龍郎転生。   作:ヤーンスポナー

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皆さん、今年一年消えつつ現れつつですがありがとうございます。とりあえずUP納めと言っては何ですが今年思いついたネタだけ投稿して今年は締めようかと思っています。連載中のほうの続編は書ければ書くと思うけど多分来年かな・・・。

と言う事で思いついたネタを書き捨てる短編転生モノでございます。

情報欄にも書きましたが、再度注意。

自分の各SSの作風と比べて著しく作風が変質して訳の分からない何かになっており、更に今作では自重という概念をゴミ箱に投げ捨ててます。閲覧の際には注意し、各タグに耐性が無い場合は閲覧しない事を強くお勧めします。





生まれた時から童貞であることを定められてしまう。

 

 

 

 突然だが、童貞という人種を知っているだろうか。

 

 

 簡潔に言えば女性との性交経験が無い男の事である。

 加えて言うならば彼らのほとんどが異性と交際関係を持った事が無い。

 

 

 本来、男性が童貞であると言う事は古今東西問わず社会では理論上有り得ない。

 早い話が頑張って金を溜めて風俗に行けば一応は捨てる事が出来るのだ。

 

 しかし、童貞と言う人種は何時でも、何処にでも存在している。

 

 理由は様々だ。

 自身に対する劣等感が故に女性に対して接触を持つことを恐怖する者や、逆に自尊心が高すぎて自らに見合うレベルの女性で捨てようと思わない者。また、女性に理想を抱きすぎて風俗にさえ手が出せないと言う者までいる。

 

 客観的に評価を下すならば、これらの理由等で童貞を捨てない者ははっきり言って人類として価値がない。

 

 

 

 つまりは俺の事だ。

 

 

 

 前世で自分が一体どのような人物だったかは思い出せない。正直思い出したくも無い。

 覚えている事は殆ど無いが、それでもはっきりしている事はある。

 

 長い間童貞を拗らせており、同時に彼女さえ居なかったと言う事だ。

 

 ともかく、赤子となって泣き喚いていると気づいた時にはいろんな意味で泣いた。

 正直に言うと、どうせ今世でも童貞なんでしょう?死んだだけならば納得できるし正直やっと死ねたかといった気分だが、そこから記憶を持ったまま転生するなぞ冗談ではない。

 

「When we are born we cry that we are come To this great stage of fools」

 赤子はみな生まれた時にこの愚者ばかりの世界に生まれた事を嘆いて泣くのだとシェイクスピアは言ったらしいが、まさにそんな気分だった。と言うか愚者は俺の事だ。

 

 

 しかし、生まれて数日でこんな仕打ちをした神に感謝する事になった。

 

 正直いきなり転生した時には仏教的な意味での輪廻転生をやらかしたのかと思って絶望していたが、どうやら俺が達成したのは昨今のラノベや創作でありがちな"異世界転生"という奴らしい。

 

 素晴らしい。実に素晴らしい。多少俺が住んでいた現代社会より技術が発展している気がしないでもないが、何よりも異世界転生には特典がつくのがデフォルトだ。

 

 思うに、俺をこの世界に転生した神様はこう考えているのだろう。

 俺みたいな童貞こじらせて一生人類の発展と生殖に貢献できない欠陥品は別世界で能力盛ってやったりなんなりしてやるからさっさとやる事やれと。つまりはそう言う事なのだろう。創作モノでは主人公に童貞が多いのも実に頷ける話だ。

 

 なおR18関連だと時々、元の世界でもモテモテな奴が転生する場合があるがアレは転生先が逆に男性が居なさ過ぎて人類絶滅の危機とかそういう場合が多い。そんな世界に欠陥品送り込んでも世界は救われない。

 

 まぁ通常は余程神経が図太くない限りハーレムと言うのは童貞にとっては毒そのものだ。酸素が大気中に21%しかないから安心して生命維持のために吸う事が出来るのと同じように、女性と言うのは基本的に毒と一緒なのだ。ありすぎると死ぬ。一方で女性と言う酸素をただの1%も吸う事が出来なかった野郎が童貞であり俺の事なのだが。

 

 

 まぁ、そんなこんなで生まれて一週間程あたりまではこれからの人生に夢を馳せていた訳だ。

 

 

 

 生まれて一週間後にあらゆる呪詛を神に対して吐き捨てる事になったのだが。

 

 

 

 まず、今回俺が転生を果たした世界について説明しよう。

 作品名は"魔法科高校の劣等生"。チートのお兄様が妹と結婚しつつイチャコラをやらかす世界だ。正直この時点で一瞬勝てる気がしなかった。

 だが、生まれた年は確認してみるとどうも2048年。お兄様が生まれる時には既に父親になっている。

 ここまでは良い。多少日本が戦時中で色々危ない状況下ではあるが、元から二度目の童貞の命なぞ真っ先に賭け金として差し出すぐらいの覚悟はある。と言うか俺の命はそれぐらいしか価値がない。

 

 

 そして恐らくは、俺の今回の特典は原作のキャラに転生する、言わば"憑依"と言うものらしい。

 さて、ここで俺の名前を確認してみよう。

 

 

 "司波龍郎"と言うらしい。

 

 

 原作での彼について説明しよう。

 誕生年月日は不明、全盛期当時は規格外の想子量から潜在能力を高く評価されていたが、結局顕在化させる事が出来ずに魔法師としての道を諦めている。

 

 まず最初に重要な事は、彼は同い年の古葉小百合と交際していた事だ。

 

 これはブラボーといって良い。既に彼女の存在が約束されているのだ。童貞としてははっきり言って最上の憑依先だっただろう。

 これだけなら。

 

 問題は、彼は長い間古葉小百合と結婚できない事とその事情にある。

 

 原作では彼は四葉家から縁談を持ち込まれ、それを受ける形となっている。強制だったか圧力があったか、もしくは彼自身の野心から受けたのかは分からないがどうせ前者二つの内のどれかだろう。戦時中と言う事を加味すると魔法師育成のためには無理矢理種馬にされてもおかしくない。

 

 控えめに言ってアウトだ。冗談ではない。更に言うと相手があの悪名高い"四葉"と言うのは最悪だ。

 

 子供居るって事はやる事やってるし良いじゃんとか言う奴が居るだろうが甘すぎる。あの四葉だ。潜在能力が高い種馬なんぞ下手したら人工授精で生んだ可能性さえ有り得る。

 仮にそれが実現した場合、三十路は愚か四十六歳になるまで童貞を捨てられない可能性さえある。無論縁談時には付き合っていたらしいが、それにしても論外である。外道になるつもりはないし、子供に白い目で見られるとか控えめに言って首吊り案件だ。よくぞあの男は長い間四葉の監視下で愛人を維持できたものだ。尊敬さえ覚える。

 

 

 

 さて、こんな人物に転生憑依をやらかした心境を述べよう。

 

 ふざけるな!何故こんな事になった!と言うか神様転生先少し考えろよ普通分かるだろこんなの!下手したら前世でイケメンリア充やってた奴でさえ匙投げる案件だぞ!どうやって童貞卒業しろと?と言うか普通こんな半生歩んだら普通童貞卒業前に人生卒業してんだよ。こんな世界でどうすれば良いんだ兵役について万歳やってくるしかないじゃないか!

 

 

 

 ・・・現実逃避はさて置き、まずやるべき事を考えよう。

 

 まず、童貞卒業。と言うよりは恋人と添い遂げる事が最優先だ。

 この場合は麗しの古葉小百合様と何としても添い遂げなければならない。お兄様や妹様が生まれない可能性もあるが冗談ではない。我が尊厳と童貞卒業と幸せが最優先だ。原作崩壊しようが俺の知った事ではない。

 

 一方、これをまともな手段で成し遂げる事は不可能だろうと生後三週間で悟った。

 

 どう考えても社会情勢と相手が悪すぎる。

 相手があの"四葉"であり、戦時下だ。はっきり言って縁談を受けないとその時点で白い目で見られたり謎の交通事故にあったりする可能性さえある。まずはこの状況を打開しなければならない。

 

 

 さて、ここで考えてみよう。なぜ"四葉"はあそこまで外道になったのか?

 

 

 これも答えは一つ。2062年の少年少女魔法師交流会の際に起こった、崑崙方院による四葉真夜誘拐事件だ。

 

 ここで鬼畜の所業を行われた四葉真夜は生殖能力を喪った上に精神が崩壊し、経験記憶と知識記憶を丸ごと入れ替えられる。これに四葉一族は怒り、崑崙方院ごと大漢を崩壊させたのだ。それと同時に自らを守るだけの力を欲し始め、悪名高い"四葉"へと成長したのだ。

 

 

 ここで閃いた。つまりはこの誘拐事件を阻止すれば良いのだ。

 

 

 そうすれば四葉一族30人の命も救われ、無事四葉真夜も七草弘一と結婚する。四葉真夜の精神的な意味での息子がお兄様らしいし、上手くどこぞやのADVゲームにあった"世界線"とやらも騙せるはずだ。そして、それが為されれば四葉は唯の十師族のままで済む。態々魔法師の潜在能力を顕在させる事が出来なかった出来損ないを種馬に使おう等と思わないはずだ。

 

 このアイディアに至ったのが、生後半年の頃である。

 

 さて、方法はどうするか。肝心の俺には魔法師としての能力を顕在化出来るかどうかが極めて怪しい。原作での彼でさえ無理だったのだ。俺が出来るなどと思わない方が良い。

 

 では答えは一つだ。そもそも四葉真夜を少年少女魔法師交流会に参加させなければ良いのだ。

 

 幸いな事に司波龍郎はFLTに所属していた。つまりは一定のソフトウェア及びハードウェアに対する学問に適正があるのだろう。単なる憶測だが。

 

 

 そこに二度目の人生全てを賭ける事にした。

 

 

 とりあえず数年は只管に発想力を鍛える事に全力を尽くし、三歳あたりからは基本的な数学を怒涛の勢いで詰め込んだ。神童とか天才とか呼ばれて既存のルートを大きく外れる可能性もあったが世界の修正力とやらがそんな事で負けない可能性に全力で賭けた。

 

 何よりも、我が恋人となる古葉小百合様の為。

 

 二度目の人生でさえ童貞を拗らせている男が愛する女に掛ける労力を馬鹿にしてはいけない。一度目だったら正直微妙だったが、二度目で童貞は愚か女のために人生を捧げる事さえ出来ないのは論外だ。唯只管に一生童貞のレッテルを貼られる恐怖心から勉強を続けた。

 

 

 そして、小学校中学年頃から義務教育を受けつつ裏で電子機器やらソフトウェアやらPCスキルやらに関する諸知識をとにかく詰め込んだ。猶予時間は中学入学まで。それまでにハッキングツールを製作しなければならない。同時に小遣いを溜めるだけでは資金力に限界があるので捨てられたジャンク品を唯只管に漁った。最早乞食と思われようが構わない。やれるだけの事をやるのだ。

 

 

 

 そして、中学入学。齢は12を数えた。

 

 

 

 とりあえずは一定の知識を身につけた。その後半年掛けて、試作品だがハッキングソフトと各種ツールも自作した。神童どころが機械オタクとカテゴライズされた節もあるが順調だ。後はシュミレーションを繰り返し精度を上げる。目標を考えるとそれでも不安だが、やれることをやるのだ。

 

 

 一方、平行してやる事もあった。

 

 羽田空港を外縁から見れる範囲での視察だ。

 

 

 

 ここで今回の計画を述べる。

 台湾の台北にて行われる少年少女魔法師交流会。海を越える以上、どうしても船か飛行機に移動手段は限られる。

 同時に船は有りえない。未だ戦時下であり、潜水艦が跋扈している可能性を考慮すると船で行く可能性は極めて低い。

 

 つまり、移動手段は飛行機。七草弘一も出席する事を考えると、羽田空港から向かっている可能性が高い。

 

 そして飛行機は唯でさえ元の世界でも自動運転が可能となっていたと聞く。ましてやこの世界であれば一定レベルで操縦を操る事も可能なはずだ。

 

 その点に賭ける。確証の無い不確かな状況ではあるものの、13歳の一般人に出来るのはそれが限度だ。まさか「娘さん誘拐されるから台湾には行かない方が良い」なんて戯言を当時の四葉が信じるとは考えられなかった以上、物理的に阻止する他無かったのだ。

 

 

 さて、飛行機をハッキングする事は可能だろうか?

 

 

 結論から言えば唯では不可能だ。どう考えても飛行機管制システムその他はクローズドになっている筈。クローズドなネットワークに外部から接続するのは殆ど不可能だ。

 

 物理的に接続する他無い。

 

 だからこそのハードウェア知識、だからこそ電子機器についての知識さえ学んだのだ。

 

 当然、こんな一般人がこっそりと警戒厳重な空港に侵入出来る筈が無い。確実に前科者になる。そうすれば四葉も態々俺みたいな人間に縁談を持ちかけるという事は無い。

 

 

 

 地形を把握し、侵入方法の選定も行った。機材も全て揃えた。ハッキングツールと虎の子の潜伏ウィルスも出来上がっている。

 

 

 そして、十四歳になり、少年少女魔法師交流会のニュースが流れ始めた。

 

 

 日付が割れ、参加者が日本を発つ日付もニュースサイトが述べてくれた。マスゴミ万歳である。お陰で成功率が飛躍的に上がった。

 

 微調整を済ませ、遂に少年少女魔法師交流会に向けて参加者が日本を発つ一週間前になった。

 

 

 

 そして、計画を実行した。

 

 

 

 真夜中、防水を施したバックに各種装備を入れて浮島から空港まで遠泳する。

 約500メートル。控えめに言っても辛い。溺れる可能性は幾らでもあったが、恋人を想う気持ちで乗り切った。そもそもまだ会ってないけど。

 

 岸辺にたどり着いたら即座に行動。監視カメラに見られている可能性がある以上速度が命だ。全力で走らねば全てが終わる。

 

 ワイヤーカッターで鉄網を切り取り素早く侵入。後は管制塔の傍まで只管に走る。地図上では約1km。走れば行ける筈。

 

 真夜中である事も幸いしてか、400m程走ったあたりで警報が鳴り始める。しかし遅い。今から警備を向かわせてもその頃には管制塔の傍まで来ているぞ!

 

 

 

 そして、遂に管制塔付近までたどり着いた。

 

 

 

 最早端末を選ぶ余裕は無い。端末を繋ぎ、ウィルスを注入する。

 

 陽動用と、本命の二つを。

 

 陽動用は直接レーザーサイトの無効化を狙って設計している。此方は試作品を元にしており、精度はまずまず。セキュリティを突破する事は出来ないだろう。

 

 本命は、自立型ウィルスだ。空港のシステム全てを掌握した後、然るべき日に然るべき対象が乗るであろう航空機を探知。そしてその航空機の自動運転システムに侵入するのだ。

 

 

 これが本命。一週間の潜伏期間の後に我が野望、童貞卒業の第一歩を為してくれる。

 

 

 端末がウィルスの送信を完了したことを知らせてくれる。

 

 

 

 

 そして、端末を引き抜いて逃げようとした所で捕まった。

 

 

 

 

 此処までが今までの俺の二度目の人生の顛末だ。

 

 親は泣くし全国に顔は晒されるしで思ったより効果が高かったらしい。陽動用のウィルス暴れすぎだろ。戦時中なんだからもうちょっとほら、こう敵国のスパイ見たいな感じで一つどうです?

 

 まぁ実際事情聴取では「大亜連合の思想に共感を覚えて羽田のレーザーサイトを狙った」って述べた。いざその日になるまでは決して計画がばれる訳には行かないのだ。

 

 とは言え本職の刑事さんの事情聴取はきつい。計画が上手く行って一見素直に話してる分少しだけ優しいけど、はっきり言ってアレから何日たったか覚えていない。もう一ヶ月位経ってたらアウトなんだけど。

 

 

「・・・刑事さん、少年少女魔法師交流会って何時だっけ」

 

 

 堪らずそう尋ねる。

 やってしまったと言う感情さえ浮かばず、最早疲れ切った少年と化している。

 

 それに対して、待ちわびた答えが帰ってくる。

 

 

 

「何言ってるんだ、今日だろう。何の関係があるんだ」

 

 

 

 勝った。

 

 

 遂に、全ての難関を乗り越えた。

 

 

 あぁ、後は全て上手く行く。

 

 

 さぁ、呟くんだ。

 

 

 

 「"やるべき事をやろう"」。

 

 

 

「ふふふ・・・・。はははははははははは!!!」

 

「何がおかしい!」

 

「馬鹿め、俺の嘘の供述を今まで散々調書を取ってまで信じて、本当の計画に気づかないとは!」

 

 本当に可笑しい。笑いが止まらない。

 

「何が可笑しい!」

 

「可笑しいでしょうよ!そもそも何で俺が大亜連合なんかに靡かなきゃならないんだよ!少し考えれば分かるだろうに!」

 

 全ては上手く言ったんだ。言ってしまえ。本当の理由を。

 

 

 

 

 

「最初から俺が狙ってたのは少年少女魔法師交流会に参加する日本の魔法師達さ!崑崙方院の誘拐を手助けすれば、俺の魔法師の潜在能力を開花させてくれるって言うんだ!全部、その為にやったんだよ!」

 

 

 

 

 

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