執事一誠の憂鬱   作:超人類DX

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よくある会談さ。



会談中はお静かにしないといけませんよ

 会談当日がやって来た。

 三大勢力の代表者が一所に集まるという訳でそれなりの緊張感が醸し出されるのかと思えば別にそうでは無く、元々互いに顔見知りというのもあって特に気負った雰囲気等は無かった。

 

 

「以上が私、リアス・グレモリーとその眷族が関わった事件の内容です」

 

「同じくソーナ・シトリーとその眷属が関わりし事件です」

 

 

 集まる事になった大きな理由であるコカビエルの件について大きく関わる事になったリアスとソーナが事件の内容をトップ達に話す。

 当然その事件の現場に居たセラフォルーも二人の報告に対して嘘は無いとフォローしたりもした。

 

 

「ありがとう、二人とも座りなさい。

さて、この事に対してコカビエルの同志である堕天使総督殿から話を聞きたいのだが?」

 

「最早同志じゃないし、今回の一件はコカビエルの独断だ。

奴はそこにいる二人とセラフォルー達に倒された後、白龍皇が連れて帰り組織の軍事会議でコキュートスに送ることが決まってもう二度と出て来られねぇよ。

ってかそう言うことはもう資料にして送ってるだろ? それが全部だ」

 

「それで済まそうとする辺り、貴方は相変わらずいい加減な男ですね」

 

 

 半分開き直りの入った言い方に天使の現代表であるミカエルが呆れた様な顔をする。

 だがそんなミカエルに対してアザゼルは言った。

 

 

「へっ、コカビエルを止めるのに人間の悪魔祓いを二人程度しか寄越さなかったお前も大概いい加減だろう? 結局尻拭いをしたのがサーゼクス達なんだからな」

 

「…………」

 

 

 アザゼルの皮肉っぽい言い方にミカエルは口を閉ざす。

 

 

「聞けばその悪魔祓いの片方に対して『知りすぎた』って理由で陣営から追い出したらしいし、中々お前等の所も随分と組織らしいじゃねーの? え?」

 

「それ関しては下の者が勝手にやった事です。

今すぐにでもと言うのなら直ぐにでも復帰を――」

 

「その心配は要らないんじゃないかな? その悪魔祓いは会談に使ってるこの学園の生徒として無事に生きてるみたいだし」

 

「そうだよねリアスちゃんとソーナちゃん?」

 

「間違いありません」

 

「同じくこの学園の生徒でもある赤龍帝のお世話になっているようです」

 

 

 元となった悪魔祓いの一人が学園の生徒として普通に生存している―――という話を聞いたミカエルは少しだけ複雑そうな声で『そうですか……』と呟く。

 

 

「赤龍帝がこの地に存在しているのですか……」

 

「ウチで抱えてる白龍皇が興味津々なんだが、お前達二人の内の眷属では無いんだな?」

 

「先日その白龍皇にもお答えした通り、私とリアスは赤龍帝を眷属にはしていませんし、またしたいとも思ってはいません」

 

「一時期どういう訳か彼の方から接触を試みる行動が見られましたが、今ではそれも無くなりましたので」

 

 

 二天龍の片割れを宿す存在を特に脅威とすら捉えずに淡々と興味無さげに語る二人の若き悪魔にある程度その理由を察してるアザゼルは納得し、ミカエルは少々驚く。

 

 

「この先も眷属に加えるつもりは無い――その理由はなんでしょうか?」

 

「私達がその者を眷属に加えたこれまでの理由は戦力としてでは無く、各々が持つ柵に対して少しでも助けになるのであるならと考えたからです」

 

「確かに自ら眷属にして欲しいと強く望む者も居ますが、無意味に加える事は決してしません」

 

「理由は解ったが、赤龍帝に関しては違うんじゃねーのか?」

 

 

 ミカエルに対して弁解する二人にアザゼルが頬杖を付きながら話に割って入る。

 

 

「以前から何度かサーゼクスの実家に行ってるが、今日は居ないのかよ? 赤龍帝の容姿にそっくりな人間は?」

 

「赤龍帝に似た人間……?」

 

「あぁ、悪魔に転生もせず、どういう訳かシトリーとグレモリーの家紋が入った衣服を身に付けてる人間の小僧が居てな。

後で分かった事だが、その人間の容姿が現在の赤龍帝――兵藤イッセーと酷似しているんだよ。しかもご丁寧に名前までな……そう、確か名は日之影一誠だったか?」

 

 

 一誠の存在を一切知らない者に教えるついでにこれまで聞こうにも機会が無かった為に聞けなかった疑問をぶつけるアザゼルにミカエルは『そういえば……』と思い出す。

 

 

「何年か前にサーゼクスが人間の子を拾ったという話を聞きました。

単なる噂話だと思いましたが、もしやその話の人間の子というのがそうでしょうか?」

 

「そうだが、キミ達二人がそんなに不思議がる話かな?」

 

「まぁな、俺が見た時は人前で喋る事すら儘ならなそうな小僧にそこに居るグレイフィアと同等の立場を与えられてる様だったし、腕もかなり立つみたいだからな」

 

「その様な者を眷属にもしないのは確かに疑問ですね……」

 

「うーん、どうも二人は私達悪魔が無意味に他の種族を悪魔に転生させたがる様に見えちゃうみたいだねー?」

 

「アザゼル達の所には白龍皇が居ますしね、警戒してしまうのは昔の名残ですよ」

 

「おいおい、白龍皇に関しては戦力増強とかじゃなくて神器研究の為だっつーの。

戦争なんざもうやりたかねーし、何なら研究の内容をお前等に提供してやっても良いくらいだ」

 

 

 ましてやサーゼクスとだなんて二度と喧嘩したくねぇ……。

 優男に見えて一番ヤバイ――間違いなく種族としての力を完全に逸脱しているサーゼクス達と事を構えたくは無いと遠回しに否定するアザゼルにミカエルもそこは同意できるのか頷いた。

 

 

「確かに戦争をする時代ではありませんね。

所で話は戻りますが、その人間の子は今何処に? 会談にグレモリーとシトリーの家紋が入った衣服を身に付ける程の信頼を措いてるのであるならこの場に出席してもおかしくはないと思うのですが……」

 

「彼なら今僕達の娘とリアスとソーナさん眷属達の面倒を見て貰っている」

 

「仮に暇だったとしても、いーちゃんが此所に来たがるとは思えないかなぁ」

 

「?」

 

 

 うんうんとリアスとソーナがセラフォルーの言葉に同意する様に頷き、ミカエルが意図がわからずに首を傾げる。

 

 

「そういやあの小僧は殆ど喋らないっつーか、今風に言うとコミュ障って奴だったな。

前に見た時、そこの二人の眷属を前に吐きそうな顔してたし」

 

「それは両家の使用人の代表に位置する者としてどうなのでしょうか……」

 

「心配しなくてもあの子のお陰で今の我々が居ると感謝してる」

 

「二人には一生涯わからない事だとしてもね☆」

 

「……随分と信頼なされるようで、その人の子を」

 

「…………」

 

 

 それ以上詮索する様なら出るとこ出るか? 的な威圧感が若干込められた笑顔をリアス、ソーナ、グレイフィアまでもが加わって向けるものだからアザゼルとミカエルはこれ以上言ったら『地雷』を踏むと判断し、話を切り替える。

 

 

「まぁ、こんな事でまた仲違いはしたくねーし、今俺達で争うべきでは無いからな」

 

「何に備えるというんだ?」

 

「あん? この前お前の家に言った時にもチラッと話したし、ミカエルの所にも情報あがってねえのか? テロ組織だよテロ組織」

 

「テロ組織? そういえば数年前から少しずつ上がってはいるけど」

 

「私たちも同じようなものです」

 

「組織名禍の団(カオス・ブリケード)

俺達が今もっとも備えないといけない相手だ」

 

 

 初めて聞いた話にリアスとソーナは互いに目を合わせながらも耳を傾ける。

 

 

「規模はどの程度なんだい?」

 

「俺もまだ深くは知らないが、結構面倒な規模である事は間違いねぇ。

しかもそのトップはあの無限の龍神らしい」

 

「またの名をオーフィスですか……」

 

「あぁ、あの龍か。

確かに厄介かもしれないね」

 

 

 世界最強の龍と呼ばれる無限の龍神がトップとされる組織だと聞いたサーゼクスがお茶を飲みながら厄介だと語るが、どう見てもそんな危機感を抱いてる様には見えない。

 

 

「随分と楽観的に見えるなお前……」

 

「楽観視なんてしてないさ。

無限の龍神を相手にしなければならないだなんて怠いにも程があるしね」

 

「うーん、今の私でいけるかな?」

 

「大丈夫だと思うぜセラフォルー? キミは既に今の一誠と同じ目線に立ててるんだからね。

まあ、ちょっとは苦戦するだろうけど押さえ込めるでしょうよ」

 

「そっかぁ、それならいーちゃんとタッグ組んだらいけるね☆」

 

 

 というか悪魔側がさっきから緩すぎる。

 テロ組織が存在して、そのトップがオーフィスだと聞いても余裕さえ感じられていた。

 サーゼクスはともかくセラフォルーのこの余裕もどこか気になるし、アザゼルとミカエルは数さえ先の戦争で減ったとはいえ、戦力ならば完全に黄金期に突入している悪魔達に複雑な気分だった。

 

 

 そんな時だろう、外から巨大な爆撃音と大きな揺れが起こったのは。

 

 

「! 何事です!」

 

「……。チッ、噂をすればなんとやらだ。

どうやら俺達が会談をする時を狙って奴等が襲ってきたらしい」

 

「つまり今のはアザゼルの言っていたテロ組織の手の者って事なのかい?」

 

「状況から考えればな……しかもご丁寧に俺達は閉じ込められたらしい」

 

 

 そう言って辺りを見渡したアザゼルの言う通り、会議室周辺に障壁の様なものが展開される。

 

 

「あっちゃあ、見事に閉じ込められちゃったね」

 

「うーん、どうしよっか?」

 

「惚けた事言いやがって、お前なら直ぐに破壊できるだろうサーゼクス?」

 

 

 とはいえ、この場の全員がその気になればどうとでもなるのだが、誰もがその場を動くことはせず、まずサーゼクスが携帯を取り出すと誰かに電話をし始める。

 

 

「あ、僕だよ。どうやら外で何かやってるのが居ると思うんだけど――うんそう、ソイツ等は基本的に敵だから―――あ、そうなんだ? ふふ、相変わらず手が早いね――――は? ミリキャスが拐われそうになった? ごめん、前言撤回だ、やれるなら徹底的にやって欲しい」

 

 

 誰かと電話をしているらしく、途中で声のトーンが一段階は下がり、会話を終えたサーゼクスは携帯を切った。

 

 

「アザゼル、キミの言う通りどうやら例の組織の者で間違いないらしい。

今リアスとソーナさんの眷属達とウチの使用人副長が鎮圧させているよ」

 

「お、おう……」

 

「えっと、大丈夫なのですか? その者達にだけ任せてしまって?」

 

「問題ないよ、僕とグレイフィアの大事な一人娘に悪戯を仕掛けるバカの命がどうなろうが知った事じゃないし、リアスとソーナさんも安心しなさい。一誠が珍しく最初から動いてる」

 

「それはまた……」

 

「地雷を踏みましたか……」

 

「後でお礼をしないといけませんね」

 

「それとアザゼル、キミの所の白龍皇もどうやら戦ってるらしいから余計大丈夫だろう?」

 

「なるほどな……」

 

 

 揺れと爆発音が聞こえる中をグレイフィアに入れ直して貰ったお茶を飲みながら状況を説明するサーゼクス。

 この男がそれほどの信頼を置いてるその赤龍帝に似た男に更に興味を惹かれるのだが、それを聞く空気ではないため大人しく待っていると、会議室の真ん中に突如転移用の魔方陣が現れた。

 

 

「ごきげんよう現魔王の皆さん」

 

 

 その転移用の魔方陣から現れたのはスリットの入ったドレスを着た金髪に褐色肌の眼鏡を掛けた悪魔だった。

 

 

「あ、カテレアちゃんだ」

 

 

 その姿にサーゼクスとセラフォルーは誰なのかを直ぐに理解し、特にセラフォルーはまるで道端で偶々出会しました的な感じで名を呼んでいた。

 

 

「これはこれは、先代レヴィアタンの血を引くカテレア・レヴィアタン、これはどういう事だい?」

 

 

 サーゼクス様の問いにカテレア・レヴィアタンは答えた。

 

 

「旧魔王派の者達は殆どが禍の団に協力する事に決めました」

 

「は? おいおい、新旧魔王サイドの確執が本格的になった訳かよ? 悪魔も大変だな」

 

 

 カテレアの宣言に対してアザゼルはどこか他人事ように――されど内心『バカなのかコイツ等は?』と若干憐れんでいた。

 

 

「カテレア、それは言葉通りと受け取っていいんだね?」

 

「サーゼクス、その通りです。今回のこの攻撃も我々が受け持っております」

 

「ふーん……? 今更になって何でなのかぐらいは聞いても良いかな?」

 

「今日この会談のまさに逆の考えに至っただけです。神と先代魔王がいないのならば、この世界を変革すべきだと、私達はそう結論付けました。

そしてかつてアナタ達に味わわされた屈辱への復讐……!」

 

 

 どうやら後者の理由が本音らしく、サーゼクスと――そして現在レヴィアタンを名乗るセラフォルーに殺意を向けた。

 

 

「特にセラフォルー!! 私からレヴィアタンの名を奪ったその罪は重い!!」

 

「だからこんな真似を……?」

 

「ええ、今こそアナタを殺してレヴィアタンの名を取り戻す!」

 

「…………そっか」

 

 

 カテレアの憎悪の籠る殺意を前にセラフォルーは静かに一度目を閉じ――そして開く。

 

 

「良いよ、相手になるよカテレアちゃん?」

 

「?」

 

 

 その言葉と共に放たれた魔力と表情は絶対零度の如く冷たく、おちゃらけた普段の様子とは全く違うものだ。

 いや、それだけでは無い……。

 

 

(セラフォルーの魔力に力をまるで感じない……?)

 

(何だ全く何も感じないだと……? まるで前に一度だけサーゼクスに感じた違和感と同じ……)

 

(明らかに以前のセラフォルーとは違う……)

 

 

 今魔力を放っている筈のセラフォルーからまるで何も感じないのだ。

 その違和感に気付いたはカテレア、アザゼル、ミカエル達の中サーゼクスは『へぇ?』と少し驚いていた。

 

 

「相当越えたらしいね。ふふ、一誠に色々とされて来た結果がこれとなると運命的なものすら感じるね」

 

「お姉様が明らかに強く……」

 

「確かにこれなら本気の一誠と謙遜は無いけど、先んじられるなんてとても悔しい……」

 

「服を消し飛ばされてあの子に笑い飛ばされてた頃を思い出しますね」

 

 

 感じ取れる領域に立つ者達にすればセラフォルーの放つ力は明らかに次元の違う進化を見せており、サーゼクスは楽しげに笑い、ソーナやリアスは先んじられた事を悔しがっていた。

 

 

「どうやら平和ボケだけはしてなかったようね……。けれど私はアナタを殺せる自信がある……!」

 

 

 そんな違和感を前にしてもカテレアは尚自信がある様で、負けじと魔力を解放した。

 そんな時だっただろうか……会議室の窓ガラスが盛大に割れ、何かが高速で飛び込んできてカテレアの足元に転がってきたのは……。

 

 

「何事で―――っ!?」

 

 

 誰だ水を差したのはと足元に視線を落としたカテレアは絶句する。

 それは今回の襲撃に連れてきたとされる組織の構成員の――顔から手足から何からがグチャグチャに変形したモノなのだったからだ。

 

 

「一体何が……!」

 

「ぁ……ぅ……ば……け……も……………の………!」

 

「何を言っている!? 何があったのかを説明なさい!!」

 

 

 かろうじて息はあったのか、何かを言おうとしている下級構成員に声を荒げたカテレアは、ふとセラフォルーやサーゼクス達が割れた窓ガラスの方へと向いてる事に気付き、その視線を辿ると……。

 

 

「……………………………」

 

 

 胸元にシトリーとグレモリー両家の紋章が合わさったかの様なデザインの小さな紋章が金の糸で刺繍された黒い燕尾服を着た年若い男が、無機質な目を表情をしながら立っていたのだ。

 

 

「だ、誰です……?」

 

「……………………」

 

 

 白い手袋をし、直立不動の不気味な男に少し動揺しながら何者かと聞いても返答が無い。

 ミカエルもまた見知らぬ少年とも思えるその男に驚くも、先程の会談で少し話題になった赤龍帝に似た少年である事をすぐに察した。

 

 その証拠にサーゼクスが呑気な声でその少年に話しかけるのだ。

 

 

「随分と荒っぽい登場だけど、首尾はどうだい?」

 

「リアスとソーナの眷属達と――それとレイヴェル・フェニックスとで小うるさい連中は全滅させた」

 

「なっ!?」

 

 

 淡々とサーゼクスに初めて答えた少年にカテレアは絶句する。

 

 

「そ、そんなバカな! 我々が来てまだ三十分も経っていないのに……!」

 

 

 ましてや相手は確かサーゼクスとセラフォルーの妹の眷属達だけ。

 そんな子供同然の未熟な連中に我々は全滅させられたのかと信じられないように叫ぶカテレアだが、少年はそんなカテレアを一瞥すらくれる事せず、先程投げつけたと思われる死に体同然の構成員へと近づくと、その者の首を掴んで無理矢理締め上げた。

 

 

「これは生かした。

一応サーゼクスとグレイフィアには言っておこうと思ってさ。

コイツはどうやら二人の動きを封じる為にミリキャスを拐おうと考えてたらしいんだがよ、同時にド変態だったようでな……なんだっけな? 拐った後『ぼろ雑巾の様に犯してサーゼクスを絶望させてやる』――だとか何とかほざいてたわ」

 

「ぁ……ひ……!」

 

「へー? 中々ユーモアのある奴じゃないか? ねぇグレイフィア?」

 

「ええ本当に……」

 

 

 手足がまったく機能しない方向にネジ曲がり、最早元の容姿の断定すら不可能な程に破壊された顔面をした構成員が何やら命乞いの声を放つも、聞き入れられる訳も無い。

 

 

「一誠、パス」

 

「始末は私達がつけるわ」

 

「………」

 

 

 呆気なく二人に向かって言われた通りその者を投げた瞬間、夫婦の魔力によってこの世から消え失せてしまった。

 

 

「ん、これで良し。

取り敢えずここの事は僕達で始末をつけるから、一誠はミリキャスと二人の眷属の所に戻ってあげてくれ」

 

「ミリキャスの事を頼むわ」

 

「皆の事もね?」

 

「無理はせずによ?」

 

「ん」

 

 

 返り血を一滴も浴びず、機械を思わせる表情の無さが印象に残る中、サーゼクス、グレイフィア、リアス、ソーナの四人に対して一応一礼した一誠はその場を去っていく。

 その際、セラフォルーと目が合い彼女に微笑まれるも、一誠は一瞬その無機質な目を揺らし、すぐにプイッと顔を背けてしまう。

 ただただ状況に追い付けずに唖然としていたカテレアはハッとしても最早遅かった。

 

 

「さてと、残りはキミだけらしいなカテレア?」

 

「私も驚きましたが、投降すべきかと思いますが……」

 

「やっぱ悪魔側の戦力がおかしい事になってやがる。

とはいえ今はそれが頼もしいぜ」

 

「だ、黙れ! セラフォルーを殺してレヴィアタンの名を取り戻すだけでも意味はある!」

 

 

 そう言いながら全身から異質な魔力を放出させたカテレアにそれが彼女自身のものでは無いと察知した。

 

 

「おい、その蛇はオーフィスのものじゃないのか? まさか奴の力の一部を埋め込んだのか」

 

「ええ、だからこそその気になれば貴方方をこの場で全滅させられる。

駒達がやられたとしても私が勝てば問題ない!!」

 

 

 そう言いながらセラフォルーへと再び殺意を向けたカテレア。

 しかしセラフォルーは最早そんな次元では無かった……。

 

 

「色々と聞きたいこともあるし、命までは取らないよカテレアちゃん」

 

「自惚れるなセラフォルー! 今の貴女ごときではオーフィスの力を得たこの私は倒せない!」

 

 

 右手を向けたカテレアがオーフィスの蛇を駆使してパワーアップした力を放とうとする。

 しかしその右手は一瞬にして――

 

 

「うっ!?」

 

 

 蛇ごと凍結した。

 

 

「ば、馬鹿な……!」

 

「ごめんねカテレアちゃん? 私もあれから強くなったんだ……じゃないといーちゃんが見てくれないんだもん」

 

「い、いーちゃん……? さっきから一体誰の事を――っ!?」

 

 

 セラフォルーの姿が消えたと思う間も無く、一瞬にしてカテレアの眼前に現れる。

 その速さに目を剥くミカエルとアザゼルと……カテレア。

 

 

「追い付かないと見てくれないけど、それ以上にずっと独りになっちゃうから。

だから私は強くなるし、カテレアちゃんに負けてあげるつもりは無いよ?」

 

「こ、こんな程度で私が……!!」

 

 

 反対の手を使い、至近距離での攻撃を試みたカテレア。

 しかしその攻撃は……。

 

 

時間凍結(アイス・タイム)

 

 

 壁を越えた事で進化した魔力の質によって全身を一瞬にして氷付けにされてしまった故に放たれる事は無かった……。

 

 

「いーちゃんが大好きだからさ☆」

 

「サラッと言ってくれましたよ、お姉様め……」

 

「二重の意味で悔しいわ本当に……」

 

 

 鎮圧・完了




補足
アザゼルさんは執事一誠をちょっとは知ってますが、空気的に言い触らしたらシトリーとグレモリー家全体がマジになると察してお黙りしてます。

その判断は真に正しいのですがね。

その2
ミリキャスきゅんじゃなくてミリキャスたん設定でしかもこの日は執事君や眷属達と楽しく遊んでました。
そしたらいきやり誘拐しようとするのが現れて邪魔されるは、しかもそれがぺド野郎で気分が落ち込む所でしたが、ぺド野郎の言葉に態度にはないものの、ガチになった執事が滅茶苦茶ボコボコにしたのでイーブンだとか。

いや寧ろ終始一誠が然り気無く守りながら動いてたので、余計血が騒いだとか……。

…………。ていうか、ある意味この子が一番マセまくってるからアレなんですけど。


その3
今のセラフォルーさんのレベルではオーフィス補正入っててもどうしようもなかったりするカテレアさん。
どこぞのだらけきった正義さん技くらって氷像にされるのも無理はねぇと。

ちなみにスキルではなくて、元々持ってた魔力の質が進化しただけです。
スキルは使うまでも無かったらしい。


その4

そもそもレイヴェルたんが参戦してる時点で相手側からしたら詰んでる……

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