ハリエット・ポッターと優しい世界   作:スターダスト

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何書いてるのか自分でもわからない。
誰得?俺得な展開。



2話 家族と、優しさ

 

 小さなキャリーバッグに少ない荷物を詰めて、ハリエットは一息ついた。

 

 

 

 鼻歌を歌い、かつてないほどご機嫌な様子のハリエット。

 それも仕方ない、なにせ今日は彼女にとって最高の日だ。(ダンブルドアにはまだ早いと言われたが、よく分からなかった)

 格好つけて言うのなら、終わりの日であり始まりの日でもあった。

 

 7月31日、今日をもってハリエット・ポッターは10年間過ごした孤児院を離れ、新たな生活をスタートするのだ。

 11歳の誕生日でもある今日に苦い思いしかなかったこの10年を振り返り、ハリエットは新しい日々に心躍らせていた。

 ある人物と共に暮らすとダンブルドアから聞かされているが、果たしてその"ある人物"とは仲良くやっていけるのだろうか。

 人見知りするタイプではないハリエットは、初対面の人物との共同生活に抵抗はあまりないが、それでもやはり、新しいことや初めてのことには緊張する。

 

 ハリエットはほんのちょっとの不安と恐怖、それから心の大半を占める喜びと期待を感じながらも、あの日を思い返した。

 

 

 

 

 

 

 ──────

 

 

 

「──その、魔法学校はとっても魅力的です。両親のことだって知りたい。けど、お金が…」

「なに、心配するでない。君のご両親は実に立派な魔法使いであった。君のためにと遺した物は想いだけではない」

 

 

 子供であるハリエットに、私財などあるわけがなく、学費を払えないことを懸念したが、ダンブルドアの返答にハリエットは安堵の息をついた。

 つまり、ハリエットの両親は彼女に、ホグワーツに通う分の遺産を遺したということである。

 

「それからホグワーツは全寮制じゃ。ここから通うにはあまりにも気が遠い」

「全、寮制…」

 

 なんと甘美な響きだろうか。

 この息苦しい孤児院から少しでも離れられると思うだけで、舞い上がってしまうほどには。

 そんなハリエットの様子を感じとったのか否か、ダンブルドアは彼女の歓喜に水を差すように「しかし、」と言葉を続けた。

 

「君にはこの孤児院を出てもらう」

 

 路頭に迷えと?

 ハリエットは突飛なダンブルドアに思わずそう悪態づきそうになった。

 

「えっと、それはどういう…」

「簡単なことじゃよ、君にこの夏から"ある人物"と暮らしてもらいたい」

「ある人物?」

「それは明日のお楽しみじゃよ。入学準備もその人物と買いに行ってもらうよう頼んである。孤児院のシスターと既に引き取り手続きは済ませてある」

 

 ハリエットは、随分急だな、と思った。そんなことならもっと早く知らせてほしかった。

 頭に自らの少ない私物を描きながら、ハリエットはダンブルドアの「明日の朝迎えに行く」という言葉に小さく頷いた。

 

 

 

 ──────

 

 

 

 

 

 

 澄み渡る青空、汗の滲む夏の暑さ。

 なんとも陳腐な天気ではあるが、ハリエットにとって、とても素晴らしい天気だった。まさに、始まりにはぴったりの日である。

 

「さあ、ハリエット。準備はもうできておるかな?」

「はい!」

「元気がよくて何より。では行くとするかの」

 

 朗らかな笑い声と共に差し出される腕を掴んで、キラキラ光るブルーを、空の青と重ねた。

 

 

 

 バチン!という音だけを残して、老人と少女は姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 ───バチン!!

 

 大きな乾いた音と共に、ハリエットは瞼を開けた。

 視界は揺れ、吐き気が込み上げてくるが、そんなことがどうでもよくなってしまうほどには、ハリエットは今目の前の景色に呆然とした。

 

「さっきまで、孤児院にいたのに…」

 

 全く知らない場所だ。

 

 そう、先程までハリエットはダンブルドアと孤児院にいたはずなのに、彼女の眼前には見知らぬ──近くの標識にグリモールド・プレイスと書いてあった──景色が広がっている。

 

「驚くのも無理はない。今のは姿現しという移動魔法じゃよ。ただしこの魔法には1つ欠点があってな。ハリエット、気分はどうじゃ?」

「ぅ、ちょっと目眩がするだけなので、大丈夫、です」

「上出来じゃ。これは初めてだと吐いてしまう者もいるからな」

 

 そうならそうと始めから言ってほしい、とハリエットは思った。

 驚きに気をとられていた分後から来る吐き気や目眩を抑えながらも、ハリエットはダンブルドアに疑問を投げかけた。

 

「でも、いきなりどうしてここに?」

「なに、君の新しい"家族"を紹介するだけじゃよ」

 

 どうやらここがハリエットの新居地となるらしい。

 

「では、行こうか」

 

 ダンブルドアの掛け声の一瞬後、地響きのような音がハリエットの耳に飛び込む。

 ハリエットは困惑を隠しきれずにあたふたし、ダンブルドアを見る。

 しかし彼はハリエットの戸惑いなど気にもせず、ただ一点を見つめていた。

 

 やがて音が止むと、ハリエットは本日二度目の不思議を目の当たりにする。

 なんと、11番地と13番地の間に新たな"12番地"があるのだ。

 まるで、先程まで認識できなかったものが見えるようになった感覚だ。

 

「マグルには見えないよう魔法がかかっておるんじゃよ」

 

 ハリエットの驚きを見透かしたような言い方だった。

 実際、彼女はなんでも顔に出てしまう性質なのでダンブルドアにも彼女の心情は手にとるようにわかったことだろう。

 

 

 

 ダンブルドアの後をついて中に入ると、そこは不思議な魔法の世界が──広がってるわけではなかった。

 ただ、魔法使いらしいと感じる薄暗さと黒の多さを感じる内装だった。

 床も壁も天井も黒一色に塗られており、上から吊り下がるシャンデリアは等間隔に銀の煌めきを放っている。高級そうな深緑の絨毯が敷かれており、靴の裏から柔らかな感触が伝わった。

 少しの不気味さと新居への興奮で心臓は大きく鼓動した。

 

「坊っちゃま!ダンブルドア様がいらっしゃいました!!」

「ひょえ」

 

 緊張でドキドキしていたハリエットの体を揺らすほどの大声が屋敷内に響いた。

 心臓が飛び出るのではないかと思うほど、ハリエットは驚きで飛び上がった。

 恐る恐るダンブルドアの前を覗くと、そこには不気味な小人がいた。

 瞼を重々しそうに開けたような細い眼、大きな耳は垂れ下がり、皺だらけの明らかに健康ではない色をした肌をしている。おまけにその小さな身体を覆うのはボロボロの薄汚れた布だ。

 

(なんてみすぼらしい格好をしてるんだろう)

 

 ハリエットはその小人を不気味に思うより哀れに思った。

 

「──こんにちは」

 

 ハリエットに向けた柔らかい男性の声に、ハリエットは体を僅かにビクつかせた。

 哀れな小人にばかり目がいってその後ろの男性に気づかなかったようだ。

 

「こ、こんにちは」

「そんな緊張しなくても取って食べはしないよ」

 

 そんな子供騙しのような冗談を言って男性は緩く微笑んだ。

 

(ずいぶん、…儚く笑う人だなぁ…)

 

 それがハリエットの、男性に対する第一印象だった。

 紺碧の夜空を思わせる黒髪はサラサラとしており、銀色にも見えるグレーブルーの瞳は優しそうに細められている。目鼻立ちは整っており、あどけなく見えた。

 

「僕はレギュラス・アークタルス・ブラック。これからは君の"家族"だ」

 

 その言葉に言いようのない充足感を感じ、視界は歪んでいった。

 それでも──

 

 それでも、ハリエットは優しく笑んだ。

 

「ハリエット・ポッター、11歳。これから、よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 

 ──そうすれば、世界も優しくなってくれる気がしたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──哀れな子供だと、思った。

 

 

 

 生まれて1年で両親を殺され、預けられたはずの親からは捨てられ、世界から隔離された。

 いくら悪の手から逃れるためとはいえ、悲劇の連続に同情を禁じ得ない。

 

 そんな悲劇の主人公も、()()では英雄扱いされているのだから皮肉なものである。

 彼らが死をもってして彼女を守ったのは必然だったのか偶然だったのか。

 運命も因果も、結局は後付けの結果論でしかない。

 彼らの死は果たして本当に防げなかったのだろうかと、今になって思う。

 

 もし、彼らが生き残っていたら。

 

 きっと、闇の帝王は倒されることはなかっただろうし、ぬるま湯のような今の平穏も訪れることはなかったことだろう。

 でも、それでも。たった1人の子供の幸せはあっただろうに。

 そう思わずにはいられなかった。

 

 母親そっくりなエメラルドグリーンの瞳は少しの寂しさと、虚しさが映っていた。

 無造作に伸ばされた赤毛は父親と同じようにクルクルとカールしている。

 顔立ちは…母親似だろうか、でも、父親も思わせるような顔であった。

 そこかしこにある2人の面影に、涙がこみ上げてくる。

 尊敬する優秀な魔法使いと魔女であった2人は、付き合い始めからとても仲が良かった。

 彼らに子供ができたと聞いた時はとても喜ばしかったが、当時は暗黒時代、表立って祝福することはついに叶わなかった。

 おめでとうございます、きっと先輩たちに似た優秀な魔女になりますねって言って。彼らがそうだろう、なんていったって僕らの子供だからね!と自慢げに言って。

 そんな、何の変哲もない会話をしたかった。

 また笑い合って、先輩がお得意のイタズラで場を明るくして。暗くなってちゃなんもできやしない!って笑い飛ばす。

 

 そんな"彼らとの"普通の平和が、どうしようもなく欲しかった。

 

 

 数年学び舎を共にした僕と違い、あの子は僅かな思い出すら時間に奪われてしまった。

 何も、ないのだ。

 愛も、思い出も、家族も。

 

 だから、どうしても知ってほしかった。

 彼らがどんなに君を愛してたか、彼らとの短い思い出や、家族とはどんなものなのかも。

 それが、僕が家族になることで君が知れるのなら、喜んで僕は彼──ダンブルドアの頼みを引き受けた。

 

「ではレギュラス。よろしく頼む」

「はい。ご心配なく」

 

 彼のことはあまり好きではなかった。

 何を考えているのか分からないのに、向こうはこちらを見透かしたようなところが。

 すべて分かっているかのように振舞っているくせに、大切なものは零れ落ちたことにするところが。

 

 きっとこれも、これからも、あの子の運命は彼の掌の上の物語だ。

 

 それでも、あの子の幸せがその──零れ落ちやすい──狭い掌の上にあるのなら。

 僕はその掌に君がいることを望む。

 

 

 

 どうか、どうか立ち止まらないでくれ。

 

 先輩たちの死を無駄にしないためにも。

 この世界のためにも。

 

 きっと君に用意された道が最善だから。

 その道に"僕"がいるのなら、

 

 

 

 どうか、拒まないでくれ。

 

 

 

「今日から僕は君の家族だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




完璧捏造。
最早捏造純度100%でしかない独自展開。



"もしレギュラス・ブラックが味方だったら"
解釈としては、ヴォルデモートの分霊箱に誰よりも──ダンブルドアはわかんねぇけど──気づいていたから、ハリエットの魂に闇の帝王の魂が混じってることも気づいてて、ハリエットが死ななきゃいけないことも分かってんじゃないかなぁ…という妄想。
だから、死んでも家族でいることを許してほしいという懺悔的独白。
本当は最後の方に語る予定だったんだけど、今後の展開的に早めにしたかった(この判断がいかされることは多分ない)。


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