執事一誠の憂鬱   作:超人類DX

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ある意味特徴とも言える執事の特性が発覚しちゃう回。

※閲覧注意。


酒乱大魔王の生誕

 一誠兄さま。

 僕が物心を付いた時から居る人。

 家族の皆以外とは決して喋ろうとせず、黙々とお手伝いさんと同じ仕事をするその背中。

 そして本気を出したお父様と戦う時に見せる獰猛な狂気の笑み。

 

 どちらの一誠兄さまを僕は知っているし、何よりどちらの一誠兄さまも大好きだ。

 でもね、僕にとって大好きになった瞬間はね――

 

 

『う、ま、まだ……やれる、よ……! だか……ら、やめないで……!』

 

『…………』

 

 

 今よりもっと小さかった頃、一人で黙々と鍛えている一誠兄さまともっと近付きたいからと、意を決して僕を鍛えて欲しいと頼んだ。

 でも、碌に鍛えてなかったその時の僕じゃ、手加減してても兄さまの鍛練に付いていける訳もなく、痛くて苦しくて泣きたくなる程ボロボロにされちゃった。

 

 でも僕はどんなに辛くても、兄さまとお話がしたい。

 仲良くなりたい……ずっと一緒に居たいという気持ちが強く、何よりも一誠兄さまに見捨てられる方が、痛い事よりも辛くて苦しいと思っていた。

 だから僕は僕なりに必死になって兄さまにしがみついた。

 

 

『強くなるから……! 今よりもっと強く、なるんだ……! 兄さまに認められたいから……!』

 

『……』

 

 

 冷たい目で僕を見下ろす兄さまに僕は動けない身体を無視してすがり付きながら、蹴り飛ばされても僕は意識を失うその時まで一誠兄さまにすがりついた。

 その時の兄さまが僕をどう思っていたかは、今でもよく解らない。

 

 でもあの時僕は確かに見たんだ――

 小さい声で、口の動きでしか分からなかったけど、確かに兄さまは言ったんだ。

 

 

『……。根性あんなこの餓鬼……やるじゃねーか』

 

 

 僕を認めてくれる一言を。僕をちゃんと見てくれる一言を。

 ふふ、今でも嬉しかったなぁ……。

 だってその次の日から兄さまはたどたどしくも僕に声を掛けてくれるようになったんだもん……嬉しくて、嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて――ふふふ♪

 

 

「一誠兄さま、一緒に寝ようよ!」

 

「はいはい……皿洗い終わってからな」

 

 

 僕だけの兄さまでずっと在って欲しいよ……。

 

 

「終わったぞ」

 

「行こ!」

 

 

 只でさえ、リアスお姉ちゃんや眷属の皆さんのお陰で兄さまと二人きりになれる時間は限られてるし、3日経ったら兄さまは人間界に戻ってしまう。

 そうしたら今度は夏の長期休みまでここには来ない。

 お父様と定期的に戦う為に来るけど、その場合は何時もココに来ないで帰っちゃうから、後3日の間は何がなんでも兄さまにくっついてるつもり。

 

 じゃないと、リアスお姉ちゃんやソーナ様やセラフォルー様に加えて、眷属の皆さんが一誠兄さまに『僕と同じ気持ちを抱いてしまう』可能性が大きい。

 特に……あの小猫って人だけは一番兄さまと自然に触れ合ってるから……いやらしいけど僕はそれが気に入らない。

 

 

「お前もそろそろ一人で寝たらよ? いい加減俺が居る度に一緒に寝て欲しいってのも変だろ?」

 

「そんなことないよ。だって僕、一誠兄さまが大好きだもん」

 

「いやそれ答えになってねーけど」

 

 

 

 

 シトリー家の訪問は、両家同士の親睦をより深めるという効果が勿論ある訳だが、その他としては、悪魔社会の未来を担う若き娘同士が切磋琢磨し合う……というのも目的としては含まれている。

 そして何よりの理由は、その両家の繋がりをある意味さらに深めた一人の人間の少年と娘二人……と隠しルートとして長女の仲をお節介にも深めさせるというのも含まれていた。

 

 そしてそんな時に決まって起こるハプニングも、親睦会の醍醐味であった。

 

 

「ひひひひひひひひひひ!!!」

 

「だ、誰ですか一誠にお酒なんて飲ませたのは!!」

 

「すまん、私がジュースだと思って飲ませてしまったみたいで……」

 

「そう言っておきながら、何で笑ってるのですかお父様!! 一誠はお酒に物凄い弱いのに!」

 

「ちょっと大丈夫イッセーくん?」

 

「ひぇひぇひぇひぇひぇ!!」

 

 

 夕食会の席。

 人数が人数なので、立食系の形にしていたこの夕食会では両家両眷属がほぼ無礼講気味に軽いどんちゃん騒ぎをしていた。

 その中を、燕尾服姿で黙々と仕事をして参加しないつもりだった一誠が居たのだが……。

 

 

「ほら一誠くんも一口飲みなさい。まあ、ジュースだけど」

 

「…………。どうも」

 

 

 セラフォルーとソーナの父親――現シトリー家当主が働いてばかりの一誠に気を利かせたつもりで飲ませた飲み物が……。

 

 

「………………ひっく!」

 

 

 ワインだったらしく、ちょっと喉が乾いていたのもあってか、イッキ飲みをしてしまった一誠は瞬く間に変貌してしまった――というお約束みたいな事があったのだ。

 

 

「ケケケケケケケケケケケ!」

 

「い、一誠兄さまが……」

 

「上半身裸になりながら床に転がって笑ってます……」

 

「そういえば前もこんな事がありましたね……」

 

 

 真っ赤な顔をしながら、何がそんなに面白いのかケタケタと床に転げ回りにながら笑い続ける一誠に、初見の眷属達は唖然となり、そうで無いものは以前の事を思い出して苦笑いを浮かべている。

 どうも一誠はアルコールに弱い下戸らしい。

 

 

「ふ、普段が普段だから不気味だな……。あ、でも会長に介抱されてるのは羨ましい……」

 

 

 想い人の想い人の普段ならあり得ない姿に兵士の少年も、複雑な表情だ。

 

 

「な、なんでサーゼクスに勝てねぇんだよぉぉ……! 毎日毎日修行してもおいつちゅけないぃ……」

 

「あ、あら……泣いちゃったわ」

 

「……。な、何だかグッと来ますね……」

 

「普段が普段だから余計にだよね。サーゼクスちゃんはケタケタとイッセーくんの事笑ってるけど」

 

 

 完全な泣き上戸状態で床に転げ回る一誠に、リアスとソーナとセラフォルーは、起き上がる気配の無い一誠を起こそうと手を伸ばす。

 その表情は幻滅の類いは無く、寧ろ感情剥き出し状態になってるという意味でそれぞれの母性をコチョコチョとされている様子だ。

 

 

「ほらイッセーくん、ここで寝たら風邪引いちゃうよ?」

 

「や」

 

「それに上半身裸も身体によくないわ、ほら、ちゃんと着なさい」

 

「や!」

 

「それならお水を飲みなさい」

 

「やーだー!!!」

 

 

『…………』

 

 

 こ、子供……? 無愛想な冷酷殺人マシーンと言われていたあの日之影一誠が、まるで玩具を買ってくれない親にねだる子供みたいにジタバタと転げ回ってる姿に眷属達はキュンキュンするもの二名、一誠くんも人間だもんね……やっぱり友達になりたいなぁと思う男子一名。残りはドン引きするという比率でただ見守るしか出来ないでいた。

 

 ちなみに両家の親達は『結果オーライですな』だの『若いって良いわねぇ』だのと勝手に盛り上がっており、魔王に至っては『グレイフィアもたまにああなるよね、可愛いけど』と自分の嫁を赤面させてリア充っていた。

 

 

「うぅ……」

 

「取り敢えず寝かせましょう。ソーナ、一誠を部屋に運ぶのを手伝ってくれない?」

 

「ええ、お姉様も良いですか?」

 

「うん勿論」

 

 

 バタバタと暴れる一誠を捕まえ、部屋に押し込んだ方が良いと判断したリアスにより、ソーナとセラフォルーも一緒になって一誠を抱えようと無理矢理立たせた。

 しかし――

 

 

「……………………………」

 

「わ、イ、イッセーくんの目が据わってる……」

 

 

 左右にリアスとソーナ。真正面にセラフォルーがアシストしようと一誠の前に立って表情を覗いた所、どうやら愚だ撒き精神退行状態から次の段階に入った様で、今度は目が据わった状態でジーッとセラフォルーを睨んでる様に見据えている。

 思わず一瞬狼狽えてしまったセラフォルーだが、仮にも年上で毎度毎度適当な扱いやら変な服装だと一誠に軽く見られてるものの、魔王なことに変わりは無く、少しくらいは年上の威厳を見せてやろうと一誠に手を伸ばした――その時だった。

 

 

「んぐむぅっ!?」

 

「「なっ!?」」

 

『!?』

 

 

 据わった目をしながらセラフォルーを見据えていた一誠が、左右の二人を振り払い、何を思ったのか……そのままセラフォルーを乱暴に抱き寄せてしてしまったのだ……。

 

 

「んむー!? んむゅー!?」

 

「……………」

 

 

 公開チッスを。しかもヤバイ方のを。

 

 

「ま、まってイッセーくん! だ、ダメ……んぁ!?」

 

 

 流石にこれには全員が驚愕し、セラフォルーも一誠から離れようともがくが、意識がすっ飛んでるのと対サーゼクスの為に鍛え上げ続けた人外身体能力がセラフォルーを逃がさんと背中と後頭部に手を回し、引き続きやらかし続ける……。

 

 

「んっ……んぐ……は……ぁ……」

 

「ちょ、ちょっとお姉様……!?」

 

「ど、どうでも良いけど、一誠ってさくらんぼの茎を口の中で蝶結び出来るのよね……と、ということは物凄いのかしら?」

 

 

 止めるに止められない二人の公開チッスに、徐々に抵抗を止め、寧ろ一誠の背に腕を回し始めたセラフォルーにソーナは段々腹が立ち、リアスは以前一誠がさくらんぼの茎を舌で蝶結びにして見せた事を思い出し、あの二人の口内の様子を夢想して赤面をしていた。

 

 

「も、もっと……もっとちょーだいイッセーくぅん……!」

 

 

 そんなリアスの夢想はほぼ当たっていたようで、徐々に抵抗をしなくなった後は、完全に女丸出しの表情になったセラフォルーが一誠に抱き着きながら、健全な青少年の劣情を刺激しまくりな声で逆におねだりを始めていた。

 しかし一誠はそんなセラフォルーをパッと離し、その場にへたり込ませると――

 

 

「ちょ、ちょっと待って一誠!? こ、こんな所じゃなくてもっと雰囲気の良い――んんっ!!?」

 

「リ、リアス!? と、ということはわた――ふみゅ!?」

 

 

 近くに居たリアスとソーナにも同じことをしでかす。

 それもかなり乱暴にだ。

 

 

「ひっひひ!!」

 

『!?』

 

 

 そして極めつけは、三人が腰砕けとなって立てなくなった後、次は貴様等だと言いたげな笑みをこの場に居た全員に向け始めた。

 どうやら一誠は完全に酔うと極度のキス魔になるらしく――

 

 

「み、皆逃げなさい!! 一誠はどうやら完全に酔うとキス魔になるみた―――んむむー!?」

 

「特に済ませていない女性や男性は全力で逃げなさい!! でないと――んみゅー!?」

 

「ヴェ、ヴェネラナ! ――んぶ!?!?」

 

「ち、父上もだなんて本当に見境なし!? 逃げるよグレイフィア!」

 

「ま、待ってください! ミリキャスは――あ!? あの子ったら自分で一誠の所に――」

 

 

 性別とかも関係なしに誰彼構わず……平等に襲いかかるのだった。

 特に祐斗や元士郎は死ぬ気で逃げ出し、女子もまた小猫や朱乃等を除いて全力だった。

 

 

「えへ、いっせーにーさま♪」

 

「あひゃひゃひゃひゃ!!」

 

「んんっ……!? ぁ……いっせーにーさまぁ……」

 

 

 その中には自ら進んで唇を差し出す猛者も居たりする訳だが……。

 とにかくこの大惨事に、一部を除いて殆どが思った。

 

 

『彼に酒はNG』

 

 

 だと……。

 

 

 




補足
※お酒は大人になってから。


と、いう訳で酒に極端に弱い一誠くんは、酔うと見境なしのキス魔に変貌してしまう。

それこそシトリーのおっちゃんやらグレモリーのおっちゃんやらも無関係に。
そしてさりげにヴェネラナさんとシトリー母さんもやられました。

サーゼクスさんとグレイフィアさんはギリッギリで逃げられましたが、匙きゅんと木場きゅんに関しての事実は闇の中へ……。



お陰でこんな形で初チッスになっちまったのは、セラフォルーさん、ソーナさん、リアスさん………………そしてミリキャス等々――ほぼ全ての少年少女達。

あぁ、うん……勿論ソーナさんの兵士くんとかリアスさんの騎士くんとかとかとかもね。


ミリキャスの性別に関しては……まぁ、タグで大体お察しで。

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