Fate/箱庭の英雄達   作:夢見 双月

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投稿頻度は最近かなり不定期です。多分もうちょっと不定期です。
頑張って書くけど、忙しいから遅くなっても怒らないでね!


色々あるからね、仕方ないね!
それではどうぞ!


生と死の二重螺旋構造

「目を覚ませ」

 

 声が反響するように、繰り返されるように聞こえる。

 浮遊感のある空間にて、俺は意識を持ち直した。

 

「目を覚ませ」

 

 深い意識の中から、辛うじて覚醒し、浮上する感覚を覚える。

 暗闇から、真っ白な世界に戻るように。

 

「目を覚ませ」

 

 この声の主を探す。

 俺が唯一、覚えている事。それは。

 

「目を覚ませ」

 

 

 

 

「目を覚ませ、ヤマト!」

「テメェのせいじゃろがいぃぃ!!」

「ぐあぁぁ!?!?」

 

 目の前の褐色男に向かって目潰し(チョキ)を遠慮なく叩き込む。

 

 覚えている事? テメェが見捨てた事への恨みに決まってるだろうがァ! 

 

 

 ▽▽▽

 

 

 目を覚ました直後にも関わらず、俺は素早く現状把握に努めていた。大丈夫、こんなことは慣れっこだ。

 なぜ、すぐに対応が出来るほどに手慣れているのか。前にバーサーカーとの風呂の時にて、女体を見ると条件反射で気絶する体質を持っている事は以前にもあった通りだろう。ただ、その性質のために目を覚ました後の行動は迅速に対応出来るほどには俺の行動は研ぎ澄まされているのだ。

 

 研ぎ澄まされる程に気絶の回数が多い。ということは。

 つまり、ラッキースケベでの失神も昔からよくあったという事で……。

 その点においてはそっとしておいて欲しい。

 

 ともかく、情報を掻き集めた結果として、地獄から抜け出していない事は把握出来た。

 テーブルの上には、玉子の黄身が垂れた跡の残る皿。そして、厨房にてドラゴンブレスを中華鍋を使って踊らせているドラゴン娘が一匹。……てかあそこだけ炎上してない?? ノッブの本能寺じゃねぇんだから。

 そして、目を刺されて床を無様に転がりまわっているエミヤ。何が「ぬおおお……」だ。こちとら臨死体験してるんだぞ。

 

「それについてはすまなかったと思っている……!」

「すまんで済んだら警察はいらん。私刑(リンチ)にしてくれる」

「思ったよりも時間が掛かったんだ……! すぐに戻って来るつもりでいた!」

「思ったよりも? 何してたんだよ?」

「……ところでヤマト、君はまるごしシンジくんという物を知っているか?」

「まるごし、なんだって???」

 

「実は、ランサー……エリザベートの料理に関しては対処法はある。それがまるごしシンジくんというアイテムだ。これを使うと代わりに完食してくれるという代物であり、もちろん所詮人形のために味覚なぞは存在しないから罪悪感はない。私はこれの準備の為に一旦離れていたのだ」

「最初からソレ使えばいいじゃん」

「時間がなかった。ヤツの行動の方が速く、準備することさえ出来なかった……!」

「……ん? もしかして俺って……」

 

「お前は時間稼ぎ要員だ」

「お前、それでも正義の味方か?」

 

「しかし、それは電脳……いや、色々事情があって実物そのものがなかった。だからどうしても一から作る必要がある。しかし、先程偶然にも素材が手に入ってね。作り上げるのに時間が掛かってしまった」

「一応、それで解決できるなら……うん? いいのか?」

「とにかく、これが実物だ」

 

 

 

「ん〜〜……!!!? ん、ん〜〜!!!?」

「まるごしシンジくん改め、まるごしロビンくんだ」

「お前、それでも正義の味方なんだよな!?」

 

 

「正義の味方とは、(知り合い)を捨て(自分)を救うことだ」

「やめちまえ正義の味方(そんなもん)!!!」

 

 カッコつけていうことじゃない。

 心の底からそう思った。

 

 緑のマントを羽織ったアーチャー、ロビンフッドは脚と手を拘束され、口はガムテープで固定されていた。なにこの誘拐スタイル。ガムテープを剥がすと同時にロビンフッドの口から罵詈雑言の嵐が吹き荒れるのは当然のことだった。

 

「オタクら、何してくれてんの!? たまたま天気がいいから茶屋にでも行こうかと出かけたら首絞められて落とされたんだけど!? 容赦ねーなおたくら!! しかも、あのお嬢ちゃんの所に俺を運ぶとか、なんか恨みでもあるのか!? 恨まれる事をした覚えはないんですがねぇ!! いいからこんなとこオサラバさせてくれませんかねぇ!!」

 

「すまない、エミヤが勝手にやったんだ。……とても心苦しい限りだよ。巻き込んで悪かったと思ってる」

「……じゃあなんで、そう言いながら手足の拘束は解かねぇんだ?」

 

「……」

「……おい?」

 

「……大義のための犠牲となれ」

「オイィッ!?」

 

 すまない。これは誰もが思うだろう。命は自分のものが第一なんだ。

 俺たちなんかに遠慮せず、散ってくれ。

 

「ごめんなぁ……! 俺が不甲斐ないばかりに、迷惑かけて……!!」

「本当に迷惑この上ないな!? あと、せめて悲しそうな顔してくれませんかねぇ!? そんな安らかに安堵した顔初めて見るんだが!? やめろ、オレを椅子に括り付けるんじゃねぇ!! そんで思い出したかのような嘘泣きをやめろぉ!!!」

 

「南無」

「ナム」

 

「テメェら、殺してやろうか!?」

 

「あら、緑茶もいたのね。……何してんの?」

「緑茶?」

 

 一息ついたのか、騒がしくて様子を見に来たのか。エリザベートことエリちゃんがヒョコっと顔を出した。

 

「エミヤ、緑茶って?」

「そこのアーチャーのあだ名のようなものだ。不本意だが、私も似たような呼び方をされている」

 

「あなたは紅茶でしょ」

「ああ」

 

「緑茶」

「……はいはい」

 

「えーっと……玄米茶?」

「なんでや!? 俺と玄米茶は関係なくない!?」

 

 なぜ烏龍茶や煎茶、センブリ茶ではなくよりにもよって玄米茶なのか。もう少し考えようはあっただろう……!? 

 

「そもそも、私たちはアーチャーだ。紅いアーチャーを略して紅茶。緑のアーチャーを略して緑茶。そういう過程がある。君はアーチャーでなければそもそもサーヴァントですらない。せいぜい、普通に名前で呼ばれるように頑張れ」

「そういう事ね。うん……やっぱ玄米茶は嫌だわ……。頑張るよ」

 

 どう頑張ればいいのかは知らんが。

 まあ先程、エリちゃんは名前で呼んでくれてた気がするし、その辺りまでは考えなくてもいいかもしれない。

 

 ……そう考えながら、ゆっくりとドアノブに手をかけ、エミヤに反対の腕を掴まれた。

 

「どこへ行く?」

「ちょっと離してくれないか? トイレに行きたいんだが」

「そう言って逃げる気だろう?? 魂胆は分かっている、席に戻れ」

 

「嫌だ! いつのまにかテーブルに並べられている料理を俺は直視したくない!」

「現実逃避をするな! まだ地獄は続いているんだぞ!」

 

「やっぱ、あそこの二人失礼過ぎない?」

「なら、そもそも作らない方が懸命だと思うんですがねぇ。……色んな意味で」

 

 いい感じに帰れそうな雰囲気が漂っていたので、これに乗じて帰ろうという作戦は見事に防がれてしまったようだ。

 しかし、その空気そのものがコントのようになっていて呆れたのか、エリちゃんは俺らに対し鋭い言葉をつっこみ、ロビンはそれに返していた。

 

「とにかく、この真っ赤に彩られた料理をなんとかしないとな……!」

「何、こちらには切り札がある。我々ならば切り抜けられるだろう」

「そろそろ解いてくれませんかね? 悪寒がマジでヤバいって告げてんだけどよ……」

 

 エミヤと共に、慎重に劇物を扱っていく。

 

「……このスープ、スプーンが溶けたぞ」

「……麻婆豆腐を掬ったはずなのに、レンゲの大部分が消えてったんだが」

「……は? なにそれ? 本当に料理か??」

 

「「……」」

「……ちょ、ちょっと待て。お、オタクら……まさか……」

 

 

 

 

「「あーん」」

「ふざけんなぁ!! そんな物騒なもんこっちに向けんな!! それに男からのあーん、なんて拒否するに決まってるだろ普通に!!」

「なんでお皿を持って食べさせようとするのかしら? スプーンとか置いておいたはずだけど???」

 

「うるさいぞロビンフッド。さっさと食べろ」

「どうせ全部食べるんだから、無駄な抵抗だと思うが?」

「お前ら人じゃねぇな!?」

 

 失敬な。死にたくないだけだ。

 

 頑なに口を開こうとしないロビンフッドに「仕方ない」と思いつつ腹パンをお見舞いし、まずは一口を確実に入れる。

 

「ごはあっ!? ムグゥ……!? ンゴゴゴゴゴ……」

「おっ、入った入った。お味はどうだ?」

 

 

 

 

 

「……」

 

「エリちゃん……コレ美味しいらしいぞ」

「そのようね!」

「ついでだ。他のも流し込むか」

 

 当分して、ナイチンゲールに連れて行かれる緑茶を見守りつつ俺とエミヤで(根本的な)料理のアドバイスをエリちゃんに授けたあと、この料理会はお開きとなった。

 

 しばらくしてブチギレたロビンが一週間に渡って毒をあらゆるところに盛り始め、エミヤと共にまた一悶着あるのは別の話。

 

 

 ▽▽▽

 

 

 夕焼けが綺麗だ、なんて思いながら帰路につく。

 俺は出来るだけ、別の用事と合わせて買い物を済ますことにしていた。何故なら、買い物という理由だけで出掛けるとバーサーカーが凄い形相で睨むから。

 

 あの顔はいかん。ついでにちょっと泣きそうになってたし。だが、連れていけないのが現状だ。テストをクリアするまで我慢してもらおう。

 

 買い物用のエコバッグをいくつか持ちながら、バーサーカーについて考える。

 今思えば、バーサーカーは料理が下手ではない。慣れない調理にやや不器用な部分が合わさって下手に見えていただけで、エリちゃんと比べても成長の速さは一目瞭然だ。まだ一ヶ月も教えていないのに、もう軽食なら作れるほどには上手くなっている。

 バーサーカーはやればできるのだ。そのぐらいなら俺にも分かる。

 

「……あ、そうか。やっと一ヶ月くらいか」

 

 なんとなしに呟いた言葉が、重く感じた。

 

 それほどに、一日が濃く感じていたのだろうか。

 

 バーサーカーを、バーサーカーと呼び続けて一ヶ月。

 あの少女の真名は未だに分かっていない。というよりは、知ろうとしていないのが正確な現状だ。

 彼女との距離は少しずつだが近づいてきてはいる。それは俺でも分かっている。だが、名前をわざわざ聞く気にはなれなかった。

 今更、名前を聞く必要はない。上手くいっているのだから。

 

 しかし、本当にそうだろうか? 

 

 もしかすると、彼女はまだ不信感を持っているのかもしれない。

 もしかすると、俺は大して彼女を信頼していないかもしれない。

 

 そう思うほどに、自分の中で『真名を知らない』という事は枷になっている気がした。

 

 いや、そんな事は妄想に過ぎない。

 実際、関係は良好だ。

 

 それでも、と。考えてしまう自分がいるのも否定は出来ない。

 

 でも見たくない。見ようとしたくない。

 そんな事、あるわけがないんだ。と。

 

「早く帰ろう」

 

 無性に会いたくなっていた。歩く足が速くなる。

 まだ一ヶ月も経っていない関係でも。

 

 彼女は、俺の––––––。

 

 

 

 

 –––––サーヴァントだ。

 夕焼けは地平線と重なっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「遅かったな」

 

 その男は、依然変わらず椅子に座り続けていた。

 

 カーテンが風に大きく揺れ、黄金の光が男を包んでいた。

 買い物の袋を床に零す。

 自分の見開いた目には、目の前の男しか捉えていないのは分かっている。だが、目を離せない。

 

「なんで……ここにいる!?」

「……」

「答えろよ……クソジジイ!!」

 

 怒号が響くが、誰も気付かない。

 防音設備が完備されたこの部屋では、誰にも届く事はない。

 

「ふむ……、縁を切った相手にクソジジイ、か。……罵声でもジジイとは。まるで、まだ家族だと思っているかのようじゃないか?」

「テメェが勝手に縁を切ったんだろうが……!! どのツラ下げて来てんだ!! バーサーカーを何処へやった!!」

 

「奥にいるはずだ。……はて、言われてみれば先程から声が聞こえないが。どうしたのだろうな」

 

「……ッ! この野郎ォォォオオ!!」

 

 振りかぶった拳は、男の……父親の掌で止められた。

 

「先程から、何を怒っている? そこまでの事をした覚えはないが」

 

「決まってる……!!」

 

 

 

 

 

 

「実家の俺の部屋にエロ本を大量に置いたのテメェだろうが!!」

 

「……」

 

 

 

 

「あ」

 

「『あ』じゃねぇ!!」

 

 父親、東条斬人は次に来る上段蹴りを甘んじて受け入れた。

 

 

 ▽▽▽

 

 

「あれは知人に渡す資料として必要だったものだ。お前の部屋を倉庫として使っていて、そのような荷物の一部だったのだが……。道理で無くなっていた筈だ」

「見つけたのがよりにもよってお袋なんだぞ!? なんでわかりやすくメイド物なんか置いたんだ! お袋が勘違いして『私でよければ……』とか電話で言い始めた時にはこの世の絶望を感じたわ!!」

「妻はメイドとして素晴らしい仕事をしていた女性だからな。引退したとはいえ、その心に一点の曇りもないか」

「誰が今惚気ろって言ったんだ!? 元息子になんか言う事あるだろが!!」

 

「大変すまなかったと思っている」キリッ

「少しは申し訳なさを感じる表情をしろ!!」

 

 

「む、帰って来たか。マスター」

 

 何処か抜けているが常に表情がない父親にツッコミを畳み掛けていると、ひょこっとバーサーカーが奥の扉からやってきた。

 

「……バ、バーサーカー」

「どうした?」

「いや、なんでもない。ただいま」

 

 父親が来たからと言って、特に大事はないようだと安堵した。

 実父を見た時から嫌な予感はあったが、杞憂だったのだろう。

 そう言い聞かせ、

 

「先程はすまなかった。バーサーカー……と俺も呼ばせてもらおう。勢い余って腹を貫いてしまった」

「気にするな。私が弱かっただけだ。……むしろ手当までされれば認める他あるまい」

「殺す気は無かった。それだけだ。……完治した上に問題なく動けるようでよかった」

「ん?」

 

 何を言っているのかわからなくなった。

 

「お詫びにというのも憚られるが、ヤマトの幼少期のアルバムを持って来た。見るか?」

「本当か! 見させてもらおう」

「待て待て待て待て待て待て待て待て!!」

「どうかしたか?」

 

「どうかしたか、じゃあねぇだろ!! 何してんだクソジジイ!?」

 

「何。バーサーカーの腹部を貫き、無傷そのままのように治しただけだが?」

「……は?」

 

 思わず、固まった。

 

「警戒されてしまってな。相手をしていたら殺してしまった。まぁ、この程度ならお前でも簡単に出来るだろう?」

「……う、ウチの親父に常識はないのか」

「お前の物差しで人を測るな。俺にも常識はある。……ただその上で常識を選んでいるだけだ」

「くそっ……。訳わからないその理論でバーサーカーとうまく噛み合ってるのが妙に腹立たしい……!」

「人に合わせるとはこういう事だ。俺の中ではな」

 

 服のどこからか取り出されたアルバムをバーサーカーは受け取りながら、家族ならば気になる疑問を口にしていた。

 

「実父やら養父やら言っていたが……、縁を切ったとはどういう事だ? よくある事なのか?」

 

 それに対して、俺ははっきりと答える。

 

「いや、縁を切るなんて事は相当な事が無ければ普通は現実では起こり得ない事だ。ましては、コイツみたいに意味不明な理由で縁を切るヤツは、な……」

「……どんな理由なんだ?」

「俺が答えよう」

 

 東条がそう言って口を開く。

 

「簡単に言おう。ヤマトに血縁はいらないからだ」

「は?」

 

 今度はバーサーカーが固まる。

 思わず俺は手で顔を抑え、ため息が出てしまう。

 こういう父親なのだ。

 

「近いうちに、ヤマトは血縁の家族というものが邪魔になる事態が起こるだろう。ならば、予めその事態を加味した上で動いていた方が良い。だから縁を切った」

「???」

 

 いや、そりゃバーサーカーもそうなるだろう。

『近い未来、そうなるかもしれないから事前に手を打つ』という事を平然と行う人間なのだ。

 

 そして、いずれ必ずその通りに動く。

 それがこの男が大黒柱である、東条家の常識なのだから。

 

「未来視の能力か?」

「概ね間違ってはいない。が、正確には違う」

「……どういう事だ?」

「『能力』ではない。人間としての特別な力として持っているわけではない。誰かにとっては能力でも、俺にとってはこの程度は一端に過ぎない。故に、能力ではないのだ」

「???」

「まぁ、そうなるよな」

 

 安心しろ、俺も何言ってるかわからない。

 

「まぁ、親父については置いておけバーサーカー。脳味噌が人間の域を超えてんだ、ウチの親父は。……縁切られてるから親父じゃないけど」

 

「では、マスターの養父というのは?」

 

「ふむ、俺を当主とした本家があり、その分家に大和家がいる。その鍛冶屋の家庭の跡継ぎという名目で縁組したのがそこのヤマトだ」

「親父が見た通り以上の若さだから、当然、本家と分家は血は繋がってないぞ」

 

 養父(ジイさん)の方が年寄りだしな、と付け足す。

 

「実は俺の……」

「む、ここまでか」

 

 会話の最中に、不意に親父がそう漏らした。

 

「すまない。ゆっくりしたいところだが時間だ。相変わらず多忙な身でな。これから篠ノ之と会談がある」

「誰だよ」

「宇宙面での技術資金を援助させてもらっている相手だ。それでは失礼する」

 

 そう言って窓を開け、ベランダに足を掛ける東条。

 最早、その行為に「なぜベランダから帰るのか」などと疑問を呈する人間はいない。

 東条斬人という人間に短時間でも毒された結果である。

 

 

 

 

 

 

 

「ところで本題を忘れていたな」

 

 そして。

 

「一つ、課題をやろう」

 

 運命を置いていった。

 

「この箱庭にいる英雄達は、当然ながら偶然現れたわけではない。聖杯戦争やカルデアのように召喚されたわけでもない。誰かが意図的にこの状況を造り出し、そしてサーヴァント達を何の自覚もないままにここで生活させている」

 

「なに?」

「……どういう事だよ、親父」

 

「誰が、何のために、この箱庭を造ったか。それを探すんだ。お前達はいずれ、その黒幕を利用しなければならない。 ……気をつけろ、■■■。それに■■■■■■■。お前達の敵は、人間の辿った歴史、それに伴う叡智そのものだ」

 

 俺は親父が途中で何を言ったのかが聞き取れなかったが、微かに聞こえた。

 あれは俺の名前だ。かつて、東条だった時の。

 

 彼女もそうだろう。

 きっと、東条斬人が言ったのは彼女の真名だ。

 

 

 俺には分かるんだ。こういう男なんだ。

 

 

『俺たちの関係を知った上で、片方には聞くことができない声を駆使して会話をする』

 男女の聴覚の違いを利用した会話法。どう言う理屈かは理解できないが、恐らくそれだ。

 

 

 

 

 

 カーテンがたなびく。

 今更ながら、外が暗いことに気づいた。

 

 俺とバーサーカーは闇に消えた東条を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 強い風がリビングに吹き、放射線状に布の白が舞う。

 

 窓を閉めると、バーサーカーを見やる。

 その目は「アルバムを見ていいか」と聞いているようなので、

 

「いいぞ」

 と、答えた。すかさずバーサーカーは表紙をめくった。

 おかしな写真を撮られていないか探るために、横から俺も覗く。

 

 

 しかし、そのアルバムに目を落とす事はなかった。

 

 

 ゆっくりと落ちていく、アルバムに挟まれていた紙。

 

『藤丸立香と合流せよ』

 

 バーサーカーは何が書いてあるか理解出来なかったようで、()()()()()()()()()()()をただ睨んでいた。

 

 当然だ。こんな走り書き、見る機会は少ない。バーサーカーが分かるはずがなかった。

 しかも、達筆とも取れるか取れないかの原型を留めているか定かではないレベルの書き方であったため、側から見れば子供が描いた『ぐるぐる』の様でもある。

 

 たまたま、知っていたからだ。

 俺は、この文字の形の意味を知っていたから、分かっただけなんだ。

 

『父さん……? これは何?』

『これは暗号だよ。藤丸立香と合流せよ、という暗号だ』

『ふじまるりつか……?』

『いずれ分かる』

 

 子供のころに言われた謎の暗号があった。親父は読み方のみを教え、それ以上ははぐらかした。この歳になって再度聞けばなるほど、確かに人名だと分かる。親父の睨んだ通り、解読は確かに出来る。

 だが、幼い頃にいずれ発する命令の暗号を覚えさせるなんて、その行動自体は、本来なら有り得ないだろうが。

 なぜ、そうなる事を親父は知っているのか。それは親父にしか分からない。

 

「何もんだよ、ウチの親父は……」

「マスター、これは何の絵だ?」

「……人探しをしろ、とよ」

 

 

 

 

 

 

 

 運命を辿る、白銀の歯車。

 僅かに、されど静かに動き始めていた。




ヤマト
とりあえず生きる事が大事。ちょっぴりバーサーカーの事が気になっている……? 本名はなんだろうね。

バーサーカー
「なんで腹貫かれて生きてるん? まぁ生きてるからいいや!」という脳筋ポジティブ思考を持っているため、お義父さんの話は全く分からない。真名はなんだろうね。

エミヤ
正義の味方。ただし、養父の基準。

エリちゃん
何回も出てきて(ry。最近の料理は溶けるらしいぞ。

ロビンフッド
正義のための犠牲枠。緑茶でうがいをすればワンチャン生き返るけど、その前にナイチンゲール送りされた。

東条斬人
ヤマトの実父であり、今作品で一番の頭おかしい筆頭の東条……ではなく、登場である。「予知? 当たり前に出来るが?」というチート具合。何かを知っている様だが、完全にヤバい雰囲気の案件を知らせていた。

藤丸立香
誰やねん。
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