執事一誠の憂鬱   作:超人類DX

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まぁ、うん……コカビーじゃなくてノーマルコカビエルじゃ無理だよ無理。





幸か不幸か……

 何故あそこまで強化されているのかが分からないし悪夢だ。

 赤龍帝で無い一誠なぞ只の補正が少しある変態男でしかない筈だし、その役割が俺に移された以上、生きていたとしても只のガキでしかないと思っていたのに……。

 

 

「何だったんだあの男は?」

 

「ねぇ、まさかイッセーくんの兄弟とか従兄弟――」

 

「俺に兄弟も従兄弟も居ない。

奴は顔が似てるだけの他人なんだ……」

 

 

 あの力は何なのか、ひょっとして転生悪魔になったのか……赤龍帝としての力を失ってるし、リアスが兵士として少ない駒で転生に成功している可能性はあるが、どうやらそれも違うらしい。

 

 

「いや、アイツから何も感じないから転生悪魔では無いと思う」

 

 

 黒歌が言うには奴は転生悪魔では無いらしく、もう1つ気になる事を言っていた。

 

 

「何にも感じる事ができないんだにゃん。

強いのか弱いのか、人間としての気配もアイツからは何にも感じないにゃ。

最近の白音も、リアス・グレモリー達も……」

 

 

 強さを計る気力や圧力が奴等から感じ取れず、実際にやり合うまで底がわからないという黒歌の奴に対する忌々しい顔と共に放たれた言葉に俺も身に覚えがある。

 

 言われてみれば奴は相対してみると強者特有の気というか、圧力を感じない。

 にも関わらず奴は俺や黒歌を叩きのめしたのは何故なのか。

 

 考えてもわからないが、もしかして白音がそうなったのは何か奴にあるからだと考えるべきなのかもしれない。

 

 しかしどうやら俺達は考える時間も与えられないらしい……。

 

 

「き、帰還命令!? な、何故ですか!? 我々はまだ聖剣を奪還して――――は?」

 

「ど、どうしたのよゼノヴィア? 教会からなの?」

 

「あ、あぁ……直ちに帰還しろと今連絡があった……」

 

「な、何でだよ? まだ聖剣は取り返してないんだろ?」

 

「いや、もう取り返されている……らしい。コカビエルも処理されたって――

 

 

 

 

 

 

 

―――――奴等悪魔に」

 

 

 時系列が原作よりも遅く、そしてその通りに進まずして解決されてしまったこの事件により、俺達はますます悪魔達と敵対する道を進まなければならなくなった。

 

 

 

 

 

 

 戦争経験のある堕天使だからどんなものかと思っていたが――

 

 

「返してもらったよバルパー……『皆』を!!」

 

「き、貴様、聖剣を一体化させる為にかき集めた因子を!!?」

 

「裏は取れてるわよ堕天使コカビエル。

我々悪魔が人間より借りている領地で何をしようとしたのかを」

 

「派遣された悪魔祓いに任せるつもりだったけど、時間が掛かりすぎる為、人間の安全を考慮し我々がアナタを排除します」

 

「き、貴様等……!!」

 

「悪いねコカビエルちゃん。そういう訳だから大人しく捕まってよ?」

 

 

 

 大物だのと持て囃されてたのでサーゼクスのレベルを思ってたが、まあ、あんなのがゴロゴロ居るわけが無かったわな。

 リアスとソーナで十二分、そこにセラフォルーと塔城を加えてオーバーキルで呆気なく無力化できてしまったぞ。

 

 

「薄味であんまり美味しくありませんでした、あの人の力」

 

「ならばサーゼクス様の力を食べてみればどうでしょうか? 多分相当美味いかと」

 

「それは魅力的ですけど、私はやっぱり先輩を食べてみたいです」

 

「………」

 

 

 はぐれ悪魔祓いを使って奴等の潜伏場所を特定し、フェニックスのガキに負けてイライラしていたリアス達が八つ当たり気味に突撃し、呆気なくコカビエルだとかいった堕天使を捻り潰してしまった光景を遠巻きに、木場が仇であるバルパー・ガリレイを思う存分殴りまくり、その過程で取り返した因子なるもので神器を進化させた姿を見てるだけだった俺。

 

 別に良いんだけど、この先どうするのか……。これ一応悪魔側は不干渉でなければならないんだよな?

 

 

「おいリアス、お前一時のテンションに身を任せてこんな真似したは良いが、天界側の連中から絶対文句が出るだろ。

不干渉じゃないといけないんだろ?」

 

「…………。だって一週間近く待ってても一向にあの悪魔祓いの二人は解決しないのよ? それどころか兵藤イッセーと遊んでるし」

 

「まぁそうだがよ……」

 

 

 持て余してるのか、リアスの身体から魔力が漏れてるのを感じながら俺は小さくため息を漏らす。

 雑魚だ雑魚だと俺は何時もケツをひっぱたくという意味で煽っちゃいるが、コイツもソーナもぶっちゃけそれなりに強くはなっている。

 フィジカルにかまけて遊んでる奴等やらこのコカビエルとやらみたいに単に戦争がしたいとほざくだけの連中程度なら単独で黙らせられる領域に居る……つまりそれは種族としての力を完全に越えているという事に他ならない。

 

 

「どうする? このまま氷付けにしてアザゼルちゃんにでも送る?」

 

「いや、悪魔祓いの二人組にこっそり押し付け――基、引き渡してしまえば良いのでは? ほら、別に私たち手柄とか要らない訳ですし、あの悪魔祓いがやった事にすればある程度穏便になるんじゃありませんか?」

 

「…………」

 

 

 俺が10年以上掛けて、何百と死にかけてやっとここまで来た領域に侵入してくるコイツ等はやっぱりフィジカルエリートなんだなと思い知る。

 ちょっとコツを教えただけでスキルを発現する塔城のガキなんざ潜在能力含めてミリキャスレベルだし……とことん人間は非力だなと思ってしまう。

 

 

「その悪魔祓いとやらは兵藤イッセーの家に居る。だからその堕天使を極限まで弱らせて家の庭にでも放り込め。

で、そこのバルパーなんたらっつージジイは……まあ、木場が殺すか決めろ」

 

「え、僕?」

 

 

 追い抜かれたら……まあ、それはそれでしょうがないとは思うが、悔しいと思うだろうきっと。

 それこそサーゼクスに抱く嫉妬と同じ気持ちが。

 

 けれどそうはさせない……俺にあるのはこの身ひとつと発現させたスキル。

 フィジカルはぶっちぎりに弱い以上、もっと先の領域に進化し続けるしかない。

 

 でなければ俺はまた見捨てられる……。

 

 

「わ、私を殺すのか……!?」

 

「殺してやりたいくらい憎いさ。けどね、お前にそんな価値はない。

精々死ぬまで穴蔵に閉じ込められて惨めに寿命を迎えるんだな」

 

 

 弱いからと見捨てられるのはもう嫌なんだ。

 

 

 

 

 一誠の提案により、極限まで弱らせたコカビエルとバルパーとフリードをアタフタしている悪魔祓いの二人が居る兵藤家の庭に投げ込む事にして、その後の全てを押し付ける事で町の安全を見事に守ったリアスとソーナ達。

 が、当然そんな事で解決ですとなる程大人の世界は甘く無く、手足をふんじばってセラフォルーが氷付けにしようとしたその瞬間、新たな存在が姿を現した。

 

 

「ちょっと待って貰えないか? そいつ等の処理は俺に任せて貰いたいのだが」

 

 

 全身を覆う純白の鎧により顔が見えない第三者の声と強い力に全員の視線がそちらに向けられる。

 

 

「誰だよ?」

 

「コカビエルの仲間か?」

 

「ま、また新しいのが来たぁ!?」

 

 

 強い圧力に本能的に身構えるソーナの眷属と祐斗、朱乃、本気になれたら強い癖に怯えて無表情の一誠の背中に隠れるギャスパー。

 

 

「おっと矛を納めてくれないか? 俺はコカビエルの仲間じゃないよ」

 

「仲間じゃない証拠はあるの?」

 

「物的な証拠は無いが、アザゼルに頼まれて回収しに来たと言えば少しは納得してくれるかい?」

 

「アザゼルちゃん? でもアナタ、堕天使じゃないよね?」

 

「まぁね四大魔王のセラフォルー・レヴィアタン。

俺はヴァーリ、白龍皇だ」

 

 

 鎧越しにちょっと得意気に聞こえる声色で白龍皇と答えるヴァーリなる男。

 

 

「白龍皇? あぁ、赤龍帝の対になる二天龍の片割れね」

 

「そういえば前にそんな情報が入ってたかも」

 

「なるほど、アザゼルの使いならある程度信用はできる訳ですね」

 

「……………。リアクションが薄いな、もう少し驚いてくれても良いだろ?」

 

 

 ふーん、あっそ……と素っ気なさすぎる反応に若干肩透かしを喰らうヴァーリなる白龍皇。

 対となる赤龍帝の顔を見に行くついでの回収任務なのに、出鼻を挫かれた気分だったが、二天龍だのと言われても正直理不尽魔王の存在を知るせいか今更という印象しかリアス達には抱けないのだ。

 

 

「回収してくれるのならありがたいわ白龍皇さん。ほら、ついでだからこのはぐれ悪魔祓いと神父も連れてって頂戴」

 

「手間が省けて助かりました白龍皇さん、ほら早く」

 

「アザゼルちゃんによろしくねー☆」

 

「………………」

 

 

 挙げ句手間が省けたと別の所で喜び、ひょいひょいとコカビエル達の身柄をヴァーリに押し付け出すリアスやソーナ達にヴァーリは微妙に納得できない気分だ。

 

 何せヴァーリから見てリアス達からは『何も感じない』のだ。

 強者としての覇気や、気配が微塵も。

 

 

「……参考までに聞くけど、コカビエル程の男をここまで叩きのめしたのは誰かな?」

 

 

 ヴァーリが来た頃にはボロボロになってぶっ倒れてるコカビエルの姿と、リアス達悪魔達であり、一体誰が倒したのかを知らない。

 予想としては魔王であるセラフォルーなのかもしれないが、どういう訳かセラフォルーから強いオーラみたいなものを微塵も感じ取れない。

 

 だからこそ知りたくなったヴァーリは質問するのだが……。

 

 

「全員で必死になって袋叩きにしたら勝っちゃったから誰がというのはわからないわ。そうよね皆?」

 

「ええ、何せ相手はコカビエルですからね。無我夢中でしたよ」

 

「上手く大ダメージを与えられたからねー☆」

 

「しゃくしゃくしただけ」

 

「石ころ投げてただけだよな俺達は?」

 

「僕はバルパー・ガリレイを抑え込んでたから戦ってないや」

 

「ぼ、僕はトラップを仕掛けてたので……」

 

「私はチクチクと電撃を当ててましたわ。あんまり効いて無さそうでしたけど」

 

「………………」

 

 

 のほほんと返してくる皆の言葉をまとめると『全員で一斉に袋叩きにしたらなんかアッサリ勝ってしまった』――とのことらしい。

 ヴァーリは勿論そんなの信じなかったが、あまりにもリアス達から強者としてのオーラを感じなかったせいか、取り敢えず納得する事にした。

 

 

「……………。そういう事にしとくよ。

ところでここに赤龍帝が住んでるらしいけど、君達は知らないかい?」

 

「一応知ってはいるわ。あぁ、言っておくけどこの一誠という人間の子は違うわよ? 赤龍帝の兵藤イッセーと顔がそこはかとなく似てるかもしれないけど、赤の他人だから」

 

「む? そういえば何故キミ達の中に純粋な人間が……」

 

「グレモリー家とシトリー家自慢の執事ですので」

 

「執事? 人間の……?」

 

「…………………」

 

 

 鎧越しに見える無愛想な顔した男を見据えるヴァーリは怪しむ。

 赤龍帝の容姿がどういう訳かこの執事服を着た男に似てるのはわかったが、何故人間の男が二つの純血悪魔の家の執事なんかしてるのか。

 ひょっとして彼は強いのか? と戦闘狂の性が出て来てじーっと探る様に見てみるが―――何も感じない。

 

 

「………………………………………おろろろろろ!!!!??」

 

「あ、先輩!?」

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

 

 それどころかちょっと圧力を向けた瞬間顔を真っ青にして吐いている。

 

 

「事情は知らないが、ただの人間であることはわかったよ」

 

「いや、うん……」

 

「そう思ってくれて良いのやら……」

 

「あはははー☆」

 

 

 

 

 

「げほ! うげぇぇぇ!!」

 

「大丈夫です先輩、もう見てませんからアレ」

 

「や、やっぱり見知らぬ人だとダメになるんですね」

 

「お、おい木場水持ってこい!」

 

「もう用意してるよ、ほら一誠くん、ゆっくり飲むんだ……」

 

「んぐ、んぐ……うぇ……」

 

「最近話す様になったから大丈夫だと思ってたけど」

 

「日之影くんらしいねここら辺は……」

 

 

 サスサスと小猫達に順番に背中を擦って貰う姿からどう見ても強さを感じないヴァーリは、苦笑いしてるソーナとリアスとセラフォルーに眉を潜めながらも取り敢えずこの場を去る。

 圧力を与えたら吐いた訳じゃない云々含めた全部が全部間違いだったとこの後知るとはこの時知らずに。

 

 

 

 

 

 コカビエルを黙らせ、その功績も白龍皇に押し付けたと思ってたが、やはりそうは問屋が降りる訳がなく、アッサリとリアス達がやったと知れ渡り、堕天使が起こした事件というのもあって三大勢力のトップによる会談が行われる事になった。

 

 場所は駒王学園の大会議室。

 天界トップと堕天使総督がやって来て、悪魔側からはセラフォルーとサーゼクスが代表として出席する形で始まった会議だが、別に天界側のトップであるミカエルは悪魔の干渉に関して文句がある訳では無さそうだった。

 

 

「寧ろ助かりましたし、まさかサーゼクスとセラフォルーの妹までもその……強いとは……」

 

「まあ、俺は知ってたけどよ。

コカビエルもよりにもよって何でこの町でやらかそうとしたんだか……」

 

 

 軽く脅威をリアスとソーナに覚えるミカエルと現役時代のサーゼクスのヤバさを嫌という程知ってるだけに遠い目をするアザゼル。

 以前グレモリー家に上がり込んだ時に見た常軌を逸した修行風景を、あの人間の子供によって行ってた結果といえばそれまでだが、サーゼクスの周囲には化け物しか居ないのかとため息しかない。

 

 

「ちなみにこの会談の前に学園の校庭を見てましたけど、悪魔同士が殺し合いにしか見えない戦いをしてましたが、何者です?」

 

「あぁ、一人は妹の戦車で一人はフェニックス家の娘だね」

 

「レイヴェル・フェニックスちゃんって言うんだけどさー……あの子めちゃ強いんだよねー☆」

 

「強いって……どれくらいだよ?」

 

「そうだね、僕が80%くらい本気だしてやっと勝てるくらいかな?」

 

「……………はい!?」

 

 

 ミカエルとアザゼルの質問に平然と答えるサーゼクスをもってしても80%の力でやっと抑え込めるレベルにであるフェニックス家の娘らしい力にギョッとする。

 何故かセラフォルーが不貞腐れてるが、アザゼルとミカエルにその理由を問う余裕は無かった。

 

 

「あ、悪魔ってどうなってんだよ? サーゼクスの世代からおかしなレベルっつーか……」

 

「種の突然変異としか思えませんね」

 

 

 ある意味的を射てるミカエルの言葉に対して微笑むだけで肯定はしないサーゼクス。

 それは後天的だろうと覚醒可能な事を、あの人見知り拗らせた少年によって立証されたからだが、言う必要は無いと判断しただけだ。

 

 

(アザゼルはある程度知ってるけど、一誠の事は伏せておいた方が良いよね。

色々とうるさいし)

 

(いーちゃんの事は黙ってよっと)

 

 

 続く

 

 

 

 

 

 おまけ、前回の似非予告が続いた場合。

 

 

 

 カテレアを人質として悪魔側に奪われた禍の団だが、旧魔王派の誰もが取り戻そうと動こうとはしなかった。

 いや寧ろサーゼクス側に捕らえられた時点で、赤龍帝と白龍皇の獲得の為に囮に出した時点でカテレア自身の予想通り完全に捨て駒扱いだった。

 

 どうせ処刑されてるだろう……と。

 

 が……。

 

 

「グレモリーとシトリー領土内ならある程度自由にすることを許してあげるよ。

ただし、監視は付くけどね」

 

「良いのですか?」

 

「クルゼレイ達に降伏すればキミの身柄を返すという書状を送ったんだけど、一言返ってきたのは『煮るなり焼くなり好きにしろ、こっちは痛手にもならない』って返ってきてね」

 

「……………え」

 

 

 わかってはいたけど、同志達にすら完全に見捨てられてると知らされたカテレアは改めてショックすぎて半泣きで笑ってしまう。

 

 

「あは、あははは……わ、わかってましたよ。ええ、どうせ私なんて……」

 

「いや、恋仲のクルゼレイ辺りが釣れると思ったんだけど……」

 

「へ? クルゼレイと? なんですそれ?」

 

「え?」

 

「え?」

 

 

 ちょっと噛み合わない所があれど、とにかく人質の意味が無いので閉じ込めるのは可哀想とある程度の自由を許されたカテレア。

 しかし別に意味なく出歩く性格でも無いので、殆どはシトリー家とグレモリー家を行ったり来たりの生活だった。

 

 だがその過程でとある転生悪魔の兵士になら楽しそうにするというのが見て取れるので、その兵士を呼び出してこんな事を頼んでみる。

 

 

「はぇ? お、俺がカテレアさんの護衛役っすか?」

 

「うん、キミが適任だと話し合ってね。どうだい?」

 

「で、でも俺弱いし……それにずっと冥界に居るわけには……学校あるし」

 

 

 力の伸び悩みに最近苦しむ匙少年は躊躇する。

 だがその背中を押したのは意外にも――

 

 

「挑戦してはどうでしょう? 彼女ならまぁじゃじゃ馬共と比べるまでもなく楽でしょうし」

 

「じゃじゃ馬とはなによ!」

 

「遠慮しない程深い仲と言ってほしいわね!」

 

 

 一誠だった。

 後ろでじゃじゃ馬共と言われてぷんすかしてる主と主のライバルを丸無視し、元士郎の背を押す一誠。

 

 

「アナタ様はどうも『挑戦』すると大きなものを獲る様ですからね」

 

「挑戦する? 俺が?」

 

「ええ、まあそれがどういう意味なのかは私にはわかりませんが」

 

「………」

 

 

 どこか含みを持たせた言い方をする一誠に元士郎の目は変わる。

 

 

「わかりました。俺にやらせてくださいその仕事」

 

 

 一誠の言葉により挑戦する事にした元士郎は早速部屋に居るカテレアに伝える。

 

 

「という訳でカテレアさんの護衛役となりました匙元士郎です。

その、護衛されるなんてカテレアさんにとっては屈辱かもしれませんが、どうかよろしくお願いいたします」

 

「そ、そうなの? 私監視役って聞かされてからつい……そう、ま、まぁアナタなら良いでしょう。知らない誰かよりは」

 

「うっす」

 

 

 ホッとする元士郎は気付かないが、あきらかに隠れてニヤニヤしてるカテレア。

 どうやらカテレア的に一々持ち上げてくれる元士郎はお気に入りだったらしい。

 

 そんなこんなで護衛役となった元士郎のお陰か、外に出るようになった訳だが旧派ということもあって殆どの悪魔達に煙たがれる視線が多い。

 

 

「裏切り者がどの面下げてこの地に居るのだ」

 

「………」

 

 

 わかってた事だが、歓迎されない視線にカテレアはやっぱり外なんか出なけりゃ良かったと思った。

 が……。

 

 

「こそこそ言わずに直接言えや? 聞いてやるからよ俺がぁ……!」

 

 

 そんなカテレアを庇って荒れた時期の口調丸出しで凄む元士郎。

 一誠達の修行で伸び悩んでるとはいえ、それでも新人悪魔の中では破格の領域に居るのはこれまで行われたレーティングゲームで証明されてるので殆どを黙らせる事に成功する。

 

 

「ふん! 行きましょうカテレアさん」

 

「え、ええ……」

 

 

 ちょっと感激してしまうのは卑屈になりすぎて残念になってるからか。

 やがて人間界……つまり元士郎宅にホームステイする事になったカテレアはすっかり元士郎を信頼していく。

 

 

「元士郎、お弁当を忘れてたので届けに……」

 

「あ、すいませんわざわざ……」

 

「ちょ待て匙!? だ、誰だこの褐色美人なお姉様は!?」

 

「いつのまにお前!?」

 

「うるせぇ! この人に何かしたらぶっ殺すかんな!」

 

 

 さながら番犬の如くカテレアの護衛をする日々。

 それは全く辛いは思わず、寧ろ楽しかった。

 

 

「匙を追跡するわよ一誠!」

 

「嫌だよ、放っといてやれよ……」

 

「そうしたいのは山々だけど面白そ――じゃなくて心配なのよ! ほら!」

 

「………………」

 

 

 日に日に仲良くなる二人を野次馬根性丸出しで覗き見るソーナと振り回される執事。

 

 

「て、手繋いでるわ! きゃー!」

 

「バレるだろバカ、静かにしろよ」

 

「だって手よ手! ほらしかもお互いに照れてるわ! なんて初々しいのかしら!」

 

「はぁ……」

 

「あの二人に習って私達も繋ぎましょう! 手を!」

 

「うるさい奴だな……はい」

 

「あ…………」

 

「これで満足か? ガキじゃあるまいし……」

 

「え、ええうん……大きくなったわね一誠の手……」

 

 

 イザされるとしおらしくなるソーナに気づかず、別に目的なんてなく並んで歩く元士郎とカテレアは楽しそうだ。

 

 だがそんな平和な時に今更ながらに現れし元同志達がカテレアを拐った。

 

 勿論取り戻しに突撃する匙。

 その後ろには一誠と祐斗の二人。

 つまり男三人衆のトライアングルだ。

 

 

「今更……今更あの人の事を捨て駒にした癖に調子が良すぎなんだよテメェ等ァァァッ!!」

 

 

 怒る匙。

 その怒りは挑戦し続けた匙を覚醒させ、神器をも変質させる。

 

 

『キバ――そうか呀か。

我が名は呀――暗黒騎士!』

 

 

 渇望の黒狼へ。

 

 

似非予告おわり




補足

何も感じられないというのは、あれです……某破壊神達の気が察知できなかった的なアレです。

領域が未知過ぎて感知できない。だから今回の様にヴァーリくんが皆を探っても弱いと勘違いされてしまう。

サーゼクスさんなんかも一見優男にしか見えない……それが最悪な罠だとも知らずに。


で、それのせいで割りを食わされた悪魔祓い二人組。
まあきっと転生者がなんとかすると思われます(棒)



その2
超戦者+鎧……あれ、強くね?


その3
ホント今更やってて思う……匙きゅんとカテレアさんの組み合わせってカオスどころじゃねぇだろ。

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