BIOHAZARD Iridescent Stench 作:章介
幕間
ある研究員の日記03
月 日
(人が読んではいけない文字で書かれている)
□月 日
いえ ついた
どあ た た。
ずい
□月○ 日
わたし んだ。でも、 いつがた た。くすり の からのう、 のまま
これのなか のこれた。こいつ な しょごす
ぐらさん、 おぼえてろ
□月○×日
大分あたま すっきりしてきた。でもすこしきもちワルイ。あたまと体がやっとつながったみたいだ。妙におなかがすくから冷蔵庫から冷凍した卵焼きをとりだして食べた。トイレに行ったらしりからひよこがでてきた。わけがわからん
□月○▲日
一日使って調べてみたが、この体、というかショゴスは元々はあらゆるものへ擬態・変化することが出来たらしい。しかし、この素体はすでに死んでいた点、そしてTウィルスによって変異した点から、咀嚼したことのある存在にのみ変化することが出来るようだ。その代わり、とても細かい単位でしかも本物と寸分違わず擬態できる。
そしてこれが最も重要なことなんだが・・・・・腹の中で実験ができる。いや何言ってるんだお前はと自分でも思うが、そうとしか言えん。例えば、腹の中で擬態で鶏をつくる。そして同じく擬態でTウィルスを用意します。するとあら不思議、腹の中で感染して変異したゾンビ鳥が出来上がります。そしてこれ、腹の中だからか何故かもぐもぐした扱いになる。しかも細胞単位で選別できるから、一度擬態を解いて、変異体の体から適応できた細胞だけを再現し、それでT適応化鶏として擬態、さらにTウィルスを投与して次なる変異を、なんてことが出来るのだ。まるで東洋の蠱毒の呪だな。そして私はモグれば擬態できるのでモグればモグるほどサンプルを得られる。そうすれば誰にも邪魔されずに実験したい放題だ。
・・・落ち着け。一旦クールになるんだ。なんで私はこんなウィルスの皮をかぶった兵器を探究しようとしているんだ。それと微妙に目的と手段がすり替わってる。これはあれか、体の本能に意識が引っ張られているのか?そんなにモグモグしたいのか?
・・・・・・・・・ま、いっか。活性死体化して人生ゲームオーバーに比べれば安い代償だ。それにこれからしようとすることの邪魔にもならないどころか一石二鳥だ。
これからの行動指針は3つ。火事場泥棒・サンプル集め・スカウトだ。まず一つ目だが、アークレー研究所のことが警察官たちによって知られてしまい、私は死んだことになっているだろう。そんな中バカ正直に会社に戻ったらどうなるかなんてお察しだ。しかしこれといった蓄えもない私にはこれからを生きる資金が要る。という訳で会社から退職金を色を付けて頂こうという訳だ。
当たり前だが、私が自分で騒動を起こそうだ等とは考えていない。正直面倒臭い。それに私が何かしなくても勝手に祭りが起こるだろう。
次にサンプル集めだが、これ以降は明日書こう。試したいこともあるし。
□月○▽日
というわけでその明日になった。何を試したかというと、擬態による情報網の作成だ。試してみたら、一度に大量の生物に擬態できたので早速放ってみた。とりあえず鴉・鼠・蛇を主要公共機関に撒いた。
まずは何と言っても警察、より正確に言えばあの地獄からの生還者たちだ。彼らは一生懸命あの洋館での真実を叫んでいるようだが、まあ実体験者でなければだれも相手にしないよね。しかも肝心の所長がせっせともみ消しに動いていて、権力を使われて全員自宅療養という名の謹慎処分を受けているらしい。理由は多数の同僚を凶悪犯(笑)に惨殺された心的外傷のためだとか。真実なんて、外に発信力のある人材とのコネがないと簡単に消されるからね。
それはともかく、昨日の続きだけど、サンプル集めについてはただ待っていればチャンスが転がってくる。
情報封鎖には成功したものの、関係者各位には今回の事件でTウィルスのリスクと、B.O.W.の商品価値に対して疑問を投げかけてしまったわけだ。早々に大事な顧客の不安を拭い去らないとアンブレラの信用と利用価値が地に堕ちてしまう。彼らは名誉挽回となる目玉商品を早急に用意しなくてはならなくなった。
幸いその商品のあてはいくらかある。けれど、社の失態で強制的に未完成品に商品ラベルを付けられることを、プライドの高い研究者たちが我慢できるだろうか?それに、今まで研究成果のため泳がせていた、限りなく黒に近いグレーの反逆者予備群の連中からも取り上げる必要が出てきた。まず間違いなく行動に移す奴が出てくるだろう。筆頭は私の知り合い夫婦とかかな。
何件無事に回収できるかな?Tウィルスは超弩級の対国兵器だ。その派生物もまた然り。そんな危険物のそばでドンパチして、タダで済むはずがない。私の予想では、近日中に派手な花火が打ちあがるだろう。そのあとでゆっくり流出物や変異した細胞を回収すればよい。洋館では頭がテケリリしてたせいで碌にサンプルを集められなかった。手勢はハンターと変異活性死体、後邪魔だったからモグッたあくびちゃんくらいか。
最後はスカウト、人材集めだ。この町を出た後にどう動くにしても、やはり私一人では到底手が足りない。例え化物になったとしても、専門外のことに限れば私の戦力など赤子のそれと変わらない。
それにどうせ雇うなら選りすぐったプロフェッショナルが欲しい。この町がバイオハザード隔離区域になれば、あのブラック企業のことだ。後先考えずにフィールドワークを始めるだろう。国家中枢にも根を張っている連中のことだから最後はふっ飛ばせばよいと油断してそうだ。そうなると切り捨てられる人間がきっと出てくる。そういった奴等が欲しい。特に能力が高くて知りすぎてしまった、なんて奴は最有力だ。アンブレラに恨みを晴らせる環境と物資を保障できれば当面の間雇うことが出来るだろう。
□月×▽日
花火が上がった。さあ、パーティの始まりだ。
というわけで、次回からラクーンシティシナリオに入っていきます。ちなみ今回のコンセプトは『逆かゆうま日記』です(笑)。
ここまでご覧いただきありがとうございます。