編みて我身を遺さず 作:水系三文字
とある事情から更新が遅れてしまいました。
「とりあえず三日間よろしくお願いしまーす」
宿だ、旅の者たちを癒すための宿に私はいた。さすがに二、三週間の間野宿で過ごすのは疲れた。
前の町で宿を探すつもりだったのだが、少し用心しなくてはならなくなったからね。
まあ原因は私なのだから文句はあまり言えないのだけど。
「はいよ」
宿屋のおばさんに金を支払うと私にあてがわれた部屋に向かった。中はなかなかに広くこの時代にしてはなかなかの部屋であった。
「はああ……疲れた~~ね?サブロー」
長い髪を揺らして私は馬と鹿が合わさったような動物であるサブローの頭を撫でた。
「ふぷ~~」
ふわふわしているのでもなくごわごわしているわけでもない、しっかりとしていてしっとりと肌に吸い付くような毛は私の心を少し癒してくれていた。
一通り撫で終わるとサブローは満足したのか部屋の片隅で寝息をたてた。
「ぷ~~」
私も寝るとしよう、明日からは日本を見るための情報を集めなければならない。
「おやすみサブロー」
電気を消し、目蓋を閉じた。
翌日、目を覚ました私は魔術の起動練習を行うことにした。
ある程度のことはできるようになったのだけど、魔術回路はまだ全て開いているわけではないのよね、だから速いうちに開けておきたいのよ。
痛みはほとんどない、どこかの
エリディナとして生きていたときに一回だけやってみたのだけど、あの痛みはないわぁ……どう表せば良いのだろうね、血管に針が入ってザクザクと遠慮無しに刺さってるような感じ?ともかく滅茶苦茶痛かった。
今日はもうさすがに開かないかな、本来なら数日で開くような物じゃないのに魔術の進化も早いんだねこの体、普通の魔術使いからしたら喉から手が出るほど欲しいものなんだろうね。
さて……この町は海に接しているのに加えて港まであるそこそこ大きな貿易港のようだ。
「探せば船もあるかもしれない……あった」
行き先は違うがアジア圏であるのには代わりがない、途中で飛び降りれば良いしね。
さすがにサブローは連れていくことが出来ない、呼び出しの刻印つけて一時的に自然に返しておこうっと。
かくして船に密航した私であるのだが、とあることに悩んでいる。
それはこの大嵐である、いつぞやに眺めていた過去の文献にあったような気がする大嵐である。
被害などどうなったのかなどは知らないし、なんで眺めてたのかもわからないのでその辺りの思考は放り投げておいて考えているのが助けるか否かである。
なんでそんなこと悩んでるかだって? なに簡単なことさ、私の心がどちらかと言うと悪性に傾いている状態なのだ。
答えになっていないことは重々承知のことだ、狂化も入っているのだろうか。
なんでもいいや
それはともかく、助けることにした。まず少年を助けそのあとに記憶を消さしてもらった。
密航したことがバレるといけないかね。して……またまた頭を抱えさせてくれるなぁ。
今の私は海に浮かんでいる、魔術で大体自分の位置はわかっているのだが、きついったらありゃしない。
今いるのはオーストラリアを北進し、日本の沖縄との間付近である。
少年を助けたあとにボートを拝借して逃げたときに気を失っていたようなのだが。
どうもその間に流されるか、魚に運ばれたらしい。
まあつまり言いたいことは……遭難しちゃった☆WA
時間感覚が怪しくなってきた漂流十日目、とうとう所持していた食糧を食べきってしまった、まあビスケット三枚でよくもまぁ耐えたといったところかしら。
さいわい、水は魔術で無理矢理作れるから良いのだが、食糧に関しては対策が必要になる。
海に潜るのも一つの手ではあるのだけど今いるこの海域はどうも潮の流れが激しい、船が転覆するとかはしないようだが……激しいというよりは速いの方が正しいわね。
二日目にちょっと潜ったのだけど、船がそこそこ流されて危うく、ずっと海を生身で……となるところだった。
そのときの収穫はもちろん零、なにもなし。魚とかを探す暇もなくなっちゃったからね。仕方ないと言えば仕方ないのだけど。
……シャチだ
そう言えばサブローに術式埋め込んだような……あ!!
「……来い!サブロー!!」
『ふぷぁぁあーーん』
元々の大きさでありながら、その見た目は大きく変貌していた。
黒い毛並みは白く神々しい色を放ち、朧気に開いていた目は相手に飛び掛からんとするほどに見開いており、陸を立つように海面にその肉体は浮かんでいる。
「サブロー、乗せてくれるかな?」
『ふぷぶぁ?ぷぷー♪』
サブローはその角で私を上に放り投げるとその腰に乗せた。乗っても良かったようだ。見た感じかなり喜んでいるのが分かる。
暫く会っていなかったのも理由のひとつだろう、だが最もの原因はいきなり未知の場所に放置したことだろう。
でも、海の上を立っていることはどう説明したらいいのでしょうか。
『ぷぷぷぁぁ?』
「ん~~なんでもないよ~~」
猫なで声になってしまうのは仕方がないことだと思うのだけど……どう?
誰に聞いているのやら、まあとりあえず。
「サブロー、乗してくれるかな?」
『ぷっぷぅ♪』
ふふ、ありがとね
小舟をけり、サブローの背中に飛び乗る。サブローは私をうけとめ、鳴いた。
『ぷーー』
「ありがとね~~サブロー」
喜んでくれているようだ。尻尾がゆれてぷろぷろいってる。
ゴロゴロだったら猫だね、もしくは雷。
さて、遭難していた時間が無駄になっちゃったことだし、さっさと行きましょうか。
「さあさあ!目指すは日本!できれば冬木!いざ行くぞ~~サっブロー」
『ぷぷっぷーー』
漁師録 海駆鹿
そ鹿のような何かに乗った異国の者が海を渡っていたというお話。
なにが元になったのかは不明、曰く漁師の見た幻覚だとかなんとか……
今回も相変わらず短い文になりましたが、読んでくださりありがとうございます。
頑張って来月中に更新したいです
アンケートに協力してくださった皆さんありがとうございます。
結果、迷いに迷って北極へになりました。