人間界のこの街は私がお兄様に命じられ、管理を任されているグレモリー家の領地である。
とはいえ、グレモリー家の領地という事実を一般人は知らないし、『私が任せられた領土で好き勝手するな!』等と偉そうにするつもりは無い。
管理を任されているだけに所詮は過ぎないし、この地に住む人間に対価を代わりに願いを叶える仕事に精を出さなければならないし、何より此処は人間界だ。
許可もなく別勢力が入り込んだら警告するとか、悪さしてたら懲らしめるとか……そうやって人間との信頼関係を結んだ方が偉そうにふんぞり返って威張るよりよっぽどすべき事なのだ。
特に注意しなければならないのは、力に溺れ、主から逃げ出して好き勝手やるはぐれ悪魔だ。
どんな理由であれそのはぐれ悪魔が人を襲ったら悪魔の沽券に関わるので、それを事前に防ぐ……それが主な私、いや私達の仕事なのよ。
まあ、はぐれ悪魔に関しては町中にアンテナを張った警備を毎日してるので、最近は殆ど出てこないんだけどね。
その代わりに、平和ボケしない為にも私達はとある事をしている。
それが……
「今日もお願いするわ一誠」
「………………ん」
その日はまたまたやって来た兵藤イッセーをまたまたまた追い返し、何時もの様にはぐれ悪魔や他勢力の者が無許可で侵入して良からぬ事をたくらんでないかと地道な警備を終えた後のお話だわ。
これもまた一誠が引き受ける義理も義務もないのだけど、私達はハッキリとまだまだ未熟で弱い。
「メニューは任せるわ、厳しくお願いね?」
「「「……」」」
故に私達は一番近くに居て一番強い男の子こと一誠に鍛練に付き合わせている。
お兄様に負けてしまうとはいえ、それはお兄様が一誠以上に強いからであって、正直な所一誠が他の存在に負ける姿がイマイチ想像できない。
だって、武器と宣ってそこら辺に落ちてる消ゴムを敵に投げ付けたら敵の身体が四散してエグい事になるわ、エンピツで相手の胴体を真っ二つにするわ……。
これに勝てるお兄様が一誠と同等の性質で悪魔の中でも異常中の異常だからであって、私や勿論……正直お兄様以外の魔王様なら一誠単騎で倒せると思う……うん、かなり失礼だけどそれが事実なのよね。
だからこそ、感覚が麻痺し過ぎて今更赤龍帝がどうとか言われても『ふーん?』としか思えないのよね……困ったことに。
「……………」
「「「お、お願いします!!」」」
文字通り余裕な態度で脱力して立つ一誠に、朱乃・祐斗・小猫が頭を下げている。
最初は私一人が一誠に付き合わせていたのだけど、気付けば三人も一誠に教えを乞うスタンスとなっており、頭を下げる三人を一誠はチラッと見るだけでやはり無言だが、表情は『勝手にしてくれ』って言う顔だわ。
声に出して言えば良いのにと突っ込むは今は野暮かしら……とは思うものの、この人見知りな一誠が唯一三人に声を発する時間なので余計な事は言わないわ。
ほら、ジャージを着ている私達に対して汚すことも汚されないという絶対の自信を示すかの如く学園の制服のままの一誠が一つ深呼吸をすれば――
「………。何時もの通り、最初は全員で掛かってこい。
そろそろ俺の制服に砂の一つでも付けてくれることを祈るぜ?」
急に流暢に……対人恐怖症を拗らせたとは思えない挑発を私達全員にニタニタしながらする。
ホント……戦う時だけは元気なんだから。
一誠くん。
私がグレモリー家に保護されてリアスの女王になる前から居た人間の男の子。
凄く無口で、そろそろ7~8年以上彼の近くに居るのだが、まともな会話をしたことも無ければ、私の前に立っただけで吐き気を訴えられたこの前の時はかなり凹んだ。
「っ……ふぅ、はぁ……あ、当たらない……」
「当たり前だ、避けてるんだぞ? 貴様等は敵に『当たってください』とお願いしてから攻撃するのか? え?」
「い、痛いところを突きますね……」
「……。毎回だけど、そこら辺に落ちてる小枝で僕の剣を簡単に粉砕されると自信が……」
私と小猫ちゃんと祐斗君がどれだけ攻撃しても、連携して当てようとしても一誠くんには掠りもせず、更にはその場から一歩も動かず捌くのだ。
いえ、当たった所でヘラヘラと笑って平然としてる様を前に見せ付けられた事もあるので無意味なのだが、無意味だから諦めるとかはしない。
というか、一度三人で弱音を一誠くんの前で吐いたら崖から海に投げ捨てられた事があり、暫くは完全に私達を居ない扱いしてリアスとだけ流暢に会話してるのを見せられては二度と弱音は吐かないと決めたけど……情けないことにもう私と小猫ちゃんと祐斗君は動けないわ。
唯一リアスはまだ一誠くんに攻撃を仕掛けてるけど……援護すら出来ないなんて本当に情けないわ。
「見なさい!
これが一誠直伝・黒神ファントムにお兄様と同じ滅びの力を加えた奇跡のコラボ技よ!」
そんなリアスは、何時もの紅い髪が真っ黒となり、自身の姿を何十にも分身させながら一誠くんを囲い、殺しかねない力を全力で撃ち込む。
常人が受けたらそれだけで存在が消滅するだろう強い一撃が四方八方から一誠くんを襲うも、それでも一誠くんは全く動じず……。
「意外と扱いが上手くなったな……と小並程度には思うよ」
「う……一切迷い無く真顔で見切られて言われても嬉しくない」
分身して撹乱してるリアスの本体を当たり前のように見抜きあっさりと捕らえてしまう。
……。手首を掴まれ身を寄せられたリアスは真っ黒だった髪を元に戻して拗ねたように目を逸らす。
どうやら今回もまた一誠くんに触れさせては貰えなかったみたいだ……全員ね。
「うーん……やっぱり元は一誠が好んで使う技だから見切られちゃうのかしら」
「教えておきながら見切れないなんてカッコつかんだろ」
「あーぁ、今日こそ一誠に一撃当てようと思ったのに」
一誠先輩。
朱乃先輩と祐斗先輩……そして私や今は居ないギャーくんを含めた眷属よりも更に前から、リアス部長と付き合いのある人間の男の人。
無口で無愛想、それでいてこんな時しか喋らないしその時の言葉遣いは乱暴。
けれど私達はそんな一誠先輩を信頼してる。
例え同じ眷属じゃなくとも、無愛想であってもリアス部長を私達以上に黙々と助ける姿が理由だけど、何だかんだで私達にも一定の親切をしてくれるからというのが大きい。 …………。普段は全然会話をしてくれないのが寂しいし、鍛練が終われば一誠先輩はリアス部長としかお話ししなくなる。
「あ、あの一誠くん……今日もありがとうね?」
「……………………………………」
「え、『暇だから付き合っただけなんで』と言えって? 相変わらず鍛練が終わるとコミュ障モードになるわねぇ……」
「……。……………」
「え、『コミュ障じゃねぇ、茶番に付き合う以外に声だして話す理由がねぇんだよ』って? またまたそんな事言って……」
ほら……祐斗先輩が直接お礼を言っても今の一誠先輩はリアス部長に耳打ちして代弁させるだけで、もう私達とは目を合わそうともしない。
何でも、小さい頃にあったトラウマのせいでリアス部長やその家族以外を信用しないらしいのですが……。
「………。……………。」
「なに? 『揃って俺を見るな、大の男が貴様等の目の前で胃液をぶちまけるぞ』ですって? ……典型的な対人恐怖症じゃないのそれ」
「あ、ご、ごめんよ?」
「……。なるべく見ないようにしますわ……」
「……………」
決して短くは無い付き合いなのに、こうまで壁を隔てられると寂しいです。
祐斗先輩も朱乃先輩も一誠先輩と仲良しになりたいなと思うのに……。
少し昔話をしましょうか……。
リアスには変わった男の子――それも悪魔に転生していない人間の男の子が傍に昔から居た。
私がそれを知ったのは、グレモリー家とシトリー家の親睦会の時でしたね。
兄と姉が魔王であり、その縁で所謂幼馴染という関係だった私とリアスは歳が一緒の事もあって仲も悪くは無かったのですが、その時彼を見た感想としては――
『複雑な事情をお持ちでグレモリー家にお住みになられてるとか……。
あ、ご紹介がまだでしたね……私はソーナ・シトリーと申します。お話はリアスとサーゼクス様からかねがね……』
『……………………………………………………………………………………………………………………』
まっ…………………………たくの無口。
グレモリー家の城の中庭の隅っこで、一人原始的な筋力トレーニングをしていたまだ私やリアスより小さかった男の子は、姉と一緒に聞いたことのある『人間だけど僕達家族と何ら変わらない』とまで言われていた事を思い返し、どんな人なのかと思って話し掛けてみれば、返ってきたのは『露骨なまでに嫌そうな目』を一つ寄越しただけで全く口を開かない。
……。まあ、当時私も子供の中の子供でしたので、開幕直後にそのような態度をされてしまい不愉快にならなかったと言えば嘘になりますし、正直第一印象としては最悪でしたね。
『あー……うん、だと思ったわ。
あの子と話せるようになるまでかなり苦労するわよ? 私だって初めはそうだったもの』
なんてリアスが『やっぱりね』と分かってましたな顔付きでフォローをしてましたが、あんな社交性ゼロの人間の男の子に対する印象が私の中では回復せず、グレモリー家に滞在している間は一切男の子を見ないことにした。
まあ、色々と当時から悪ふざけが多かった姉が、その性格そのままに男の子に絡んだ時にですら、『姉の氷の力より凍てついてた無言の視線』で封殺してたのはちょっぴりだけ感心しましたが、それでも結局食事の席でも何処でも一切喋らずの男の子に対する印象は平行線だった。
『よし、じゃあ食事が終わったら僕とセラフォルーソーナさんとリアス――そして一誠くんでトランプで軽いゲームをしようか!』
『……………………………は?』
そんな時でしたかね、私達のギクシャクした雰囲気を察したサーゼクス様が突如そう仰られたのは。
無言で無愛想――そして食事マナーに真正面から喧嘩を売るような食べ方をしていた男の子――一誠くんもサーゼクス様の言葉に初めてポカンとした年相応の顔をしながら、これまた初めて年相応の声変わり前の少年声を放つ。
『なぁに、食後の軽いゲームさ……。何時もは僕が挑戦を受ける側に回ってるし? たまには僕がキミに勝負を挑もうかなって』
『あら、楽しそうですわねお兄様。勿論一誠もやるでしょ?』
『は? ふざけんな、俺はこの後修行を――』
『思考を鍛え、戦略的な戦い方を養うくらいなら出来ると思うけどなぁ……。あーぁ、僕から逃げちゃうのなら別に――』
『ババ抜きか? それともポーカーか? へっ、ぐぅの音も出ないくらいにぶちのめしてやるわ』
当初嫌だと言い張るつもりだった一誠くんという男の子にサーゼクス様が意地悪そうにニヤニヤしながら煽った瞬間、フォークに突き刺した厚いステーキを下品に喰らいながら立ち上がると、ゴキゴキと首と手首の関節を鳴らし始め、結局訳もわからず見ていた私や特に考えず『楽しそうだね! やるやるぅ!!』とノリノリなお姉様を加えて、食後のトランプは開始された。
『公平にゲームを進めるため、シャッフルと配布はこのグレイフィアが仕切りますわ』
『よし来た! 頼むよグレイフィア』
『……………………』
『一誠……。そんな血走った目をしないでよ……親睦の意味も込められてるのに』
『知るか』
夕飯が終わり、手早く用意された5人が丁度囲えるテーブルに座った私達は、リアスの父と母と私達の父と母による異様にほんわかした視線に晒されながらトランプゲームがスタートした。
『よーっし! 負けないためにこの魔法のステッキで念じちゃうもんね!』
『お姉様……グレモリー様のお城では控えてください。恥ずかしいです……』
ルールは一誠くんも熟知している大富豪。
全5回戦……Jバックあり、8切りあり、ジョーカー上がり禁止、大貧民のみ大富豪とのカード交換。
サーゼクス様の奥方であるグレイフィア様にルールを説明された私達は全員頷き、手際よくカードが配られ……いよいよ唐突なる大富豪は幕を明けた。
のだが。
一回戦
『4の革命……。(ふっ、手札はやばかったが、これで下克上となり、後はこのツーペアの3でフィニッ――)』
『あ、9の革命返しします』
『…………………………なっ!?』
2回戦
『ぐ……ぐ……!』
『どうしました? さっさとカードを寄越してください』
『ちっ……』
『どうも。ぁ……(ジョーカーと2……)』
3回戦
『………………。上がりです』
『またソーナちゃんの一位かぁ! うーん、今日のお姉ちゃんは運が悪いかも』
『ま、僕は無難3位だ』
『やった……2位を維持よ……!』
『…………………………………………………………………………………』
4回戦
『く……………ぐぅ……!』
『あ、あの……辛かったら止めた方が』
『(ギロッ)よ、4のスリーカード……!』
『あ、Qのスリーカード出します』
『………っ! っ~~~~~~~!!!!!』
『あら。
ずっと大富豪のソーナに一誠が殺意剥き出しですよお兄様……涙目になってるし』
『~~っ!! ふひっ!!』
『サ、サーゼクスちゃん……?
笑いを堪えすぎて変な声が出ちゃってるよ?』
結果、異様なまでに私が首位を独占し、一誠くんが最下位ぶっちぎっていた。
最早作為的な何かを感じもしたが、グレイフィア様がわざわざ一回戦毎にトランプを新品にしてるので、それは無い。
つまり私の運命力が単純にその日良かっただけなのだ……そのせいで一誠くんに完全に敵意を剥き出しにされてしまっている訳ですが。
だからと云って接待プレイなんてしない。
何よりトランプと言えど勝負だし、個人的にこの男の子に良い印象は無かったのだ。
ちょっとした意地悪したい気持ちもあり、5回戦も全力で挑むつもりです……すごい形相で睨まれてるし。
ですが、その油断した気持ちが仇となったのか……それとも彼の執念がそうさせたのか――
『あ、一誠が一位?』
『み、みたいだね……ブフッ……』
『あちゃー……結局私一位になれなかったなぁ……』
『……………………』
『私が大貧民……ですか』
最後の最後……大貧民の捨て身の執念に私は身を貫かれ、大富豪から奈落へと転落した。
とはいえ、それでも総合的な順位は私がトップ不動のままでしたので余りショックでもありませんでした。
『…………フッ』
ですが……。
『……く……フフッ』
『え、一誠?』
『………?』
どうやら一誠くんにとっては――
『フッハハハハハ!!! 勝った、勝ったぞぉぉっ!!!』
意味のある勝利だった様で、乱雑に積み重ねられてたトランプごとテーブルを叩きながら椅子に乗り上げると、心の底からと私でも分かるような歓喜に満ちた顔をしながら高らかに笑い始めました。
グレモリー卿と奥方……私達の父や母達と同じく姉と私とリアスとグレイフィア様までもが呆然としながら行儀悪くテーブルの上に立つ一誠くんを見つめる。
『ククッ……お、お腹が痛い……! ぷっくくくく!』
唯一サーゼクス様だけがお腹を押さえて堪えてましたが、それでも私を含めたその他全ての者達は、人間の男の子でしかない一誠くんの『ちょっと引く』歓喜の表現をただただ見てるだけしか出来なかった。
『あははは! あはははは!!!』
『い、一誠? ちょーっとお行儀悪いわよ?』
『わ、笑うんだねこの子』
『……』
押さえ込んでいた感情を爆発させたとしか思えない大笑い。
それは初めて目にして今さっきまで想像も出来なかった彼の感情であり、更には――
『ざっっっっっまぁ見ろ! いい気になってスカしやがってこの大貧民めが!!』
物凄い勝ち誇った顔で私を見下し、罵倒してきたのだ。
4回も負けといて。
『なっ……』
『ちょ、ちょっとソーナちゃんにそんな――』
『あ? 何だよこの万年貧民イタ女めが!!』
『グサッ!?』
流石に酷いとお姉様が口を挟むも、一誠くんは中指まで立てながらニタニタとお姉様まで罵倒し、テーブルから降りると呆然と思考が上手く出来ない私に最後――
『……。次は完全に勝利してやる……首洗って待ってろよソーにゃ――ソーナ・シトリー! ふはははははは!!』
思いきり私の名前を噛みつつ、初めて名前を言ってからさっさと大広間から消えてしまった。
『…………。なんだったのでしょうか……』
『ひーっひっひっひっ!! あーっはははは!!』
『お、お兄様……お下品ですよ』
『万年貧民イタ女……万年貧民イタ女……。痛く無いもん、この格好が正装なんだもん……』
罵倒された認識はあるが、何故か怒りが全く沸いてこない。
サーゼクス様はテーブルを叩きながら爆笑し、リアスはそんなサーゼクス様にドン引きし、お姉様は一人でブツブツ何かを言ってる中、逃げるように去っていった一誠くんの認識を無口で無愛想から――ただ変な男の子へと変わっていく。
『ふっ……まさかシトリー殿の娘さんが彼の感情を引き出すとは』
『えぇ、私達ですらリアス以外はまだ気難しい態度ですのに……分からないものですね』
『ふむ、サーゼクス殿と互角に闘うと噂される人間の子供をソーナが……。
いやはや、我が娘ながらよくやったものよ』
『ええ……』
『というかソーナも凄いわねぇ。あの一誠の感情をあそこまで剥き出しにさせるなんて』
『え、い、いえ……私には何が何だか……お姉様のダメージの方が酷いし……なにもしてないし』
『ブツブツ……いっそテレビ出演させて魔法少女の素晴らしさを……ブツブツ……』
これが名前すら奪われた一誠くんとの初めてです。
まあ、良くも悪くも一誠くんは極度の負けず嫌いで、サーゼクス様に負け続けてるからグレモリー家の御厄介になってるとか。
そのサーゼクス様と本当に互角の戦いをしてるのを目の当たりにしたり、お姉様とも闘う事になった時は、お姉様に対抗したつもりで持ち出した『対魔・竹尺の杖(人間通貨230円)』で本当に勝利して見せたりと……まあ、彼と会ってから今まで色々な事を見せて貰いましたよ……。
「あ、一誠くん。
リアスと一緒じゃないのですか?」
「……? って、お前か……。
は、四六時中あのじゃじゃ馬に向き合うつもりは無いね。
サーゼクスからの罰ゲームだって最低限仕事はこなしてるし文句言われる筋合いはない」
気付けば私はグレモリー家以外の唯一例外として一誠くんとの会話が成立する存在となった。
どうも、あの時のトランプでライバル視されたらしい。
「そういえばリアスの言うとおり来ましたよ、兵藤イッセー
悪魔に転生して会長のお手伝いをしたいとか何とか……と」
「……。リアスが無理となったら今度はお前の所か……」
「当然断りましたけどね。そもそも眷属の数は間に合ってますし、転生する駒も少ないから無理なんですよ」
「だろうな」
あの時を考えると、こうして人間界の高校の廊下を並んで歩きながら他愛もない会話をするなんて思いもしませんでしたね。
けど為せばなる――あのトランプで偶然にも彼の風上に4度立ち続けたからこそ名前を覚えられ、ライバル視されたからこそ結べた不思議な関係なのです。
余程の事がないと心を全く開かないけど、開いた相手には律儀に尽くす不思議な不思議な男の子。
兵藤イッセーという『成り代わりの存在』というのに名前から全てを奪われ、他人を怖がる癖に悪魔より悪魔らしい強さを日々高める人間の男の子。
「ねぇ、今日『一誠』とリアスのお家にお邪魔して良い? 最近はお互いに忙しくて三人で集まって何かすることが無かったじゃない?
だから久々に三人で出来るトランプでも……」
「………。リアスに聞けよ……俺は寄生してるだけだしな。
まあ、来てトランプしても俺がぶちのすよ――今日こそな」
「ふふ……394戦393敗してるのに? 初めての時のアレ以降勝ててないのに?」
「…………。絶対来い……泣かせてやるぜ」
「あはは♪ なら私が勝ったら前みたいにマッサージでもして貰おうかしら?」
「上等、何だってしてやらぁ……!」
知れば知るほど子供っぽい……放って置けない男の子。
それが私が想う一誠という男の子だった。
軽く挑発すれば直ぐに乗ってきた一誠に内心ニヤリとしながら『ではまた夜に』と言って別れた私は、絶対に負けてあげないと誓いながら、今日の夜を楽しみにするのだった……。
因みにその後の夜は――
「ぐっ……ぐぅ……」
「Kのスリーカードよ」
「パ、パス……」
「あらそう? それならAのスリーカードと3のシングルで私の1位ね?」
「ぐがぁぁぁぁっ!!!」
当然大勝ですよ……私のね。ふふふ……♪
「まーたソーナの1位ね……。今夜だけで一誠に対する『お願い券』が40回分は増えたわよ?」
「う、うるせぇ!! ポーカーだ、次はポーカーで……!」
「その前にマッサージしてください一誠。
266回分のお願い券を一回使用します」
「うぐっ……!? ち、ちくしょう……そこに寝ろ!」
1度だけでも勝つまでやめようとしない一誠にマッサージをお願いする。
リアスが何か羨ましそうに眺めてるが、アナタはこんな手を使わなくても毎日お願いしてやって貰ってるのだから良いじゃない。
「ぁ……っ……ん……! 相変わらず上手ですよ、いっせ……ぇ……♪」
「テメーまで気色悪い声出すなや……クソ……!」
「ホントこの手の勝負だとソーナに弱いわよねぇ……」
長い間座りっぱなしで凝り固まったら身体を一誠の指が解していく……これがまた癖になるくらいに上手なんですよねぇ……はぁ……♪
「タイマンだったら勝てるのに……」
「あら、鍛練でもないのに幼馴染みの女の子を殴るなんて酷いわよ一誠? リアスもそう思うでしょ?」
「大丈夫よソーナ。言ってるだけで本気じゃないから一誠は」
「まあ、そうです……ね……あふぅ……♪」
「こ、このアマ共……! 知ったような事を……」
「「まあ、子供の頃からの付き合いですから?」」
「るせっ!! ステレオでいうな!!」
終わり
今更補足も無いか……