執事一誠の憂鬱   作:超人類DX

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如何わしいという意味ではありません。

※新規のオマケ……つーかプチ番外をやりました。


ご奉仕モード ※新規オマケ追加

 レーティングゲーム当日。

 

 力が無いなら見向きもしなかったという一誠の指摘による遺恨が少しばかり残ったまま本番となったのはお察しの通りだが、誰も彼も一誠もその時の話を触れようとはしなかった。

 

 

「全員着替えて集まったわね?」

 

「いえ、先輩がまだです」

 

 

 学園の部室へと集結し、迫るゲーム開始を前に、会場移動の最終点呼を行うリアスを含めて全員が駒王学園の制服に身を包んでいる。

 前夜に思い思いの勝負服を着ろと言われた結果の学生服なのだが、小猫が言ったまだ集まってない一人だけはどうやら違うらしい。

 

 

「お待たせしました。一誠の準備は完了ですよ」

 

「…………………」

 

 

 数分遅れて部室へとやって来た一誠がヴェネラナに背を押されて姿を見せる。

 そしてその姿を見るや否や、全員がある意味納得する。

 

 

「髪型をどうするかで揉めてしまいましてね。私の推しでこうする事にしました」

 

「……………」

 

 

 学生になる前まではほぼその姿だったそれ。

 グレイフィアにより渡されたグレモリー家の紋章入りの燕尾服にヴェネラナ一押しのオールバックの髪型という出で立ちの一誠はそれはそれは苦虫を噛み殺した顔だった。

 

 

「今日は多数の悪魔が観戦しますからね。身なりだけはきちんとして貰わないと」

 

「…………」

 

 

 まるで我が子の晴れ舞台を楽しみにしている母親を思わせる微笑みを向けるヴェネラナに白手袋、燕尾服、オールバックという、ガッチガチの執事姿の一誠は小さく肩を落とす。

 所詮悪魔の茶番でしか無いこのゲームで自分が出張る意味合いを未だに納得できないからなのだけど、ここまで来て文句を言うほどしつこい性格じゃない為、今日だけは望み通りに演じてみせるつもりらしい。

 

 その証拠に、グレイフィアがプレイヤーであるリアス達をゲーム会場へと案内する為に姿を現した時に一誠を見て思わず『ほほぅ……』と意味深に呟いた際も我慢していた。

 

 

「お時間となりますので皆様をゲーム会場へとご案内します」

 

 

 グレイフィアの言葉に既に立っていた一誠以外の面々全員が席を立つ。

 

 

「皆さん、油断しないように」

 

『はい!』

 

「………………」

 

 

 転移前によるヴェネラナからの応援の言葉に俄然やる気を出すリアス達。

 勿論一誠は返事が無いが、それを見逃すヴェネラナでは無く、にっこりと微笑む。

 

 

「一誠もね?」

 

「……………。畏まりました、マダム・グレモリー」

 

 

 うぜぇ……と内心毒づく一誠だが、今日だけはと一礼する。

 素の口調はヤサグレたチンピラみたいな小物感だらけな男だが、幼少から仕込まれた一連のマナーだけは守ろうと思えば守れる。

 この日の一誠は確かにグレモリー家使用人・副長であった。

 

 

 

『皆様、この度、フェニックス家とグレモリー家の試合において審判役を任されました、サーゼクス・ルシファー様の女王・グレイフィアともうします』

 

 

 グレモリー家とフェニックス家のレーティングゲームというだけあり、そのネームバリューは凄まじく、多くの貴族悪魔達の観戦者は多かった。

 

 

「サーゼクス様の妹様と、フェニックス家の三男か。

これは楽しめそうだ」

 

「何せ期待の新人ですからな」

 

 

 ワイン片手に観戦も出来るレーティングゲームは最近の冥界のトレンドともいえるし、今回はある種ビックカードでもある。

 当然その多くの悪魔達の中にはリアスと歳の変わらない若手の悪魔達が参考にする為に観戦している。

 

 

「来たわね、今日は見所だらけよ! 椿姫! 録画の準備は!」

 

「バッチリです」

 

「か、会長……そんな興奮しなくても……」

 

「何を言うの!? あのイベント嫌いの一誠が重すぎてヤキモキさせるくらいな腰を上げてレーティングゲームに兵士として参加するのよ! アナタも同じ兵士として一誠の戦いを見なさい!」

 

「い、いや……アイツは化け物すぎて参考にならないんですけどね」

 

 

 その中にはソーナ達も居り、参加するリアス達の勇姿を――その中に混じる一誠の姿をデジタルに永久保存する為に興奮していた。

 

 

『この度のレーティングゲームの会場は、両陣営による話し合いの結果、リアス様と眷属の皆様が日頃学ぶ人間界の学舎、駒王学園の校舎全体のレプリカを用意させていただきました』

 

「お父様! 一誠兄様は!? 兄さまはどこ!?」

 

「慌てないでミリキャス、もうすぐグレイフィアが紹介するから」

 

「早く……速く……!!」

 

 

 勿論、生まれた時から血の繋がりなんかカス以下のカスだぜと云わんばかりに妹をしてるミリキャスも魔王の父と共に観戦しており、さっきから一誠をモニターに映せと興奮しまくりだった。

 

 

『それともう一つ、観戦者の皆様の中には既にお耳に入っておられると思いですが、この度ライザー・フェニックス様たっての希望により、本来なら参加資格が無い者をリアス様の兵士として参戦させる事となりました。お手持ちのモニターにご注目ください!』

 

 

 観戦する全ての悪魔に伝わるグレイフィアのちょっとテンション高めの声に吊られて各々が確保しているモニターに注目する。

 

 

『…………………………………』

 

 

 そこに映しだされるは、多くの悪魔にとってはまことしやかに噂される一人の人間の、ガッチガチの執事姿だった。

 胸元にあしらわれた限られた存在しか許されないグレモリー家―――そしてシトリー家の紋章が刺繍された燕尾服を着る人間の少年は、ある意味で貴族達にとって『有名』であり、その根元は殆どやっかみのそれだった。

 

 

「本当に出てきたのか、この人間は」

 

「厚かましいというか、グレモリーとシトリーの紋章入りの服を着てる等……」

 

 

 その紋章入りに憧れる多数の悪魔達を差し置き、人間の分際で両家から寵愛されると言われてる人間の無表情に佇む姿に殆どの悪魔達の顔は歓迎しているものではない。

 

 

「どうやってあの人間は両家の信頼を持ったのか」

 

「口八丁といった所だろう、所詮人間のできる事なんてたかが知れている」

 

 

 スタジアムならブーイングだろう一誠への印象。

 しかし別の場所では真逆なのもまた然りだった。

 

 

「出たわ! ご奉仕モードの一誠よ! 椿姫、録画は!?」

 

「や、やってますから落ち着いてください……」

 

「オールバックだし、グレモリーとシトリーの紋章入りの執事服だ……」

 

「本当はグレモリー家の紋章のみだったのだけれど、さっきお姉様が控え室に突撃して急遽入れたのよ! ふふ、良い仕事しましたねお姉様……!」

 

「こ、こうして見ると普通だね日之影くんって……」

 

「あの酔っ払った時の印象が大きすぎちゃうからね……」

 

「無差別だったもんね……ワインを瓶でラッパ飲みしながら襲ってきた時はホント……」

 

「口移しとかリアルにされちゃったもんね……私達……」

 

 

 ソーナ一人興奮するのを宥めながらも、悪印象は無さそうなシトリー陣営は、モニター越しに映る一誠を見てゴールデンウィーク事件についてを思い出してポッとしていた。

 

 

「元ちゃんまで襲われた時は何かに目覚めそうだったな」

 

「や、やめろし! 俺にとっては悪夢なんだぞあれ! 無駄にアレだったせいで余計に!」

 

 

 無差別だったせいで複数が何かに目覚め掛けてる様で、顔が死人みたいに真っ青な匙は永遠に忘れたいと壁に向かってガッツンガッツン頭を打ち付けていた。

 こんな感じでソーナ達は一誠に対して悪感情は無く、そしてもう一つ……。

 

 

「にいさま! にいさまが映ってますよお父様!」

 

「うん、そーだね」

 

「えへへ、良いなぁリアスお姉ちゃん……」

 

「わかったらもう少し画面から離れようミリキャス?」

 

 

 ミリキャスは出てきただけでクネクネしており、画面を食い入る様にみていた……ゼロ距離で。

 

 

「にーさま……」

 

「ほら、ちゃんと行儀よくしなさい。それにしてもライザーの眷属…………ふむ、思ってたより面白いかもね」

 

 

 

 そんなこんなで一誠の登場はあまり好印象では無いまま、今回のゲームを仕切るグレイフィアが紹介を行う。

 

 

『日之影一誠、悪魔名はギルバ。グレモリー家とシトリー家の両家から紋章を身に着ける事を許可された人間。

本日は彼がリアス様の兵士としてレーティングゲームに参加致します』

 

「……………」

 

 

 場所は戻り、妙に張り切ってる調子のグレイフィアの声を聞いていた一誠は、小さく鼻を鳴らしている。

 

 

「力が入ってるわねグレイフィアも。

まあ、仕方ないけど」

 

 

 レーティングゲームの会場……駒王学園のレプリカ空間への移動が完了したリアス達は、多くの悪魔達が今一誠の姿をモニター越しに見ているのだろうと考えながら先程と全く同じ質感のソファーに座る。

 

 

『両者転移された場所が本陣となっております。

兵士のプロモーションについて、ライザー様は旧校舎に立ち入った瞬間可能となりますが、リアス様陣営に本来の兵士は存在しないため、一誠―――こほん、失礼いたしました、代理となる日之影のプロモーションは無しとなります。これは公平性を考慮した結果となりますのでご了承を。

また、今回のレーティングゲームにおける秘薬等の使用はリアス様側は無し、ライザー様側は二回までとします。これも公平性を考慮した結果です。

制限時間は人間界における夜明けまで、時間にしておよそ2時間程でございます。

ただし、これは前後する可能性が十分にありますので注意してください。これより10分間の作戦タイムとします。10分後試合開始となります』

 

「聞いたわね? では通信機をつけなさい」

 

 

 グレイフィアのご丁寧な説明が終わった瞬間、リアスが一誠以外に悪魔式の通信機を与え、眷属達は早速身につける。

 

 一誠も淡々とした顔で渡された通信機を耳に取り付けると、作戦を伝えるリアスやそれを真剣に聞く眷属達に普段のチンピラさが嘘みたいな仕事を開始する。

 

 

「お嬢様、眷属の皆様、お紅茶でよろしいですか?」

 

「へ?」

 

「えっと……?」

 

 

 え、誰? と思わず言い掛けそうになるくらいに普段らしからぬ一誠の態度に驚く小猫と祐斗と、引きこもり気味でそんな面を知らないギャスパー。

 

 

「構わないわ、朱乃も今日は一誠に任せなさい」

 

「は、はい……では私も部長と同じで」

 

「畏まりました」

 

 

 スッと一礼した後その場から瞬間移動みたいに姿を消した一誠に、ポカーンとしてしまっていた眷属達は作戦の会議も忘れてリアスに詰め寄った。

 

 

「せ、先輩が変です!」

 

「凄い執事さんです!」

 

「どうしちゃったんですか!? ま、まさか具合が悪いとか!」

 

「落ち着きなさい。執事さんみたいじゃなくて、今の一誠は正真正銘の執事よ。

ソーナ風に言えばご奉仕モードって奴ね。お母様とグレイフィアに相当叩き込まれたから、その気になればああいう事もできるのよ……まあ、弱点としてはその対応を示すのが吹っ切れた時しかないんだけど」

 

「「「………」」」

 

「私だって初めて見ましたよ……」

 

 

 ヴェネラナに言われてヤケクソになり、コミュ障から来る吐き気も我慢して執事化した一誠の説明に眷属達はまたしても新鮮味を感じるしかなかった。

 

 

「お待たせ致しました、アールグレイでございます」

 

「ありがとう。さ、頂きましょう」

 

「は、はぁ…」

 

 

 ササッと音もさせずに全員分の紅茶を出した一誠が無言で座ってるリアスの後ろに佇むのが気になって紅茶どころじゃない眷属達なのだが、レア過ぎる一誠のお茶を飲まないという選択肢は無かったらしく、リアスに続く形で飲んでみる。

 

 

((((おいし……))))

 

 

 飲んでみた感想としては普通に美味しい。

 温度もちょうど良いし、一緒に出されたクッキーとよく合う……。

 

 

「何か物凄く贅沢な気持ちになる」

 

「そうだよね、だってあの一誠くんが僕達の為にだなんて……」

 

「これ、保存するとかできませんか?」

 

「………………」

 

 

 口々に変な褒め方をしてくる眷属に内心『バカかこいつ等……』と思いながらも表情筋を殺して静かに佇む。

 

 

「お嬢様、作戦の方は……?」

 

「そうだったわね、一服した所で本題に戻るわ。

今回のゲーム会場は私達にとっては所縁のある駒王学園のレプリカとなる訳だけど、全体図を見る限りセンターはちょうどこの体育館になるわね。

ただの戦闘なら真っ先に全員でキングを取りに突撃するのが手っ取り早いのだけど、一応レーティングゲームだし、それらしくやるわ」

 

 

 学園の見取り図を広げ、ライザー・フェニックス側と自分達側の確認をしながらセンター位置である体育館の場所を指しながらリアスは話す。

 

 

「センターの確保、この場所の守護の二手に別れるわ。

恐らくライザーは兵士を複数この旧校舎の裏から忍ばせてくる筈だしね」

 

「………」

 

 

 まともにレーティングゲームを見ることすら無かった一誠は、軍人将棋みたいな事をしてるリアス達をただ黙って見つめる。

 さっさとキングとやらの首をネジ切ればそれで終わるのに……とせっかちな彼にしてはもどかしいものはあるが、悪魔のゲームにも色々と事情があるのだろうと取り敢えず黙ってる。

 

 

「ギャスパーと祐斗は旧校舎全体に罠を、小猫はセンターの確保をなさい」

 

「わかりました」

 

「は、はいぃ……」

 

「了解です」

 

「そしてお待ちかねの一誠は……本当は力を安定させるという意味でギャスパーと組ませたかったのだけど、ゲームの上でセンターの確保を確実にしたいの。

だから小猫と一緒に体育館へむかって?」

 

「………はっ」

 

 

 ホントにチマチマやるのか……と思いつつ小さく頭を下げた一誠。

 小猫が横で『しぃ!』とガッツポーズしてるのだけど、その意図も意味も理解しようとはしない。

 

 

「目的はライザー・フェニックス陣営全員の撃破、レーティングゲームのセオリーを全て踏まえての一斉襲撃勝利よ。

こうでもしないと遺恨が残るかもしれないし、終わった後は骨も残さないつもりで行くわよ!」

 

 

 こうして人生初のレーティングゲームは開始した。

 オーバーキルを目指してるご様子のリアスの指示を受け、全員が部室を離れる。

 

 

「センターの確保です。先輩行きましょう! なるべく早――あ、いや、ちょっとお散歩なんてしながら!」

 

「お言葉ですが塔城様、リアスお嬢様はセンターを相手側よりも早く確保せよとのご指示です。

散歩をする暇なんてないと思いますが……」

 

「と、塔城様……ふ、ふへへ、そ、そうですよね? 私とした事が私情に走ってしまいました……。(か、会話ができてる! 凄い他人行儀だけど! こ、これが部長の言っていた四年に一度あるかないかのご奉仕モード!)」

 

 

 センター確保の為に体育館へと向かう小猫は、確保を確実のものとする為に同行する事になった一誠が、あまりにも普通に、ちょっとよそよそしいけど返答してくれるという夢みたいな現状に、美少女らしからぬ変な声で笑ってしまう。

 内心一誠に『なんだコイツ……』と引かれてるのだが、小猫はニタニタが止められず、気付けは体育館へと到着した。

 

 

「うへへ、先輩、敵の匂いがします」

 

「匂い? あぁ、猫の妖怪でしたね塔城様は……確かにその様です。既に中に複数のカス―――んんっ、敵の気配があります」

 

「グレモリーの眷族!

あなたたちのことは監視している! さっさと出てきなさい!」

 

「あら、先輩とお散歩していたのを見られてたようですね。さすがに一応は経験者、重要拠点は見逃しませんか」

 

「……。先程からアナタ様は何を言ってるのですか? 気持ちが浮わついてますよ?」

 

 

 にへらにへらと笑う小猫のどう聞いても浮わついてる言い回しに、若干イラッとしながらも我慢して大声を出してる相手側の眷属達の言うとおり中へと入ると、複数の気配を感じた通り四人ほどの女性がど真ん中で仁王立ちしていた。

 

 

「ごきげんようグレモリー眷属さん……それと賞金首さん?」

 

「……?」

 

「賞金首? 先輩の事を言ってるんですか?」

 

 

 覚えるつもりも記憶するつもりもない、ただの女という認識しかなかったりする一誠に向かっていきなり賞金首と宣うライザー眷属達に小猫が首をこてんと傾げる。

 

 

「ライザー様が言ってたのよ、そこの木っ端似非執事を倒した子にはご褒美をくれるって」

 

「グレモリー家とシトリー家の紋章を身に付けてる人間風情だからって」

 

 

 チャイニーズっぽい格好の女性曰く、どうやら一誠は相当にライザーから敵意を持たれているらしく、誰かが彼を仕留めれば褒美が出るらしい。

 クスクス笑って一誠を見るその視線は、既に自分がご褒美を貰うのだと仕留められる自信満々な目だった。

 

 

「という訳で怨みは無いけどアナタから仕留めるわ!」

 

 

 チャイニーズの女性の一言により全員が手を前にしながら佇む一誠を標的に構える。

 

 

「……………」

 

「そう簡単に先輩を取らせるとでも?」

 

「でしょうね、それならこの場所をどちらが確保するか勝負よ! 私はライザー様の戦車・雪蘭よ!」

 

「兵士のミラです」

 

「同じくイルでーす!」

「ネルでーっす!」

 

 

 構えながら名乗り出す敵。

 それに応えて小猫も名乗る。

 

 

「リアス・グレモリーの戦車・塔城小猫」

 

「…………………」

 

「せんぱい、一応名乗っておいたほうが………」

 

「………………………」

 

「あ、名乗る必要なんてありませんね」

 

 

 小猫のヒソヒソ声に答える代わりに一誠は無言で一礼する。

 それを見た瞬間、あ、喋ったら気持ち悪くなっちゃうんだと納得しながら、ピシッと手刀の構えをした一誠に続いて構え、アクション映画ばりなアクロバットな動きで敵を翻弄しながら攻撃を叩き込む一誠に続いた。

 

 

「あぅ!?」

 

「っう!?」

 

「「いったーい!!」」

 

 

 こうして戦闘は開始したのだが、側宙や前宙、バク宙など、一誠らしからぬ無駄な動きを交え、アクション映画の様に蹴りやパンチを叩き込み続けられたライザーの眷属達は、わざと小猫に合わせた鋭い蹴りを貰い、数メートル程宙を舞って床に叩きつけられる。

 

 

「…………」

 

「むむ、私の足が短いせいで先輩に合わない……」

 

 

 済ました顔で乱れたオールバックを整える一誠と、自分の脚を見てブツブツ呟く小猫。

 どう見ても二人は目の前のライザー眷属達を敵とすら思ってる様子が無く、弄んでる気すらある。

 

 

「あ、あんた達ふざけてるの!?」

 

 

 屈辱のあまり一人が怒りながらヨロヨロと立ち上がる。

 

 

「ふざけてませんよ、こっちは真剣なんです。先輩と息を合わせた攻撃をしようにも背が小さいから……」

 

「そんな事聞いてるんじゃないわよ!」

 

「……………」

 

「あ、あの執事普通に強い……」

 

「全然当たらないし……」

 

「全然息も切れてない……」

 

 

 サッサッとオールバックを直した一誠の、薄気味悪い強さの片鱗を今さらになって気づいた三人が困惑した顔をする。

 本来の戦い方なら一撃で身体の一部が千切れ飛ぶ事を知らないのは多分幸福なのかもしれない。

 

 

「ぶへ!?」

 

「ぎゃ!?」

 

「あべしっ!?」

 

「ひでぶ!?」

 

『ライザー様の兵士三名、戦車一名リタイアです』

 

「やりましたね先輩!」

 

「殺さずに蟻を踏むというのがこれほどまでに難しいとは……。ある意味難題かもしれません」

 

 

 本来の億分の一は手加減されてるのだから。

 

 

「リアスお嬢様、センターを確保致しました。次の指令は?」

 

『ご苦労様。次の指令は小猫と一緒にその場所を暫く守って欲しいのよ。

ちょうど祐斗とギャスパーの方も仕掛けた罠で数を減らせたし』

 

「はっ……ではその様に」

 

 

 小猫と一緒に踵落としを脳天に差し込んで撃破し、無事にセンターの確保を完了させた一誠の次の仕事は、小猫と共にこの場所を守る事になった。

 既にライザー側の眷属も半数は潰し、後は各拠点を一個一個確保して退路を塞ぐ。

 

 ある意味負け方としては一番屈辱的なものなのかもしれない。

 

 

「誰も来ませんね……第二陣があると思ったのに」

 

「木場様とギャスパーのガキ――失礼、ギャスパー様が撃破してるのかと……。まあ、確かにお暇ではありますがね」

 

「ですよね? うーん、ギャー君って先輩が近くに居ないと駄目だからちょっと不安……」

 

「………」

 

『ライザー様の女王・リタイアでございます』

 

「あ、クイーンが陥落しました」

 

「その様で……」

 

 

 何せ賞金首に指定された本人は倒れないどころか呑気にセンターである体育館に居て小猫とご奉仕モード口調で喋ってるのだから。

 

 

「後は戦車一人と僧侶二人と騎士と、王ですよ。

どうします? 部長に連絡して先に狩にいきますか?」

 

「既にフィールドの半分以上を制圧した今、放っておいても向こうから出てくるのでは? 私一人に此処を任せて塔城様お一人で向かわれたくば構いませんよ」

 

「うーん、折角先輩と色々あるけどこうしてお話できるし勿体ない」

 

「…………はぁ」

 

 

 平和であった。

 

 

終わり

 

 

 

オマケ・惚れ薬漏洩事件

 

 

 

 これはとある男が『面白そう』という理由だけで作り上げてしまった薬品が流出してしまったお話……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アザゼルがお香タイプの惚れ薬を開発し、それをグレモリー領土内にばら蒔くという事件が起こった」

 

「何でそんな事を……」

 

「何でもムシャクシャしてやってしまったらしい。

まぁこの通りアザゼルは縛り上げてるから後は散らばった惚れ薬を回収してしまうだけなんだけどね」

 

 

 人間界で今は暮らすリアスやソーナ達をいきなり呼び寄せた魔王サーゼクスからの指令。

 それはグレモリー領土各地にアザゼルが散らした惚れ薬の回収という任務みたいな仕事であった。

 何故惚れ薬なのかは、逆さ吊りにされた挙げ句顔面が倍以上に腫れ、グレモリー家の男使用人に今尚鞭でしばかれ続けてるアザゼルのみぞ知るのだが、あの様子だと聞くに聞けない。

 

 なので仕方なくソーナ達と協力し、手分けして惚れ薬の回収を開始する事になったリアス達だが、本日はこの場に一人足りない。

 

 その一人とは勿論一誠の事であり、どうやら今冥界には来てないらしいのだが……。

 

 

 

 

 

※本編とは何の関係もありません。

 

「み、皆落ち着いて! これは惚れ薬のせいなんだよ!?」

 

「ぐぅへへへ、セラフォルー様ァ……!」

 

「俺のもんだぁ!!」

 

「ひゃはー!」

 

 

 遅れて合流しようとしたセラフォルーがグレモリー領土内の男達に取り囲まれ、今まさに数の暴力で襲われそうになっていた。

 ぶっちゃけ進化した今なら余裕で返り討ちに出きる様な気はするが、こういうのは時と場合による訳で、無数の男に取り囲まれるのは割りと怖いのだ。

 

 

「魔王様を孕ませるのは俺じゃァァァッ!!!」

 

「イヤァァァァ!!!!」

 

 

 正気ならまず畏れ多くて無理な台詞を平然と叫びながら一人の男悪魔がセラフォルーに飛び掛かった。

 が、しかし……。

 

 

「ふべらぁ!?!?」

 

 

 飛び掛かった男悪魔の横っ面にめり込む拳が、セラフォルーの貞操をガードした。

 本能的に身を庇う為にしゃがんでいたセラフォルーが恐る恐る目を開けると……そこには。

 

 

「……………」

 

「い、いーちゃん?」

 

 

 燕尾服姿の少年……一誠がセラフォルーを守るようにしてそこに姿を現した。

 

 

「……何をトチ狂ったんだコイツ等は」

 

「い、いーちゃん!! こ、怖かったよぉ!!」

 

 

 思わずその背に抱きつくセラフォルーは安心する。

 しかしそれと同時にふと気付く…………あれ、抱きついたのに嫌がってない? と……。

 

 そして妙に体温が高い気が――

 

 

「コイツは俺の女だ、テメー等にゃ渡さねぇ」

 

「………………」

 

 

 あ、これ絶対いーちゃんってばどこかで惚れ薬を嗅いじゃったんだ。

 普段が普段なので一瞬にして悟ったセラフォルー。

 だがしかし同時に惚れ薬のせいだろうとこんな台詞を無駄にキリッとした顔で他の男達に向けて啖呵を切る姿に堪らなくなったのもまた事実であり、ここから一誠を連れ出して人気の無い場所で――と、若干邪な事を考えてしまっていると……。

 

 

 

 

 

「この世の全ての女は、ランドセル背負った小◯生から湿布貼ったババァまで全部俺のもんだぁぁぁぁっ!!!!」

 

「ええええぇっ!?!? いーちゃん!?」

 

 

 血走った目をこれでもかと開き、解放しちゃいけない何かを解放するかの如き台詞を吐きながら惚れ薬にやられた男悪魔達を殴り蹴るして叩きのめし始めた。

 

 

「テメーらに女なんぞ百万年はぇーんだよ! 一生エロサイトでもクリックしてやがれ!! ただし、そのエロサイトに出てる女も俺のモンだがなぁ!! ヒャハハハハ!!!」

 

「な、なんでそうなるのよ!!」

 

 

 ちぎっては投げ飛ばし、ちぎっては蹴り飛ばし、ちぎっては殴り飛ばしを繰り返しながらとんでもない事を口にする一誠に、流石にこれは違うだろと思ったセラフォルーが止めに入ろうとするのだが………。

 

 

「よっしゃ行くぜハニー!!」

 

「きゃっ!? な、なに!?」

 

 

 止めに入ろうとしたセラフォルーが逆に横抱きに抱えられると、これまた普段なら死んだって口にしないだろう言葉でセラフォルーを呼びながら領土内を爆走する。

 

 

「い、いーちゃん! ど、どこに行くの!? グレモリー家は反対方向だよ!?」

 

 

 一々キャラが狂ってる一誠に戸惑いつつ何とか落ち着かせようとするセラフォルーの声は聞こえてるのか、要するにお姫様抱っこをされてる彼女に向かってこれまた無駄に爽やかな笑顔をしながら言う。

 

 

「どこ? 決まってるだろハニー……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………―――――――夢のお城さ」

 

 

 

 如何わしい看板とキラキラしたライトで異様に目立つ宿泊施設の前で停止する一誠の言う『夢のお城』。

 それは確かに外観だけなら夢のお城ではあるが、実態はそんなクリーンなものでは無いし、セラフォルーも知っている。

 そう、これは……。

 

 

「俺と一緒に青少年保護条例の向こう側へ行かないかハニー?」

 

「こ、ここって……う、嘘? いーちゃん本気なの? 私ここまでされたら本当に抵抗しないよ? 惚れ薬のせいとか関係――」

 

「無くて良い……ふふ、ふはははは! お前は俺のもんだぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

 別の意味での夢のお城……だった。

 

 

続かない




補足

新規のアホな番外をやった理由は単に感想がほしいだけです。

来なかったらやめます。


ちなみに元ネタは……まぁわかるかなメジャーだし。
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