにお願いがあるのです」

 

「お願い・・・ですか?」

 

「ええ あなたに生徒会直属の選抜部隊『セレクションズ』に加入してもらいたいのです」

 

「セレクションズ・・・?」

 

首を傾げるハヤトにエリカが説明する。

 

「このリトルガーデンを運営するワルスラーン本社からの指示に従い、学生の身分のまま一人前の武芸者<スレイヤー>同様の任務をこなすのです。任務には各種施設の警備や要人の警護、無論サベージとの実戦も含まれます」

 

「実戦・・・」

 

実戦と聞いて言い淀むハヤトにクレアが言う。

 

「これは強制ではありませんわ、けれどわたくしはこう思いますの。『ノブレス・オブリージュ(高貴なる者に伴う義務)』。力を持つ者は力なき人々のためにその力を振るうべきだ・・・と」

 

「・・・・・・(力を持つ者は力なき人々のためにその力を振るうべき・・・お前もそう思うか・・・?)」

 

ハヤトはポケットに入れてあるリーフラッシャーに、“巨人”に語りかける。そんなハヤトを無視してエミールがずいと前に出て。

 

「だったら僕もハヤトと一緒に参加するよ、人手が欲しいんでしょ?」

 

「お前にその資格はない、サベージと対等に戦える能力を有する者でなければ足手まといになる」

 

リディに却下されむぅとなるが、直ぐに不敵な笑みを浮かべ。

 

「それなら・・・ボクも会長と決闘<デュエル>すればいいのかい?」

 

自分の百武装<ハンドレット>『全てを覆い隠す霧<アームズシュラウド>』を部分展開する。

 

「なっ・・・!無礼だぞエミール・クロスフォード!」

 

「お待ちなさい」

 

「会長・・・」

 

前に出ようとするリディを止めクレアが前に出る。

 

「いいでしょう、貴方の力見せてみなさい」

 

クレアも『気高き戦姫<アリステリオン>』を部分展開して構える。

 

「もちろん・・・そのつもりさ!」

 

飛び上がり攻撃するエミール。え

 

「エミール!」

 

「会長・・・!」

 

エミールの攻撃で土煙が上がるが、それが晴れると。

 

「!!」

 

クレアの展開したパーツが盾となりエミールの攻撃を防いでいた。

 

「この程度ですの!?」

 

「だったら・・・これでどうだぁっ!」

 

不敵な笑みを浮かべるクレアにウォーハンマーを叩きつけ再び土煙が舞うが・・・。

 

「!!」

 

クレアはエミールの後ろに立ち花の形をした追尾兵装<ビット>をエミールの周りに展開させていた。

 

「貴方の力、なかなかのものですわね。ですが、実戦での経験がまだ足りませんわね。研鑽なさい!」

 

堂々と言うクレアの出で立ちはまさに“女王”と呼ばれるにふさわしい威厳があった。

 

ビーッビーッビーッビーッ

 

突然エリカとクレアの携帯端末から警報が鳴る。

 

「警報・・・か?」

 

「クレア様!本社より出動命令です!」

 

「・・・わかりましたわ」

 

ハンドレットを解除するクレア。

 

「!?ちょっと待って!僕はまだまけたわけじゃ・・・」

 

「緊急事態ですわ!」

 

「うっ・・・」

 

食い下がろうとするエミールを戦士の一瞥で黙らせるたクレアはエリカとリディと共に急行する。

 

「エリカ、リディ行きますわよ」

 

「「はいっ」」

 

「ま、待ってください!緊急事態ってどうしたんです!?」

 

「・・・ワルスラーン本社からです。ツヴァイ諸島にサベージが現れたと連絡が入りましたわ」

 

クレアからの言葉に驚くハヤト。

 

「サベージが出現・・・!?」

 

「わたくしたちはこのあとすぐに出撃態勢に入ります」

 

「じゃあ俺達も・・・」

 

「いいえ、今回はわたくしたちだけで対処いたしますわ」

 

「えっ!?」

 

ハヤトとエミールの動向をクレアは却下した。

 

「あなた方の能力は認めます。ですが、実戦経験はほぼ皆無、いきなり出撃など荷が重すぎですわ」

 

「・・・・・・」

 

正論を言うクレアにハヤトは黙るが、ポケットのリーフラッシャーを握りながら言う。

 

「・・・会長は言いましたよね『ノブレス・オブリージュ』って、力を持つ者は力無き人々のためにその力を振るうべきだって、実のところ力無き人々・・・って言われてもピンと来ないんです・・・だけど、このサベージがもしもリトルガーデンを襲いに来たら・・・学校のみんなや妹だって危険にさらされてしまうかもしれない」

 

ハヤトは拳を握る。

 

「俺に何ができるからわかりませんが、だけど・・・今の俺にできることをさせて欲しいんです(そうだろ、“巨人”・・・!)」

 

「(ハヤト・・・)//」

 

「・・・・・・はぁ・・・わかりましたわ、二人ともついてきなさい」

 

そしてハヤトとエミールはクレアと共に戦地に赴いた。

 

 

 

 

 

しかし、ハヤトのポケットの中にあるリーフラッシャーが“何か”を警告していた。

 

「(・・・・・・“何か”が起きようとしているのか・・・?)」

 

海底火山から生まれようとする“何か”が胎動している事に今はまだ、誰も知らない。


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