執事一誠の憂鬱   作:超人類DX

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前半ほのぼの、ラストらへん急展開。




ようこそ人外の領域へ

 木場祐斗にとって、聖剣というのは自分の人生を破壊した元凶のひとつだと思っている―――――のと同時に、出会いの理由とも思っていた。

 

 身体を弄くられ、励まし合った仲間を手に掛けられ、生き残ってしまった自分に差し出された悪魔の手。

 

 その手を取り、騎士として再生した先に居た人間のままの同い年の少年。

 

 木場祐斗にとって、聖剣自体も憎いが同時にそれがあったからこそ今の己があることも自覚していた。

 勿論聖剣は嫌いだし、自分達の尊厳を踏みにじった当時の連中は許せない。

 

 だからこそ木場祐斗は失敗作なりに力を磨き、その時が来るまで待った。

 そしてその時は今まさに――目の前に。

 

 

「木場ァ、お前そんな過去があったんだな……」

 

 

 この町に奪われた聖剣がある。

 教会から派遣された二人の悪魔祓いにより知る事になった木場祐斗は当初秘めていた復讐の念が雄々しく己の中に燃え広がった。

 この町に持ち込まれた七つに別れた聖剣も悪魔祓いが持つ内二つの聖剣も出来ればこの手で破壊したい。

 

 だが復讐の赴くままに行動するには木場祐斗は剰りにも知ってしまった。

 

 主であるリアス・グレモリーがどれだけ自分を案じているのか。

 仲間達がどれほどに心配してくれるのか……。

 

 

「うん……」

 

「…………………」

 

 

 そして未知なる領域に居る同い年の少年。

 周囲の人物達によりもたらされた環境が木場祐斗少年に冷静さを与え、考えなしに突っ込む事を止めた。

 

 それが良いか悪いのかは分からない。しかし木場少年の周りに居る者達は全員、その復讐について否定するものは居なかった。

 

 

「祐斗に命じるわ。

堕天使コカビエルがこの町に潜伏しているから、町全体のパトロールと警護を行いなさい。

その際『偶々』聖剣らしきものを見つけた場合は町の人達の安全最優先とし、必要なら破壊しても構わない。

責任は私が全て取るわ」

 

「!? 部長……!」

 

「ふふ、皆まで言わないでいいわ。

モタモタされて町が破壊されてからじゃ遅いし、あの悪魔祓い二人だけじゃ不安ですもの」

 

 

 同情する者、遠回しに後押しする者。

 仲間に恵まれた木場祐斗は王のリアスの言葉に喜ぶ中、最高峰の後押しが追加される。

 

 

「待って、アナタ一人だけじゃもしもの時に危険だから協力者を取り付けるわ。

…………。祐斗に付いてあげられるかしら一誠?」

 

「え!?」

 

 

 リアスがその名を呼び、駒王学園の制服に身を包む一誠が無言で一歩前に出る。

 まさかの人選に驚く祐斗だが、内心ちょっとワクワクしていた。

 

 

「暫く修行を中断しますが宜しいでしょうか姫島様?」

 

「勿論、祐斗くんの事よろしくお願いします」

 

「副部長……」

 

 

 使いこなしたのか、すっかりご奉仕モードとなってる一誠の確認に対して現在マンツーマンで叩き込まれている女王の朱乃は笑顔を浮かべてうなずく。

 

 

「許可が降りましたので、ただ今より木場様にご協力させて頂きます。拙い部分もあるかと思いますがどうかよろしくお願いします」

 

「い、いやそんな……一誠くんが居れば百人力どころか万人力だよ! ありがとう!」

 

「………」

 

 

 襲撃者から聖剣を鹵獲した功績を持つ以上――いや、現段階このメンツの中で最上位に立つ日之影一誠の直接協力を得た事で俄然テンションが上がる祐斗。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 レイヴェルに敗北したばかりでテンションの低い小猫がギャスパーと共に親指をちゅーちゅーしながら此方を恨めしそうに見てる気がするが、そこは気づかないフリだ。

 

 

「私の所からも一人木場くんに協力させて欲しいのですが……」

 

「俺が行きます会長。俺も木場に協力したいんで……良いよな? あんまり役に立つかわからないけど……」

 

「も、勿論! 本当にありがとう皆さん!」

 

 

 組まれた即席チームは奇しくも同い年男子だけという珍しい組み合わせとなった。

 こうして始まる町のパトロール――――という建前に隠れての聖剣狩り。

 祐斗は心底仲間に恵まれたと噛み締めながら外へと飛び出すのだった。

 

 

 

 

 いけ好かないイケメン野郎。

 もっといけ好かない無口野郎。

 

 当初俺が会長の兵士になってから抱いた木場と日之影の印象は今となっては大分薄れた気もする。

 

 

「な、何だか新鮮だね。男三人だけで行動するのって」

 

「だよな。あったとしても集団か、日之影には何時も誰かしら引っ付いてたし」

 

「……。元々お二人とはそれほど接点もありませんでしたから」

 

 

 その大きな理由はあの無口で無愛想な日之影が間違って酒を飲んで普段のキャラが嘘みたいな泥酔をした際の大惨事だと思ってる。

 あれのせいでそれまでいけ好かないと思って話もしなかった木場に妙な親近感を抱いたんだからな……。

 

 俺も木場も『初めて』だったのに野郎に奪われたという意味で。

 

 

「先に言っておきますよ木場様。私は正直感知能力が乏しく、この町に持ち込まれた聖剣や気配を消してる堕天使がどこにあるのか特定できません」

 

「え、そ、そうなの?」

 

「いやよく考えたら納得できるかも。

前に見た時ヴェネラナ様が背後から驚かせた時も気付いてなかったし」

 

「あのババァ――じゃなくて奥様は少々特殊なんです」

 

 

 会長やグレモリー先輩曰く『ご奉仕モード』となることで漸くまともな会話が俺達でも出来るようになってから暫く経つが日之影も基本的に強いけどどこか抜けてるせいか妙に憎めない所がある。

 今会話に出た様に、グレモリー先輩や会長の母親に弄られたりする時の日之影はめちゃくちゃ感情的になるし、決して人付き合いが悪いって訳じゃあ無いんだよな…………雑魚呼ばわりはされるけど。

 

 

「とにかく片っ端且例の悪魔祓いの二人組とやらに警戒しながら捜索を行うのが今の所ベストなのかと」

 

「みたいだな。所で姫島先輩とセラフォルー様を襲撃した悪魔祓いを返り討ちにした場所ってどこだ? もしかしたらそこに手がかりのひとつがあるのかもしれないぞ?」

 

「たしかに……どこだかわかる?」

 

「勿論……ではご案内します」

 

 

 そんな訳で実は珍しい組み合わせとなって始まった聖剣こっそり壊しちゃおう作戦は、まず日之影達が襲撃された場所に行き、残ってるかもしれない何かしらの手掛かり探しから始まった。

 

 

「にしてもその悪魔祓いってのも運が悪かったな。

よりにもよってセラフォルー様と日之影が一緒に居る場面を襲撃したんだもんよ」

 

「だよね……同情はしないけど」

 

「そういえば、その際何故か私の顔を見て怒り狂ってましたね……」

 

 

 燕尾服だと目立つと制服姿の日之影がポツリと思い出した様に襲撃された時の状況を話す。

 どうやらその悪魔祓いは初対面の筈なのに日之影を見て怒り狂ったらしいが……。

 

 俺はふと日之影に目付きと背丈以外色々と似すぎて不気味な男について思い出した。

 

 

「なぁ、まさかとは思うけどよ、兵藤って居るじゃん? 日之影に顔が似てて赤龍帝らしい奴」

 

「うん、居るね。最近部長や生徒会長の所に来て売り込みをしに来なくなってから関わりも薄れちゃったけど……それが?」

 

「いやな? もしかしてその悪魔祓いって日之影をその兵藤と間違えたんじゃねーか……って思ってよ? ほら、俺達みたいに日之影と兵藤の違いが分かる奴にはアレだけど、知らないやつからしたら勘違いするんじゃね?」

 

「………………。十二分にあり得る話でしたね。そういえば奴の近くの神器使いの女は元々堕天使に騙された元シスターでしたし」

 

「じゃあもしかしたら兵藤君達を見張ればその悪魔祓いが現れる可能性が……」

 

「あり得なくはありませんが……」

 

 

 それまで無表情で何を考えてたのかが読めなかった日之影が一気に微妙な顔をする。

 日之影は兵藤が割りと嫌いらしい……しかしゼロではない可能性がある以上は確かめておいて損はない。

 

 

「一応確かめてはみようぜ。なにもなければそれで終わりで良いんだし」

 

「……………。畏まりました」

 

 

 あ、凄い嫌そうな顔してる。

 こりゃ相当嫌いなのかもしれねぇや。

 

 

 

 本当に嫌そうな顔をしながらも兵藤探しをした結果、割りとアッサリ見つかった。

 だが俺と木場も日之影に倣って多分渋い顔をしていた。

 

 というのも見つけた現場が普通のファミレスで、そこに例の神器使いの元シスターや見知らぬ色っぽい黒髪のねーちゃんまでは良いんだけど、同席しているのが……。

 

 

「…………………。悪魔祓いだよな? しかも昨日来た」

 

「間違いないね……」

 

「驚かされますね、ホントある意味」

 

 

 ファミレスから少し離れた物陰から三人して双眼鏡片手によく見なくても別にそこまで似てない気がする兵藤を見ていた俺達は、対面に座る悪魔祓いと親しげな光景に微妙な顔をしていた。

 いや、ただの神器使いで人間だからどこの誰と親しかろうが関係ないのだけど、こうもこっちの思ってる通りの斜め上な状況なのに手掛かりを掴めて喜んで良いのかわからないというべきか……。

 

 

「読唇術してみましょうか?」

 

「一応……」

 

「まあ、手掛かりになりそうだしな……頼むわ」

 

 

 端から見れば俺達は見事に不審者だが、覗いてる場所も場所な為通報の心配は無く、日之影に読唇術を頼んでみる。

 

 

「………………………………………。割愛しつつ要点だけまとめると、どうやら奴はあの悪魔祓いに協力するみたいです。聖剣の捜索を」

 

「何でそんな事になってるんだよ?」

 

「……………。悪魔祓いの片割れがどうも彼の幼馴染らしいです、名前は……………い、り、な……? …………………………………っ!?」

 

「? どうしたの?」

 

「い……いぇ……どうやらそのよしみらしいです」

 

「なるほどなー……どうする? 暫く尾行するか?」

 

「うん、そうした方が良いかも。

聖剣もそうだけど、その事件を起こした首謀者も探らないといけないからね」

 

 

 日之影が一瞬言葉を詰まらせた様な気がしたが、取り敢えず今回の任務を優先しないといけない考えが先んじて特に深くは聞かず、木場と話し合って暫く連中の動向を探る方向にする。

 

 

「イリナ……紫藤、イリナ……」

 

 

 日之影にとってはトラウマのひとつである事を知らずに……。

 

 

「暫く動く気配も無いな」

 

「だね……一誠くん、他には何か気になる事とかある?」

 

「あ、はい………………………………。リアスお嬢様とソーナお嬢様――というか、悪魔の事を貶してますね」

 

「は? どういう事だよ?」

 

「前まで自分を売り込みに来てたのに?」

 

「奴は基本的に自分の思い通りにならない相手を嫌う習性がありますからね。

その証拠にあの二人の女は奴を好いてる」

 

「あの金髪の方はわかるけど、黒髪は誰だよ? 凄い格好だが……」

 

「どこかで見た気がしないでもないんだけど、思い出せない……」

 

「SS級はぐれ悪魔の黒歌……塔城様の実姉です」

 

「「えっ!?」」

 

 

 木場が買ってきてくれたアンパンと牛乳を飲み食いしながら聞かされた衝撃的正体に俺と木場は思わず喉にアンパンを詰まらせそうになった。

 だってSS級のはぐれ悪魔って……相当やばいランクのはぐれ悪魔でしかもあの塔城の姉と聞かされれば驚かない訳がない。

 

 

「そ、それやばくねーか? 塔城は知ってるのかよ?」

 

「知ってます。以前直接対面しましたので」

 

「え、一誠くんもその場に?」

 

「ええ……ですが塔城様はあの女とは別の道を生きると向こうの提示をはね除けました。

それ以降大人しくしてるのかと思いきや……まさかこんな形で出てくるとは」

 

「マジかよ……あ、兵藤に抱きついて大騒ぎになってる」

 

「な、なんかなまじ一誠くんに顔が似てるせいでアレだね……」

 

「やめてください。あんな女に興味なんてありませんから私は」

 

「そこまで否定せんでも……」

 

「嫌なもんは嫌なんです」

 

 

 重なると話した途端、すっごい拒否な姿勢となる日之影の声は頗る低い。

 俺も男なので正直この双眼鏡から見える兵藤に恨めしさはあるからこそ、ついついぼやいてしまう。

 

 

「あんなねーちゃんならさぞ色んなことやってんだろうなー……」

 

「そこまではわからないけど……」

 

「そんなものは個人の自由ですが、思い通りにならない相手を途端に貶す嘗めた真似はするなと思います」

 

「もし仮に兵藤がどっちかの眷属になったらどうなってたんだろうな……」

 

「さぁ? ですが少なくとも私は即座に今の立ち位置を投げ捨てて姿を眩ましますね。

奴と同じ空気を吸うなんて吐き気がする」

 

「………。すっごい嫌いなんだね彼が」

 

 

 拒否のしかたが半端ない日之影は兵藤に何かされたのか? と思うくらい凄い拒否りっぷりだった。

 木場も若干気圧されてるし……うーん、謎だ。

 

 

「でも何と無くあの塔城のねーちゃんってセラフォルー様に似て――」

 

「上から下まで何もかも似てません。まったく似てません、ありえません。見てくれだけならセラフォルーの方がまだマシですよ、格好はともかくね」

 

「あ、いや、俺が言ってるのは顔とかじゃなくて、行動が似てる――」

 

「ですからまったく違います。行動? あのアホの行動に似てるアホなんてこの世に居ませんよ絶対に」

 

「わ、わかったわかった! 俺が悪かった! ちょ、ちょっとした冗談のつもりだったんだよ!」

 

「…………」

 

「さ、匙くん。あんまりそういう冗談はやめた方が良いよ。結構デリケートなんだから……」

 

「お、おう……今わかったよ。

普段見てると雑な扱いしてるのに、そこら辺は割りとアレなんだな日之影って……」

 

 

 木場に耳打ちされ、ブツブツ言ってる日之影を見ながら俺はそういう冗談は控えようと誓う。

 考えてみたらセラフォルー様に対する雑な対応も、それだけ付き合いがあるからこそだからと思うと納得できる。

 

 

「日之影って実はセラフォルー様の事好きだったりするのか………なーんて――」

 

「は?? はぁ??? はぁぁっ!!??

誰がですって!? 私が? あのアホを!? 何をどう見てそんなすっとんきょうな解釈なんですかねぇ!?」

 

「じょ、冗談だって! 声がでけーよ!」

 

「お、落ち着いて!」

 

 

 素になれる相手という意味でも………うん。

 

 

「じゃ、じゃあ会長やグレモリー先輩は?」

 

「サーゼクスに負けた罰ゲームとして元々こういう立場にされてるだけですから!!

好きだの嫌いだのなんて無いです。そもそも私は人間なんですよ」

 

「匙くん、もうやめてあげようよ。一誠くんがパンクしちゃうから……」

 

「あ、あぁ……悪かった」

 

「チッ」

 

 

 何だかなぁ……。

 

 

「大体あのセラフォルーのバカのせいだ。

それまで何とも思わなかったのに、あんな真似して変な事吹き込みやがって……」

 

「え、何かあったのか?」

 

「最近妙にセラフォルー様が一誠くんに積極的な事に関係してる事?」

 

「別に……」

 

 

 

 

 

 

 男三人が年頃らしい(?)会話で盛り上がってるその頃、その会話に出てきていた一誠と古くから付き合いのあるリアス、セラフォルー、ソーナの三人は……。

 

 

「流石は魔王様ですわ……ふふ」

 

「くっ……聞いた以上に強いねレイヴェルちゃんは☆」

 

「も、もう動けない」

 

「わ、私も……悔しいけど……」

 

 

 未知の領域の更に上の領域に君臨する年若き人外、レイヴェル・フェニックスに挑み、圧倒的な差に潰されていた。

 

 

「おべんちゃらは要らないよレイヴェルちゃん、私はいーちゃんにまだ追い付けてすらないからね……」

 

「いーちゃん……一誠様の愛称ですか。

ふふ、アナタ様は一誠様が……?」

 

「うん、大好きだよ。最初は生意気な子供だと思ってたんだけど、見事に取られちゃった……お陰で毎晩毎晩悶々として大変なんだから☆」

 

「なるほど、つまりアナタ様もまた潰すべき私の障害にですか……」

 

 

 数値で示すなら5でるリアスとソーナが15を誇るレイヴェルとの喧嘩に脱落する中、スキルを持たずして8という10に立つ一誠に迫る領域まで進化したセラフォルーだけがよろよろと所々焦げた衣服を身につけながら立ち上がる。

 

 

「スキルを持たずしてここまで自身を高められた事は素直に称賛しましょう。

ですが、私とて一誠様をお慕い申す気持ちは負けてませんし、アナタ様に力でも負けない―――故に少しだけお見せましょう」

 

 

 心配そうに見るリアスとソーナを背に闘志を示す様に構えたセラフォルーを見て、レイヴェルはギアを上げると宣言し、その手にグローブを嵌める。

 

 

「スキルは使いません。しかし代わりに私だけが至った血を越えた力をお見せしましょう……!」

 

「っ……!」

 

 

 グローブを両手に嵌め、額から朝焼けの大空を思わせる橙色の炎を灯したレイヴェルの圧力が更に増す。

 

 

「零地点突破……」

 

「なっ……!」

 

「こ、これは……」

 

「冷気……!?」

 

 

 その圧力と共にセラフォルーへ向かって手をレイヴェルが翳し、小さく言葉を紡いだその瞬間、セラフォルーの足下から腰に掛けてを一瞬にして凍り付いた。

 

 

「単なる技術のひとつですが、炎もマイナス化させれば逆に凍てつかせる事もできますのよ?」

 

「り、リアス……今の技術の模倣は?」

 

「っ! だ、駄目よ……理解はしても私というレベルが低いから使えない……!」

 

「……!!」

 

 

 凍らされた自分の身に向かって魔力で相殺しようとするセラフォルーだが、効果がない。

 

 

「無駄ですわよ。その氷は謂わば封印。

魔力で相殺しようとしてもその魔力をもはね除ける……」

 

「このっ、このぉ!!」

 

 

 必死に魔力をぶつけるが、必死になればなるほどそれを嘲笑うかの様に凍てついた身体は解放されない。

 

 

「一誠様なら恐らく力で砕く。

それがアナタ様達には出来ない……残念ですわ」

 

 

 額に灯した橙色の炎を両手のグローブにも移したレイヴェルは悔しがる三人にトドメを刺さんと上空へと飛翔する。

 

 

「殺しはしません。アナタ様方は一誠様にとって知らない間柄ではございませんから」

 

「あ、あの構えは……!」

 

「ま、まずいわ! せ、セラフォルー様を……!」

 

 

 左手を後ろに向けて炎を放ち、右手を此方がわに向ける構えを見た瞬間、リアスとソーナは以前見たものを思い出してセラフォルーを助けようと身体を動かそうとするが、既に動けなくなるまで叩き潰された後のせいで上手く身体が動かない。

 

 

X(イクス) BURNER超爆発(ハイパーイクスプロージョン)……!!」

 

 

 そんな状況でも放たれた無慈悲な業炎。

 それでも加減していると宣うが、喰らえばただでは済まされない炎の渦に三人は飲み込まれる。

 

 

(い、嫌だ……負けたくない……!)

 

 

 しかしその直前、命の危機に瀕したその刹那、セラフォルーの脳が活性化され、ただ負けたくないという気持ちが強く駆け巡った。

 

 奇しくもそれは完全な格上に与えられた挫折を前に抱いた一誠と同じものであり、今まさにセラフォルーも同じ気持ちとなっていた。

 

 

(私だけ除け者なんて……嫌だ……いーちゃんっ!!!)

 

 

 そしてその燻った気持ちが――

 

 

「む!?」

 

「え……」

 

「ほ、炎が、消え……た……?」

 

 

 

 

 

「…………………………………」

 

 

 セラフォルーという悪魔を何段階も押し上げる。

 

 

「掴めた。

やっと同じになれたよ、いーちゃん……」

 

「お、お姉様が……」

 

「進化した……」

 

 

 8から10。一誠と同じ人外の入り口の領域と同時に発現せしモノ。

 

 

おわり。





補足

セラフォルーさんが物凄い勢いでぶち抜いてる気がしないでもない。

まあ、昔っからある意味でマンツーマン修行してたまゆうなもんですし、魔王様ですからねぇ。
この時点で8という人外候補クラスやし……。

その2
代わりに一誠くんがより食べられやすくなる危険性が追加。
まあ、セラフォルーさんやソーナさんやリアスさんの事指摘されるとテンパり気味になるし、どうなんかなぁ。


その3
スキルの内容は決まってるけど、名前がいまいち決まらない。

ちなみに内容をネタバレすると…………キング・クリムゾン!! 的なそれ。



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