執事一誠の憂鬱   作:超人類DX

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初めて戦いを挑み始めて早10年強。

執事くんの戦績は――


魔王に連敗してメンタル総崩れな執事

 結論から言おう。

 

 

「……? ミリキャスが昼寝したいと言ってたから付き合ったのに、アイツ何処行ったんだ?」

 

「うん、あの子ならグレイフィアに今お仕置きされてるよ」

 

「は? まさか何かサボったのか?」

 

「いやー……そういう訳じゃないんだけどねー」

 

 

 ミリキャスのタガと一線は完璧に越える直前で母のグレイフィアによって阻止され、そのまま大目玉を食らう事で事なきを得た。

 一誠は最後まで真実は知らないものの……。

 

 

「ごめんなさい……グスッ……にいさま……ごめんなしゃい……エグッ」

 

「お、おう……? お、おいグレイフィア? 何したんだよ?」

 

「……。姑息に抜け駆けをする子に育てた覚えは無い。そういう事よ」

 

「は、はぁ……いや、分かんない。だから何が?」

 

 

 姑息という言葉を使うグレイフィアの言ってる意味すらわからず、メソメソ泣いてるミリキャスが微妙に可哀想に思えたものの、余り深くは聞いちゃならないと何と無く予感し、取り敢えず不器用ながらも泣いてるミリキャスを慰める事でこの話は終わった。

 

 

「さてと、ちゃんと帰って来てくれたのだからやらないとね?」

 

「チッ、煩い奴等の目が鬱陶しい」

 

「良いじゃないか。どうせ戦えば気にしなくなる」

 

 

 そしてそのまま翌日となり、滞在最終日に両家の面子が見守る中始まる、魔王と後継者候補の戦い。

 

 

「ヌォラァッ!!」

 

「おっとと、また力強くなったね一誠!

だけどまだまだ甘いよ! 僕もそれなりに平和ボケしてるつもりは無い!!」

 

「ぐごっ!」

 

 

 何百と張った特殊な障壁内での全力の戦いは、まるで戦争を思わせる規模の派手な戦い。

 

 

「さあ、掻い潜れるか一誠っ!?」

 

 

 サーゼクスはその超越者と呼ばれる力をフルに使い。

 

 

「嘗め腐ってんじゃねぇぞヘボ野郎がっ!!」

 

 

 一誠はその人外と呼ばれる異常性を全開に。

 

 

「見るのが初めての者はよく目に焼き付けなさい。

あれが一誠……勝手に冥界の誰かが広めた馬鹿らしい話が所詮デマである証拠よ」

 

「そ、そう……みたいっすね……は、はははは……」

 

「す、凄い……魔王様を殴り飛ばせる人が本当に居たなんて」

 

 

 

 

「あぁ……まだだ、まだ終わってねぇぞサーゼクスゥ……!」

 

「ふふふ、ははは……! 本当に安心院さんの言うとおりに成長してくれたね一誠。

良いよ……お前のその成長に対して僕も悪魔としてのサーゼクスじゃなく、彼女の半分としてのサーゼクスでやらせて貰おうか!」

 

 

 種を超越した悪魔と人外は、血まみれになろうともどちらが倒れるまで戦いを止めない。

 

 

悪逆夢道(ザ・リバース)。僕の受けたダメージ全てを反転させる」

 

「なっ!? ぎぃっ!?」

 

「誰かに皮肉を込められて呼ばれた反転院という名称。

来なよ一誠……お前の成長に敬意を表して今からの僕はお前と同じ土俵に上がって戦うぜ?」

 

「や、やっと引っ張り出せたと思ったのに……クソ、がっ……!」

 

 

 そして勝ったのは……反転院と呼ばれし悪魔の人外だった。

 

 

「よーっし! まだまだお前の兄としての面子は保てたよ!」

 

「クソッタレがぁっ!! クソォ!!」

 

 

 そしてまたしても負けた一誠は、リアスやソーナ達に慰められながら人間界へと帰還する。

 

 

「ま、また負けた……負けてしまった……くくくくっ!」

 

「部屋の隅っこで笑いながら体育座りしてますけど……」

 

「良いのよ、帰るまでそっとしておきなさい」

 

 

 

 

 

 まさかミリキャス様が一誠先輩に対してだけはあんなに見境無しになるなんて――

 

 

「一誠先輩は居ますか?」

 

「おおっ、小猫ちゃんだぞ!」

 

「スゲー!! ウチのクラスに小猫ちゃんだぜ!!」

 

 

 いえ、もしかしなくても何と無く予想できてた話でしたね。

 まさか本当にあんな事まで実行しようとするとは思わなかっただけで。

 

 

「あ、はいどうも。それで一誠先輩は?」

 

「えっと、一応聞くけどどっちの?」

 

「可愛い方のですけど?」

 

「か、可愛い?」

 

 

 所詮外様でしか無い私はこうして稼ぐしか無い。

 そう思ったからこそ私は人間界で学校生活に戻ってからは、先輩と一緒に何でも良いから同じ事をしたいと、お昼ご飯の時間になれば先輩のクラスを訪ねる。

 どっちと先輩と同じクラスの先輩の方が察してる癖に微妙に嫌そうな顔をするのがムカッとしたけど、私は堂々と部長の周囲をチョロチョロしてて意味が解らない兵藤イッセーじゃなく、実は子供っぽくて可愛い方の一誠先輩だと言いながら、窓際の席で私に気付いてる癖に他人のフリをしようとしてる先輩の元へと近づき、一緒に食べましょうとお誘いする。

 

 

「…………」

 

 

 しかし無視だった。

 冥界プチ里帰り中の際、それなりに距離感が縮まったと思っていたが、戻れば何時もの沈黙無口状態。

 

 

「あのやろ……! 小猫ちゃんの事を無視するなんて良い度胸してやがるぜ!」

 

 

 そのせいでヘイトが一気に一誠へと向けられるが、本人は全く気にしてない顔で平然としており、また小猫も一々騒ぐだけの先輩方に『ほっといて欲しい』と思いつつ、徐に席から立って教室を出ていく一誠の後ろにチョコチョコと追い掛けるのだった。

 

 

「すいません先輩」

 

「………」

 

 

 旧校舎裏。

 陽が差しにくい、何か怖い、告白したらほぼ失敗しそう等々、あまり宜しくない噂だらけの旧校舎裏にまで一人やって来た一誠と、その後をちょこちょこと付いてきた小猫。

 一体何をするのか? という怪しさがあるが、何て事は無い。

 

 

「…………」

 

「食べないんですか?」

 

 

 旧校舎の壁に背を預けて座り込み、そのまま寝ようとし始める。

 小猫の問いにも答える事無く、そのまま放課後まで眠るつもりなのか、目を閉じ始める一誠に小猫は『むぅ』と答えてくれない事にちょっと残念そうに唸るが、それならそれで良いやと眠る一誠の隣に腰かけてパクパクと持参したパンをかじる。

 

 

「良いお天気ですね先輩」

 

「………」

 

「あ、そういえば部長がギャーくんを今日から外に出すって言ってましたよ?」

 

「……………」

 

「例によって先輩はギャーくんとも一切話した事無いですけど」

 

「………………」

 

 

 …………。うるせぇ。

 基本口を聞こうとしない一誠は、頼みも許可もした訳じゃないのにわざわざ付いて来た挙げ句、横で勝手に話してる小猫に内心毒づいていた。

 

 冥界での一件以来、話したって答えが返ってくる訳じゃないのを知ってる癖に、ガン無視しても勝手に話し掛けてきたり、今みたいに付いてきたりと、最近の小猫の意味のわからない行動に若干戸惑ってたりする一誠は、今も何が楽しいのか、返っても来ないと分かってて話しかけてくる小猫を無視して眠ってしまおうと努める。

 

 リアスの眷属では一番古参の朱乃よりも更に前から既にグレモリー家に居た一誠は、既に小猫が何故眷属になったのか、そしてその背景に何があったのかを聞きたくもないのにリアスから教えられたのである程度は把握してる。

 しかしそれは所詮他人は他人と思い続けてる一誠にしてみれば関係の無い話であり、所詮は弱い小猫達に何を言われても雑魚の戯言だと付き合うつもりも無かった。

 

 だからこそこの小猫も含めた眷属達はこれまで一誠との距離感が縮まることも無かった筈なのに……。

 

 

「鐘鳴っちゃいましたね……」

 

「…………」

 

 

 最近は無視しても勝手に話し掛けたり付いてきたりが多すぎる。

 今だって、午後の授業が始まる予鈴が鳴ってるにも拘わらず、鳴っちゃいましたねと言うだけで教室へと戻る事もせず、サボるつもりで居る一誠の隣にちょこんと座り続けてる小猫に、内心何がしたいのか解らない一誠。

 

 

「……………」

 

「このまま寝たら身体に悪いですよ? あ、でも先輩なら平気でしたね」

 

「…………………………」

 

「でも寝づらいと思いますよその格好だと」

 

「…………………………」

 

 

 早く帰れよ。

 内心思って無視し続ける一誠の心を知ってか知らずか――いや恐らく知ってる上で帰ろうとしない小猫にいい加減一発殴って追い払ってやろうかと思い始めた一誠。

 しかしそれをやったらリアスとヴェネラナが煩いのもあるし、何より使い物にならなくなったらお荷物になるだけだと自分に言い聞かせて自重した一誠は、このまま本当に寝てしまい、この横で喧しい餓鬼の戯言を完全シャットアウトしてやれば良いじゃねーのとどこぞののび太並みの昼寝技術を駆使して一気に眠りモードに入り出した。

 

 

「………Zzz」

 

「先輩?」

 

 

 それを横で健気にも話し掛け続けていた小猫は、それまで呼吸の音すら聞こえなかったレベルで無口だった一誠から規則的な寝息が聞こえ始める事で話すのを止め、おっかなびっくり気味に一誠の顔を覗き込んでみる。

 

 

「…………先輩」

 

「Zzz」

 

 

 無口モード時の機嫌そうな表情では無い、険の取れた寝顔を見せる一誠に小猫は話せなかったと思う反面、その寝顔を見れた事に妙な満足感を覚えた。

 

 

「Zzz」

 

「そういえば、気絶してる先輩は見たことあるけど、普通に眠ってる先輩は初めて見るかも……」

 

 

 何せ相手は一誠。

 壁作りまくりで、決まった相手としか話そうともしない気むずかしいを通り越した天然記念みたいな男。

 そんな男の無防備にも見える寝顔を見れば、朱乃や祐斗………そして話にも出たリアスの僧侶にて現在この旧校舎の地下で引きこもり生活をしているギャスパーにしてみれば激レアなのだ。

 

 しかも見れたのは自分だけともなれば、妙な優越感にも浸れたともなれば小猫のテンションは結構上がるし……。

 

 

「あ……」

 

「Zzz」

 

 

 寝ると意外と寝相も悪いという事実も発覚――つまり、壁に背を預けて寝ていた一誠の頭が横にズレてそのまま隣に座ってた小猫の肩に乗ってきたともなれば、最近一誠のその無愛想な態度やら言動含めて可愛いと思えてる小猫からすればテンションが鰻登りである。

 

 

「先輩……」

 

 

 自分の肩に預けてきた一誠にドキドキする小猫。

 一誠からすれば、喧しいから寝て無視したに過ぎないが、ポジティブな考えをしてしまえば、それだけ小猫を敵とは思ってなくて安心して眠れるという意味にも取れなくもない。

 だからこそ小猫は身を寄せてきた一誠をそのまま受け止め、何とも言えないきゅんきゅんする気持ちを何とか抑えつつ……。

 

 

「こうした方が楽ですよ先輩」

 

 

 ソッと起こさないように細心の注意を払って一誠の頭を自分の膝に乗せるのだった。

 

 

「お、おぉ……夢じゃない……」

 

 

 ただ一誠とお昼を一緒にしたかったと思ってた小猫に訪れしまさかの確変。

 本当にスヤスヤと寝ている一誠を、本人の許可も何も無いとは云え、膝枕をしてあげられているというこの状況に一種の感動と、無いと思っていた己の中の母性本能が全開で擽られまくる。

 

 

「も、もう午後の授業なんてどうでも良いですよね? だって一誠先輩を起こしたら可哀想ですし……!」

 

 

 こんなチャンスこの先にあるかも解らない。

 故に午後の授業をアッサリとサボる宣言を一人した小猫は、グースカと膝の上で寝ている一誠を実に母性的な微笑みを浮かべながら見つめ続ける。

 

 

「お、おぉ……先輩をまた撫で撫で出来ました」

 

「………Zzz」

 

 

 そして沸き上がる欲に抗えない小猫は、そのまま撫で撫でと頭を撫でたり、頬を撫でてみたりと愛でられるだけ愛でまくり……

 

 

「………………。こ、この前酔っぱらった先輩からしてきたし、良いですよね?」

 

 

 やがてそれにも満足できませんと、急に辺りをキョロキョロと見渡し始め、誰に対してなのか解らない言い訳じみた台詞を一人呟くと……。

 

 

「ちゅ……ん……ちゅる……あむ……!」

 

「……ぐぬ……!」

 

 

 寝てる一誠の顔へと寄り、何かをし始めた。

 

 

「っ……んぅ!」

 

 

 何かをした瞬間、ビクンビクンと小猫の身体が痙攣する。

 

 

「だ、だめ……! せ、せんぱいが起きちゃう……!」

 

「ぅ……ん……」

 

「はぁ、はぁ……こ、この前の時よりすごいのが……きた……ぁ……!」

 

 

 一体何なのか……。顔は真っ赤に上気し、涙目になって息まで切らせてる小猫にしかそれは解らないし、一度眠りに入ると割りと深くて何をされてもほぼ起きない一誠が起きずにされてる事もわからないのは多分幸運かもしれない。

 

 

「も、もういっかい……もっと、もっと……はぁ、はぁ……いっせー……せんぱい……!」

 

「う……ぐ……ぬ……!」

 

「起きたらごめんなさい……はぁ、ぅ……起きたらごめんなさい……!」

 

 

 されてる事がぶっちゃけミリキャスよりマシだとしても………アレなのだから。

 そして時が流れて放課後――

 

 

 

「小猫とサボったみたいだけど……ひとつ聞いて良いかしら?」

 

「ひゃ?」

 

「……………。何で首筋にだけそんな虫刺されみたいになってるのかしら? それに呂律がおかいしけど……」

 

「ひはへーほ、ほひははひははひびれちぇ……(知らねーよ、起きたら舌が痺れてて)」

 

「…………。小猫? ちょーっとお話しましょ?」

 

「………………。こ、後悔なんてしてませんからね!」

 

 

 虫刺されみたいな跡が一誠の首筋――いや、よく確認したら胸元にまで大量発生し、異常なまでに舌が疲れて呂律が回ってない事に割りと戸惑う一誠を見たリアス……そして朱乃と祐斗は、何故か下だけジャージズボンを履いて顔真っ赤な小猫にお話を聞く必要があると呼び出すのだった。

 

 

「一誠先輩は半端無いです。前にさくらんぼの茎を舌だけで蝶結びしてその上に固結びまでしただけあって、物凄かったです……!」

 

「ね、寝てる隙になんてズルいわよ小猫ちゃん!」

 

「……。寝たら基本的にされるがままになる一誠は気づいてないみたいだから良かったけど、バレたら怒られるわよ小猫?」

 

「そ、それでも良いです。寧ろ蹴り飛ばされでもしたらそれはそれで……」

 

「と、塔城さんがおかしくなっちゃった……」

 

 

 反省はしてるけど後悔は無いと言い切る小猫。

 結局コントの如く一誠は気付かなかった様だが、それでもやってることは何気にズルいので、朱乃は普通に嫉妬し、リアスは呆れ、祐斗は男故に使えない手に歯噛みするのだったとか。

 

 ちなみに――

 

 

「お、お久しぶりです一誠さん。

その……引きこもっててごめんなさい……。やっぱり僕怖くて……」

 

「…………」

 

「で、でもリアス部長に言われて今日から頑張りますから……!」

 

「………」

 

「だ、だから……僕が強くなったら、認めて欲しいなぁって……えへへ」

 

「…………………………。期待はしねーぞ、この軟弱が」

 

「っ!? あ……い、今一誠さんが……! あ、あは♪ 今僕に喋ってくれました!!」

 

 

 怖がりで引きこもりだけど、実は一誠にだけは若干勇気を出そうとしている封印解かれのギャスパーは、吐き捨てるような台詞を声に出して言われた瞬間、何故か先程の小猫みたいにビクンビクンしながら頬を染めていたのだという。

 

 

終わり




補足

0勝。
現時点で倍じゃ利かないレベルの差があるので文字通り子供扱いされます。

その2

ミリキャスきゅんorたんがやらかしてグレイフィアお母さんにお尻ペンペンされた理由を知った小猫たんは、最初はそんなつもりも無かったのに、たまたまスヤァし始めた一誠の寝相の悪さが祟ってついゴーした。


そしてさりげにギャスパーきゅんが解放されたのですが、これもまた一誠を事前に知ってるので怖がることは少ない――

いや、寧ろ驚くほどに一誠を怖がらないし……。



あ、ギャスパーきゅんなのかギャスパーたんなのかは、またまたご想像に……。
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