執事一誠の憂鬱   作:超人類DX

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続き。

ちょっとは……なんて思いがちだけどそんな事は無かったぜ


他人は所詮ただの他人

 蒔いた種が芽吹いていく。

 一誠に始まり、リアスとソーナ――そしてセラフォルー。

 隠しキャラとしてミリキャスが居たり居なかったりする訳だけど、とにかく一誠が与えし影響力は計り知れない。

 

 

「他人を引き上げるが此処までの水準とはね。

フラスコ計画の擬人化とはサーゼクスくんと安心院さんも上手い事例えますわね」

 

 

 眼下に倒れ伏す三人の女性同族を見つめながらレイヴェル・フェニックスは額に灯した炎を消すと、分身の本体とその反転に位置する人外から以前聞かされた言葉を思い返し、小さく笑みを浮かべていた。

 

 

「あらゆる状況に即時適応進化し、永久に強くなり続け、自分が"信じるに足る者"へもその進化の加護を与える。

この目で見たもの以外は信じない主義でしたけど、こう見せ付けられれば信じる他無いですわね」

 

 

 とあるお伽噺の主人公(めだか)と同等のものを剥奪された主人公(イッセー)という存在がゼロから覚醒させた性質。

 それはまるで視力を失えば他の器官が補うようかの如く積み重ねた進化の産物……。

 

 

「ますます欲しい……うふふふ♪」

 

 

 レイヴェル・フェニックスは今この時が愉しいらしく、倒れ伏す三人の一誠によって蒔かれた種を芽吹かせた後天的覚醒者を背に闇夜へと消える。

 永遠に完璧に成り得ない少年に対する渇望をより抱きながら……。

 

 

 

 

 

 レイヴェル・フェニックスとは実の所ライザー・フェニックスとのゲーム以来直接顔を合わせてない一誠。

 転入する形で小猫やギャスパーと同じクラスに入り込んできたのは聞いてはいるものの、向こうから接触してくる気配は無く、また一誠からも接触する事が無い為、小猫が喧嘩を売っては負ける話を聞く以外彼女の情報を耳にする事がない。

 

 

「奴等がペラペラ喋ってくれてよかったよな。

お陰で木場の仇の元凶の名前も聞けたし」

 

「うん……バルパー・ガリレイ……皆殺しの大司教」

 

「………」

 

 

 加えて今一誠は祐斗の仇討ちの調査に放課後外に出てるのでますますレイヴェルに接触する機会を失ってる。

 まあ、一誠本人自体がレイヴェルのキャラを苦手にしてる為に避けてる感が否めないというのもあるが。

 

 

「どうする? 奴等からそのバルパー・ガリレイって奴がこの街にいるかの調査に切り替えるか?」

 

「いや、どちらにしてもあの悪魔祓いの二人組が持つ聖剣を狙う筈だから、言い方は悪いかもだけど釣り餌になって貰うよ」

 

「カステラパンとコーヒー牛乳買ってきました」

 

 

 そんな一誠はと言えば、今日も祐斗と匙こと元士郎のフォローに出向いており、着々と祐斗の仇についての情報を手に入れつつ、まるでしたっぱのパシりみたいな真似をしていた。

 

 

「お、サンキュー、これパンとコーヒー牛乳代」

 

「僕も」

 

「いえ、お金は結構です。

無駄に給金という形で貰ってるので」

 

 

 もっともこの様に二人から命令されてやってる訳じゃないのでパシりという感覚は三人の中には無く、一般人とは最早呼べない位置に食い込み始めてる兵藤一誠の監視とそれと組む形で行動を共にしている二人組の悪魔祓いを泳がせて大元を釣り上げる作戦の為に買ってきたコーヒー牛乳とカステラパンを片手に今日もコソコソしている。

 

 

「日に日に兵藤と仲良くなってるけど、あの悪魔祓いは仕事を忘れてはねーだろうな?」

 

「流石にそれは無いと思いたいけど……うーん」

 

「…………」

 

「? どうしたんだよ日之影?」

 

「いえ、早く釣られろと念じてるだけですのでお気になさらず」

 

 

 グレイフィアとヴェネラナに無理矢理叩き込まれたせいで開花したご奉仕モードにより初期に比べて大分コミュニケーションが可能となった目付き最悪な方の一誠が、無言で兵藤一誠達を見据えてるのだが、その視線の先に在るのは兵藤一誠というよりは悪魔祓いの片割れに向けられていた。

 

 

「……ふん」

 

 

 だがそれは最初だけであり、当初こそ動揺があったものの、今の一誠にその様な感情は完全に消え失せていた。

 何がどうして一誠を動揺させたのかは、視線の先にある一人の少女に関係してるのだが、真実は闇の中だ。

 

 

「………………あ!」

 

 

 そんなこんなで古くさい刑事ドラマみたいな監視を続けて早4日目。

 そろそろ見てるのだけにも飽きてきたという心境が少し芽生えて来たそのタイミングに祐斗の何かに気づいた声でそれは起こった。

 

 

「ほ、包帯だらけのミイラみたいな人が向こう側の人達を襲撃してる!」

 

「やった! これは釣れたんじゃないか!? そうだろ日之影!」

 

「そうかと……。というかあの包帯だらけの者は恐らくこの前我々を襲った輩ですね」

 

 

 遂に監視対象を餌に事件を起こした存在の一派とおぼしき者が現れ、兵藤一誠達を襲撃し始めたのを見て祐斗も元士郎も待ちかねた気持ちを押さえられず立ち上がる。

 

 

「上手く奴が二本とも聖剣を奪ってくれれば後が楽なのですが……」

 

 

 兵藤一誠達……では無くてこの場限りあの名前すらどうでも良い襲撃者を内心応援しながら。 

 

 

 

 

 あの口調は間違いなくアーシアの時にも居たフリードというイカれ神父だと思うのだけど、まず兵藤一誠……そしてアーシアはその出で立ちに驚いてしまった。

 

 

「みぃ~つけたぁ~……このクソ野郎が!」

 

「お、お前その声、フリード……か?」

 

「な、何でそんな大怪我を……」

 

 

 目元以外の全身に巻かれた包帯。

 それはまるでミイラの様であり、殺意に満ちた声もあって中々の迫力だった。

 

 

「何で? 何でったか今? あひゃひゃひゃ!! ますますぶち殺したくなったぜぇぇぇっ!!!!」

 

「うおっ!?」

 

「イッセー! この、何するのよ!!」

 

「ぐはぁ!?」

 

 

 元から破綻した人格を垣間見る態度だったが、フリードと呼ばれた包帯男の今はそれに輪を掛けた狂いっぷりであり、殺意全開で兵藤一誠に飛び掛かった所を同行していた黒歌が合わせてカウンターの右ストレートで殴られても即立ち上がる。

 

 

「今日はそのクソ悪魔と一緒か? しかも元同僚ちゃんとも一緒だしよぉ、ますますムカつくねぇ!!」

 

「待てよ! 今日はって何のことだよ!?」

 

「とぼけるのが尚むかつくぅぅ!!!」

 

 

 バーサーカー宜しくに人数差も考えずに突撃するフードの言葉に違和感を感じて問い掛ける兵藤一誠だが、本人は聞く耳持たずの様子だ。

 

 

「俺っちから奪った聖剣返せボケが!!」

 

「だから何の事だ!? 聖剣なんか奪ってないし、そもそもお前とだって久々に今日会ったんだぞ!?」

 

「まだ惚けるのかクズがぁ!!!」

 

 

 一心不乱に殴り掛かるフリードを捌きながら困惑する兵藤一誠。

 まるで自分では無い誰かが自分に化けてフリードに何かしらしたかを思い起こさせ……ハッとする。

 

 

「お、おいもしかしてお前襲った奴は燕尾服みたいな格好してなかったか? 髪型はオールバックで……」

 

「ああ、してたねぇ! 痴女みたいな格好したメス悪魔と紅白衣装着たメス悪魔と一緒に歩いてたもんなテメェは!!」

 

 

 突き出される拳と足を捌き、距離を離させる兵藤一誠はそこで漸く気が付く。

 誰がフリードに重症を負わせたのかを……。

 

 

「おい待てフリード、お前に怪我させた奴は俺じゃねぇ。そいつは間違いなく悪魔に与する俺そっくりの男――」

 

「んなクソ下手な嘘を俺が信じるかよ死ね!!!」

 

 

 どこに居ても邪魔に存在、本来消え失せるべきだった成り代わり前のオリジナル。

 何の因果かリアス達により生き残っていた絞りカス同然の男……今は日之影という姓を名乗る一誠の仕業に行き着いた兵藤一誠は必死に自分では無いと訴えるが、フリードにしてみればそんな話を信じる信じない以前の精神状態の為、遺憾なくその殺意を爆発させ続ける。

 

 

「そっくり? 何のことだ?」

 

「イッセーくんにそっくりな人がいるの?」

 

「え、ええ……まあ……」

 

「悪魔側に属してる人間なんだけど、見てなかったの?」

 

「いや……それらしき人物は見てなかったが」

 

「うん私も」

 

 

 遂に反撃され、吹っ飛ばされて地面を転がるフリードを見ながら悪魔祓いの二人組ことゼノヴィアとイリナが、顔をしかめていた黒歌とアーシアに聞き、二人は渋い顔そのままに頷く。

 

 

「最低最悪な男だよ。イッセーに顔がそれなりに似てるだけにゃ」

 

「すぐ暴力を振るう乱暴な方といいますか……」

 

「なるほど、人間というのが引っ掛かるが悪魔側に属してるだけあるみたいだ」

 

「ふーん?」

 

 

 日之影一誠の暴力的な面しか知らない黒歌とアーシアにしてみれば妥当過ぎる評価に二人はなるほどと納得する。

 フリードというはぐれ悪魔祓いが何故あそこまで殺意にまみれてるのか……様子からして相当やられたのかが。

 

 

「白音をたらしこんだ最低男だよ……ホント」

 

「白音?」

 

「黒歌さんの妹さんです。リアス・グレモリーさんの眷属になってます」

 

 

 特に黒歌の日之影の一誠に対する殺意は半端ではなく、目の前で妹の関心の全てを自分から取ったと思い込んでるのもあってか、示す嫌悪の感情がドストレートだ。

 

 恐らく今目の前に現れたら二も無く殺しに掛かるだろう程に……。

 だからこそ……。

 

 

「……………………」

 

 

 現れたのはドンピシャなタイミングなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 最初は監視して、オメオメと逃げ帰るフリードの後を着ける形にしようと考えていた一誠達三人組。

 しかし襲撃したフリードが余りにも呆気なく兵藤一誠にやられ、このままでは捕まる可能性もあった為、仕方なく『町のパトロールをしていただけ』という体を装い、奇妙な組み合わせの集団目掛けて突撃をした。

 

 

「おいそこの奴等、いったい何をしてる?」

 

「集団リンチか何かかい? よくないと思うよ?」

 

「…………」

 

「っ!?」

 

「え……?」

 

 

 フリードが力尽きたタイミングで姿を見せる三人に身構えたイリナとゼノヴィアは、その中で一際異様な雰囲気を纏う少年の容姿に、先程聞かされていたのもあって驚愕する。

 

 その少年の容姿が、現れた途端これでもかと顔を歪めた兵藤一誠にそっくりだったのだから。

 

 

「ほ、ホントにイッセーくんにそっくり……」

 

「………」

 

 

 兵藤一誠とは『幼なじみ』であったイリナが思わずといった調子でその酷似さを呟いた瞬間、一誠と目があった。

 が、それも一瞬の事ですぐに興味の無いおもちゃを見るかの様に目線を外し、顔を歪める兵藤一誠を見下す様な冷めた顔つきで見ていた。

 

 

「お前ぇぇぇっ!!」

 

「!? よ、よせ黒歌!!!」

 

 

 一方、白音こと小猫のことで憎悪していた黒歌は、ドンピシャのタイミングで現れた日之影一誠を見た瞬間、全力の力と殺意を解放して一誠に襲いかかる。

 

 

「白音を今すぐ返せ!!!」

 

「うわ!?」

 

「っ!? SS級クラスは伊達じゃないね……!」

 

 

 その圧力に身体が硬直してしまった祐斗と元士郎に目もくれず、ただ真っ直ぐに無言で立つ一誠の喉元を掻き切ろうと肉薄した黒歌の手だったが、それは呆気なく虚をきった。

 

 

「あぐっ!?」

 

「………」

 

 

 それどころか逆に首を掴まれ、そのまま締め上げられる様に持ち上げられた黒歌は苦しみにもがき、蹴りを叩き込むがまるで通用しない。

 

 

「か……き…ぃ……く、くるしっ………!」

 

「く、黒歌! テメェ黒歌を離せ!!!」

 

「…………」

 

 

 自分に靡いた黒歌が危ないと見た瞬間、現金にも身体が動いた兵藤一誠が赤龍帝の力で自身を倍化させながら飛びかかる。

 しかしそれも呆気なく黒歌を締め上げた一誠がより早いカウンターの踵落としに脳天を叩かれ、そのまま地面へと縫い付けられてしまう。

 

 

「ぎぃ!?」

 

「あ、あ……あ……!」

 

 

 一瞬でふたりもの実力者を黙らせた一誠にアーシアは恐怖ですくみあがり、まるで某銀河戦士にやられた悟空の息子みたいな絶望の声を出している。

 

 

「…………」

 

「い、イッセーくんを離しなさい!」

 

「貴様等、何をしに来た。悪魔達の干渉は許さないと言った筈だ」

 

 本能的に一誠という兵藤イッセーにそっくりな男がヤバイと感じたイリナとゼノヴィアが聖剣を構えて威嚇する。

 だがそれに答えたのは一誠ではなく、その隣に居た元士郎と祐斗のふたりだった。

 

 

「別に俺たちだって干渉したつもりはねーよ。こっちは単に町のパトロールの仕事してただけなんだから」

 

「確かに聖剣の事については干渉しない約束はしたけど、それと町の治安維持とは別だしね。

騒ぎがあるから何だと思ったら君たちが居ただけだし」

 

「「……」」

 

 

 本当はもろに聖剣のひとつを確保してるし、ふたりの悪魔祓いを遠くから監視してたが、バカ正直に言うわけも無く尤もらしい言い訳で誤魔化す。

 隣で一誠がかなり冷めた顔で黒歌を締め上げ、兵藤イッセーの頭を足で踏みつけて地面に縫い付けてる姿を見て内心『よかった、敵じゃなくて……』と心底安堵しながら疑う顔の二人組に続ける。

 

 

「この兵藤ってのははぐれ悪魔を匿っててな。

まぁその事自体に罪なんてありゃしないし、大人しくしてるなら俺達も黙ってるつもりなんだよ。

けどな、こんな目立つ真似されたら動かざるを得ないだろ? 只でさえコカビエルが何時やらかしちまうかもわからないんだしよ」

 

「それは……」

 

「だから僕達の主は早いところ二人に解決して欲しいんだよ。

このままじゃ町の一般の方々に危険が及ぶし、かと言ってキミ達天界側は邪魔して欲しくないらしいし? こうして地道にしか動けないんだよ」

 

「……」

 

 

 こっちは良い迷惑だよ……と聖剣の事もあった妙に嫌味っぽい祐斗なゼノヴィアとイリナは上手く言い返せず睨むだけだ。

 

 

「何で悪魔祓いのキミ達がはぐれ悪魔と一緒なのかは敢えて聞かないけど、さっさと探すなら探して欲しいんだよね。遊んでないでさ?」

 

「あ、遊んでなんか無い……」

 

「じゃあ早いところ聖剣だのコカビエルだのを何とかしてくれよ? コカビエルが暴れて町が消えましたなんて笑って済まされる話じゃ無いしな」

 

「うっ、うっさいわね悪魔のくせに……」

 

 

 よにもよって悪魔に嫌味を言われてムカムカが止まらない二人は何とか言い返すが、あまり説得力は無さそうだ。

 ところで兵藤イッセーと黒歌を黙らせてる最中である一誠はというと、呻き声を出すだけで動けないふたりを各々アーシアの足下に向かって投げつけたり、蹴り飛ばしたりする。

 

「ごほっ! げほっ!」

 

「ぐ、ぅ………」

 

「イッセーさん! 黒歌さん!」

 

 

 急いで神器を使って治療するアーシアはキッと冷たい目で見下す一誠を見据えて叫ぶ。

 

 

「ど、どうしてこんな事をするんですか!」

 

「…………………………」

 

 

 アーシアにしてみれば黒歌もイッセーも大事な存在。

 故にその二人を傷つける一誠にそう投げ掛ける訳だが、一誠は無言で答えない。

 いや、というより声が出ないのでチョイチョイと祐斗と元士郎に手招きして呼び寄せると、ヒソヒソと耳打ちをする。

 

 

「………え、それ言うの?」

 

「……。(コクコク)」

 

「う、うーん……別に構わないけど、今やっと僕達も少し特別なんだなって実感できた気がする」

 

 

 ご奉仕モードで忘れがちだが、基本的に殺意まみれでテンションが上がらないと喋れない一誠に元士郎と祐斗は思わず苦笑いを浮かべ、何の事だかわからずに取り敢えず身構える二人組とアーシアに向かって祐斗と元士郎は口を代弁するように開く。

 

 

「えーっと、取り敢えずそこの治療してる人に日之影から一言『じゃあ首輪でも付けて余計な真似しないようにしろカス』………だとさ」

 

「う……!」

 

「それとそっちの二人には……『モタモタしてるからだろうがこの役立たず共が』―――だって」

 

「「なっ!?」」

 

「……………」

 

 

 祐斗がイリナとゼノヴィアに、元士郎がアーシアに向かって物凄く辛辣な一誠の言葉を代弁し、それを聞いた三人は各々顔を歪ませる。

 

 

「な、なんだと貴様!」

 

「いきなり何よ! イッセーくんが言った通り最低ねアンタ!」

 

「……………………」

 

「えーっと、『道端の苔よりどうでも良い存在に言われようが知った事ではないから早くとっとと終わらせて失せろボケ』――だってさ………くふふふ!」

 

「こ、この! 最後辺り笑ったなお前!?」

 

「い、いやだってねぇ……?」

 

「こ、こいつ……悪魔はやっぱり最低だわ!」

 

 

 思わず笑う祐斗に激怒する二人組が思わず聖剣を振りかざしかけるも、反射的に祐斗が魔剣の山を二人の周囲に展開し、牽制する。

 

 

「笑ったのは謝るけど、攻撃するならこっちも反撃しちゃうよ?」

 

「「……」」

 

 

 笑ってるけど全く目が笑ってない祐斗の言葉と作り出された剣の山に二人は渋々剣を収める。

 

 

「貴様、その力……」

 

 

 その時点でゼノヴィアなる少女が祐斗の神器を見て何かに気付く。

 祐斗の力に計画の名残があることに。

 

 

「そう、一応キミ達の先輩に当たるかもしれない位置に昔僕は居たよ。

尤も、先輩風吹かすつもりなんて欠片も無いけどね」

 

「聖剣計画の生き残りだったのアナタ……?」

 

 

 頷く祐斗にイリナとゼノヴィアは少しだけ目を逸らす。

 

 

「……。悪魔に堕ちてたなんてな」

 

「どう解釈しても結構。

僕にとっては命を救われた恩人だし、それ以上貶すなら黙っちゃいないけど、それでもこれ以上何か言うかい?」

 

「…………」

 

 

 剣を持ちながら微笑む祐斗に矛を収めるしか選択肢が無くなった二人は黙り込んでしまう。

 そして逆にアーシアの神器で治療を受けた黒歌と兵藤イッセーはまたしても呆気なく黙らせてきた一誠を憎しみに睨むしかできないでいた。

 

 

「あ、アンタのせいで……!」

 

「ええっと――『文句があるなら塔城自身に言え。八つ当たりしてんじゃねーよ』――だとさ」

 

「黙れ! お前が白音を誑かしたんだろうが!!」

 

「知るかゴミ。テメーと一緒にするな」

 

「だとさ――って、兵藤には喋れるんだなお前……」

 

 

 主人公で何とでもなると思い込む1未満以下の領域ではどうする事もできる訳が無い10領域に立つ一誠の心底見下した目に黒歌はますます殺意を募らせる。

 妹を奪ったと……小猫自身の意思があることに目を逸らして。

 

 

「ちくしょう……お前だけはその内殺してやるにゃ……」

 

「………………」

 

「『その妹以下の以下の以下の以下の以下のそれ以下が何をほざいてるやら』……だそうだ。まぁ実際塔城って物凄い速さで成長したもんなぁ……アンタじゃ確かに今の塔城は無理だわ」

 

「うるさい! お前はさっきから余計な口挟むな!!」

 

「だって言えって言うんだもん、しょうがねーじゃん」

 

 

 黒歌の一誠に対する憎悪は加速していく。

 

 

 ちなみにこの後然り気無くフリードを回収した三人は去った後軽く治療し、意識が戻る前に姿を消してフリードの監視を始めて見事に潜伏先を突き止める事になる。

 

 

終わり

 

 

 

 完璧な牽制で余計な真似をされる前に兵藤イッセーを黙らせた三人組はフリードというはぐれ悪魔祓いを利用して見事に潜伏先を発見する。

 

 

「以上、コカビエルと木場の仇の潜伏先を発見した」

 

「ちょっとばかり悪魔祓いの二人組とその他に接触してしまいましたが、適当な理由をでっちあげてあくまで非干渉であるアピールはしておきました」

 

「割りとそこが一番苦労しましたよ」

 

 

 着々と天界側を出し抜きまくる悪魔達。

 報告を受けたリアス達は、レイヴェルに負けてちょっとぼろぼろな出で立ちで三人に労いの言葉を投げ掛ける。

 

 

「お疲れ様」

 

「匙も頑張りましたね」

 

「は、はぁ……」

 

「恐縮っす――あの、ところでレヴィアタン様含めてなんでボロボロなんですか皆?」

 

「焼き鳥雌に負けたんですよ皆」

 

「あの子強すぎますよ……」

 

「フッ……見事に負けたわよ」

 

「収穫がゼロじゃないだけ無意味な負けでは無いけどね」

 

 

 と、各々不貞腐れる中唯一絆創膏を額に貼ってたセラフォルーだけがニコニコと嬉しそうに一誠の周囲を犬みたいにクルクル回る。

 

 

「セラフォルーお前……」

 

「へっへーん! 気付いた? 気付いちゃった? えへへ、参ったなぁ、いーちゃんに隠し事はできないや☆」

 

『……………』

 

 

 ちょっと驚く一誠のリアクションにあったらまず間違いなくちぎれんばかりに振ってたろう犬の尻尾が幻視する勢いのセラフォルーはわざとらしい態度だ。

 セラフォルーが後天的に覚醒した中で一番乗りに人外の扉の前に――即ち一誠の真横に追い付いたのだから。

 

 

「レイヴェルちゃんに喧嘩売ったお陰でやっといーちゃんに追い付いたからさぁ……ねぇねぇ、ご褒美欲しいなぁ?」

 

「は?」

 

「例えばさ……ほら、体操着とか着てあげるからこのまま薄暗くて蒸し暑い体育倉庫で……ね?」

 

「何が ね? なんだこのバカは」

 

 

 半分は予想してたのでそこまで驚きはしなかったが、これまで以上に一々まとわりついてくるセラフォルーが地味に鬱陶しく、一々胸を顔に押し付けてくるせいで中々話が進まない。

 

 

「どーせ私はお姉様とちがって少ないわよ……ふん!」

 

「どーせ私は我儘でだらしない身体よ……ふん!」

 

「……意味がわからない」

 

「どーせ私はつるぺたですよ……ふん!」

 

「どーせ僕はスキルすら持ってませんよ……ぐすん」

 

「どーせ僕は一誠兄さまにとって子供だよ……くすん……」

 

 

 

 

 

 

『!?』

 

 

 そして何故か居たマセロリ。

 

 

 しかしこの集まるメンツ内での話であり、他に比べたら化け物と言われるレベルの集団であることに間違いはない。

 つまり、潜伏場所を特定されたコカビエル一派は将棋やチェスでいうところの詰み(チェックメイト)だったので、特にリアスやソーナといったセラフォルー以外のメンツに八つ当たりにボコボコにされてしまうとかなんか。

 

 

 そしてそんな暴れっぷりのせいでモロに天界側に干渉したせいで三大勢力で話し合いが始まるのだが、サーゼクスに加えてセラフォルーが進化したせいで完全に三大勢力のパワーバランスが悪魔一強に狂い、そんな席に襲撃した某テロ組織の尖兵は不幸としか言い様がない。

 ていうか実質捨て駒扱いだった。

 

 

「私は嫌だって言ったのよ! それなのにどいつもこいつも行けって言うから!! 大体セラフォルーも何なのよ! なんでそんな化け物みたいな事になってるのよ!」

 

「そりゃもう頑張ったからねー……いやーごめんねカテレアちゃん?」

 

「ぐすっ、もう良いわよ……赤龍帝の子供を回収する為だけの捨て駒だとわかってたし、逃げられないのだってわかってたわよ……どーせ私なんか……」

 

 

 赤龍帝と白龍皇がテロ組織側に寝返ったり渡ったりしても焦るのは天界側やら堕天使側だけで悪魔側は『ふーん? あっそ』的なノリでテロ組織に寝返ってた旧魔王派の捨て駒扱いされたレヴィアタンの子孫を捕まえる。

 

 既に心が折れて某地獄兄弟みたいにヤサグレてるが、その姿は哀愁だらけだった。

 

 

「あのー……ご飯持ってきたんですけど……」

 

「転生悪魔が気安く話し掛けないでください」

 

「はぁ、すんません……。

じゃあここ置いときますので食べ終わったら言ってください」

 

「…………」

 

 

 そんなカテレアの監視役に何故か抜擢された匙は、同情すら覚える惨めな旧魔王の悪魔に最初こそ拒絶されてきたが、日を追う毎に会話が成立するまでになる。

 それは一誠というコミュ章のせいで無駄にコミュ力が上がったのもあるが、何分匙は相手を持ち上げるのが地味に上手だったのもあった。

 

 

「アナタみたいな坊やは知らないかもしれないけど、私はこれでもレヴィアタンの血を引く由緒ある悪魔なのよ、力付くでその座を奪ったセラフォルーとは訳が違うの」

 

「なるほど、じゃあ転生悪魔のしたっぱな俺じゃあ本来話すことも出来ないお方なんすね」

 

「そうよ? だから光栄に思いなさい? この私とこうしてお話できるという事に」

 

「わーいわーい」

 

 

 惨めになりすぎてちょっと褒められるとすぐ調子に乗るという、地味に残念な性格になってしまったカテレアを割りと自覚なしに手懐けてる匙。

 その内カテレアも匙のストレート気味な性格に気を許し始め。

 

 

「む……あれ、セラフォルーの妹、今日もアナタの兵士では無いのかしら?」

 

「あの子なら修行の為に暫くは私か他の眷属達が監視に当たります」

 

「あら……そう……ふーん」

 

「匙がよかったのですか?」

 

「!? べ、別にそういう訳じゃないわ! た、ただほら、彼は単純だから騙しやすいってだけで、寂しいとはそんな気持ちなんてありませんからねっ!!」

 

「…………。あ、はい匙にそう言っておきます。あの子も喜ぶでしょう。最近あの子、アナタと話すのが楽しみで監視の仕事をいってに引き受けたがってましたからね」

 

「へ? あ………あ、あは! あらそうなの? おほほほ、転生悪魔風情がこの由緒あるレヴィアタンである私にそんな感情を向けるのは本来許されないけど、まぁ彼なら少しは許しても良いわね。

そう…………そんな事をいってたのですね……うふふふ♪」

 

(この人、何で禍の団なんかに入ったのだろう。

多分きっと他の旧派に流されただけだとおもうけど……)

 

 

 気づけば割りと仲良くなってたとか。

 

 

 

「へっきし!!」

 

「匙くんどうしたの? 風邪?」

 

「ずずっ……いや大丈夫。

しかしそれにしても……なんつーレベルの修行だよ。

塔城とか姫島先輩とかグレモリー先輩に至っては最早戦争じゃねーか個人の……」

 

「成長が著しい人達だからね……僕達も早く向こう側に行かないと……」

 

「そ、それなら私と剣術の修行なんてどうかしら?」

 

「え、僕とですか? 構いませんけど」

 

「元ちゃんはこっちね」

 

「な、なんだよ?」

 

「良いから副会長の邪魔しちゃだめ!」

 

「はぁ?」

 

 

 遅れた青春のフラグ……か?

 

 

以上、似非った予告。




補足

そういえば感想であった通り、この三人組で生徒会長編の組み合わせでしたね。

これもある意味IFですね。リアスさんとソーナさんと決別しなかったらの……という意味で。


その2
もうとにかく一誠が欲しくてしょうがないセラフォルー様。
体操着だってスク水だろうが着ちゃうぜ。

しかし裏ボスがそれを黙ってるのか? 黙ってる訳がない。




その3
まあ、うん……テロ組織として襲撃しろなんて最早死にに行けとしか思えないよね。
二龍神を同時に相手取ってもヘラヘラ笑いながら片手で黙らせられるレベルのサーゼクス様とその領域に侵入し始めたセラフォルー様の席がある会談なんて護衛なんて要らないもん。

しかも護衛だって皆化け物だし。
だから捨て駒扱いと解釈したって誰も責められないし、カテレアさんだってヤサグレますわ。

その4
だからアッサリ捕まってしまう訳で……。
でも生き残れたし、生徒会長編を知ってる方ならお分かりの通りの訳のわからない組み合わせフラグが……。

ぼんやり気味の匙きゅんが進化するフラグとなるのか……?

もしそうなったら凄いよ。多分成立したら見てらんなく
なるくらいイチャイチャしてそう。
その5
まあ、全部嘘予告やけどね。

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