執事一誠の憂鬱   作:超人類DX

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お察しの通り、時系列がグチャグチャです。

夏休みは終わってますがまだアレも無いこれも通過してません。

まあ……こんな修羅共だし何の問題も無いし、寧ろ対人関係的なものが大変だったり……。



爆発する執事

 リアスとソーナのデビュー戦となった先日のレーティングゲーム。

 その内容はソーナとの一騎討ちによるドローという結果だったが、若き女性悪魔のその強さは多くの悪魔達に認められる結果であった。

 

 そして求婚する者達もまた……。

 

 

「次のレーティングゲームなのだけど、どうやら向こうが勝ったら私と婚約して欲しいという要求付きらしいのよ」

 

「何ですかその条件? ちなみに相手は?」

 

「えーっと、誰だったかしら………そう、フェニックス家の三男よ」

 

 

 割かし平和な日々とは裏腹に、鬼畜執事の鬼畜な扱きにより強さを然り気無く進化させているリアス・グレモリーは、この日の部活動に集まったメンバー達に次のレーティングゲームの日取りについて話をしていた。

 

 そのメンツの中には、物凄く淡々とした顔をしてる人間の男子がソファーに座るリアスの後ろに控える様にして直立不動をしている。

 

 

「三男って確か名前はライザーでしたっけ?」

 

「あー……そんな名前だったわねぇ。

お話とかした記憶も無いから覚えてなかったわ」

 

「かなりの女好きで眷属も全て女性で構成させてるみたいですよ? ほら」

 

「あらホント、それで私に勝ったら婚約を結べって……ちょっとどころかかなり嫌ね」

 

 

 テーブルに並べられる次の対戦相手についての資料を全員で読み回しをしながら、ライザー・フェニックスなる悪魔の実態を掴んでいくリアス達。

 どんな人物かだとか実力だとかはさて置き、どうやら全員して油断無く勝ちに行く気満々な様子だ。

 

 

「一誠は知ってる? 次の私の対戦相手について」

 

「俺が知るわけ無いだろ」

 

「それもそうね、お兄様以外は基本眼中に無いしアナタって」

 

「ふん」

 

 

 放課後になったら基本的に燕尾服を着ろと無理矢理グレイフィアに押し付けられて仕方なく執事姿になってる一誠が、どうでも良さそうに資料の束を見つめてる。

 

 

「彼に負けたら婚約を結ぶらしいけど私……」

 

「あ、そ。そんなの負ける方が悪い。

まぁ、仮にそうだとしても向こうから『やっぱり良いです』と言われるのがオチだろうが」

 

「む、それはどうしてかしら?」

 

 

 ムッとするリアスに一誠は白手袋を嵌めた手をヒラヒラと振って半笑いで答える。

 

 

「お前みたいなド級のワガママ女に夢見て、実態知ったらその夢も即ぶち壊されるのがオチなんだって言ってんだよ。

へ、この男も一体リアスの何を見て良いと思ってるのやら」

 

 

 グレモリー家のお嬢様相手に向かって平然となじる一誠は寧ろライザー・フェニックスを哀れんでいた。

 

 

「大方見た目なんだろうが、見た目が良かったら何でも良いで世の中罷り通れば苦労はしないだろうよ。あーぁ、可哀想にこの悪魔も……」

 

「そ、そこまで言う!? 私別に我儘じゃない――」

 

「風呂入れば髪洗えだの、身体洗えだの、マッサージしろだの、寝ろと言えば寝付くまで絵本読めだのだのだのだの!! ……………これで我儘じゃないならなんだ?」

 

「そ、それはほら……一誠にしか言えない事ばかりだから……」

 

「そんな奴に年上として礼を持て? はっはっはっー……………甘いもん食い過ぎて最近贅肉がここに付いてる女の言うことは違うなぁ!? ええっ!!」

 

「いたたたたぁ!?!? お、お腹をつねらないでよ!!」

 

 

 悶絶するリアスの脇腹をつねりながら一誠はそれなりに運動させてるのにも拘わらず、甘いものを食べ過ぎて若干お肉がついてるリアスを叱咤する。

 

 

「ブクブク太って豚になったらテメーは只の豚女だ、わかったかお嬢様よぉ……!」

 

「わ、わかったわよぉ……。

うぅ、最近発売されたデザートがどれもこれも美味しいのが悪いのよ……」

 

「食い物のせいにしてんじゃねーぞボケ!」

 

 

 リアスとソーナの個人的なレベルを引き上げてみてはどうだろうかというサーゼクスの話を受け、スキルの使い方から戦い方までを毎日叩き込んでる一誠から見て、一応二人の戦闘力が進化してるのは認める。

 だがそれは所詮サーゼクスに比べたら蟻と宇宙怪獣程の差の開きであり、とっととサーゼクスクラスになって自分の進化の糧になって欲しい一誠としてはもどかしい。

 

 

「テメー、もしそんなボンクラに負ける様なら、これまでテメー等に費やした時間を全て返して貰うからな……!」

 

「わ、わかったわかったから。

も、もう……一誠ったら女の子の身体に触れたいからってそんな難癖つけて来なくても――」

 

「…………………あ゛?」

 

「ごめんなさい、冗談だからそんなゴミを見るような目をするのはやめて……」

 

 

 執事一誠からの脱却はまだまだ遠い。

 

 しかし一誠はこの時知らなかった。

 まさか自分がそういう立場になる事になるとは……と。

 

 

 その時は三日後であり、グレイフィアにいきなり呼び出された時に始まった。

 

 

「リアスお嬢様から聞いてるわよね? 次のレーティングゲームの相手について」

 

「あぁ、女の趣味がべらぼうに悪いボンボンだったか?」

 

 

 電話で呼び出された一誠はグレモリー家にやって来ていた。

 

 

「ライザー・フェニックス様よ一誠。

その口調は本人の前では一応やめなさいよ?」

 

「は? おいまさか会うのか?」

 

「そうよ、今日御本人の希望によりお嬢様に挨拶に行くらしいから、私と一誠は仲介役として同行するの」

 

 

 サーゼクスの嫁さんな事だけあって、シレーッと一誠を巻き込む気満々のグレイフィアは、ほらとグレモリー家の家紋が胸元に刺繍された燕尾服を渡す。

 

 

「今すぐ此処で着替えなさい」

 

「ふ、ふざけるなよ!? 何で俺が金持ち悪魔どものやり取りに入らないといけないんだよ!!」

 

「だってアナタは立派なグレモリー家の一員でしょう? あ、これ言うとセラフォルーに怒られちゃうからグレモリー家とシトリー家と訂正するけど」

 

「俺は人間だ! チッ、クソが! サーゼクスのバカさえぶちのめしてりゃあ今頃こんな所…………出てけよ! 着替えりゃ良いんだろ着替えりゃ!!」

 

 

 親しい者相手だと強気というコミュ障にありがちな荒れ方をしつつも決して物には当たらず、紙袋を渡してきたグレイフィアからひったくる様に受けとると、ブツブツ文句を言いながらも着替える。

 

 

「ちくしょう……」

 

「小さい頃と比べるとずいぶんとサマになったわね。ふふ、お姉ちゃんは嬉しいわ」

 

「誰がお姉ちゃんだ! 第一テメーにゃあのド変態の実弟が……」

 

「あぁ、居たわねそんなの。

遠い昔に張り倒してやってからは記憶から抜け落ちてたわ」

 

「……」

 

 

 グレモリー家でも完璧に認められた者しか袖を通す事を許されない家紋付きの燕尾服へと着替えた一誠が、軽くグレイフィアにからかわれてふて腐れながら転移魔法でその場から共に消える。

 

 今頃部室でのんべんだらりとやってるリアスを思うと軽く尻でも蹴り飛ばしてやりたくなる思いしかしないが、無理矢理逃げたとしてもヴェネラナを召喚されたらまず逃げられないので大人しく従う他ない。

 

 

「おい、ババァは俺が居る事を知らないんだよな?」

 

「私は何も言ってないわ、ミリキャスにもね。それがどうかしたの?」

 

「いや……あのババァ、ババァの癖に最近妙に強くなってる気がするから……」

 

「それはミリキャスに残したアナタの組んだトレーニングメニューを一緒になって毎日こなしてるからよ。ホント一誠の考えた無茶苦茶な修行メニューは凄いわよ? 私もやってるんだけど、強くなってる感覚がちゃんとするもの」

 

「お前もかよ……。

クソ、これが人間と悪魔のフィジカルの差って奴か」

 

 

 姉だと? ただのオバハンの間違いだろ? と言い掛けたのを何とか我慢しつつ初めて来たフェニックス家の城の中を歩くグレイフィアに付いていく一誠は、これから初めて見る悪魔に絶対何か言われることを含めての大きなため息を漏らすのであった。

 

 

 

 ライザー・フェニックスが人間界に来るという事で一応の準備をして来た訳だけど、やっぱりというか何というか……予想通りの性格をしていた。

 

 

「純血悪魔の数も先の戦争で減っている。

絶滅を防ぐにはやはり純血同士による結婚は不可欠なんだ。それはリアスだってわかるだろう?」

 

「ええっと……言いたいことはわかるのですけど、何故に私? もっと他の相応しい相手にしたら良いんじゃありませんか?」

 

 

 こんな事言いたくないけど、純血の未来を愁いてますな態度で力説してるのとは裏腹に、このライザー・フェニックスの視線が、胸だの脚だのに向いてるのよね。

 自意識過剰と言われたらそれまでなのかもしれないけど、一番見て貰いたい男の子があんまりにも見なさすぎてたら逆に解るというか……。

 

 その本人は不機嫌な顔してグレイフィアと一緒にグレモリー家の紋章があしらわれた執事服を着て気を付けの姿勢だけど。

 

 

「結婚相手等は自分で見つける主義ですので。それに私は自分より強い方が好きですから」

 

「では俺がキミより強いと証明できたら婚約してくれるんだな!?」

 

 

 ……。さっきから百は殺せるくらいに隙だらけなのに、何でこの人は私に勝てるつもりなのだろう。

 一応これでも一誠に毎日毎日ぼろ雑巾にされながらも鍛えてるつもりだからそれなりの自信はある。

 

 それに比べて彼は何なの? データを見るにレーティングゲームでは連勝してるみたいだけど、それは彼が不死という特性を持つフェニックスで、ごり押ししてるからだからというのに。

 

 不死ではあるけど不滅ではない彼の自信は一体何処から沸いて来るのだろうか……。

 

 

「やはりレーティングゲームでの勝敗でお決めになられるべきではないかと」

 

「えーっと、そうね……うん、私はそれで良いわ」

 

 

 グレイフィアも若干呆れちゃってるし……。

 

 

「では日取りは後日改めてお二人にお伝えする事に致しますが、リアスお嬢様はもしもライザー様に勝利した場合、何を望まれますか?」

 

「え?」

 

「え? じゃあございませんライザー様。

アナタ様はリアス様にゲームで勝利した場合婚約をご希望されている。ならばリアス様が勝利した場合の望み――謂わばアナタ様にとっての代償を支払わなければ筋が通りませんこと?」

 

「あ……そ、そうでしたね。うん、リアスはもし俺に勝ったら何を望むんだ?」

 

 

 望み? 別にアナタに対して望む事なんて無いけど、そうね……久々に勝ったら一誠と二人きりで思う存分デートの一つでもして―――――あら?

 

 

「? なにか?」

 

「お嬢様、声に出てます」

 

「へ?」

 

 

 ライザーが変な顔をしてるから何事かと思ってたら、グレイフィアが呆れた顔をして声に出ていたと指摘してきた。

 あらやだ、声に出ちゃってたのね私ったら……。

 

 

「…………」

 

「うわぁ、一誠先輩が物凄い渋い顔してます」

 

「心底面倒って顔ですわね」

 

 

 ………。そんなの昔からそうよ。

 お姉さんぶったら小バカにしてくるし、かと言って軽く誘ってみればなじられて……。

 私もソーナも昔から一切女扱いされてないわよ……どーせ。

 

 

「何故かグレモリー家の紋章入りの衣装を着てる噂の人間風情とデートだと? やはり噂通りにそこの人間に騙されてるのか……!」

 

「何故一誠が私達を騙してるって風評が冥界中に広まってるのか未だに疑問なのだけど、寧ろ引き留めてるのはこっちなのよ?」

 

「こんな人間を何故引き留めるんだ? おかしいだろ、紋章入りの服に袖を通すのもだって本来ならあり得ないんだぞ!?」

 

 

 あり得ないんだぞ!? と言われても、お父様とお母様が認めたのだからしょうがないじゃない。

 外様が文句なんか言っても意味なんてないでしょう。

 

 

「……」

 

「え? 俺が居ない方が絶対スムーズだった? どちらにせよこうなってたと思うし変わらないと思うわ」

 

 

 心底げんなりしながらグレイフィアに耳打ちしてる一誠に対してライザーが小さく、何て失礼な……と唖然としてるけど、普段の口調を聞いたらひっくり返るんじゃないかしら? 何せお母様をババァと呼んだり、グレイフィアに対しては前に中年オバハンと呼んで激怒させたりしたし。

 

 私? 私はもっぱら我儘痴女呼ばわりね。

 

 

「もし俺がリアスと婚約したら即座に追い出してやる!」

 

「彼はグレモリー家とシトリー家所属よ? アナタひとりが喚いた所でどうにかなるとは思えないわね」

 

「だからこそだ! 何があったかは知らないが、こんな人間風情をグレモリー家とシトリー家が何故そこまで入れ込む!? しかも前にレヴィアタン様の周りをウロチョロしてたのを見たこともあるぞ!」

 

「……」

 

 

 何でこんな嫌われてるのかしら一誠って? 何故か私達以外の受けが悪いけど、それにしたってそこまで嫌悪しなくても良いじゃないと思うのだけど……。

 

 

「確かリアスの下僕はまだ揃ってなかったな? 兵士に至っては一人も居ない。

よしこうしよう、おい人間……お前リアスの兵士として今回のゲームに参加しろ」

 

「…………!?」

 

「ちょっとライザー・フェニックスさん? アナタ自分で何を言ってるかわかってるの? 親切心で言うけどそれは止めておいた方が良いわよ?」

 

 

 挙げ句の果てに参加資格が無い一誠に対して兵士枠で出ろって……思わず無駄な怪我人を出したくないからと忠告しちゃったけど、ライザーは熱くなりすぎて全然聞いてない。

 

 

「他の悪魔達だって皆が思ってる事だ、この際だから悪魔を舐めたらどうなるかを思い知らせてやる」

 

「……………………………」

 

 

 恨みがましく『お前のせいだ』と言った目でグレイフィアを睨む一誠をライザーが睨んでる。

 …………。何でこうなったのだろう。

 

 

「わかりました、そこまで言うならサーゼクス様からの許可が入り次第、この一誠を今回のゲームにリアス様の兵士として参加させましょう。

勿論、ゲームの際は多くの悪魔達に観戦して頂く様に手配もします」

 

「は!? おい! 何でそんな流れに――むぶ!?」

 

 

 冗談じゃない、ガキの喧嘩みたいなくだらない話にこれ以上付き合えるか! と言いたげに思わず声が出そうになってた一誠がグレイフィアに詰め寄ろうとした瞬間、流石扱い方がわかってるというべきか、咄嗟にグレイフィアが一誠の肩に腕を回して強引に引き寄せると、そのまま窒息するんじゃなかろうかという勢いで一誠の顔面を自分の胸に押し付けていた。

 

 

「ぐもももももも!!!???」

 

「私は中立を貫くつもりでしたが、そこまでこの一誠が気に入らないのであれば、試すなり何なりしても構いません」

 

「え、えっと……?」

 

「グレイフィア、一誠が窒息しちゃうから……」

 

 

 一誠に対するグレイフィアの対応が信じられないって様子のライザー・フェニックスが、妙に威圧的なのもあってか壊れた人形みたいに首を縦に振っている。

 何だか妙な事になっちゃったけど、これ後で絶対に一誠がヘソを曲げるわね……。

 

 

 

「ふざけんなよテメー!! 何のつもりだ!!」

 

 

 危うくグレイフィアの乳で窒息しかけて酸欠になった一誠は、更に妬みと僻みの入った視線をライザーが向けてから冥界へと帰るのを送り出してまた戻ってきたグレイフィアのメイド服の胸元を輩みたいに掴み、ガッツンガッツンと己の額を彼女に額にぶつけながら先程の事について激怒していた。

 

 

「しょうがないじゃない。向こうはどうにもアナタが気に食わない様子だったのだから」

 

「だからって何で俺が悪魔同士の茶番に巻き込まれなきゃならないんだよ!」

 

「参加しろと言ってきたのはライザー様だからついね……」

 

 

 オカルト研究部の部室にて、リアスを抜かした部員達が珍しいものを見てるかの様な丸い目をしてるのを知ってか知らずか、グレイフィアに向かって容赦が無さすぎるヘッドバットをしながら荒れまくる一誠だが、それを受けてるグレイフィアの顔はシュールな程に冷静だった。

 

 

「いい加減他の悪魔達に謂れの無い悪口を聞かされるのにうんざりしてたから調度良い頃合いだと思ったの」

 

「何が!」

 

「アナタが私達の家族である事よ」

 

「あぁっ!?」

 

 

 ゴチンゴチンと額を何度も打ち付けられてるグレイフィアの言葉に一誠の顔に無数の血管が浮かび上がる。

 

 

「家族だぁ? 薄ら寒いんだよそんなものは!!」

 

 

 掴んでた胸ぐらを突き飛ばす様に離した一誠が、そんなものになった覚えは無いとハッキリ言う。

 それに対してグレイフィアはちょっと赤くなった自分の額を擦りながら肩をすくめ、リアス達を一瞥しながら口を開く。

 

 

「そう言われても、私達は余りにもアナタと一緒に過ごし過ぎた。

ミリキャスは最早アナタを……」

 

「黙れ……黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇぇぇっ!!!!」

 

 

 ミリキャスの名前に逆上した一誠の咆哮が、部室全体を揺らし、壁を破壊する。

 

 

「俺はサーゼクスに敗け続けていたからこんな茶番に付き合ってやってただけだ……! 何が家族だ……何が仲間だ! そんなものは豚の餌以下なんだよ!!」

 

 

 色々と溜まってたのか、今までになく感情的に喚く一誠に全員が閉口する。

 

 

「俺はあの餓鬼の兄貴でも無ければ、テメー等の言う家族でも何でも無い! 人間なんだよ! 悪魔(テメー)等とは違うんだよ!!」

 

「一誠……」

 

「それなのにどいつもこいつも……!」

 

「待ちなさい、何処へ行くつもりなの?」

 

「サーゼクスの所だ! もう本気でぶち殺してやる……!」

 

 

 そう言って燕尾服の上着を脱いで床に叩きつけた一誠は半壊させた部室を飛び出す。

 まるで繋がる事を恐れ、自ら繋がりを断ち切りたいともがいてる様に……。

 

 

「一誠……」

 

「少し踏み込み過ぎましたね……」

 

 

 半壊した部室を駆ける風を受けながら、姿を消した一誠に対して悲しく呟くリアスと、床に叩きつけられた燕尾服の上着を拾って畳むグレイフィア。

 

 

「先輩……私達がしつこくしたから嫌いになっちゃったんでしょうか……」

 

「この前の時の事もきっと嫌々だったから……」

 

「いえ、そうじゃないわ。一誠にはその……他人と関わるのを避けようとするだけのトラウマがあるから……」

 

「トラウマ……?」

 

「幼い頃の彼は今よりももっと他人を拒絶しようとしてました。

理由は本人の許可無く話す事はできませんが、少なくとも本当の意味で嫌ってる訳ではありません……私が少し踏み込み過ぎたせいです」

 

「あ、あの……サーゼクス様を殺すって……」

 

「それならご心配無く、殺すというのは本気じゃありませんし、恐らく直ぐにでも返り討ちにされて――」

 

 

 と言いながら一誠が壊して吹き抜けになってる壁を見つめるグレイフィア。

 するとその場所から転移魔法の陣が現れ……。

 

 

「が、ふっ……」

 

「急に来たと思ったら殴りかかってきてビックリしちゃったよ。一体全体どうしたんだい? 部室も壊れてるし……」

 

 

 サーゼクスにおんぶされて一誠が帰還してきた。

 

 

「せ、先輩!?」

 

「一誠君!!」

 

「こ、こんな即オチ2コマみたいに早く……!?」

 

 

 今さっき出ていったのに、ボコボコになって出戻りよろしくに戻ってきた一誠に思わず駆け寄る朱乃、小猫、ギャスパー、祐斗。

 

 

「申し訳ございません、少し一誠に踏み込み過ぎました」

 

「グレイフィアが? 珍しいね……キミが一誠に癇癪起こさせるなんて。よいしょっと……」

 

「ぐっ……ぅ」

 

 

 おんぶしていた一誠を無事だったソファーに寝かせたサーゼクスが意外そうな顔でグレイフィアを見る。

 

 

「ええ少なくとも私は一誠を家族であると思ってると言ったら……」

 

「あぁ……そりゃ皆思ってる事だから気にする事は無いよ。

ただ、一誠はまだそういう話を嫌ってるから癇癪起こしちゃったけど」

 

「お兄様、その、この度ライザー・フェニックス側から一誠を兵士の代わりとしてゲームに出せと要求されたのですが……」

 

「ん? そんな話をしたのかい? あーぁ、僕は別に許可できるけど、ライザー君がトラウマにならないと良いね」

 

 

 リアス達だけでも負ける要素が無いと断言するような言い回しで苦笑いするサーゼクス。

 

 

「取り敢えず目が覚めるまで皆で側に居てあげなさい。

この子を決して独りにはしてはいけないよ?」

 

「わかってますお兄様。一誠は……」

 

「怖がってるだけ……ですから」

 

「そういうこと、眷属の皆もこれからも一誠は無愛想でキツイ言葉遣いをするかもしれないけど、どうか生ぬるい目で見守ってあげてくれ」

 

『は、はい……!』

 

 

 苦しそうに呻き声をあげる一誠を頼むと頭まで下げたサーゼクスに眷属達の姿勢は自然と伸び、冥界へ戻って行くのを見送ってからもその姿勢は変わらなかった。

 

 

「ち、ちくしょう……」

 

「かなり派手にやられちゃった様ですね……」

 

「みたいね。多分いきなりすぎてお兄様もかなり本気になっちゃったと思う」

 

「それでこの程度で済むなんて、やっぱり凄いですね先輩って……」

 

「目立った外傷も無さそうですし……」

 

「で、でも苦しそうです……」

 

「うん、魘されてるみたいだ……」

 

 

 精神的にもしてやられた様子がアリアリと見える一誠を囲って心配するリアス達は勿論サーゼクスに言われるまでも無く目が覚めるまで……いや目が覚めても側にいるつもりだ。

 

 

「ふむ、仕方ありませんね。

殆どヴェネラナ様に取られてばっかりでしたが、今はおりませんし……」

 

 

 破損した部室を軽く片付け終えても意識が戻らない一誠に、さっきのお詫びを思い付いたらしいグレイフィアがフムと呟き……。

 

 

「よいしょっと……」

 

 

 少年の頃からサーゼクスと見守っていた一誠の頭を膝に乗せ、『え?』って顔をする眷属達を他所に頬を撫で撫でし始めた。

 

 

「早いわよグレイフィア……お母様が居ないからって」

 

「普段はヴェネラナ様がすぐにやってしまいますからね。たまには私でも良いんじゃないかなって……」

 

「そうね、私は出遅れたけど」

 

 

 甘える我が子ミリキャスにするのと同じ事を一誠にしてあげるグレイフィアはちょっと楽しそうで、出遅れたリアスはちょっと膨れっ面だ。

 

 

「手馴れてる……」

 

「手馴れてます……」

 

「手馴れてるね」

 

「手馴れ過ぎてません……?」

 

 

 勿論指をくわえて見るしかできない眷属達の視線は殆どが羨望だったりする中、一誠が漸く意識を取り戻す。

 

 

「ぐっ、さ、サーゼクス…………ぅぅう!?!?」

 

 

 目を開けたら知らない天井……では無くてグレイフィアの顔と無駄にでかい乳だった事にビックリした一誠が飛び上がる勢いで身体を起こそうとする。

 

 

「痛っ……!?」

 

 

 だがサーゼクスにほぼ瞬殺された傷がまだ響いてるのか、痛みに顔を歪めて身体を硬直させてしまう。

 

 

「駄目よ、まだ動けないんだから……」

 

「ぐおぁ!? て、てめー……なにやって……!」

 

「何って、皆さんと一誠にアナタが起きるのを待ってたのよ。

まったく、踏み込み過ぎたのは悪いと思ってるけど、無茶しすぎよ……」

 

「る、るせぇ……このふざけた体勢をやめろ……!」

 

「ふざけてなんか無いわよ。たまには誰かに甘えてみれば良いじゃない? お嬢様もそう思って――」

 

「うるせぇっていってんだろうが! 余計なお世話なんだよ!」

 

 

 周囲にも聞こえる程に一誠の骨が軋む音をさせる度に顔を歪め、それでも意地で離れ様と身体を起こそうとする姿は、弱ってるのもあって子犬の必死な威嚇にしか見えない。

 

 

「どこまでも意地っぱりな子ねぇ? でも何だろう、今なら出なくなった母乳が出せそうだわ……」

 

「何を意味のわからねぇ戯言を……!」

 

「要る? ちゅーってしてみる?」

 

「するかクソボケェ!! てかテメーさっきから何をトチ狂ってやがる! おいリアス! この人間換算立派な勘違いオバハンを止め―――――あ……」

 

 

 嘗められてると思って腹が立ち、思わず禁句を口にしてしまった一誠が今更になってハッとする。

 

 

「私はしーらない……皆、離れた方が良いわよ?」

 

『………』

 

 

 一度一誠にオバハン呼ばわりされて本気でプッツンしたグレイフィアを見たことあるリアスは眷属達に指示をしながらゆっくり離れる。

 

 

 

「オバハンね、そう……オバハンなのね私は? そう……ふーん?」

 

「あ、いや……ぐ、な、何だよ……謝らねぇぞ俺は……! 人間換算したらオバハンどころか干からびたミイラなのは事実――『あ、お義母様ですか? 今人間界で一誠と一緒なのですが、可愛いくらいに弱ってて今なら死ぬ程甘えさせられそうなのですが、お義母様も一口どうですか? 今なら抵抗不能なので授乳も可能かと』―――おいぃ!?」

 

 

 すんごいにこにこ顔で誰かに……いやヴェネラナに電話し始めたグレイフィアに一誠は完全に身の危険を感じ取り、寧ろ恐怖すら抱く。

 

 

「すぐに来るってヴェネラナ様は。 よかったわねー? お姉ちゃんとお母さんに今日は思う存分甘えられるわよ?」

 

「っ!? り、リアスゥゥ!! ギャスパーでも構わねぇ!! 俺をコイツから引ったくって何処か連れていけぇぇっ!! 何でもするから!!」

 

「え、何でも!?」

 

「ギャスパー……やめた方が良いわ。多分時を止めても普通に動くわよお母様もグレイフィアも」

 

 

 よしよしと頭どころか既にぽよんぽよんと胸を顔に押し付けられ気味に抱かれてる一誠が全身から物凄い汗を流し、プライドも捨てて助けを求めるが、リアスは心底申し訳なさそうな顔をするだけでギャスパーを制止させながら助けられないと返す。

 

 

「おい、垂れ気味の乳がうっとうしいんだよ! 離れろ、離せ年増が!!」

 

「あらやだ、どこでそんな言葉を覚えたのかしら? これはお義母様と相談してちゃんと躾しないと……。

取り敢えずおっぱいでも飲ませて落ち着かせようかしら?」

 

「聞けよ!? そして死ねよ!! さ、サーゼクス!! テメーの嫁をとめろぉぉぉっ!!」

 

 

 メイド服のボタンを外し始めたグレイフィアと、全身の骨が悲鳴をあげても何のそので逃げようとし、しかし捕まる一誠……。

 

 

「一誠~♪ お母さんが来ましたよ~♪」

 

「ぴぃ!? ば、ババァ!?」

 

 

 地獄の始まりは寧ろ此処からだったのかもしれない。




補足

でも基本年増――エフンエフン!、年上のお姉様方に勝てないジンクスがあるせいで平和だった。


その2
果たして何秒もつのか……彼は。


その3
一誠アシスト限定覚醒ギャーきゅんも居るし、ぶっちゃけ普通に負ける要素が無さすぎる。


その4
年増――じゃなくてお姉様方曰く、『甘えさせたくなるのが上手い』らしい。

何せミリキャスちゃままで早期にその本能を抱かせるのだからね……。

その5
とはいえ、その後の場にミリキャスちゃままで来てしまったら最早単なる犯罪……。

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