執事一誠の憂鬱   作:超人類DX

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フラグが立てられない瞬間、敵認定して他を漁り出す転生者。

これぞ謂わばダブルスタンダード


相容れない

 この世にはいい奴と悪い奴。気に入る奴と気に食わない奴が居る。

 

 俺にとってその気に食わない奴とは本来ならとっくに死んで消えていた筈のイッセー……つまり俺が転生して成り代わる前に居た男だ。

 

 

「白音がイッセーそっくりの男と最近一緒に居るのを見るけど、アレって誰なの? 転生悪魔の匂いがしないし……」

 

「よくわからないけど、リアス・グレモリーとソーナ・シトリーの両陣営に上手く取り入った奴らしい。

学校の時によく二人の後ろに引っ付いてるの見るし」

 

「それと無口な方で、かなり乱暴な方です。

前にイッセーさんに暴力を振るって来ました」

 

「イッセーに? 返り討ちにしたの?」

 

「いや……背後から襲われて油断しててな……。だよなアーシア?」

 

「えっと……はい」

 

「ふーん……イッセーに怪我を負わせるということはそれなりにただ者じゃないってことかにゃん?」

 

「「………」」

 

 

 奴の顔を初めて見た時、俺は心底驚いた。

 何せ転生した神は仮に成り代わりとなった元の存在が手違いで居たとしても近い内に消えると言ってたにも関わらず、奴は生存――しかも俺の予定を大幅に狂わせる悪魔の勢力に居たのだから。

 しかも原作主人公格のリアス達から眷属では無いにも関わらず絶大な信頼を寄せられ、ソーナとも既に知り合いという雰囲気まで持っていて取り入る隙が全くない。

 

 恐らくはあの消え損ないが入れ知恵したからだろうけど、俺にしてみれば忌々しいだけの話だ。

 

 原作の流れもへったくれも無くなってるし、神器なんて持ってない筈なのに異様な雰囲気だし、俺の腕と両足をへし折って来たし……。

 大人しく消えていればこんな事にはならなかったのに……クソ。

 

 

「一応気を付けろよ黒歌? 奴も悪魔側だし、もしお尋ね者のお前の存在が知られたら……」

 

「大丈夫にゃ。伊達に何年もはぐれ悪魔やってないし、白音を奴等から取り戻すまで捕まるなんてしないよ」

 

 

 何とか黒歌等のその他の仲間を引き込めたけど、奴という不気味な存在が居る以上安心はできない。

 イマイチ実力も把握できないし、俺としても小猫辺りを引き込められたら楽なんだが……嫌いじゃない顔だし。上手く行けば奴側の女達を全部引き込められたら今度こそ奴は終わり。

 

 

「明日にでも白音に会いに行こうかなぁ」

 

「……」

 

 

 俺が唯一の主人公になれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………なるほど、彼女が塔城様の姉ですか」

 

「はい、前にも言いましたが名前は黒歌。

事情があってはぐれ悪魔として冥界に登録されてます……」

 

 

 そんな兵藤一誠が自宅の庭で知り合って家に住まわせているはぐれ悪魔の黒歌や元シスターのアーシア・アルジェント等と戯れている頃、少し遠くの家の屋根からお金持ちがよく使ってそうな持ち手付きの双眼鏡を覗きながら観察している三つの影があった。

 

 

「何時見ても微妙に一誠さんに似てますねあの人」

 

「似てねぇよ、やめろ」

 

「目とかが全然違う。ギャーくんはわかってない」

 

 

 右から一誠、小猫、ギャスパーというひょんな事から昨日より行動を共にしている三人が、双眼鏡越しに兵藤一誠と小猫の姉の黒歌の様子を見ながら各々呟いている。

 一誠の成り代わりという存在故に顔が同じという理由を知らない小猫にしてみれば兵藤一誠という存在は実に不思議な存在な訳だが、理由をある程度知ってしまってるギャスパーにしてみれば逆に怖い存在でしかない。

 何せどこからともなく、本当に存在すらするのか疑わしい『転生神』という存在により生まれた一誠の偽物であり、一誠からそれまで持っていた全てを奪った存在なのだ。

 

 不確かな存在という意味ではこれ以上に不気味かつ腹立たしい存在はいないだろう。

 今だってこちらの存在に気付くことなく小猫の姉と見知らぬ金髪の女子と呑気にイチャイチャしてるし、なまじ一誠に顔が近いだけにイラッとしてしまう。

 

 

「全然中身も外面も違うとわかってるけど、なまじ先輩に近い顔してるせいで、いい気分はしませんね。今も姉に抱きつかれてるし」

 

「私は別に何も思いませんが、あの様子だと浅い仲では無さそうです」

 

「あ、小猫ちゃんのお姉さんがあの人に胸押し付けてます」

 

「…………。クソが、もいでやろうかあのホルスタインが……」

 

 

 一誠のキレた時の口調に多少影響されたのか、ギャスパーの実況に対して無意識に双眼鏡を持つ手に力を込めながら姉との差を僻む。

 

 

「大体、自分は楽しそうに生きてるんだから私の事なんて放っておけよ。

確かに昔はとある悪魔のせいで散々な目に逢わされたけど、リアス部長達は違うんだっつーの。それを知りもせず……!」

 

「彼女は何と?」

 

「『イッセーから聞いたけど、リアス・グレモリーは我が儘だから、仕えるだけ疲れるからまた一緒に暮らそう』とか言ってました。

多分あの人がありもしない捏造かましたんだと思います」

 

「はぁ?」

 

 

 双眼鏡を覗きながら指を差す先に居るのは、黒歌とアーシアの取り合いの中心に居て、さも困ったような顔して苦笑いしてる兵藤一誠。

 

 

「我が儘って……何ですかそれ? あの人ってリアス部長とは殆ど関わり無いのに」

 

「我が儘って部分は概ね合ってますが、奴がそれをほざく資格は無いでしょう。

あっれ、不思議だな……物凄くイライラしてきた?」

 

「「………」」

 

 

 口もとを歪める一誠に小猫とギャスパーは内心『部長が貶されてると知って無意識に怒ってる……』と思いながら同意するように頷く。

 

 

「あの兵藤って人の事はよく知りませんし、興味もありませんが何も知らないのに部長の陰口を叩くのは嫌でした」

 

「部長に保護して貰えなかったら僕たち今頃こうして生きてなんて居ませんでしたし」

 

「………………」

 

 

 『へ、涙ぐましい忠誠心な事だな……』と二人の様子を横目に内心思う一誠。

 眷属達にとっては恩人であるリアスだが、自分にとってしてみれば兵藤イッセーではないが、単なる我が儘女と思う所の方が多い。

 

 が、外様存在に我儘だのと言われるのを聞くと妙にムカつく。

 

 

「確かにリアスは我儘ですが、外様でしか無い奴にまで言われる程の我儘さは無いと思ってます。

というかあのカス、最初はリアスやソーナの周囲をうろちょろして眷属にしろと売り込んでた癖に何ほざいてやがるんだ?」

 

「えっと……先輩?」

 

「双眼鏡が悲鳴あげてますけど……」

 

 

 気づけば今度は小猫とギャスパーが戸惑うくらいに一人でブツブツ言い出す一誠。

 

 

「確かにやれ『お腹減ったからご飯食べさせて』だの『マッサージしてほしい』だの『寝る前に絵本読んでほしい』だの『寒いから添い寝してほしい』だのと、最近はソーナにも感染させてほざくが、無茶の範囲じゃないし、第一外面だけはちゃんとさせてるのに知った様な事をほざきやがってクソ野郎が。

カスはカスらしくしてれば良かったものを、一々余計な真似しかしねぇし、やっぱり今すぐにでもぶち殺すか? サーゼクスは『あのままにしてても絶対に彼はろくでもない末路になるから手を下す必要はないぜ?』なんて言ってたが――」

 

「そ、相当あの人が部長の事を我儘だって言ってたのに腹が立ったんですね……」

 

「多分だけど、何だかんだ一番距離が近いのは部長とソーナ様ですからね……歳もひとつ違いだし」

 

「そうだね、見てて羨ましくなる距離感だもんね……ナチュラルに」

 

 

 基本あんまり年上扱いもしてないし、公の場じゃなければ扱いも雑で、見てる限りじゃ何時も頭を痛くない程度にひっぱいたり、お尻を蹴ってたりしてるけど、イザという時のリアスとソーナに対する行動の早さはまさにツンデレのそれであり。

 以前二人のどちらかにちょっかいかけた身の程知らずを引くほどズタズタにしてしまった事を知ってるだけにちょっと二人が羨ましいと思う小猫とギャスパー。

 

 先のレーティングゲームの時も、然り気無く一番多く相手側の眷属を捻り潰してたし、日之影へと姓を変えた一誠が好かれる理由のひとつだ。

 

 

「一誠さん、部長の為に怒るのはその辺に――」

 

「あ? 別にキレてねーよ! …………………こほん、戻りましょうか塔城様?」

 

「そうですね」

 

 

 ギャスパーの言葉に反射的にムキになりながらも、小猫に無言で見つめられて我に返った一誠はそそくさとその場から立ち去る。

 小猫の現状と逆算し、約束通り姉に負けないレベルに引き上げてみせる為に……。

 

 しかしその前に一応リアス達の様子を覗きに行かないと怪しまれる為、休日なのに学園の部室やら生徒会室にに集まってるだろう二人のもとへと向かった一誠なのだが……。

 

 

「おい、黙って床に正座しろ。そして言い訳したくばしてみろ……何だそのザマは?」

 

 

 覗きに行った一誠の目に飛び込んできたのは、髪はボサボサのだらしなさ全開でお茶をしていたソーナとリアスの二人だった。

 

 

「考えてみたら普段から髪のお手入れとか一誠がやってくれたから、自分でやろうと思っても失敗しちゃうのよ」

 

「同じく。微妙に忘れてたわ」

 

「で、そのザマで眷属がドン引きしてるも関わらずアホ面晒して無駄遣いか?」

 

「い、いやそれは……ソーナと情報雑誌を読んでたら偶々デザート特集で……ねぇ?」

 

「え、ええ……一誠に管理してもらってるお小遣いの範囲内だしいいかな~……って」

 

 

 鬼の様な形相で正座をさせてる二人を見下ろす一誠と、微妙に反省の色が無さそうなリアスとソーナ。

 たった一晩家を開けただけでこのザマという辺り、如何に普段一誠が何やかんやといいながらも二人の面倒を見てきたのかがうかがえる。

 

 

「会長って意外とだらしなかったのかよ……」

 

「如何に日之影君が凄いのかが今更ながらにわかったかも……」

 

「姫島さんも思ってるでしょうけど、女王の私達より女王してますよね彼って」

 

「ええ……何だかどちらの意味でも妬けますわ」

 

「ところで小猫ちゃんとギャスパーくんはどこに……?」

 

「えっと、パトロールに……ね、ギャーくん?」

 

「はい……特におかしなところはありませんでした」

 

 ゴチン! と二人の脳天に拳を落とし、涙目になる二人の王を全然心配せずに眷属同士で語り合っている。

 

 

「セラフォルーですら自分の身嗜みはちゃんとできるのに、テメー等はセラフォルー以下かコラ!!」

 

「いだだだ!? グリグリ攻撃はやめて!」

「あ、頭の形が変形するぅぅ!!!?」

 

 

 嵐を呼ぶ五歳児の母親を彷彿とさせるお仕置きを二人まとめて与え、暫くそれは続いた中密かに会長であるソーナに対して憧れを持っていた兵士の少年は、意外通り越して執事の彼が居ないと本気で駄目女だったという現実にかなり渋い顔をしていた。

 

 

「クソが、そこ座れ!」

 

「ぐすん……一人でどっか行っちゃうからよ」

 

「こっちは二人して夜通し寂しくて眠れなかったのに……」

 

「ガキかおのれらは! ごちゃごちゃ言ってないで座れ!!」

 

 

 半泣きになってる二人を怒鳴り散らし、無理矢理ソファーに座らせた一誠は、怒りそのままに背後に回ると、そのまま手慣れた手つきでまずはリアスの髪を持っていた櫛でとかし始める。

 

 

「ババァ共が知ったらこんな程度じゃ済まねぇぞ……ったく」

 

「う……今度から気を付けるわ」

 

「お母様二人からのお説教は嫌だわ……」

 

「嫌ならちゃんとしろ……。はぁーぁ……これで俺より一個上なのが信じられねぇ。

ミリキャスの方がまだしっかりしてらぁ」

 

 

 せっせと乱暴な言葉遣いとは裏腹に繊細なてつきでリアスとソーナの髪を整えていく。

 そのあまりの手際の良さに、一部眷属達が自分の髪に触れながら何かを求める様な眼差しを一誠に向けるのだが、生憎本人はこのだらしない二人のお嬢様に気が向いてるのできづいてない。

 

 

「これで良し……ったく、髪質は二人して一丁前に良いんだから、手入れくらいテメーで出来んだろ」

 

「ありがとう一誠、これで調子が戻ってきたわ」

 

「やっぱり一誠にやってもらうと気持ちいいわ」

「全然嬉しくもねーよそんな評価」

 

 

 整えられて元の美少女な二人に戻ったリアスとソーナの礼をぶっきらぼうな態度で返す一誠は櫛を仕舞う。

 小猫の姉のレベルを把握した今、こんな事をしてる場合じゃないのだ。

 

 しかし……

 

 

「あ、あー……髪が乱れてしまいましたわー(棒)」

 

「あ、あぁー……突風で髪が変になってしまいましたー(棒)」

 

「あれれー? 見よう見まねで整えようとしたら失敗しちゃったですー(棒)」

 

「おかしいなー? 寝癖が元にもどらないやー(棒)」

 

 

 どう見ても自分で勝手にぐしゃぐしゃに乱しまくったヘアースタイルを見せながら、下手くそ過ぎる棒読み演技をし始める朱乃、小猫、ギャスパー……そしてまさかの祐斗。

 

 

「は?」

 

「お、お前ら……」

 

「そ、そんな事までしなくても……」

 

「というか木場くんまで……」

 

 

 その過程を見ていたソーナの眷属達は若干引いてしまう。

 リアス眷属と比べてあまり一誠と関わる事が無い故に冷静なのだが、リアス眷属達にしてみたら必死になるべき案件なのだ。

 

 

「せ、先輩、私の髪がこんなことに……」

 

「はぁ……ぐしゃぐしゃですね」

 

「櫛が無いのですわ……どこにあるのかしらー?」

 

「………………。コンビニまで走って買われてはいかがでしょう?」

 

「でも櫛だけじゃ多分整えられないかなー……なんて」

 

「男性ですし、適当に水道で濡らしてくれば良いのでは? 私は何時もそうですが……」

 

「もう、鈍いですよ一誠さんは! 部長とソーナ様みたいにして欲しいんです!」

 

「知るかバカ、何で俺がそこまでしなきゃならねぇんだよ」

 

 

 ギャスパーに言われて漸く意図を理解できた一誠だが、してあげるつもりは全く無さそうだ。

 

 

「会長にしたんだからやってやりゃあ良いだろ。つーか羨ましいんだよちくしょう……!」

 

「…………」

 

「げ、元ちゃん……元気だして? 私でよければ整えて欲しいし、やってみる?」

 

 

 そんな態度だから匙からは嫉妬まじりに責められてしまうが、ソーナの眷属達とはまだ喋れない一誠は無言にならざるを得ず、悔しがる匙に仲間の何人かが励ましている。

 

 

「やってあげたら?」

 

「これも立派な親睦会になるじゃない?」

 

「反省する気無しかゴラ…………チッ」

 

 

 さっきまで怒られてたのにもうヘラヘラしてるソーナとリアスがニコニコしながらやってあげたらと言ってくるせいで一瞬キャメルクラッチかダブルアームスープレックスを掛けそうになってしまうが、そこを堪えて盛大にため息を吐く。

 

 

「わかりました……お一人だけなら――」

 

 

 やらなきゃ収まりつかないと思い、仕方なく……でもせめてもの抵抗として誰か一人だけと言った瞬間、目の色を変えた朱乃、小猫、ギャスパー、祐斗は一斉に互いを睨みながらじゃんけんをし始める。

 

 

「「「「じゃんけんぽん!! あいこでしょ!! あいこでしょ!!」」」」

 

「うわぁ……」

 

 

 その必死さたるや、匙達をドン引きさせ、一誠に面を食らわせる事になったのだが、本人達は負けられない世紀の大勝負といわんばかりの迫力を放ちながらの全力じゃんけんに勤しむ。

 

 その結果……。

 

 

「や、やった……やりましたわ!! 私の勝ち!!!」

 

「そ、そんな……」

 

「ま、負けた……」

 

「せ、せっかくのチャンスが……」

 

 

 ぴょんぴょんと小さく喜びのあまり跳ねながら心底嬉しがる朱乃と、床に膝をつきながら絶望する他三人。

 勝者は朱乃だった。

 

 

「姫島様……ですか」

 

「は、はい……今気付きましたが、ご奉仕モードですのね?」

 

「そういえばそうね……数年に一回あるかないかの状態が二度続くなんて珍しいわ」

 

「なにかあったの?」

 

 

 ソーナとリアスの微妙に怪しむ顔から目を逸らし、テンション上がりっぱなしの朱乃を二人と同じくソファーに座らせる。

 

 

「これ、結ってますが解いても?」

 

「も、もちろん……!」

 

 

 何がそんなに楽しいんだコイツ? 等と、ソワソワしっぱなしな朱乃に許可を貰い、ポニーテール風に結ってるリボンを外し、リアスとソーナに使った櫛とは違う櫛を取りだし、せっせと……やはり丁寧に髪のお手入れを開始する。

 

 

「リアスに近い髪質ですか……いや、どちらかと言うとセラフォルーですねこれは……」

 

「そ、そうなのですか? というか今セラフォルー様と言いましたが、あの方の髪も?」

 

「やらなきゃ永遠に私の名前を連呼しながら泣きわめくので、仕方なく……」

 

「あの時のお姉様の本気っぷりは凄まじかったわね」

 

「懐かしいわ、一誠がセラフォルー様に招待されて仕方なくお仕事場に行った時の話。

あの時の一誠は小猫より背が低くて……」

 

「え!? そ、そうなんですか!?」

 

「そうよ。最近眷属になった子達は知らないでしょうけど、ほんの二、三年前の一誠ってランドセルが寧ろ似合いそうな子だったの。

姫島さん辺りは知ってるでしょう?」

 

「え、ええ……でも私なんかはそんなに頻繁に顔を合わせられなかったですので」

 

「……………」

 

 

 然り気無く自分のことが暴露され、後で覚えてろよテメー等……と無言でリアスとソーナを睨みながらもやはり丁寧な手つきで朱乃の髪を整えてあげる一誠。

 

 

「髪に触れて貰うだけだと嘗めてましたが…………ん、ぅ……ぁ……これは癖になりそう……」

 

「…………」

 

「い、良いなぁ朱乃副部長……私もあの時パーを出してたら……」

 

 

 その過程で少し喘ぎ始める訳だが、それでも無言で続ける辺りは仕事人を思わせる。

 

 

「お風呂で髪を洗って貰う時なんかこれの比じゃないわよ?」

 

「もっと言えば身体を洗ってくれる時は――」

 

「ま、ままま、待ってください会長!? 今なんて!?」

 

「? だから身体を洗ってくれる時は、このまま襲って欲しくなるって……」

 

「日之影ぇぇ!! お前マジか!? マジなのか!? 会長の身体……いやはだ、裸見てるのか!?」

 

「………………………………………。一応は。あの、ですが誤解しないで――」

 

「ちくしょう!! お前ホント何なんだよ! この前は泥酔した挙げ句アレするわ! 会長の裸見放題だわ! くれよそのポジション!」

 

「……………………」

 

 

 自分に恐れず、寧ろ突っかかってきた匙にちょっと驚いてしまうのと同時に、こんな眼鏡のじゃじゃ馬のどこが良いんだ? と割りと辛辣に匙の趣味をディスる一誠。

 最初はテンパってた癖に、リアスに誑かされて以降は寧ろやれやれとやかましい。

 変な所がセラフォルーの妹を感じさせるソーナの一体どこが良いのか……。

 

 贅沢ものの一誠にはよくわからない……これ以上深く他人と関わるのが怖い一誠には理解できないものだった。

 

 

「ちなみに、ふふ……素手で洗ってくれるのよ一誠って」

 

「はぁ!?」

 

「それ本当なんですの?」

 

「洗えと言うからそうしてますけど……えっと、なにかマズいのですか?」

 

「マズイに決まってんだろ!? てことはお前、アレか!? か、会長の胸とか……」

 

「胸? あぁ、前も洗わされてますが……」

「一発だけ頼むから殴らせてくんね!? 頼むから!!」

 

「…………………」

 

 

おわり。

 

 

 

 

 

 

 とまあ、色々と犠牲にしてカモフラージュを固めた一誠は、対黒歌の為の特訓を小猫にみっちり仕込む。

 その過程で小猫はスキルという、一誠達が立つ未知の領域を知り、その領域への渇望を抱く。

 

 

「姉は仙術を扱う。私はその使い方をまだ知りません。けれど、仙術を覚えるよりも私は先輩達の持つ領域に入りたい……」

 

「…………」

 

 

 肉体だけではなく『自分の本質』を知る精神的な鍛錬も行う小猫は日が経つに連れて強くなる。

 しかしスキルを手にするには決定的な何かが足りない。

 

 

「何が私には足りないのでしょう……」

 

 

 悩む小猫。

 しかしそうこうしてる内に痺れを切らせた黒歌が悪魔に利用されてると勘違いしたまま再び姿を見せる。

 その横には例の赤龍帝も。

 

 だがこの小さな戦いが小猫を劇的に変化させた。

 

 

「食べる。立ちはだかる壁も、辛さも、理不尽を、全てを喰らって私の糧にする。

そう……これが本当の私であり、私の持つスキル……!」

 

「し、白音……!?」

 

「お、俺の放った力を食っただと……?」

 

「赤龍帝の力と期待してましたけど……ぺっ! ぺっ!? なんですかこれ、超絶に不味いんですけど! 酷すぎて食べる価値すら感じませんよこれじゃあ」

 

 

 そう、ネオへと。

 

 そして……。

 

 

「ふーん、一誠様を追い掛けたらとんだお邪魔猫が……しかもこの前の時よりも明らかに変質してますわねぇ?」

 

「最初から気にくわなかったアナタを捻り潰す為にここまで来ました。

大人しく私にしゃくしゃくされて隅っこで泣いてろ雌鳥……!」

「少し我々の領域に足を踏み入れた程度の雌猫さんが随分と強気な事で……。

良いですわ、一度教えて差し上げましょう……アナタが踏み込んだその場所よりも更に上に一誠様や私は居るのだとね!!」

 

 

 始まるは猫と鳥さんのガチ喧嘩。

 

 

「私は姫島朱乃として生きる。

生き方を選ぶのは自分と教えてくれた一誠くんに報いる為に私は私として……!」

 

 

 燻っていた少女もまた偉大な少女へと踏み込む。

 

 

「跪け……いえ、平伏しなさい……!」

 

 

 ドS故に……。

 

 

「リアス、アナタの特性を私は自分のこれを応用することで手に入れましたわ。

ふふ、もうアナタやソーナ様や小猫ちゃんに先を越されっぱなしじゃあありませんわよ?」

 

「……なじみの言ってた創帝(クリエイト)―――の亜種か?」

 

 

嘘んご

 

 

 

おまけ・やらかし執事……所詮ハーレムなぞ幻想。

 

 

※本編とは関係ない

 

 

 

 間違いなくストレス性胃潰瘍になってしまうだろう極限の神経すり減らし生活の第1日目。

 一人一部屋に一騎当千のアホ達が集わせ、尚且つバレずにフェードアウトさせる為の試みの為に、サーゼクスとの喧嘩よりも限界突破した全力を出す一誠は最早デフォルトで光化静翔を使っていた。

 

 

「え、あまり外へ出歩くな?」

 

「何で? それじゃあ買い出しにもいけないじゃないし料理もできないじゃない」

 

 

 8股アパート第一号室、リアス&ソーナ。

 最も歳が近くて距離感も近いこの二人相手なら特に緊張なんてせずに話が出来たりするのだけど、この時に限りは全神経をすり減らしてる最中なので物凄く下手に出ていた。

 それはもう、普段がまるで幻想だったくらいに。

 

 

「さ、最近物騒だし、買い出しなら俺が行くからよ……」

 

 

 四畳半のワンルーム部屋の手狭なシャワー室があるだけの質素なアパートでの夕飯はリアスとソーナの合作で別にダークマターでは無い。

 口に入れても目が焼ける様な痛みも無いし味もまぁ普通とも言えなくもない……のは置いておき、とにかく下手に出歩かれて周りにバレたらそれで終わりな為、二人に対してあまり外に出るなと下手に出る一誠。

 

 それが功を奏したのか、二人は嬉しそうに頬を染めている。

 

 

「もしかして心配してくれてるの?」

 

「前までは寧ろほったらかしにしてたのに?」

 

「そ……そりゃそうだろ! こんな良い女が二人も歩いてたら男が群がってくるだろっ!」

 

 

 内心『じ、蕁麻疹が……』と自分の言動に寒気を感じるのを我慢しながら半ばヤケクソに褒めちぎる。

 見た目はともかく中身がだらしないことを知ってるのか、それとも美男美女しか周りに居なさすぎて目が肥えすぎてしまったのか、リアスとソーナを前にしても寧ろ悪いところしか見なくなってしまった一誠はちょっと声が裏返ってるのだが、言われた本人達は心底嬉しそうに……。

 

 

「「やだ~一誠ったらぁ!!」」

 

「ぐえっ!?」

 

 

 照れの延長線で力加減を間違えて叩いた瞬間一誠の身体は真横の壁に向かって吹っ飛び、顔面が壁にめり込んでしまった。

 

 

「で、でも買い出しもお嫁さんの仕事だもの!」

 

「私達は決めたのよ、例え勘当されても一誠を支えていこうって!」

 

「…………」

 

 

 スキー大ジャンプから同棲を提案されていこう、急激に進化の速度が上がり、平行してマウンテンゴリラを遥かに超越した腕力にまで至っていたリアスとソーナの照れ隠しの一撃は、不意とはいえ一誠すらをも吹き飛ばすまでになっており、首から上が壁の向こうに貫通した一誠は驚きと焦りのせいで嫌な汗がとまらない。

 だって隣は……。

 

 

「あ、おかえりいーちゃん!!」

 

 

 セラフォルーの部屋なのだから。

 壁を貫通して一誠が出てきたというのに、セラフォルーは疑問に思わず寧ろ嬉しそうにはにかみながら帰還を喜んでるのは天然なのか、それともアホなのか……。

 

 

「ご飯にする? お風呂にする? それともわ・た・し――いぃん!?!?」

 

 

 夕飯よりもお風呂よりも自分を食えとばかりに、いきなり服を脱ぎだした瞬間、反射的に一誠はセラフォルーの両目を突いてしまうのも仕方ないのかもしれない。

 

 

「ぎゃー! 目がぁ!? いーちゃんの愛が痛いぃぃ!?!?」

 

 

 

「だ、大丈夫一誠!?」

 

「ごめんなさい! つい力加減が……でもおかしいわね、一誠がこんな程度で吹き飛ぶなんて……」

 

「だ、だだだ、大丈夫だよ! 問題ねぇ!!」

 

 

 のたうち回るセラフォルーの部屋から戻り、即座にベニヤ板で壁を補強する一誠の汗は半端じゃなく、顔色も悪い。

 

 

「凄い汗だけど本当に大丈夫なの?」

 

「まさかお隣に怒られちゃったとか……」

 

「問題ない! 今謝ったから!!」

 

 

 もうとにかく全てを隠さなければと必死な一誠の地獄はまだ続く。

 これでまだ半分にも満たないのだから……。

 

 

「せ、セラフォルー! だ、だだだ、大丈夫か!?」

 

 

 取り敢えずソーナとリアスを大人しくさせる事に成功し、即座に先ほど目を思わず突いてしまったセラフォルーの部屋へと今度はちゃんと玄関から入った一誠。

 咄嗟の事とはいえ、流石に罪悪感はあったのか割りとバツが悪そうな顔だったが、意外な事にセラフォルーの両目は無事だし怒ってはなかった。

 

 

「あ、大丈夫よいーちゃん。

それよりさっきは何で隣の部屋から?」

 

「い、いや隣が五月蝿かったから文句を……」

 

「ふーん? お隣さんってどんな人なの? 私今日の朝挨拶しようとしたけど留守で……」

 

「は!? お、お前挨拶なんかしたのかよ!?」

 

「うん、でもどこのお部屋も留守だったけどね……どうしたのいーちゃん?」

 

「だ、ダメだ! 挨拶なんかすんな!」

 

「ええ!? 何で……?」

 

「ど、どこの部屋も変態男が住んでるんだよ! なのにお前みたいな女が居るなんて知られたら何されるかわかんねーだろ!? 絶対ダメだ! 俺がやる!」

 

 

 まさか隣に実の妹と幼馴染の妹という知り合いどころじゃない存在や幼馴染の母や幼馴染の妹の下僕やライバルの魔王の嫁が居るなんてバレたらそれで全てが終わるので、一誠は咄嗟に嘘をつきながらセラフォルーを納得させようとする。

 

 

「変態さんが? でも私にそんな事するなんて……」

 

「ダメだっつってんだろ!? お、お前が他の男にそんな目で見られるだけでも我慢できねぇ!!」

 

「え……?」

 

 

 『うお、今世紀最悪の台詞だこれ……』と自己嫌悪に陥りながらもとにかく納得させようとアレコレ言う一誠の言葉が意外だったのか、それまでハシャイでいたセラフォルーが惚けた顔で顔色の悪い一誠を見つめる。

 

 

「う、うん……いーちゃんがそう言うならやらない。

け、けど嬉しい……そんなに大事に思ってくれるなんて……」

 

「あ、うん……」

 

 

 『あれ、何か反応が思ってたのと違う?』と思いつつも取り敢えず黙ったので良しとする事にしてホッと胸を撫で下ろ――

 

 

「ん……いーちゃん……このまま好きにして良いよ?」

 

「だから服を脱ぐなぁぁぁっ!!」

 

 

 ――せず、寧ろ行き遅れ寸前の魔王少女のイケイケっぷりに拍車をかける事になってしまったらしく、もじもじしながらも服をまた脱ぎ出したせいて一誠に安息はなかった。

 

 

「最初はあんな形だったけど、今思えばそのお陰でこうする事ができたし、それも良かったかも……。

ね、いーちゃん……しよ?」

 

「いやいやいやいや! この前言ったよね!? そういうのはもう少し色々と解決したらって! 何でいきなり女の顔するんだよ!? もっと何時もみたいにアホっぽくしろよ!?」

 

 

 

 

 

 

終わる




補足

ネオ白音たんが最初から味方とか、敵さん涙目だろ……てか、どう足掻いてもこれチートっすよね。

仮に覚醒した場合。
知らない方に補足……

暴因暴喰(ネオ)

あらゆる事象を喰い尽くして糧にするスキル。

元ネタは某トリコの悪食ラスボス。

その2
転生者的に執事として生き延びてた一誠は死ぬほど嫌いらしい。

その3

そんな転生者がリアスさんディスってたのを知った執事は無意識にキレかけてます。

てか、割りとなんやかんやリアスさんとソーナさんに本編で描写された通りに甘いです


番外補足

元ネタも胃潰瘍レベル。

そしてこっちはほぼ全員がその気アリな為、気を抜くと泥沼にどんどん沈んでいく。

悲しいかな、魔王少女が一番女の子やってるという……。

ちなみにヴェネラナ様と小猫たんとギャスパーちゃまグループは割りと大人なので何とか誤魔化しで今回は切り抜けられた模様。
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