楽しいんだけど、今までのを疎かにしちゃダメだよね。
気をつけながら頑張ります。
待ってくれた方、すいません。
前回のあらすじ。
何故か川の底にいたヤマトは六文銭を要求されたが、無いと言ったらボコボコにされ、吹っ飛ばされる。
三途の川から吹っ飛ばされた先はなんと、冥界であった……!?
冥界で出会った少女の正体とは……!!
そんな感じの走馬灯が頭を駆け巡った。
勿論、割愛である。
「……ハァッ!?エンマさま!?落ち込まないで!?あなたはボッチじゃないですって!!」
「落ち着けヤマト。……お前は一体何の夢を見てたんだ」
気絶していた俺こと、ヤマトは飛び上がってあたりを見回す。
あれ、金髪の女主人(……だったか?)がいないな。夢だったのか?
右側にはため息を吐きながら呆れて座っているエミヤが、左側には俺と同様に倒れているサーヴァントやランサーとかクー・フーリンがいた。
––––––うん、何が起きたんだ。
「取り敢えず、ランサーが死んでる」
「この人でなし、だな。ところで記憶ははっきりしてるかね?」
「ああ、バーサーカーから草を刈るかのような攻撃を食らって、意識を文字通りに刈り取られたところまで覚えてるぞ」
「自分の馬鹿さ加減は省みておけ。俺からはその後の話をしよう。君にも聞いて欲しい話だ」
そう言って、エミヤは水を渡しながら話し始めた。
「バーサーカーと呼ばれるものは、誰にでも狂化のスキルが与えられる。これはサーヴァントによって程度は異なる。何故あるか、は考えなくてもいい。例えばベオウルフは戦闘狂と言うだけで意思疎通はできる。だが、狂化が高いスパルタクスは思考が固定されていてまともな会話すら難しいだろう。そして、君のサーヴァント……エルドラドのバーサーカーにもこれは当てはまる」
「あいつにもか……人間として狂ってるとか?」
「主観的なもので見ないことをオススメしよう。ヤツが歓迎会に区切りがついたお陰で、部屋に戻っていてよかったな。本当に。彼女は狂ってしまうスイッチがあって、条件を満たすことで切り替わるタイプのようだ。アタランテは条件が真名に関わる為に明かさなかったが、条件にさえ触れなければ暴れ出すことはない」
「え?暴れてたん?」
「貴様の鈍感は底なしか。……魔力の繋がりで感じることぐらいはできる。それを頼りにしてみろ。見極めれば感情の起伏ぐらいは分かるようになる。話を続けるぞ」
「ああ……」
「次に、どう収拾がついたかだ。原因はお前だ、ヤマト」
「へ?」
思わず声を上げる。自分は何もしていない筈だ。現にアイツに飛んでいってしばかれただけだし。
「アイツの狂化に巻き込まれたんじゃないのか?」
「マスターであるお前を攻撃することが当たり前になっているのか、など突っ込みどころは色々あるが……。調べた結果、ヤマト。
「狂化解除?そんな便利なもんがあるのか?」
「いや、そんなものはない。本来、狂化は常に掛かっていることがほとんどだ。条件で狂うと言っても、任意に解除出来るという事例は聞いたことがない。それこそ、彼女の深層意識を覗かねば分かるまいよ」
「ふーん、そうか。ところで、––––––––」
さっきからじんじんと痛んで気になっていた事を、口に出す。
「–––––––俺の頭にある無数のタンコブが痛いんだが、なんか知ってるか?」
「……」
「……よく見りゃ身体の節々が痛いし。絶対なんかやったろ?な?」
「……っ」
「目をそらすなエミヤテメェ」
「違う……!俺じゃないんだ。アストルフォと武則天のマスターがお前を使ったバーサーカーの実験を率先して行っていたのだが……扱いが非常に雑だったんだ。お前の足を持って引きずり、あらゆる箇所にお前をぶつけ、狂化した際にはお前を投げつけて放置。これの繰り返しによるものだろう」
「 止 め ろ や 。 」
「俺にも相手をしなければならん人達がいたからな。何処ぞの目の前の誰かがアルトリア達の面倒事を全て押し付けてくれたせいでまともに助けられなかった」
「……そういや気になってたけど、赤い外套と、あの……黒いボディアーマーみたいなのは何処に行ったんだ?」
「聞くな。……その先は地獄だぞ」
「把握した。……俺の上着だけでも、いる?」
「遠慮しよう。幸い、替えがある部屋までは近いからな」
落ち着いてきたので、立ち上がって周りを大きく見回す。乱雑に置かれている皿やグラス、酒が溢れた跡などが目立つ凄惨な光景が広がっていた。
壁に付いてるあれは血飛沫じゃなくてランサーのケチャップだろう。まったく、何が起きたらこうなるのだろうか。それこそ、現世に居られて超はしゃいでいる神殺し系スパルタタイツ師匠なんていう壊れキャラが暴れない限りこんなことには……やめよう。なんかいる気がしてきた。
「俺はここを片付けて、借りた食器をそれぞれの持ち主に返さなければならんが、お前はどうする?このまま帰るか?」
エミヤがそう聞いてくる。暗に、「腹の空き具合は大丈夫か」と聞いているような気がした。
気遣いに感謝しつつ、首を横に振る。
「いや。……手伝うよ。これでも家事は得意でね。エミヤが食器を洗うなら、俺は部屋の掃除をしようか」
「む。主役に後始末をさせるわけにはいかないな。気にしないでくれ」
「ほう?邪魔だからやめろ、と言っているように聞こえるが。安心しろ、こういうのはうるさい方だ。両親がその道のプロでね。叩き込まれてる」
「ならば……お手並み拝見だな」
「なぁに、時間が余ったら手伝いに行ってやるよ」
「言うじゃないか。そこまで言うなら任せるが……何、私が全て終わらせても構わんのだろう?」
「へっ」
「ふっ」
「おし、やるか!」
「皿を運び出す物を持ってくる。頼んだ」
「片付けて一箇所にまとめとくよ。そしたら俺も道具持って来ねぇとな」
二人の主夫は早速作業に取り掛かる。その姿はまるで、水を得た魚のように活き活きとしていたという。
二人は淡々と作業を進めていった。
自分の部屋に戻るのに、鍵は要らない。
ドアの縦に長い取っ手を掴むと、指紋やら手の中にある血管の形を認識し、開くシステムだ。サーヴァントの場合、確か……霊器だったか。それらを判別して開くらしい。
だから手間がかからない分、とても助かっている。引っ越しの荷物を運ぶ際にもこの利便性には頭が上がらなかった。が、何故こんなに無駄に凄い機能があるのだろうか。登録さえすれば他人も入れる機能もある。ありがたいとは思うが、これで家賃が安いので後ろめたいものがあるのかと勘ぐってしまう。この建物を造ったAUOとは一体何者なんだ……!?
(尚、前々回にてアルトリアズに消し炭にされてたのは後で知った)
いや、現実逃避はやめよう。
今回ばかりは、そのドアの開けやすさが憎いのだから。
簡単なことだ。エミヤは「部屋に戻っている」と言っていた。なら、この中にバーサーカーがいる事は確定だろう。
さらに、狂化とやらで理性がないわけでなく、単純な憤怒によって俺を仕留めた女である。まだ怒っている可能性は十分にある。
下手すると、本当に殺されてしまうかも知れん。
「まぁ、仕方ねーよな俺のせいだし。出来るだけ謝って、許してもらうしかねぇよな」
彼女にどうやって謝ればいいだろうか。
安易な発想しか出なくて自分で自分が嫌になるが、何か願いを聞いてやる事ぐらいしか思い浮かばない。
それでも、これからの生活でギスギスするのは真っ平御免だという話で。そのためにちっぽけなプライドを捨てられない程腐っちゃいない。
心を決めて取っ手に手をつける。かちゃり、と簡単に解錠されるドア。
開けると、目の前に立っていた。
いつもの少女がそこに居た。
見るや否や、すかさず謝罪の言葉を吐き出す。
先制攻撃だ!反省の色を見せなければ、いつ拳が飛んでくるか分からない……!
「バーサーカー!さっきは「おrrrrrrrrrrr……」……は?」
そして、何故かバーサーカーも吐き出した。
カウンターの如く、青い顔色を見せながら四つん這いになる。
えっ?サーヴァントって嘔吐出来るんだ。
人間と一緒なんだねぇ。
現実を置いてけぼりにして、謎の親近感が湧いた。
まさかサーヴァントの世話するマスターがこの世にいるとは誰も思うまい。
「すまない……!ま、すたー……!私はもう……」
「大丈夫だ。大丈夫だから、な?宴会とか俺の家ではよくある事だから、未成年なのに何故かこの手の対処はできるから。うがいして来れるか?手を貸すぞ」
「うぅ……うぐぅ」
「完全に飲みすぎて気持ち悪くなってんじゃないか。今のお前は酒に弱いって下での歓迎会で分かってたろ?」
「やりたくないのに……お前との実験に付き合わせるために……ピンク髪のライダーが……無理やり呑ませて……」
「ナルホドな。確か……アストルフォだったか。後でしばいとくから、ほら、うがいして。飲む用の水持って来るから」
「た、頼む……」
多分、今まで相当二日酔いが辛かったんだな。
俺の目の前にいたのは、立ちはだかっていたワケじゃなく、酒を飲まされたおかげで吐きそうになってトイレに向かっていただけだったようだ。確かにリビングからトイレは少し距離あるもんな。間に合わなかったんだよな。
バーサーカーの吐いた物を一瞬で処理して、水をコップに注ぐ。
戻って水を飲ませ、吐瀉物で汚れた服を脱がす。
半裸になったバーサーカーに、ブラくらいつけろ、と内心で愚痴りながら背後から寝間着の上を被らせた。もちろん、男が住む家にブラなんてない。無い物ねだりに近いものだ。
うぅ……、と呻き声を出すバーサーカー。頭痛だ。
バーサーカー持ち上げてキッチンに向かい、医薬品を詰めた箱と水を用意する。
「酔い止めだ。飲め。……飲んだな?よし、寝ろ。速やかに。言いたいことはお互いあるだろうが、とりあえず明日だ、明日」
そういうだと、バーサーカーは小さく頷いた。
同意を得られたのでベッドに寝かせる。
「ちょっと行ってくる。じゃあな」
そう言って後ろ髪を引かれつつ、掃除用具を持って部屋を出た。
こうなるんならエミヤと変に張り合わなけりゃよかった、と思った。
まず、会場で酔い潰れたままで放置されているサーヴァントを運ぶ。これは、ロマンに聞いたらそのサーヴァントの部屋番号を伝えてくれた。なので、全員をそれぞれの部屋に運んで行った。ついでに寝ていないロマンには「恐ろしく速くて俺でないと見逃しちゃう手刀」をお見舞い、綺麗に寝かした。
ちなみに死んでるサーヴァントに関してはエミヤが、「ランサーと黒ひげが死んでいる?ふむ、あの二人は戦闘続行やそれに近いスキルを各々持っている。邪魔でないところに置いておけば勝手に復活するだろう」との事なので、適当な所に放置していた。
すると、「患者は何処ですか!?」と走ってきた赤い人に持っていかれた。医療関係のサーヴァントかな?なら安心だね!(白目)
次に、壁を拭く。何故か鉄の匂いがするケチャップを何とか拭き取っては雑巾をすすぎ、拭き取ってはすすぎを繰り返す。
そこで、誰かが中に入ってくる。
振り返ると、長髪の男がいた。
長髪の男は、やぁ、と挨拶する。
「お前は、見捨てられた男」
「どんな覚え方なんだ。アサシンの……いや、武則天って言う拷問魔のマスターの風見という、先ほどはすまなかった」
「なんか、雰囲気違くないか?襲い掛かって来た時のあのテンションは何処行ったんだよ」
「酔ってた時だけだ。おそらくな」
「嘘だァ!?気味悪いわそんなの!!」
「俺は覚えてない。武則天が妙に愉快な顔をしてたから聞いたら、間違えて呑んでたみたいでな。申し訳ない事をした」
「お、おう……なら、今後気を付けてくれ。俺だけじゃなく、バーサーカーも身が持たん」
壁を拭く作業を再開しながらそう言った。「ありがとう」と聞こえた後、しばらく間を置いて「一ついいか」と聞いてきた。
「あんたのサーヴァント、真名はなんなんだ?」
「バーサーカーのか?知らねーよ」
「……信頼されてないのか?」
「さぁな。……だが、あのバーサーカーを召喚する時に使った本によると、本来は名前は隠すものみたいだし、恥ずかしいんじゃねぇの?」
「嬉々としてこっちは真名を明かしてくれたんだが」
「その後、拷問されてんだろが。嫌だぞ、『真名明かすから代わりに死ね』とか言われるの」
「あぁ……確かにイヤだな」
「テメェ……えっと風間は……なんで生きてんだそういやぁ。拷問っていうのは、途中で死んでしまう事もあると聞くが?」
「あぁ、アイツの能力らしい。少なくとも死ぬ事はないって言われたよ」
「……色んなヤツが居るんだな」
「そうだな。助けられて感謝しかない」
思いっきり足を捻った。
悶絶しながらも言葉を零す。
「……はぁ!?拷問で助けられるってどういうシチュエーション!?」
「ああ、そうだな……すまん」
そう言って、あまり汚れていない床に風見は座った。
「自殺を考えてたのさ。まともに他人とコミュニケーションも取れなかったからな。何よりあの激情は酒癖だけじゃなくて、カッとなりやすいタチって言うのかな。二重人格みたいに急に切り替わっては迷惑をかけてしまう」
「……」
「だから、武則天が呼ばれた時、『何か願いがあれば聴くぞ』なんて言うからさ。言っちまったんだよ。『死にたい』ってな」
「……ふぅん、そんで?」
「丁度、あんたが挨拶に来た時に重なるよ。
「そうか。よかったな」
「……んっ?俺は生きてて、よかったのか?……ごめん、まだ分からないんだ」
「…………俺が思うに、お前の考えた自殺は『死ぬ事が目的』なんだろ?なら、他に目的もない無意味な自殺って事だ。それは流石に寂しいだろ。現実逃避する為とか、耐えられないから自殺する方が……まぁダメだけど、まだいいと思えるぜ。死を選ぶのと、死だけが残るのは違う」
「……」
「生きる理由とか、目的を決めろ。そうすりゃ、人間なんとかなるもんだからよ」
「でも、どうやって決めれば……」
「居るだろ。お前を助けてくれた恩人が。とりあえず、そいつに恩返しでもしてやれ。そんぐらい簡単な目先の事を今はやればいい」
「そうか……そうだな、ありがとう」
「と言うかなぁ!!俺掃除中なんだけど!?重いんだよ急に!やめろや!タイミング考えろ!後、そろそろ床掃除するから邪魔すんなよ!」
「ククク……すまない。なんでだろうな。そんな君だから話せたのかもしれない。殴り合った仲だからかな?」
「一方的に吹っ飛ばされただけなんだけど!?」
「じゃあ、頑張って。また今度、君にもお礼をしに行くよ」
「おい、テメェ!来たならせめて手伝えよ!話しに来ただけかぁ!?」
そう残して、風見は去っていった。
「……ったく、キャラ違いすぎるだろ」
そう、思わず呟いた。
理沙と風見。同じ隣人ではあるが、なんとも個性的な奴らに巡り会うもんだな。と、自分しかいない会場でため息を吐いた。
「む、完璧だな。汚れどころか埃一つない」
「姑かアンタは。粗探ししてる様にしか見えんぞ」
「そんな事はない。……だが、どうやっている?短時間でここまでとは……」
「言っただろ?両親が専門のプロで、俺はその二人から叩き込まれてるってな。掃除程度ならこんなもんだ」
エミヤが作業を終えたと同時にこちらも終わり、エミヤが確認作業を始めた。
と言っても触れて確認したのは数回で、後は見るだけで終わらせていたが。鷹の目って凄いんだな。
「代わりと言っちゃなんだが、料理だけはお袋が頑として譲らなくてな。経験が足りないから、普通に美味い程度のモノしか作れない。エミヤさえ良ければ教えるけど?」
「見返りにこちらの技術を、か。悪くないが、今日はもう遅い。またの機会だな」
そう言って立ち上がり、部屋を消灯した。俺も続いて部屋を出る。
「助かった」
「いいさ、また今度美味しいモノでもお裾分けしてくれ」
「ふっ、楽しみにしていろ」
「それじゃあ」
そう言って俺たちは別れた。
エレベーターに乗り、自分の部屋に向かう。
今日は偶々手伝ったけど、宴会みたいな事は結構あるのだろうか。
人付き合いの一環として手伝いに行くのは悪くないかも知れない。
そう思いながら、自分の部屋のドアを開ける。
ようやく、夜が更けた。
ソファーに持たれかかる。
時刻を確認すると、午前の3時を回っていた。
「深夜に何やってんだか……」
独り言が増えている自分にすら苦笑して、布団に倒れ込む。
着替えるのも億劫だ。今日は寝ちまおう。
ふと、目を開く。
銀髪の少女がすぐ隣で寝ていた。
偶々、召喚なんていうアニメの世界でしかないようなモノで呼ばれた存在。
彼らはサーヴァントと呼ばれ、人間とは違う何か。
最初は、何よりも困惑していた。
昨日、初めて出会った。
今日、初めて共に過ごした。
なら、明日からはどうなるのだろうか。
コイツの詳しい仕組みについて、もう少し知らねばなるまい。
そもそも、冊子にあった、魔術やら聖杯戦争なんてもんは初耳だ。
不安こそあるが、きっと。
楽しいモノになるだろうな。
そこまで考えを結論づけると、意識を手放した。
身体中を青い何かが駆け巡る。
不思議と気持ち悪くはない。
それどころか、新しい身体になったような爽やかさがある気がした。
青い何かが収束し、心臓から飛び出て。
隣の心臓に繋がった気がした。
拒絶されるなくラインが繋がる。
ヤマトの右手に、血のように赤い刻印が刻まれた。
令呪の三画が妖しく光る。
即ち、お互いがお互いの事を認めたことの証明。
ここに、白髪のマスターと銀髪のサーヴァント。
白銀主従の契約が結ばれた。
そして時は、しばし流れる。
二人が愛し合うまでの、泡沫の夢の始まり。
彼らの大騒動が止まらないのはこれからの話。
次からが本編。
やっと、色んなサーヴァント出せるぞぉ!!