Fate/箱庭の英雄達   作:夢見 双月

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新年ですね。令和最初の元旦、初詣や初日の出に行く人が多いのでは無いでしょうか。

あと、最近忙しいです。
将来的事情によって、投稿頻度が低くなる確率が高めです。

ん?頻度が低いのはいつものこと?そっかー。

なんとか一区切りつくところまでは頑張りたいですが、そんなこと言ってるとサボりがちになりそうなのでやめときます。
ただでさえサボりがちなのに……!


【Unknown Archer】

 その男は来た。

 

 目の前のサーヴァントと対峙してしばらく経った頃。その決着の寸前に。

 

 

 破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)を持つディルムッド・オディナを始末出来るのは幸運だった。

 これからの戦いには多くのサーヴァントと敵対する事になる。魔力で殆どの攻撃を行う自分にとって、触れたものの魔術を無効化させる槍は実に脅威だった。

 

 少々勿体ない宝具の使い方だったが、これに関しては仕方がない。すぐに思いつく拘束用の武器を持つのはコレだけだった。

 あとで怒られるかも、などと思う。

 しかし、そんな事より自分の命だから仕方ないと、早々に割り切った。

 

「くっ……無念」

「悪かったな」

 

 右脚を吹き飛ばされ心臓を貫かれた敵を見て少しの間に、自分は気付けばすまなそうに顔を歪めていた。

 

「何故、そんな顔をする。見知らぬ武人」

「アンタを憐れんだわけじゃない。むしろ倒せた事にホッとしてるし、誉れとも思っているさ。だが、目的はアンタの殺害じゃなかった。だから、な。アンタを好きで殺してる訳じゃないんだぜ?」

「……」

 

 これは、罪の意識だった。

 自分は今から目の前の男にとどめを刺す。その事実に手が少し震えた。

 おどけて見せても、目の前の英雄には空元気とも言える歪んだ顔に見えることだろう。

 だが槍兵の口からその指摘が漏れることはなかった。代わりに、僅かな血が唇から流れる。

 

「それに、武人と言えるほど高尚なもんじゃない。見たろ。俺のこの手を。この武器を。卑怯な手で拘束して、隙をついて、殺めて。悪いが、俺にはアンタ達戦士を理解は出来るが成り切ることは出来ないらしい」

「……そうか」

「あぁごめん、苦しませちまってる。そうだ、簡単に切れる首の切り方を知らないか?」

「俺に、言う……か? 脆き少年よ」

「違いない。じゃあな」

 

 生憎、持っていた矢に改造した剣では貫くのが精いっぱいだ。弓を消し、矢を軍神の剣(フォトンレイ)に変形させ、薙いだ。首を飛ばした剣は嫌に軽かった。

 ランサー・ディルムッド・オディナはこれで死んだ。直にその肉体は霧散するだろう。

 

 そして。

 

 

 目の前の白い髪の男。

 

「サーヴァントに認識阻害がかかっていても、マスターにかからないのでは意味がないぞ。欠陥だな、これは」

 

 結界の不備を呟いたはいいものの、目の前のマスターは只者ではないと直感が告げる。

 おそらく最初の一撃だけ起こった、防音を兼ねる隠匿の結界を張る前に受けたその音と衝撃。それに気付かれたのだ。

 

「悪いけど死んでもらうよ。どうせ、何者だろうと生かしては置けないからね」

 

 マスターだろうと、油断はしない。

 襲撃者の目に油断なく。そのまま地面を蹴った。

 

 

 ▽▽▽

 

 

「怒りはない」

 

 それが口から出てきた俺の最初の言葉だった。

 

「ディルムッドは戦士だったからだ。その戦いに俺の無粋な感情は要らない。悲しくないかといえば、嘘になるが」

 

 肉薄しようと迫る襲撃者を、ただ見据える。

 

「だが、それはそれとして、だ。この結界は俺たちのものだ。返してもらうぞ……!!」

 

 放たれた火球を最低限の動きで避ける。自分の目には一時の憎悪を孕ませて。

 

 

 その体は収縮し、前方に弾け飛んだ。

「……来るか」

「魔術での迎撃もない、か。ならば突撃あるのみ……!」

 

 拳を握りしめ、放つ。

 襲撃者は身を翻し、拳を回避する。回転しつつ左手の軍神の剣(フォトンレイ)で切断しようと剣を伸ばす。

 

 しかし、襲撃者において想定外の事態に目を丸くした。

 

 剣を受けるため、俺が差し出した手刀によって。

 

 

 

 

「剣が切断されただと!?」

 

 

 

 すかさず肩、背中を用いる体当たりを打ち込む。驚愕に染まった一瞬の隙を逃す道理はない。

 

「はああああッ!!!」

「ぐふっ!!」

 

 鉄橋の柵まで吹き飛ばされる襲撃者。しかし、少しもたつきながらもすぐに立ち上がってくる。

 

「はぁ……はぁ……っ。名前でも聞いておこうかい? 単純な強化魔術のみでここまでの威力はたいしたもんだな」

 

 刃が半分にも満たない剣を投げ捨て、襲撃者はそう言った。

 

「ヤマトだ。お前は?」

 

「けっ、マスターなんだろ? 俺の真名ぐらい分からないか?」

 

「アルテラの剣を用いて、右手から火の玉を撃つ英雄。だが衣服の構造から見ても分かる通り、アンタは近代の英霊だろう。アルテラの褐色肌とアンタの右手も一致しない。その上で、名前を聞いているつもりだったが」

 

 外見は白い服に身を包んだ青年だ。上着はところどころ敗れて薄汚れていたり、前が空けてあるために黒い肌着が露出しているが、鎧らしきものは一つもない。それでいながら、現代のデザインと酷似していた。

 そして、肘まで露出している右腕は黒く、金色の光が血管の様に張り巡らされていた。右手からは結晶の様なものを生み出し、そのまま火球のエネルギーに使用されるようだ。

 襲撃者は舌打ちをしつつ、どこか嬉しそうに言った。

 

「知らないとはいえ、目敏いねぇ」

 

「このぐらいの観察眼は当たり前だ。……さて。俺は名乗ったが、そっちは名乗らねえのか?」

 

「生憎、黙秘権だ。アンノウン・アーチャーとでも呼べばいい。それが俺が名乗れる今の呼称なんでね」

 

「クラスなんざどうでもいい、言う気がないならいい。どうする? 死ぬか? それとも目的でも話してから死ぬか?」

 

「いや、もう少し暴れるとしようか」

 

 アンノウン・アーチャーの軽い口調とは裏腹に、行動全てに殺気が伴った。

 

 

 

 

「テメェの命、手土産にはもってこいだしなっ!」

 

 砲弾のように突っ込んでくるアンノウン・アーチャーは両手に白と黒の短剣を出現させた。

 

 その剣は見たことがある。

 赤い外套の弓兵。その人の得物。

 

 つまりは。

 

「投影魔術か……!」

「ご名答……だっ!」

 

 首を刈り取らんとする黒の短剣・干将をしゃがんで避けつつ、手刀だった拳を握りなおした。

 双剣と俺の腕が交差する。しかし、前に突き出したその腕が切り落とされることはなかった。

 

「おいおいマジかよ、曲がりなりにもサーヴァントの武装を軽々しく受け止めるのかよ……!?」

 

 短剣を捌ききるだけなら襲撃者にとって想定内の事態だったろう。一芸を極めた一般人が英雄を一時的に退ける程度ならばあっても不思議ではない。

 

 暗殺者が、剣士を一時的に凌駕するように。

 

 幾億の贋作が、本物に打ち勝つように。

 

 だが、現在起こっている現象はただの人間が一芸を持つのではなく、剣と同等の能力を持って対等以上に肉薄しているという事実である。それは手の形が何であろうとにもかかわらない。

 

 手刀であろうと拳であろうと、眼前のように火花を散らしながら干将・莫邪を押しのけている事実は変わらない。

 

「無手より剣の方が強いはず、だろ……!」

「かもな。だが拳は剣よりも、疾いっ!!」

 

 アンノウン・アーチャーが苦笑する間もなく、二つの中華剣に罅が入る。次の瞬間に干将・莫邪は砕け散った。

 

「おおおおおおおおお!!!」

 

 ラッシュを畳みかけた途端、再度出現した双剣がその拳を阻む。自身の形勢を悟り、アンノウン・アーチャーはほとんどの拳を双剣で受けるか回避し、破損した干将・莫邪は即座に投影し直していた。

 徐々に間合いを離されていき、やがて完全に距離を取られる。追撃をしようにも、アンノウン・アーチャーは防御の合間にいくつもの干将・莫邪をあらゆる方向に投擲していた。そのため、ブーメランのように飛んできた干将・莫邪が俺の足を止めさせた。悉くを素手で破壊し対処し終えた時には、二人の間にはかなり空間ができていた。

 

「正面から戦うだけ不利なら手段を変えさせてもらう。悪いな」

 

 そう言って、双剣をしまいながら杖を取り出したアンノウン・アーチャー。

 浮上すると共に、後方から四門の魔方陣が現れた。

 

 

「……アーチャーなら、弓を使えよ」

 

 

 曲射された四本の魔弾が迫る。

 瞬時に回避を選択したが、魔弾は着弾と同時に小さくはない爆発を起こした。たちまちその衝撃に吹き飛ばされ、体勢が崩れる最中に新たな魔弾が空を覆う。

 くっ、と声を漏らし、アンノウン・アーチャーに向かって走り出す。大きく跳躍すると同時に、すぐ下の地面に向かった魔弾が着弾。至近距離で爆発した。やや姿勢を崩しながらも持ち直せる確信をすれば、地面に足をつけて踏み出し、さらに近づいていく。

 魔弾を素手で切り裂いて通り抜ける事は可能かも知れない。しかし、着弾と同時に爆発するのでは仮に切れたとしても小さくはない傷を負う。腕という接近戦においての圧倒的な優位を捨ててまで強引に近づくのは愚行が過ぎると結論付けた。

 

 だが、近づかなければ肝心の決定打は入らない。ならば、新たな手段をここに用意するのみ。

 

 

 

「俺が令呪で命ずる、来い! バーサーカー!!」

 

 

 

 転移の奇跡。その光が右手の赤い刻印の一画を消し去り、周囲を満たし始める。

 転移に気付いた襲撃者は浮上しさらに距離を取ると、小さく詠唱して槍を取り出した。

 

 魔術回路に魔力を流す。

 

 掌に再び強化を施す。

 

 先程の剣をも超えるチカラをその手に、アンノウン・アーチャーは投擲の構えを取る。

 そして、小さく笑った。俺の勝ちだと言わんばかりに。

 

 

 

「マスターなんだろ? お仲間を呼ばないなんて愚行、するわけねぇよな?」

 

 

 

「何だこれは!? ……っ、バーサーカー!」

「マスター!? これは一体どういうことだ!? この鎖は一体!?」

 

 全方位に張り巡らされた黄金の鎖。それらをつなぐ金色の波紋は無数に俺たちを囲み、それはさながら光り輝く檻であった。

 

 

「敵の襲撃に遭っているんだが、何とかあの浮いてるヤツを叩き落したい! できるか!?」

「……くっ、無理だ。弓ならば扱えるが持っていないっ!」

 

 レイアはそう言って歯噛みした。多分、どうしてこうなった、なんて不平を言いたいのを噛み殺してすぐに協力してくれるのは流石俺のサーヴァント。

 

「それに、遠距離用の道具すらこちらにはないぞ」

「投げりゃあいいだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「武器を、か?」

「ん、いーんや?」

「……馬鹿者が」

「褒め言葉かい?」

 

 

 

 

 魔力の奔流が吹き荒れる。

 襲撃者の投影された籠手から炎が噴射し、投擲の威力は限界となった。

 

「方向、角度、ともに問題なく。不毀の極槍(ドゥリンダナ・ピルム)。吹き飛べやァ!!」

 

「行くぞマスター!!!」

「うおおおおおおおおおお! 行けぇ!!」

 

 

 アンノウン・アーチャーはこれこそ驚愕を露わにした。

 

 バーサーカーに胸ぐらを掴まれ、上空にマスターが放り出されるなど。

 

 一瞬の混乱が一瞬の硬直を生む。

 

「くそっ!!」

 

 アンノウン・アーチャーは標的を変え、定め直す。

 

 この手にある短刀はバーサーカーから先ほど事前に受け取ったもの。投擲するにしても不毀の極槍(ドゥリンダナ)とまともにかち合えば玉砕する程度の神秘しか内包されていない。

 

 

 

 いまだ、不滅の槍は襲撃者の手に。

 

 それでありながら、ヤマトの目には不屈の炎が輝いていた。




【現在公開可能な情報】

エルドラドのバーサーカー
 召喚の不備によって弱体化していた英霊個体だったが、マスターのヤマトから正しく魔力を受け取ったことにより本来の力を取り戻した。武装はモーニングスターと呼ばれる鎖付き鉄球、短剣を所持している。弓や騎馬も扱えるがクラスの都合上所有していない。
 ヤマトの近くにいる場合のみ狂化する事はないことが分かっているが、依然原因不明のままである。
[ステータス]
 筋力 A
 耐久 C
 敏捷 B
 魔力 A
 幸運 EX
 宝具 A-

[スキル]
 カリスマ(B) 人を惹きつけるスキル。
 黄金律(美)(A) 美の体現。肉体は変化せず、美しく保たれる。
 軍神咆哮(A+) アマゾネス女王として、アレスの娘としてのスキル。その咆哮は率いる軍勢を鼓舞し、勇猛さを与える。
 狂化(EX) 理性と引き換えに身体能力を向上させるスキル。このスキルが消失したわけではなく、特定の条件によって発動無効になっている。
 神性(B) 軍神アレスの娘としての神性。

【宝具】
『我が瞋恚にて果てよ英雄』(アウトレイジ・アマゾーン)
ランク:B−−
種別:対人宝具
レンジ:1〜3
最大補足:1人
 あらゆる闘争心を一斉に励起し、狂化に身を委ねて敵を屠る対一個人特攻宝具である。しかし、マスターであるヤマトの近くでは狂化の制限が起こるため、ランクが著しく低下している。その代わりとして、理性を保ちながらの単純な身体強化に留まっている。
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