ゼノヴィアの学園生活   作:阿修羅丸

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神器覚醒

 奇妙な部屋だった。

 一見すると六畳一間の和室である。三方を壁で囲われ、残る一方は土間を隔てて障子戸がある。部屋の中央にちゃぶ台があり、それ以外の調度品はない。そして、照明器具も無い。にも関わらず、決して暗くはないのだ。天井自体が発光しているかのように、部屋全体が明るかった。

 その奇妙な六畳間のちゃぶ台を、隼人とゼノヴィア、朱乃の三人が囲み、弁当を広げていた。三人とも制服である。

 

「どうぞ隼人様、あ~ん」

 

 朱乃が広げた弁当からだし巻き玉子を箸で摘まんで取り出し、隼人に差し出す。

 隼人はおもむろにそれをパクッと口にした。

 

「……うん、美味い」

「まぁ良かった。それはゼノヴィアちゃんが作ったんです」

「副部長に教わったんだ」

「ほー、凄いなゼノヴィア」

 

 隼人はそう言って、ゼノヴィアの頭を撫でてやる。

 ゼノヴィアはその優しい手つきに、うっとりと目を細めた。そして同じ弁当から唐揚げを取り出して、

 

「ほら隼人、あ~ん」

 

 と差し出す。隼人、これもまたパクッと口にした。

 

「……うん、これもいけるな」

「そうだろう? 副部長が作ったんだ」

「ほー、さすが朱乃だな」

 

 隼人はそう言って、今度は朱乃の頭を撫でてやる。朱乃はその優しい手つきに頬を上気させ、恍惚とした表情になった。

 そんなこんなで三人は食事を終え、各々の弁当箱を片付ける。

 

「隼人様、どうぞ」

 

 朱乃がスカートをずり上げて、太ももを露にした。隼人はゴロリと寝転び、その白い太ももを枕にする。

 ──かと思えばムクリと起き上がって胡座を組み、

 

「ほら、ゼノヴィア」

 

 と、自分の太ももをポンポン叩いた。その意を察して、ゼノヴィアは嬉しそうに、組んだ足の上に座る。

 

「あらあらウフフ、本当に兄妹のようですわね」

 

 朱乃は後輩二人の様子を見てコロコロと笑いながら、自分の太ももを枕にした隼人の髪を撫でた。

 分身の術を使えば、こうやって両方と充分なスキンシップが取れる。ゼノヴィアと朱乃の二人と同時に付き合うことになった時こそ不安を覚えたものだが、隼人の胸中からそれは既にすっかりなくなっていた。

 

「それにしても、本当に不思議なお部屋ですわね……窓が無いのに閉塞感はないし、照明が無いのに明るいし……」

「俺もそう思うが、まぁそういうものなんだろうな」

 

 答えながら隼人は手を伸ばし、朱乃の豊満過ぎる胸を制服越しに鷲掴みして、捏ね回す。着衣越しにでも伝わってくる圧倒的ボリューム感と柔らかさ、重さに、内心舌を巻いていた。

 

「でも私はこの部屋が好きだぞ。凄く落ち着く」

 

 もう一人の隼人の膝の上で、ゼノヴィアが言った。背後から脇の下を通って伸びる隼人の手が、はだけた制服の中に潜り込んで妖しく蠢いていた。

 

「ここは隼人の神器(セイクリッド・ギア)によって造られた部屋なのだろう? 神器(セイクリッド・ギア)は所有者の一部のようなものなのだから、つまりこの部屋も隼人の一部も同然だ。だから落ち着くのだろうな」

「ウフフ、きっとそうね」

 

 朱乃は肯定しつつ、制服のジッパーを下ろして、自ら隼人の手をその中にいざなった。

 

 

 二人が言うように、この部屋は神通力ではなく神器(セイクリッド・ギア)によって造られた物であった。

 覚醒は何の前触れもなく、唐突に起きた。

 隼人がある朝目覚めると、調度品の一切が存在しない、床も壁も天井も真っ白な部屋にいたのだ。

 辺りを見回しても誰も、何もいない。

 ただ、一方の壁にドアがあり、それを開けると、その向こうは自分の部屋だった。

 ドアを潜って部屋に戻り、もう一度ドアの方を振り返ると、そこにドアはなく、カレンダーが貼られた壁があるだけであった。

 そして彼の手の中には、見覚えの無い鍵が一つ、握られていた。長さ十五センチほどの、古めかしい銀色の鍵。初めて見るそれを、隼人は何故か直感で、自分の物だと感じたのだ。

 

 天眼通でその鍵の過去を見ることで、それが神器(セイクリッド・ギア)の一種《隠者の庵(ハイド・アウェイ)》であることがわかった。

 自身の思い描くまま、異次元に様々な内装の部屋を好きなだけ創造し、ストックしておけるというものだ。時間の流れは外界から完全に切り離されており、部屋の中で何時間過ごそうと何日過ごそうと、外の世界は全く時間が進んでいない。そして銀の鍵をその辺の壁でも地面でも──何なら空間にでも──差すことで、その部屋への出入口となるドアが現れるという仕組みである。

 神器(セイクリッド・ギア)は血筋など関係なく人間に宿り、覚醒するものである。入部してからリアスにそう教わっていたので、存在その物は知っていたが、よもや自分にそのような物が宿っていたとは思わなかった。

 神器(セイクリッド・ギア)を創造した聖書の神に感謝しつつ、隼人が自身に目覚めた能力で早速造ったのが、二人の彼女と睦み合うための六畳間だったという訳だ。 

 

 

 ある日、グレモリー眷属にはぐれ悪魔の討伐指令が下った。

 元は人間の転生悪魔で、自身の肉体を鋼鉄に変化させる神器(セイクリッド・ギア)の持ち主である。更に戦車(ルーク)の駒も与えられていたことで、神器使用時の攻撃力・防御力は凄まじいものとなっていた。

 そのはぐれ悪魔『サロスコ』が潜伏している廃工場に、オカルト研究部は満月の夜、訪れた。

 待ち構えていたサロスコは、早速神器を顕現させた。メカニカルな外観のベルトが虚空に現れ、意思ある物のように腰に巻き付いて装着された瞬間、彼の肉体は二回りほど膨れ上がり、皮膚が黒々とした鋼鉄に変わった。そして工場内に放置されていた機械を軽々と持ち上げて、投げつけて来たのだ。

 大質量の弾丸と化したそれは、しかし隼人が、開いた右手を団扇を扇ぐように振ると、サロスコに横殴りにぶつかった。神足通でそうなるように瞬間移動させたのだ。

 

「くそガキぃ!」

 

 サロスコは罵声を上げて、隼人目掛けて突進してくる。

 対する隼人、今度は右手を上から下に振り下ろした。

 ──瞬間、サロスコはパッとその姿を消してしまった。

 

「……どこに飛ばしたの?」

 

 神通力によるものだと察したリアスが、尋ねる。

 

「とびきり頑丈な部屋を造っておきましたんで、そこに」

 

 と答える隼人。自身の神器のことは既に教えてある。

 

「だ、大丈夫なの?」

「異次元空間みたいなものなんで、馬鹿力じゃあどうにもなりません。それに部屋って言うより箱とか棺桶みたいなものなんで──ここから見れますよ」

 

 隼人は親指と人差し指で作った輪を、リアスの前に差し出した。恐る恐る覗き込んだリアスの目に、確かに箱とか棺桶と表現すべき狭さの空間内に閉じ込められた、サロスコの姿が見える。壁や天井を破ろうにも、狭すぎて拳を振りかぶることも出来ず、もがくことしか出来ない。

 やがて疲れて動けなくなったところで、再び隼人の神足通で解放されたサロスコは、抵抗も出来ぬまま身柄を拘束された。

 

「……便利ね」

「俺もそう思います」

 

 リアスの言葉に、隼人は事も無げに、心からの言葉を返したのであった。

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