執事一誠の憂鬱   作:超人類DX

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せっせと真面目にお掃除してたら大変な事に……


プールサイドでの憂鬱

 授業参観も終わり、会談まで残り数日となったある日、現・堕天使総督であるアザゼルの言う下見に付いていく形で駒王学園へとやって来ていたヴァーリ・ルシファーは、この学園に通っているとの事である宿命の相手の赤龍帝は居ないかと探していた。

 

 コカビエルの件の時には結局見ることの無かった赤龍帝は果たして自分のライバルになり得るのか。

 それを確かめる意味でも今日こそは会ってみたかったヴァーリだが、残念な事にその日の学園は曜日の関係で休校だった。

 

 代わりに出会したのは……。

 

 

「あらアナタは確か……」

 

「コカビエルの件の時に現れた……白龍皇でしたか?」

 

「リアス・グレモリーとソーナ・シトリーか……」

 

 

 眷属達と共にデッキブラシとバケツを持ったジャージ姿の魔王の妹二人だった。

 

 

「本日は休日で学園の生徒以外の者の立ち入りは原則禁止になっておるのですが?」

 

「キミ達も知っているだろう? 近々ここで行われる三大勢力の会談の事さ。

アザゼルの奴が下見をしに行くと言うからな」

 

「そのアザゼルは居ない様だけど?」

 

「到着した途端フラフラと何処かへ行ってしまったからな。

俺としてもこの学園に居るらしい赤龍帝の顔を拝もうと思ったのだが……」

 

 

 僅かに戦闘体勢に入るどちらの眷属だろう男子二人に気付きつつ値踏みするような目でヴァーリは目の前に居る悪魔達を観察する。

 

 

(………。本当にこれがサーゼクス・ルシファーとセラフォルー・レヴィアタンの妹なのか? 眷属達もそうだが、全く何も強さの波動を感じん……。

いや、今そこで俺を警戒している男二人と数人の女達からは波動を感じるが、それでも弱い……)

 

 

 コカビエルの時にも思った『気配』がリアスとソーナから全く感じず、寧ろ眷属達の方がひょっとしたら強かったりするのではないのかと思うヴァーリは、これが魔王の妹なのかと少し落胆してしまう。

 すると僅かに戦闘体勢に入っていた男子二人……つまり祐斗と元士郎がゆっくりと口を開く。

 

 

「今日は学校自体がお休みだから、キミの会いたがる赤龍帝は居ない筈だ」

 

「奴の家に行けば会えると思うから行ってみたらどうだ?」

 

「そうみたいだな。しかし心配しなくても俺は何もしないから警戒を解いて貰えるか?」

 

 

 もっとも、警戒した所で俺にとっては意味の無い事なのだが、と鍛練による自身のレベルを客観的に理解する自信の言葉を内心呟くヴァーリ。

 それを聞いたのか、はたまたリアスとソーナに目線で命じられたのか、戦闘体勢を解いた二人。

 

 

「そういえばあの時見た数人が居ないみたいだが……あぁ、そうそう、あの燕尾服を来た人間の男も居ない様だ。

アザゼルから聞いた話では、その男と赤龍帝の容姿は驚く程似ているとか……」

 

「それが?」

 

「貴方に何の関係が?」

 

「別に無い。

キミ達が何を思って人間の男を転生すらさせずに傍に置いているのか不思議に思うが、それだけの事だからな。

寧ろキミ達のどちらかは赤龍帝を眷属にしようとは思わなかったのか?」

 

 

 その方が色々と楽しめそうだったのに……と、何故兵藤イッセーを眷属にしなかったのかを然り気無く質問するヴァーリ。

 普通に考えれば二天龍の片割れを宿す赤龍帝はそれだけでも戦力に数えられそうなのに、この二人はどちらもしなかった。

 もっとも、このまるで何も感じないオーラを考えたらしたくても出来なかったと考えた方が正しいのだろうが……。

 

 

「別に戦力目的で眷属を増やしてるつもりが私には無いからだわ」

 

「私も同じく。

別に彼に魅力なんて感じないし」

 

「…………。変わってるなキミ達は。

強い弱いは別にして赤龍帝なんだぞ?」

 

 

 やはりこんな程度なのか。

 最早興味と関心が薄くなってしまったヴァーリは、呑気な答えを返す二人に失望し、赤龍帝がこの学園に居ないなら用は無いと云わんばかりにさっさと去ってしまった。

 

 

「つまらない。歳も近いし魔王の妹なのだからそれなりの強さは持っていると思っていたのだが、やはりコカビエルを押さえ込んだのはあの場に何故か居たセラフォルー・レヴィアタンか」

 

 

 赤龍帝は是非とも自分の思ってる通りの存在であってほしい……ただただヴァーリは退屈ではないことを願うのだった。

 

 

 

 

 

 白龍皇とニアミスしてしまったものの、基本的に彼独りが何をしてようが暴れさえしなければどうとでもなるので、追うも監視もせずに気を取り直してプール清掃をするリアスとソーナ達。

 ヴァーリが言った様に、一部の者達が居なかったのは既に先んじて清掃をしていたからであり、到着したリアス達の目に飛び込んできたのは――

 

 

「ねぇ一誠様? そんな寸胴おチビさんなんか放っておいて私とひと夏の過ちに溺れませんか? キャー! 言っちゃいましたわ♪」

 

「よっしゃあ! 後とは言わずに今すぐ食い殺してやるよ鳥頭が!!」

 

「お、落ち着いてください小猫ちゃん!」

 

「………………………」

 

 

 死んだ目をしながらデッキブラシでプール清掃をしてる一誠に絡み付いてはしゃいでるレイヴェルと、そのレイヴェルに挑発されてプッツンしてしまってる小猫を必死に止めようとしてるギャスパーだった。

 

 

「…………何があったの?」

 

「というかフェニックスさんが何故ここに?」

 

 

 現状、一誠よりも更に格上の領域に立つとされるレイヴェルが何故休日のプールサイドに来てるのか……。

 それが不思議でしょうがなかったリアスとソーナは今にも飛びかからんとする小猫を止めようとするギャスパーに加勢しながら状況説明を求める。

 

 

「ぜぇ、ぜぇ、先に先輩とギャーくんとでお掃除の準備をしながら楽しく遊んでたのに、この色ボケ鳥女がいきなりやって来て先輩にベタベタと……!」

 

 

 どうやら勝手にやって来たらしい。

 小猫的にはとにかく一誠にベタベタしてるのが気に入らないらしいのだが、当の本人である一誠の顔は何時も以上に死んでいた……それこそヴェネラナに構われてる時よりも色々と死んでいた。

 

 

「あら、私は一誠様の進化の邪魔をしてるばかりかこんな雑用まで付き合わせてる貴女方に文句のひとつでも言って差し上げようとしたまでですわよ? そうしたらこのおチビさんが無駄に突っかかってくるものですから……。

まったく、胸が削り節の様に薄いと心も板の様にペラッペラなのかしら?」

 

「豪雨・王食晩餐……!!」

 

「やめなさい小猫! …………。フェニックスさん、一誠に関して貴女が不満に思うことはよくわかったわ」

 

「けれど、貴女こそ貴女の言う一誠を縛る資格は無いのでは?」

 

 

 一体どこで覚えたのか、聞いただけでヤバそうな力を発動させようとした小猫をピシャリと一言で止めたリアスとソーナが真正面に立つ。

 

 

「フム、それは確かにそうでしたね」

 

 

 そんな二人に対して意外にもレイヴェルは言い返す事はせず理解を示した様に頷くと、黙々とこんな状況の中でも無言でデッキブラシを動かして清掃して居た一誠から少し離れてペコリと頭を下げた。

 

 

「申し訳ありませんでしたわ一誠様、私も少し出過ぎた真似をしてしまいましたわ」

 

 

 謝罪をし、ニコリと微笑むレイヴェル。

 そんな彼女に対して一瞬だけブラシを動かす手を止めて一瞥だけした一誠は何も返さず、再び清掃に戻る。

 

 

「やーい、無視されてやんのー」

 

「小猫!」

 

 

 それを見た小猫がすかさずレイヴェルを挑発し返し、折角沈静化させられそうだった一触即発の空気がまた戻るだろとリアスが注意しようとするも、レイヴェル本人は特に気にした様子も無く寧ろ鼻で笑っていた。

 

 

「見た目から何から一誠様の対象外である貴女に言われてもねぇ?」

 

「……部長、私やっぱりアイツの胸をもいでライオンの餌にしてやりたいです」

 

「耐えなさい。今私達全員が彼女に戦いを挑んでも勝ち目は無いのよ」

 

 

 見た目は可憐な少女ではあるが、その実サーゼクスに全力に近い本気を出させるまでの領域に君臨する少女だ。

 いくらその領域に立てた小猫とはいえ、まだ入り口付近でしかない彼女では到底敵わないのだ。

 

 

「貴女はこのまま帰るのかしら?」

 

「いえ、折角ですのでもう少し近くで一誠様を眺めていますわ」

 

「でしたら貴女もプール掃除を手伝って頂けるかしら?」

 

「勿論、一誠様がされているのに私がしないなんてあり得ませんから」

 

「チッ、さっさと消えてしまえば良いのに」

 

「こ、小猫ちゃん……」

 

「まさに犬猿の仲だなあの二人……」

 

「猫と鳥だけどね」

 

 

 結局変な空気なってしまったまま、帰るつもりは無いらしいレイヴェルにも取り敢えず手伝わせる形で始まったプール清掃なのだった。

 

 

 処で何故オカルト研究部が生徒会の仕事の一つであったプール清掃に参加しているのかというと、勿論ソーナが声を掛けたからだというのもあるが、一番は清掃をすればその日限り貸しきりでプールが使用できるというのがあったからだ。

 

 

「それにしても一誠様はとてもお掃除の手際が宜しいのですね?」

 

「グレイフィアと私の母とソーナのお母様に大分仕込まれたから……」

 

「本人曰く、条件反射的に動いてしまうらしいわ」

 

「それはまた……嘆かわしい話ですわね。そんなスキルを磨いてる暇さえ無かったら今頃一誠様はサーゼクス君と同等の領域でしたのに」

 

 

 グレイフィアとヴェネラナの調教――もとい、教育のおかげで二人のボディーガードと執事を兼任させられてる一誠も付いてこない訳にはいかず、またグレイフィアの教育によって無駄に主夫的スキルが凄まじい手腕もあるので、別にプールに入ることに興味は無いにせよ、清掃だけは無駄に真面目にやっていた。

 

 

「やはり今からでも遅くは無いし、私と暫く二人で修行を……」

 

「今日はもうそういった話はしないって部長と生徒会長さんと約束したよね? もう忘れたの? 流石は鳥頭だね?」

 

「おっとそうでしだね、今のは素直に私の落ち度でしたわ――――寸胴猫さん?」

 

「「ふふふふ♪」」

 

 

 周囲が勝手に――というか小猫とレイヴェルが不穏なオーラを撒き散らしながら笑い合ってようが一誠はただただ職業病の如し黙々さでひたすら掃除を続ける。

 一言も発せず、ただただ空気に徹して。

 

 

「一誠君、休憩も無しにずっとお掃除してて疲れてない? 飲み物持ってきたから是非……」

 

「……どうも」

 

 

 そんな空気の中、セラフォルーと一誠から現在死ぬかもしれない鍛練を受けている朱乃が、普段学園内で二大お姉さまだなどと呼ばれてる堂々さ加減が嘘のように潮らしい態度で一誠に飲み物を渡す。

 

 それはさながら、憧れのサッカー部の先輩に緊張しながら飲み物を渡そうとする女子マネージャーみたいなものを想像させられるが、生憎先輩は朱乃だ。

 

 対する一誠も差し出された飲み物の入ったペットボトルを爽やかに受け取るだなんて事はせず、寧ろ千年の恋も冷めそうな位のぶっきらぼうな一言と共に受け取る。

 本来の一誠ならもっと素直に、若干の下心のある視線を朱乃の胸元辺りに向けるのだが、この一誠は視線すら全く合わせやしない。

 

 だというのに朱乃は内心『や、やった!』と大喜びだ。

 

 

(前までなら返事も無ければ受け取りもしなかった。けど今ちゃんと返事もしてくれたし受け取ってもくれた……! ふ、ふふっ! どうしましょう、これ程明確に嬉しいと思うなんてなかったわ!)

 

 

 グレモリーとシトリー家の面子を除けば一誠と知り合った者の中では最古参に部類される。

 しかし本人の他人への猜疑心とコミュニケーション能力を拗らせた結果、まともな会話に発展できる様になったのはここ最近だった。

 

 それまでは何をするにしてもリアスかソーナ達を介さなければ成立しなかった事を考えたら、例え無愛想でまともにまだ目を合わせないにしても返答してくれた事は朱乃にとって大きな前進の手応えを十二分に感じさせるものだった。

 

 

「また欲しくなったら何時でも言ってね?」

 

「どうも……」

 

 

 ここまで来るまで長かった……。

 ある種の感動すら覚える朱乃は自然と浮かべてしまう笑みを溢すと、少し離れた所で掃除をしていたリアスが突然『そういえば……』と一誠に話しかけた。

 

 

「そういえば此所に来る前に彼と出会したわよ? ほら、前にコカビエルの時に現れた白龍皇が」

 

「あっそう」

 

「その様子だと誰か学園内に入ってきた事には気付いてたみたいだけど、あんまり興味は無い感じかしら?」

 

「俺の人生の邪魔になるとも思えないしな」

 

 

 後はこうやって話し掛ければ即座に、それも気負った様子も無く返して貰えるリアスやソーナみたいになれれば……と新たな目標を密かに抱く朱乃は、白龍皇についてどうでも良さげな反応の一誠をじーっと眺める。

 

 

「白龍皇? あぁ、そういえば小さな気配が外から入ってきたのは感じましたが、それが二天龍の片割れの事ですか? この学園の生徒にももう片方の赤龍帝だったが居ましたわねぇ。

一誠様に顔の作りだけは無駄に似てるのが」

 

「随分と上から目線で二天龍について言うわね……」

 

「私にとっては存在してようが居まいが一誠様と同じく何の関係もない存在ですから。

勝手に殺し合うのも良し、共倒れになろうとも良し。好きにしてなさいって感じですもの」

 

「確かに大雑把に言ってしまえばそうはなりますけどね……。

あの白龍皇はどうも私とリアスを見て落胆してたみたいなので……」

 

「落胆? ……あぁ」

 

 

 白龍皇から落胆されたと話すソーナに一誠は何故なのかを直ぐに理解した様子で頷いた。

 

 

「それはリアスとソーナが弱いと感じたからだろ、そいつ目線で」

 

「それってあの白龍皇が私やソーナよりも上の領域に立っているから?」

 

「違う、逆だよ逆。そいつを直接見た訳じゃないから何とも言えないけど、そいつよりリアスとソーナの居る領域が遥か上だからだ」

 

「? それと何も感じないのと何の関係があるのよ?」

 

 

 実の所、リアスもソーナも悪魔としては普通にイカれた領域に進んでるのだが、更に上が上なせいか自分を過小評価する傾向がある。

 だから自覚していない面があるのだ。

 

 

「蟻が象の足を見たら巨大な壁に思うのと一緒だ。そいつはお前達の力を計る事すら出来てない――だから逆に何の力も感じる事が出来ないのさ」

 

「つまり私とソーナは仮にあの白龍皇と戦えば……」

 

「普通にお二人なら問題なく叩きのめせますわよ。

我々の領域となると、例えば全力で魔力を放出してもその魔力自体がクリアな質へとなっているので、一見すると全く力の感じないものになるのです。

一応、その域に侵入したばかりの小猫さんもですが」

 

「私も……」

 

「お前もだからなギャスパー」

 

「ぼ、僕もですか!? じ、自信なんて無いんだけどなぁ……」

 

 リアスやソーナ達にしてみれば充分に人外と言える二人に言われてもピンと来ない。

 だがまだその領域に入っていない他の者達にしてみればリアス、ソーナ、小猫……そして何気に認められてるギャスパーが実に羨ましいし早く仲間入りしたい気持ちも大きくなる。

 

 

「そんな話よりもさっさと手を動かせ。何時まで経っても終わらないぞ」

 

 

 もう少し聞きたかったが、掃除をしろと言われてしまっては仕方なかったので、全員でせっせと掃除を終わらせた。

 そして約束通り、綺麗になったプールに水を入れることで漸く掃除は終わりを向かえ、お待ちかねの一足早いプール開きが始まった。

 

 

「……………」

 

 

 だが、皆が持参した水着に着替えてプールに入る中、ただひとり一誠だけは燕尾服に着替えるとプールサイドで直立不動だった。

 

 

「入らないの?」

 

「別に入りたいとは思わなかったからな」

 

「何よ、折角一誠も一緒だと思って新しい水着にしたのに……」

 

 

 そんな一誠に不満な顔をするリアスとソーナは実に対照的なデザインの水着だったが一誠は眉一つ動かす事も無くその場から動かなかった。

 

 

「あら、一誠様のお身体を確かめようと思ったのに、残念ですわ」

 

「確かめてどうするつもり……?」

 

「そりゃあ勿論、お子さまのアナタにはわからない事ですわ……ふっふっふっ」

 

「な、仲良くしようよ二人とも……」

 

 

 他の皆が思い思いに楽しんでいる中を石像の様に動かない一誠。

 別にカナヅチだからという訳では無く本当にそんな気分では無いらしい……。

 しかしそんな鋼の意思は本人の不意を突いてくる形でやって来た者達のせいでうち壊されてしまう。

 

 

「こういう格好をするのも何時以来になるのか……変じゃないかしら?」

 

「全然変じゃないよおば様! 寧ろ嫉妬しちゃうくらいまだまだお綺麗ですよ~☆」

 

「足を滑らせて転んだら大変だから走ってはダメよミリキャス?」

 

「はいお母さん!」

 

 

「…………………は!?」

 

 

 突然、来るわけもない筈の面子の、既に水着に着替えた姿での襲来に、それまで平然としてた一誠の顔つきが面白いくらいに動揺したものへと変貌する。

 

 

「折角だしと思って声を掛けてみたら思いの外乗り気だったみたい」

 

「セラフォルーお姉様は言わずもがなだったわ」

 

 

 勿論、一誠と同じく眷属達も驚くのだが二人が経緯を話した途端直ぐに納得するのと同時に一誠の反応を伺う。

 するとあろうことか一誠はプールを囲う柵をよじ登って今まさに逃走しようと背を向けていた。

 

 

「むっ、待ちなさい一誠! セラフォルーちゃん!」

 

「おっけーだよおば様☆」

 

「っ!?」

 

 

 しかし当たり前の様に目撃された途端、ヴェネラナがまずセラフォルーに指示を送り、手を叩いたセラフォルーから放出された氷の魔力が一誠の両足を捕らえた。

 

 

「っの……!」

 

 

 しかしそれでも諦めない一誠は即座に無事な両手で氷付けにされた両足の氷の塊を破壊して逃走を続行する。

 

 

「グレイフィア! ミリキャス!!」

 

 

 だがそうは問屋は下ろさんと今度はグレイフィアとミリキャスと共にヴェネラナ直々にびっくり速度で跳躍体勢になった一誠に接近して後ろから羽交い締めにする。

 

 

「は、離せ!」

 

「顔を見るなり逃げようとするとは何ですか一誠?」

 

「授業参観の時ですら最悪だったんだぞ! 逃げたくもなるんだよこっちは!」

 

「何もしていないで勝手に逃げたのは貴方でしょう? そうそう、早くあの時みたいに私を母と呼んでちょうだい?」

 

「呼ぶかババァが! あんなもん建前に決まってんだろうが!」

 

 

 リアスより露出度の高い水着姿で後ろから思いきり羽交い締めにするものだから、当たってる所が相当当たってたりする。

 しかしながら本人は寧ろ恐怖に染まった顔をしており、打ち上げられたカジキマグロの如く勢いで大暴れして何とか逃げようと必死だ。

 

 これでは授業参観の時と同じなのだが、今回はそれに加えて更に厄介なのがグレイフィアやセラフォルーやミリキャスまでヴェネラナに付いているという事だ。

 

 

「皆で楽しむ時は楽しむものなのよ。

それを貴方は済ました顔で……はぁ、さぁ着替えに行きましょう」

 

「ひっ!? ふざけるなよババァ! どこに連れていくつもりだ俺を!?」

 

「どこって、アナタを水着に着替えさせる為の更衣室よ?」

 

「! わ、わかった、もう観念したから一人で――」

 

「その手は喰わないわよ? 一人にしたらそのまま逃亡するでしょう? だから着替えさせてあげるわ……さ、行くわよ?」

 

「ざけんなよババァ! 俺は餓鬼じゃねぇんだよ!! おい! り、リアスかソーナ! こ、このババァを止めろ!!」

 

「あー……無理かなぁ」

 

「ちょっと止める力は私達には無いわ」

 

 

 だから頑張って? とご丁寧にウィンクまでして助けずに見送るリアスとソーナは全く頼りにならないと、他の眷属達に向かって次々と助けて目線を送るが、悉く無理だと無言で目を逸らされる。

 

 それならば! と会話なんて殆どしたことは無いレイヴェルを見たのだが……。

 

 

「あらあらまぁまぁ、本当に無いのですねぇ」

 

「食い千切ってやるぞ貴様ァ!!」

 

 

 関係ない所で小猫と遊んでて気付いてなかった……。

 

 

「気は済んだ?」

 

「………………」

 

 

 結局、授業参観の日に言ってしまった言葉のせいで余計変なスイッチを入れてしまったヴェネラナに連行されてしまう一誠。

 後に皆の耳に入る一誠の悲鳴は……それはそれは大変そうなものだったという。

 

 

「……………」

 

「普通に着替えさせただけなのに、襲われる生娘みたいに泣き叫ぶから誤解されちゃうわ」

 

「ですがお母様の場合……」

 

「リアス? 今何か言いましたか?」

 

「いえ! 何でもありません!」

 

 

 

 

 

「覚えてろよあのババァ……」

 

「大丈夫一誠兄さま?」

 

「逃げようとするからよ。学習しない子ね……」

 

「そうだよいーちゃん、何で何時も逃げようとするの?」

 

「餓鬼の頃から全く変わらない扱われ方されてきたら嫌でもそうなるんだよ! ちくしょう……!」

 

 

 




補足

基本的にサーゼクスさん側達は二天龍に何の関心も興味もありませんので、関係ない所であるなら勝手に戦うなりなんなりすれば良いんじゃねってスタンスです。

 そしてそんな彼等は大きすぎてリアスさん達壁を越えた人達の気配を感じられないです。


その2
レイヴェルたんは小猫たんと小競り合ってるけど、15という完全に一誠達よりも上に君臨してます。
まあ、一誠的に頭が上がらないのがヴェネラナさんとかグレイフィアさんだったりするのですが(笑)
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