.hack//S.W.   作:Wbook

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つい、書いてしまった……

だってリメイク版だぜ? しかも後日談付きだぜ?
.hackとかいう小学生だった当時の俺の思考を支配しまくってた作品がよりにもよってだよ?
ついでに言えばハーメルンに登録したのもそもそも夜仙允鳴さんの『SAO//G.U. 黒の剣士と死の恐怖』にハマったからなんだよ!?

何となく成長したと思われる現在の実力で俺なり書きたくなっちゃったんだよ……!!


Prologue//

【二〇二二年十一月】

 

 

「佐伯さん。こっちの方の資料はまとめ終わりましたよ。バックアップも」

「ご苦労様、三崎くん。もう随分仕事が板についてきたわね」

「ええ、まあ。もう五年になりますから」

 

 

 業務の内容は、古い資料の整理であった。

 電子化が進み始めた時期に急ピッチでA4サイズのコピー用紙……いわゆる紙媒体からデジタルデータへと移行したために乱雑となったそれらをひとまとめにし、なおかつ記録メディアにバックアップを取るという地味だが手間のかかる作業だ。

 

 しかもそれらは、もう十年以上も前の資料……以前は頻繁に閲覧されていたようなのだが、とある事件の余波でぐしゃぐしゃに散乱してしまったらしい。

 

 

「しかし、第三次ネットワーククライシスのツケを今になって払わされるとは思いませんでしたよ」

「ええ、全くね……。私たちにとっては、ある意味身から出た錆なのだろうけど」

 

 

 第三次ネットワーククライシス……全電脳世界に絶大なる危機を及ぼした、世界的なネットワーク恐慌。

 その被害は資産的な物に限らず、交通機関の混乱や医療トラブルによる“災害”で出た怪我人、死傷者。財産、仕事を失った者たちの自殺など……人的にも甚大な被害を被る結果となった。

 

 現在、国連下部組織であるネットワーク管理局……NABに勤めている、佐伯令子と三崎亮は、まさにその渦中にいた人物であった。……否。あるいは亮に限っていえば、渦中というのすら正しくはなく。

 

 ——“爆心地”、というのが正当だろう。

 

 

「犬童雅人には、“再誕”を発動させる以外に選択肢が無かった。“私たち”が彼のPCを、オーヴァンを拘束したことが、その選択肢を減らす結果になったのかも——」

「佐伯さん、それはもう終わったことだろう。今更蒸し返すことなんて、雅人さんも望んじゃいない。今のあんたと俺がするべきことは、“次”の悲劇を防ぐことだ。この資料だって、そのためにまとめてるんだろうが」

「三崎くん……。ええ、そうだったわね。本当に、私には優しくないんだから」

「それはあんたが……」

「私が、優しくされるのが苦手だから……でしょ?」

 

 

 亮の台詞を先回りし、仕返しのようにそう言って……ふと微笑む彼女の顔には、もう陰りは見えなかった。

 

 

「私の扱いも昔より上手くなったわね。まあ、だからこそ二人で組んでやっていけてるのだけど。……ごめんなさい、疲れて弱気になってたみたい」

「別に構わねえよ、お互い様だ」

「まあ、“職場”で“上司”に向かってそんな口の聞き方をするからには、覚悟も出来てるんでしょうけど?」

「あっ……! す、すみません、佐伯さん、つい……!」

「……ふふっ、冗談よ。まあどうしてもって言うなら、今日は飲みにでも付き合いなさい。——貴方の奢りで」

「つ、謹んで、ご馳走させていただきます」

 

 

 多少の差はあれど、亮も令子も収入は似たようなもの。勤務時間も同じなこともあって、食事を共にすることはそもそも多い二人。

 割り勘よりも、交代で代金を出し合う形の方が二人にとっては好ましかったため、亮が成人して以降は飲みに出る際にもその方式が適用されていた。

 なので、奢ること自体は珍しくもないのだが……今月は御臨終したエアコンの代替品を購入してしまったため出費はできるだけ避けたかったのだ。

 

 とはいえ……背に腹は変えられない亮であった。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 『The World Re:2』……前タイトルであるRe:1の2000万人には及ばないものの、1200万人ものプレイヤー数を誇った世界最大のMMORPG——三崎亮は、かつてそこに居た。

 

 PC“ハセヲ”として——第三次ネットワーククライシスの原因ともなるその世界に、足跡を残していた。

 

 ハセヲは、友人であり大切な女性でもあったPC“志乃”がThe World内でプレイヤーキラー……俗に言うPKの被害に遭い、リアルでも“意識不明”に陥った原因がゲームの中にあると考え、The Worldに潜り続けたのだ。

 

 その過程で、フェイスマウントディスプレイとコントローラーで繋がっただけのプログラム世界には本来有り得ない超常現象と出会うことになるのだが……それは割愛しよう。

 

 結果としてハセヲは、辛く苦しい道のりを歩むことになったが、様々な経験を糧として一人の人間として成長し、ゲーム内のステータスに寄らない“本当の強さ”を身につけるに至った。

 

 全ての“絵”を描いた犬童雅人……PC“オーヴァン”は、自らのPCが持つ特殊能力“再誕”を、成長したハセヲの持つチカラをキッカケに発動し、全世界のネットワークを初期化。

 

 それにより、世界は恐慌に陥ったが、同時に志乃を……ひいてはオーヴァンの妹であるPC“アイナ”を意識不明にした存在である“AIDA(アイダ)”を不純物として、The World内外問わず……全ネットワークから駆逐した。

 

 これこそが、第三次ネットワーククライシスの真実だ。

 

 もっとも、それを知る人物は当然少なく、一時はThe Worldを経営するサイバーコネクト社……俗に言うCC社の策略により、犬童雅人に全ての嫌疑がかけられる形となっていたのだが……内部告発によりそれも瓦解した。

 

 事態が沈静化し、再誕発動後長きに渡り昏睡していた雅人が目覚めた今なお全ての真相を知る者は数えるほどで、当事者である彼らも、当然ながらその中に含まれる。

 

 

「え、ちょっとなに……香住くん、まだ引きずってるの?」

 

 

 男前にジョッキを傾けながら、令子は驚いたような顔をする。

 

 

「ああ、そうみたいだな。もう何年も経ってるってのに、未だに酔ったらグチグチ言ってやがる」

 

 

 同じ職場で長く過ごすうちに、プライベートでは亮も砕けた口調を使うようになっていた。

 リアルで知り合い、彼女に頼み込んでNABで働かせてもらい始めた初めの一年ほどは亮も、慣れない仕事を“目的”のために必死こなしている時期で、距離を詰める余裕も無かったのだが、最近は余裕も出来てきて、それも近くなった。それこそ、The Worldでハセヲとパイとして付き合っていた頃のように。

 

 

「意外と一途だったのね、彼……」

「そうかぁ? 香住さんの例の“病気”は健在だぞ?」

 

 

 香住智成は、The World Re:2では“クーン”というPCでハセヲ達と協力して、異変の解決に尽力した仲間の一人だ。立場的には、主要メンバーと言っていいだろう。

 

 ハセヲやパイを含めた、CC社主導で“特殊な力を持ったPC”を集めた集団……G.U.に所属していた一人である。

 

 

「けど、一番沈んでた時期に勉強勉強で現実逃避してたおかげでCC社にも受かったんだから、不幸中の幸いっつーかなんつーか」

「本末転倒なのが、何とも悲しい話よね……」

 

 

 令子も亮も苦笑する他に無かった。

 

 智成が頑張っていた理由は、そもそもそこにある。彼は学生時代の別れた彼女に相応しい、誇れる自分になるべく努力していたのだ。

 そして、ゆくゆくは彼女を迎えに行こう……と。

 なるほど……問題も多いが、CC社は大企業だ。そこの社員となれば大したステータスだろう。

 

 

「まさか結婚しちまうとはな……」

「待ってもらう約束も取り付けてない辺り、香住くんが抜けてるんだと思うわよ」

「辛辣だな」

「あら、現実的(リアル)なだけよ?」

 

 

 意中の彼女の結婚を友人から聞いた彼の凹みっぷりは、亮からすれば見ていてかなり痛々しかったのだが……やはり、この手の話には女性の方が手厳しいようで。

 

 

「……三崎くんの方は、日下さんとどうなの?」

「どうって?」

「付き合ってるんじゃないの?」

「はぁ? 別にそんな関係じゃねえよ?」

「なら、倉本さんかしら? それとも久保さん?」

「……誰とも付き合ってねえ」

 

 

 ジト目で亮を見る令子の表情に、呆れの色が混ざったのが分かる。

 

 

「みんな可愛い子達なのに……何が不満なのかしらね?」

「いや、不満とかそんなんじゃ——」

「ああ、そうそう。そういえば、“例の件”なのだけどね。うちにも一つ回してもらえることになったわよ」

「おいっ!……って、マジかよ。うちはほとんどThe World専門って扱いだと思ってたんだが」

 

 

 実際、亮も令子も現在稼働中のThe World Re.Xに関する問題への対応が主な業務だ。本日整理していた資料もまた、The World関連のものであった、

 

 

「それで……誰がやるんだ?」

 

 

 当然、令子と亮の所属する事務所も、彼と彼女の二人だけという訳ではない。ネットワーク関連に精通したプロフェッショナルが複数人勤めている。

 令子は元々そんな彼らよりもさらに優れたスキルを持っていたが、亮はここ数年の努力でなんとか彼女の足元に届いている程度だ。この事務所では令子が群を抜いて優れており、亮を含めたそれ以外はどんぐりの背比べといったところで。

 亮が令子と組んでいるのも、単に性格やリズムが噛み合うからというだけの話だった。

 

 

「やっぱり佐伯さんが?」

「こっちに“あれ”を回す上での必須事項は二つ、まず一つ目は……私か貴方がインすることよ」

「……なるほどな」

「そうよ。我々、“碑文”の適合者があの世界へインした際に出る影響を上は確認したいみたい」

 

 

 そういう理由ならば、想定の範囲内だ。

 碑文の適合者は、フェイスマウントディスプレイとコントローラーだけではなく……もっと深い部分でPCと繋がっている。ならば、そもそもPCと一心同体である“あの世界”であったならどうなるか……それを見極めたいのだろう。

 

 

「二つ目は当然、“碑文使いPC”のデータを何らかの形で流用すること。結構な不正(ハッキング技術)が必要になるけど……他の支部や外部の協力者を引き入れても構わないとのことよ」

「そいつはまた……上も思い切ったことをするな」

「ええ、そうね。それだけ上も興味があるってことよ。……とはいえ、The Worldもあの世界と“同じ舞台”に立つ可能性がある以上、無関心という訳にもいかないでしょう」

 

 

 The Worldでは、未だにゲーム中の意識不明者が……“未帰還者”が発生し続けていた。

 

 全体の割合から見ればごく僅かであったため大きな問題にはなっていないが……それでも、未帰還者は確実に存在している。The Worldがどれほどコンテンツとして優れたものになろうとも、あの世界から、イレギュラーを無くすことは出来ないのかもしれない。

 

 単なる対症療法でしかなかったが……亮と令子のような人間が、もしくは、彼らと同じようにThe Worldに導かれたとでも言うべき人々がその都度解決しているおかげで、あの世界は今も存在出来ている。

 

 

「そうだな……あの世界を、悲しいだけの場所には出来ない」

 

 

 亮は、あの世界に……正確にいうなら、あの世界を愛する人々に大きな恩がある。彼ら彼女らの愛するThe Worldを最悪の形で終わらせないため……それが、“目的”を果たしたにも関わらず、亮がNABを離れなかった理由であった。

 

 

「それで、結局どうするんだ?」

「あくまで今考えている限りなのだけど、イン自体は三崎くんにしてもらって、私や他の職員は貴方のサポートとモニタリングに回るつもりよ」

「まあ、それもそうか。俺より佐伯さんの方が腕があるんだから」

「そういうこと。まあ、適材適所というヤツね。貴方にはプレイヤーの方が合っていると思うし。——期待してるわよ。The World Re.2最強プレイヤー、ハセヲにね」

「あんたはまたからかって……」

「また、照れちゃって。素直に誇ればいいのよ、正式に選ばれた称号なんだから」

 

 

 令子にとっても、(ハセヲ)という存在は特別だ。

 初めこそ、どうしようもない人間だと思っていたが、彼は驚くほど人間として成長し……強くなった。そんな彼に、令子(パイ)を含めた仲間たちは次第に信頼を寄せていった。

 

 彼がその気になったなら、何が起こっても問題なく対処できる……そう思える程度には。

 

 

「とはいえ、正式サービス開始当日には間に合いそうにないけれどね」

「忘れてたのに言うなよな……。ああ、まだ半分近くも残ってんだったよな」

 

 

 正式サービス開始は2022年の十一月六日。そして、今日は二日だ。まだ四日あるとはいえ、正直言ってサービス開始に間に合う気はさらさらないし、仕事とはいえあの資料の山を全て片付けたすぐ後で働こうなんて気はない。

 当日にログインしろなどという指示が出てない以上、休止を挟むつもりである。

 

 

「ただ、正直ちょっと楽しみでもあるんだよ」

「気持ちは分かるわ。なにせ、世界初だものね——“ナーヴギアを使って仮想現実の世界に意識ごと入り込む、フルダイブ型のMMORPG”は」

 

 

 ——その四日後のことだ。人為的に起こされたものでは、第一次ネットワーククライシス以来の“ネット災害”。一万人もの人間を閉じ込めた電脳世界でのデスゲーム、《ソードアートオンライン》が始まったのは。




今日はもう一話投稿します。
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