青年と別れ鎮守府内に向かう東方不敗。しかし少し問題があった。
東方不敗「む、どこへ向かえば良いか聞いておらんかったわ」
そう、どの部屋、どの場所へ向かえと言われておらず案内人がいるのかどうかすら聞いていなかったのだ。
東方不敗「さて、どうしたものやら。とにかく中に入ってみんことには始まらんな」
そうすると東方不敗はドアを開け鎮守府内に入った。しかし人がいる気配はない。
東方不敗「ふむ、人の気配が感じられん。ここには暁という少女ら数名がいると聞いておったが。皆留守にしておるのか?」
そう呟いていると階段の上よりバタバタと走る足音が聞こえこちらに向かっているようだ。そして表れたのが黒髪長髪でメガネをかけた少女だった。
?「申し訳ありません、執務を行なっていて遅れてしまいました。貴方が少将の話しておられた新しい提督ですね?」
東方不敗「む、急かしてしまったようですまん。して提督とな?」
?「はい、少将よりそう承っておりますが?あ、申し遅れました、執務等を担当させていただいております、大淀と申します。提督のサポートをさせていただきます。宜しくお願い致します」
東方不敗「あやつめ、そのようなことは一言も言っておらんかったぞ。施設の管理と言っておったではないか。ワシは東方不敗、よろしく頼むぞ」
大淀「と、東方不敗さんですか?変わったお名前ですね」
東方不敗「まぁ異名みたいなものじゃ。気にしないでおいてくれんか」
大淀「わ、わかりました。それでは執務室へ案内いたします」
と、大淀が歩き出そうとするが東方不敗が呼び止めた。
東方不敗「して大淀とやら、ワシはここの管理をしてくれと頼まれたんじゃが?その提督とはなんじゃ?」
大淀「提督というのはここの管理者のことを指します。ですので少将がおっしゃっていたことは間違えではないですよ」
大淀がそう告げると東方不敗が「名称のようなものか」と呟いた。
東方不敗「すまんな大淀、では引き続き案内を頼むぞ」
大淀「はい。ではこちらになります」
そして二人は執務室へと移動した。
−執務室−
東方不敗は執務室へ入る。そこには机が3つに本棚があるだけの部屋だった。
大淀「ここで提督には仕事をしていただくことになります。私も基本的にはここで事務作業をしております」
東方不敗「そうか。仕事の内容やら詳しい説明をしてくれんか?ワシはここで管理をするよう言われただけでその内容をよく知らん」
大淀「特に難しいことはありません。書類に不備がないか確認後、押印をしていただくだけですね」
思いの外仕事内容がざっくりしていた。それならば自分にもできると考えた。
東方不敗「それだけで良いのか?」
大淀「そうですね、後はこの鎮守府で暮らす全ての艦娘のケアや、作戦の指示などになります」
東方不敗「ふむ、ここの娘たちは少しメンタルケアが必要と聞いたがそこまで酷いものなのか?」
大淀「私や他のスタッフの明石は特に問題ないのですが、ここに残っている駆逐艦暁のことは聞いておりますか?」
東方不敗は頷き大淀が続ける。
大淀「その暁ですが部屋から出てこなくなってしまいまして。そこで提督にお願いしようかと思って」
東方不敗「しかし、暁とやらは男性を怖がっているのであろう、わしが行ったところで逆効果ではないか?」
大淀「確かにそうかもしれませんがこれも提督の仕事でして。サポートならすることが出来るのですが。何せここには私と明石、暁の三人しかおりませんので少し難しいと思います」
そう告げられ東方不敗は早速暁の元へ行くことにした。しかし、案があって行くわけではない。今日は挨拶だけでもしておこうかという考えからの行動だった。
東方不敗「では早速暁の元へ案内を頼めんか?ひとまず挨拶だけでもしとかんとな」
大淀「わかりました。案内いたしますね」
二人は暁の元へと向かった。
−暁の部屋の前−
二人は暁の部屋の前まで来た。そしてドアをノックした。すると部屋の中から怯えるように声がかかった。
暁「だ、誰?」
大淀「大淀です。本日新しい提督が着任されましたので挨拶をと」
東方不敗「ワシの名は東方不敗、君が暁で間違えないかの?」
東方不敗が声をかけると中からさらに、怯えたように「こ、こないで。もう痛いのも怖いのも嫌...」と弱々しい声が帰って来た。
東方不敗「ふむ、相当酷い目にあったようじゃな。無理にとは言わんからいつでも出て来なさい。ワシは無理やり部屋から出そうとはせんのでな。自分のタイミングでよい」
そうすると中から暁が質問する。
暁「お、怒らないの?お部屋から出るの断ったのに」
その質問に東方不敗は穏やかな声で
東方不敗「怒られるようなことはしとらんじゃろ?ゆっくりでよいから、自分の足で前進する、一歩踏み出すことが大事なんじゃ」
そう答え部屋を後にした。
大淀「よいのですか提督」
東方不敗「無理に出しては意味がない。自分の足で出てくるからこそ意味がある。それが成長というものじゃ、だから今はよい」
その言葉を聞き大淀は笑顔で次のスタッフの元へ案内する。
−工廠−
二人は工廠へ着いた。そこでは艤装と呼ばれる艦娘にのみ扱える武装の修理や改修、艦娘を生み出す建造が行える場所であった。
大淀「提督、こちらの方が工廠を任されている明石です」
明石「初めまして提督。私が工廠で装備の改修、修理などを任されております明石と申します。宜しくお願い致します」
東方不敗「ワシは東方不敗と申す。これよりよろしく頼むぞ」
そう答えると明石も大淀同様に名前について触れて来たが同じ返答をする。
明石「では、今後ともよろしくお願いいたします。提督も装備が欲しくなったらいつでもおっしゃってくださいね」
とにこやかにいう明石に対して大淀が、
大淀「提督が自ら戦うわけないです」
と返答したが東方不敗から、
東方不敗「すまんがワシは武装せずとも布さえあれば問題ない。これでも一武闘家であるからな」
と高笑いをするが大淀、明石の両名は頭の上にはてなを浮かべていた。布でどうして戦うのかと。
明石「ご冗談を、相手を絞め殺すとでもいうのですか?」
東方不敗「ふむ、百聞は一見にしかずという。明石よここに強度が高いものは無いか?」
明石「それならこれをどうぞ、私が趣味で作ったものですが深海棲艦の砲撃でもビクともしないと思いますよ」
と盾のようなものを差し出した。するとその盾に向かい布に気を込める東方不敗。そして次の瞬間。
東方不敗「カーッ!!」
東方不敗が盾に向かい布を放つ、そしてその布は容易く盾を貫いた。
大淀・明石「う、嘘でしょ?」
二人とも相当驚いているようだ。それもそのはず、たかが布切れが戦艦の装甲以上の強度の盾を貫いたのだから。
東方不敗「まぁ、こんなもんなのかの」
明石「き、規格外な提督ね」
大淀「わ、私たち必要なのかしら?」
次元の違いを見た二人は呆れることしかできなかった。それもそのはず、東方不敗は以前の世界で生身でデスアーミーを倒していたのだから当然であるが、二人はそんなことは知る由もなかった。
その後、工廠を後にし他の施設の案内を終え執務室に帰って来た。しかし、執務室の扉は少し空いていた。
その中にいたのはなんと暁であった。
東方不敗「ふむ、一歩踏み出すことはできたようじゃな」
大淀「暁ちゃん、無理してない?本当に大丈夫?」
大淀が近寄り確認する。そして暁が東方不敗に向き合い、
暁「あ、暁よ。本当はまだ怖いけど、れでぃーとして挨拶をまともにしないといけないもの」
東方不敗「その意気やよし。少しづつでよい、毎日続けていくことが己の上達につながる。それを肝に銘じ己が鍛錬に励むがよい。」
暁「と、当然よ。今度の司令官は前の司令官のような感じがしないもの、すぐに慣れるわ」
何が暁を動かしたかはわからないが、暁が自発的に部屋から出てくるようになったことに大淀は大いに喜んでいた。
暁がその小さな勇気を振り絞り殻を破ることができた。
それは小さな一歩だが確実に暁を成長させる一歩であった。
次回、2話 出撃、鎮守府前攻防戦