BIOHAZARD Iridescent Stench   作:章介

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第十三話

 

 

 

場所:反政府ゲリラ拠点

 

Side シェバ

 

 

 

 

 

 

 

『『『『GYAAAAA!!!』』』』

 

 

 

「B隊掃射始め!!C、D隊は後退、残弾確認とリロードを怠るなよ!!」

 

 

「ゲリラども、下がれとは言わん。だが無理に前に出るな!こいつらは我々の獲物だ」

 

 

「負傷した奴は慌てず此処まで下がりなさい!私たちは抗ウィルス剤を万全に備えてあるわ。命が要らない御莫迦さんはこのマチェットで掻っ捌くわよ!!」

 

 

「フェロモン爆弾を投擲する!下がれ、煙に触ると一斉に飛び掛かられるぞ!!」

 

 

 

 

 

――――時間は少し遡る。現在、ゲリラ拠点は過去最大級の危機に陥っていた。私はあのフードをかぶった男と大柄の男を案内し、あの場に仕込みを施した後、大急ぎでここまで戻ってきた。フードの男が「ボスからの伝言だ。『此処にこれ以上君が見るべきものはない。君がバイオテロを憎み、これから戦う心算なら、アジトに見るべきものがある』――以上だ」と宣うものだから、大急ぎで引き返してきた。その結果が眼下の『戦場』だ。

 

 

 

 無数のB.O.W.がアジトを蹂躙せんと押し寄せてくる。爬虫類のような怪物に人体模型のような怪物、それからB級ホラーに出てきそうな真っ赤な“元人間”やハエを巨大化させたようなものまでいる。あの胡散臭いガスマスクの4人と彼らが連れてきた人間たちが前面に立って応戦しており、彼らだけ戦わせてはいられないと私たちの仲間も交じっている。

 

 

 流石はラクーンの生還者だけあり、見事に化物たちを押し返している。しかし。ガスマスク達は無傷だが、他の面々の被害は決して少なくない。死傷者も出ているだろう。見たところ仲間たちに犠牲者はいないようだ。

 

 

 血の海に沈む人、泣き叫びながら治療を受けている同志、そして果敢に立ち向かう協力者達。彼らを見ていると、色褪せていた過去がよみがえる。それと共に燃え上がるように湧き上がる憎悪の感情。ああ、あの人が言っていた通りだ。これは、私が見なくてはならない光景だ。

 

 

 喧嘩も絶えなかったが、大好きだったパパとママ。それを奪ったあの悪魔たちを、バイオテロを許せなくて親戚の元を飛び出しゲリラに身を寄せた。どれだけ血を吐く思いで活動しても結果が出せず、燻るうちにすっかり薄れてしまっていた。こんなものに幸せを奪わせないためにここまで来たのだということを!

 

 

 

 

 

 それにしても本当にすごい。特に最前線で大立ち回りを繰り広げているリーダーらしき女性は。目で追うのも困難な拳銃捌きで次々と化物の脳天をぶち抜き、飛び掛かってきた爬虫類に対してカウンターで拳を叩き込み顔面を陥没させている。しかもそんな中でも的確に周りに指示を出し続けている。一体どんな修羅場を越え続ければあそこまで強くなれるんだろう。いや、そんな他人事じゃ駄目よ!私もあの人と同じ、いやそれ以上の場所に立つ!心構え一つ立てられなくて、どうやってこの戦場に立つっていうの!!また冷たくなった大切な人の傍で泣き叫びたいの!?そんな思いは絶対にしたくない!!

 

 

 今の私にこの戦いに加われるだけの力はない。ここで指をくわえて傷ついていく人たちを見ていることしかできない。だから目に焼き付けよう。もう二度とこの感情が色褪せないように、自分が目指すべき場所を忘れない為にも・・・・。

 

 

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 近い将来、世界の危機を救うこととなる少女が決意を新たにしているのだが、勘の良い人は察しているかもしれないが、今起こっている光景はすべてハワードの自作自演である。

 

 

 

 バーサたちはタイラントの起こした騒ぎに乗じて盗んだ、秘密研究所及びアンブレラの裏の顔に関するデータをある場所に送信した後、すぐさま拠点まで引き返した。それを見計らってB.O.W.達に擬態化し襲撃を仕掛けた。ルポたちが率いていた人間も、ラクーンでモグッたゾンビやクリムゾンヘッド等の元になった人間に擬態し、あたかも仲間の傭兵のように振舞っていたのである。

 

 

 

 

 

 

 今回の作戦の目的は大きく分けて5つ。一つはタイラントに襲われるアンブレラ、という構図をワザと監視カメラ等に残すこと。今現在アンブレラはラクーンから持ち出された数々の証拠により、危機的状況に陥っている。アメリカ政府への脅し及び会社に対する利用価値によって辛うじて踏みとどまっている有様だ。そこにこの映像を手に入れれば、恐らくこれを自分たちの無罪の証拠として声高に主張するだろう。もしかしたら、ラクーンの一連の事件もテロリストの仕業だった、などと世論誘導を図るかもしれない。

 

 

 だが、それこそが此方の狙いである。もしアンブレラがそのような行動に出たなら即座に、協力者であるトライセル社が衝撃の新事実(笑)を世界に提供する手筈となっている。バーサから送られてきた情報に、そしてシェバが施した仕掛け―――秘密研究所傍に設置した座標位置を示すビーコンと撮影後即座にメール送信した研究所の写真―――が裏付けとして提出され、この地上に存在するどの地図にも記されていない秘密研究所が白日の下にさらされることとなる。

 

 

 さらに、実は現在行われているゲリラ+αの死闘はスペクターの仕掛けた監視カメラによりリアル中継されている。少し知識のある者はこれに一切の加工がされていないことがわかるだろう。これと彼らが提出した無罪の証拠を見比べればすぐに気づくだろう。そう、タイラントは会社の内部をこれでもかと破壊したが、犠牲者は一人も出していない(来賓室は何故かその時間映されていなかった)。しかし、ゲリラ側の映像では、少なくない数の人間(ほぼ全員ショゴスなのだが)が犠牲となっている。どちらかが自作自演だとしても、どちらをそうだと判断するかなど、考えるまでもないだろう。

 

 

 

 

 二つ目の目的は、秘密施設を破壊し、Tウィルスの供給をストップすること、そして消毒しきれなかった情報をアンブレラへの致命傷とすることだ。これによりアンブレラは限られた資源での活動を余儀なくされ、行動範囲は大幅に狭まることだろう。

 

 

 

 三つ目の目的は、微妙な関係となった連中を離反させることである。アメリカ政府然り、死の商人然り、彼らはラクーン事件によりアンブレラの管理能力に深刻な疑問を持つこととなった。そこに来て立て続けに大騒動が起きれば、彼らの多くがアンブレラを見限るだろう。特に政府は、これを機に全ての罪をアンブレラに被せて切り捨て、ヒーローの立場に戻ろうとし、証拠固めは加速度的に進むに違いない。

 

 

 

 四つ目は、自分たちの勢力を知らしめることである。この騒動がひと段落すれば、様々な立場の人間が自分たちに関心を持つだろう。だが、そういう連中に舐めた対応を取られるのは色々と都合が悪い。なので今回かなり派手に仕掛けた。特に完全に倒壊した研究所の破壊痕を見れば、自分たちを侮るなどと言うことは無いだろう。もし仮に自分たちを危険視し過ぎて排除しようと動くのならば、その時はその勢力に敵対する側につくまでだ。他にも自分達がウィルスやB.O.W.について一家言あると知ればそこに利用価値を見出してすり寄ってくる人間も出てくるかもしれない。

 

 

 

 最後は、ウルフパックに対B.O.W.戦の経験をより積ませるためである。来たるべきアンブレラとの決戦では、恐らく対人戦より対B.O.W.が主となるだろう。ハワードはいつでもハンター等に擬態できるが、場所の確保が難しく、またその場合限定的なシチュエーションでの訓練しかできない。なのでより実戦的な経験を積めるよう、ゲリラのアジトでの戦闘を追加したのである。尤も、ウルフパックとそのお供を積極的に狙いに行く以外は全く手加減していないので、訓練とはとても呼べない命がけの戦いだったのだが・・・。

 

 

 それさておき、いくつかイレギュラーは生じたものの、ハワード一行はこれらの目的を完璧に達成することが出来たのである。アンブレラの対応も正しく予想通りに運び、散々煮え湯を飲まされたトライセルは故郷アフリカに返り咲くことに成功した。現時点で表の世界に影響力を持つ存在と関係を持つことを嫌がったハワードの判断で、一連のトライセルとのやり取りは全てゲリラが窓口となった。表に出せる方法でもないのでいろいろ聞かれると面倒だからというのも理由の一つだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side ハワード

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・アジトでの戦闘もひと段落した。今回私は肉体の殆どをあちこちに分散していたため、適当に鼠に擬態して観戦していた。だって、指揮官が安全地帯で何にもしてないとか、信用問題だろう。ショゴスが圧倒的に不足している私など戦闘には何の役にも立たないので尚更だ。

 

 

 

 あれから帰還したベクターたちからも成果のほどを確認した。しかし、想定より遥かにヤバい状況だったようだ。アンブレラの最高幹部が2人に『死神』付とか誰が予測できるか。あと私が昔作成したTの変異から脳機能を保護する『デュボネ』の臨床被検体に色々手を加えたものが幹部の手に渡っていたとは。しかも相当厄介なB.O.W.になっていたらしい。粉々にしたのに何事もなかったかのように復活するとは興味深い。恐らく『G』を使ったな。しかし『クラマト』や『ビーフィーター』まで奴らの手に渡っていたとは思わなかった。

 

 

 

 まあそれは良い、済んだことだ。目的を完璧に達成してくれた彼らを労うことはあっても、愚痴を吐くなど論外だ。やはり彼らを雇ったのは正解だった。その道のプロに指揮を任せればあそこまで違うとは。今後も彼らの仕事に期待させてもらうとしよう。さて、今後の予定について会議を行いたいのだが、ルポはどこだ?さっきまで近くにいたのだが・・・・おや?あれは――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうして!?お願い、私も連れて行って!足手纏いになんてならないわ」

 

 

「・・・なぜ我々についてくる必要がある?お前と私では目的が違う」

 

 

 

 

 少し離れた場所で見つけた。しかしなんでシェバ、とか言う御嬢さんまで一緒にいるんだ?

 

 

 

 

 

「目的って、貴方たちはアンブレラと―――」

 

 

「そうだ、我々はアンブレラを私怨から滅ぼしたいと思っているだけのごろつきだ。すべてのバイオテロを糾弾する正義の味方などではない」

 

 

「ッ!?そ、それでも――」

 

 

「それに慌てずとも、そう遠くない内にお前の望むような『正義の味方』が組織されるだろうさ。悪になりたくない連中によってな」

 

 

 

 

 ふむ、私もルポに賛成だな。彼女はどう考えてもヤクザな稼業なんて合わないだろう。それに彼女が求めているのは『救い』だ。そんなもの私たちは誰にもあげられないのだから。

 

 

 

 

 

「それでも、それでもッ!!その人たちが貴方たちより強い保証がどこにあるの!?私はもう、『こんなはずじゃなかった』って泣いてるだけなのは嫌なの!!」

 

 

 

 

 

 うわぁ。あの子、よりにもよってルポ相手に真っ向から飛び掛かっていくなんて度胸あるなあ。まあ、一瞬で制圧されたけど。加減したとはいえ彼女の拳を三発喰らってまだ動けるってすごいな。

 

 

 

 

「わかったか?我々は人間だろうが化物だろうが、邪魔をするなら躊躇いなく排除する。お前がなるべきものはこんなヒトデナシではないだろう?」

 

 

「・・・・・・・・・・はあ、自信無くすなあ。これからやっていけるかな」

 

 

「悲観することは無い。少なくとも、同じ年のころの私より上だ。ああそれから、これは独り言だが、もし大人になって周りの連中に物足りなくなったなら呼べ。私が鍛え直してやる」

 

 

 

 

 言い終わるや否や、御嬢さんを置いて此方に戻ってきた。まあ、憑き物が落ちたような顔してるし、問題ないだろう。

 

 

 

 

「すまない。待たせた」

 

 

 

 いや、それほどは。しかしずいぶん彼女に肩入れしていたね?

 

 

 

 

「私にそのつもりはないのだが・・いや、もし私があの街でくたばっていたなら、私の子供たちも同じような顔をしたのかと思うとつい、な。尤も、そんな風に思って貰えるような殊勝な母ではないが」

 

 

 

 そう言ったきり、口を噤んでしまった。ふむ、ビジ夫人と戯れるあの子たちを見ている限り、彼らにとってはそう悪い母ではないと思うが、翼もないのに宙を舞いたくはないので黙っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 拠点に戻ってみると、スペクターが書類を持ってきた。何々・・・。救難信号?発信者はクレア??彼女今度は何やったんだ。そして何故こんなものを私に?

 

 

 

「見せたいのは其処じゃない。あの女の捕まっている場所だ」

 

 

 

 場所ねえ。ロックフォート島・・・って言われてもさっぱりだ。誰かわかる人いる?

 

 

 

「そこはアンブレラ創設メンバーの一角、アシュフォード家の管理する島だ。U.S.S.の訓練施設や刑務所があったはずだ」

 

 

 

 アシュフォード家、かぁ。まったく記憶にないぞ?確か当主が早々に亡くなって権力争いから脱落したってことくらいしか知らんぞ。あまり価値が無さそうなんだけど。

 

 

 

「・・・・そういえば、アシュフォード家は天才と言われた祖先のクローンの作製に成功したと聞いたことがある」

 

 

 クローン?そんな技術あっても地雷にしかならないんじゃないか?それにショゴスで十分―――。

 

 

「ハッ!そのアシュフォードっつうのはとんだ甘えん坊だな?曾曾曾おじいちゃまに抱っこされながらお友達と喧嘩しようってか。さぞかし立派な玩具を作ってもらえたんだろうな、何せ天才だぜ?TでもGでもない新種のウィルスとか?」

 

 

――――前言撤回。よし、いこう。

 

 

 

 




ここまでご覧いただきありがとうございました。感想・質問等いつでも大歓迎です。


次回からベロニカ編に入っていきます。
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