執事一誠の憂鬱   作:超人類DX

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ですます。


逃げ腰執事

 私の休日の過ごし方は特別何かをする訳ではなく、普通に管理を任された街を見回り、怪しい輩が居ないかどうか……その怪しい輩が人間に悪さをしないかとパトロールするのが殆どだ。

 治安維持を勤めるのも管理を任された者の勤めであるのは当然の話だし、パトロールがてら一誠を連れ出してお出掛けするのも密かなる楽しみなので面倒だと思ったことは1度たりとも無いわ。

 

 

「これはどう? 似合うかしら?」

 

「クソ微妙でございまするリアスお嬢様」

 

「む……ならこれは?」

 

「恐れながら、テメーは痴女であらせまするでございますか、リアスお嬢様?」

 

「むぅ……」

 

 

 ただ、こうやってパトロールの合間にお買い物に付き合わせてる時の一誠って酷く辛口なのよねぇ。

 洋服選びにしても、似合うかどうか聞くと決まって罵倒の言葉が帰ってくるし……もう少し誉めて欲しいものだわ……。

 

 

「もたもたしてないでさっさとお決めになってください、リアスお嬢様」

 

「ま、待って。こうも一誠に否定されたコメント貰うと自信が……」

 

 

 我がグレモリー家のメイドであるグレイフィアに無理矢理着ろと渡された燕尾服を律儀に着こなし、どう見ても私のコマ使いなポジションを貫く一誠は、自分のコメントによって周りの男女から冷たい目で見られても何のその。

 

 

「どれ着たって同じなんですからさっさとしてくださいよリアスお嬢様」

 

「ど、どれって……どれを聞いても罵倒しかしないくせに」

 

「正直に言えと申されましたので……」

 

 

 一誠の性格上、素直に他人を誉めることが無い故の辛口コメントのせいですっかり冷めきった店内に居たたまれない気分となってしまう。

 

 

「ハーリーアップ!!」

 

「ぅ……も、もう良いわ!」

 

 

 傍らから見ても目立ち、気づけば誰しもが私達を何とも言えないって顔で見ており、その視線と一誠の急かしに色々と限界になった私は、近付こうかと迷ってた店員さんに謝り、手袋越しにバシバシと手を叩いてる一誠の手を掴んで即座に店を出る羽目になるのは当然の話であった。

 

 

「もう! 正直な感想でお願いとは言ったけど、罵倒をしてなんて言ってないじゃない! あんなに人が見てる前であんな事ばっかり……」

 

「正直な感想がそれだったから仕方ないだろ? そもそもあんなに肩を出すような服なんぞ痴女と呼ばずして何と呼べば良いんだよ?」

 

「さ、最近はそういうのが流行ってるのよ……!」

 

 

 燕尾服、白手袋……。

 正直コスプレしてるみたいな格好の一誠は確かに助けになってくれる事ばかりしてくれて、非常に助かるのだけど、社交性ゼロと素直じゃないせいで言動がかなり乱暴。

 私のお母様に対しても昔『若作りしたところでババァは所詮ババァだろ』と半笑いで煽ったりして空気が凍った事もあったし、基本的に一誠はそこら辺のチンピラみたいなソレと何ら変わらない。

 まあ、私はそんな一誠を信頼してるから良いんだけど……。

 

 

「ハァ、お買い物は止めにして今から朱乃の家に行くわよ一誠」

 

「は? そんなもん一人で行けよ……。そこまで付き合いきれ――」

 

 

 女心のおの字すら理解しようとせず、ただただ強くなりたがる男の子にため息しか出ないものの、それも今更でしか無いので、気を取り直して人気の少ない住宅街の電信柱を何故かボーッと一点見している一誠の肘に組み付き、次なる目的地に行こうと頭を切り替えるわ。

 

 

「駄目よ。朱乃のお家に行く理由はアナタにあるんだから……ほら」

 

「はぁ? 何だよそれ――って引っ張るな!!」

 

 

 極度のコミュ障、やることなすこと粗暴で乱暴。

 だというのに私含めて好意を寄せる女の子は結構な多さだったりする事実を一誠は全く気付いてない。

 

 もう10年近く私の女王(クイーン)をやってくれる朱乃もそんな内の一人なのだが、未だに一誠が心を開かないせいで見ていて可哀想になる訳で……。

 何か敵に塩を送る様だけど、それを抜かして少しでも朱乃や祐斗や小猫との距離を縮めて欲しいと思う私としては、嫌がる一誠に対して心を鬼にせざるを得ない。

 

 ……。散々お店で罵倒してくれたお礼も兼ねてね。

 

 

 

 閑話休題。

 

 

 

 オーバーキル。

 その少年を一言で現すならば、その言葉が似合う程に 『極悪』であった。

 しかも質が悪いことに、彼は他人との接触を嫌うせいで、知らない者からすれば『冷徹な殺戮マシーン』なイメージが常に付いて回っている。

 

 

「と……言う訳で、今日は一誠くんが私達の為にお手伝いに来てくれました」

 

「……………」

 

 

 少なくともリアスの眷属とは違い、顔は知りえど一度も会話をしたことが無いシトリー眷属達は、妙に機嫌良く紹介する主の横で『苦虫を千匹噛み潰した』顔をしてる、グレモリー家お抱えの殺し屋――というもっぱらの噂である少年・一誠を見て、どうリアクションすれば良いのか実に困るのであった。

 

 

「まともに紹介をしていなかったので改めますけど、彼が日之影一誠……。人間です」

 

「…………………………」

 

 

 気色悪さすら感じるくらいに『自分達』の事情を知り、中に入り込もうとしつこい『兵藤イッセー』とびっくりするくらいに同じ顔である日之影一誠という少年の無言なるおじぎに、女王以下眷属達はやはり困った。

 

 いや……この日之影一誠がグレモリー家所属の執事頭で、常日頃からリアスの世話役兼ボディガードをしているという話は知ってるし、最近になってそのグレモリー家と繋がりが強いシトリー家のソーナも実は昔馴染みだとカミングアウトされて驚いたものだが、やれ殺し屋だ、やれ負けはするものの、魔王ルシファーとタイマンを張れるだ…………殆ど人のカテゴリーから外れまくってる目の前の少年から手を貸される事自体に、眷属達は気が引けて仕方無いのだ。

 

 極めつけは――

 

 

「おいソーナ……」

 

「はいはい……ふむふむ」

 

『…………』

 

 

 自分達とは全く目を合わせず、当たり前の様にソーナと呼びつけた一誠は、ボソボソとソーナに耳打ちをする。

 

 

「……。『そんなに見るな。さもなくば目の前で思いきりリバースするぞ』………と言えと?」

 

「……………」

 

「『俺の事はそこら辺に落ちた枯れ枝と認識してろ』――――って……いえ、アナタがそれを望むのであれば言いますけど……」

 

 

 人間界(ココ)での彼は、リアスかソーナとしかまともに声を出して会話しない。

 何を伝えるにもソーナかリアス経由。

 噂によれば『よっぽどの事が無ければ他人を信じようとしない』という性格を拗らせ過ぎたせいなのか――

 

 

「せめて自分で声にくらい出して頂戴」

 

「………………チッ」

 

 

 日を避け、影に入り浸る少年は実に気難しく、そしてどう見てもそんな少年を主であるソーナは単なる昔馴染み以上の感情を見せている。

 別にそれは構わないと思う眷属が殆どなのだが、その中に一人居る兵士の少年は、ぶっちゃけ正直転生悪魔でも何でもない男が平然とソーナにそう想われてるにも関わらず『鬱陶しそうに』してる一誠が気にくわないと思っているのであった。

 

 

「あ……」

 

「……」

 

 

 けれど悔しい事に……皮肉な事に一誠少年はソーナを知り尽くしているというべき行動を息をするように出来きており、今回の『お手伝い』でもその無駄な――いっそ気色悪さすら覚える息の合いっぷりを見せ付けられてしまう。

 

 

「一誠――」

 

「お前の座ってる机の二番の引き出しの中にファイリングしておいた」

 

「あらありがとう」

 

 

 ソーナが今求めてる事を当たり前の様に先回りして済ませてたり。

 

 

「はぐれ悪魔・バフォメット。冥界社会の掟を反した貴方を排除しに来ました……覚悟なさい!」

 

「小娘ごときが! 下僕共々喰らい尽くしてやるわ!!」

 

 

 大公から送られたはぐれ悪魔の討伐依頼の仕事の時も――

 

 

「一誠、お願いします!」

 

「一人でやれんだろ。ったく……」

 

 

 ―黒神ファントム・デュエットエディション―

 

「な――速っ――避け――否――死っ――――ぐぎゃぁぁぁっ!?!?!?」

 

 

 ハッキリ言って若手悪魔の中でもリアスと肩を並べる程に強いソーナと、最早気持ち悪くなる息の合うコンビネーション技らしき何かを音速すら生易しいスピードで叩き込んだり。

 

 

「ど、どうでしたか一誠……?

アナタに教えられたこの技を毎日鍛えた評価を――」

 

「35点」

 

「も、もう……。

やっぱり一誠は厳しいですね……ふふ♪」

 

 

 

 

「……。日之影さんの動き……誰か見えました?」

 

「い、いえ……ソーナ会長が彼と同じ動きを当たり前の様にやった事自体も驚きましたが……」

 

「ちくしょう……ちくしょう……! 幼馴染みだったのがマジだなんて勝ち目が無いじゃねぇかよ……!」

 

 

 噂は本当なのかもしれない。そう思わされる程に一誠少年は『人の域を平然と越えていた』力を見せている。

 はぐれ悪魔を呆気なく捻り潰した主と燕尾服を着こなす少年の『下手な夫婦より夫婦っぽいやり取り』を遠巻きに眺めながら、眷属達は一人を残して呆然と眺めるのであった……………誰もまともに会話できずに。

 

 

 

 誰がそんな事を言ったのか。

 『一誠というちっぽけな人間は、魔王ルシファーにすり寄り、妹であるリアスと魔王レヴィアタンの妹であるソーナを上手いことたぶらかした不届きもの』

 

 なんて根も葉も無い噂が何も知らないお幸せな冥界の悪魔達の間に飛び交っていて、最近は学園の人間にも似たような風評が広がっているとか……。

 

『日之影一誠がリアスと支取生徒会長の弱味を握って良からぬ真似を強要している』

 

 

 一体誰がそんなくだらない話を広めたのか。

 一誠くん――いえ、一誠本人はこんな性格なので全く気にした様子は見えないけど、私やリアスからすればこれ程腹立たしい話は無い。

 

 悪魔史上無敵と吟われるサーゼクス様と真正面から嗤いながら殴り合う姿をアナタ達は見たこと無い癖に。

 

 レヴィアタンの称号を受け継いだ姉を平然と手玉に取れる事を知らない癖に。

 

 私とリアスと一誠は小さい頃からの付き合いなことも知らない癖に。

 

 

「ったく……罰ゲームも楽じゃねーぜ」

 

「ごめんなさいね……。リアスと何時も一緒なのを見せつけられてるとつい……」

 

「アイツと一緒だから何なんだよ……。

お前もリアスと一緒で変な女だ」

 

 

 知らしめてやりたい。

 アナタ達が見下す相手は、実は逆にアナタ達を見下していた現実を。

 

 はぐれ悪魔討伐を終えて眷属達と別れた私は、隣で気だるげに歩く燕尾服姿の一誠の顔を眺めながら、そんな気持ちを募らせる。

 人でありながら人を越え。

 人でありながら超越者。

 

 勝つ為に自分を苛め抜き、それによって得た強大な力。

 でも性格は極度の人見知りで、極度の負けず嫌いで……。

 

 

「変、か……。

そうかもしれません……私もリアスも変なんでしょう。

でもそれで良いんです。アナタが『大好き』だって事が変なら、私もリアスも変人扱いされても構いません」

 

「……。ばっかみてー」

 

 

 私達の大好きな男の子……。

 そう堂々と……ハッキリと言ってやりたい。

 いえ、言おうと思えば言えるのですが、こういうのは本人が満足すれば良いので言う機会が無かったんですよね。

 一誠も恥ずかしがってしまいますしね……ふふ。

 

 

 

閑話休題……ソーナお嬢様専用執事くん。

 

 

 

 

 日を避け、影を生きる。

 良くも悪くも律儀である一誠は、その日をソーナかリアス達に任せ、自分は影ながら手を貸すことに特に何の文句もなかった。

 

 一誠は二人を『どうとも思ってない』と言い張るし、ましてや異性として意識なんて『鼻で笑って』口では否定する。

 

 故に仮に悪魔事情云々で二人が何処ぞの純血悪魔のボンボンに求婚されても『勝手にすれば?』と言ってやるつもりだった……。

 

 

「やっはろー(棒)

リアス・グレモリーとソーナ・シトリーを拐いに来ました~ 邪魔する馬鹿は即座に皆殺しにしまーす」

 

「なっ!? だ、誰だきさ――おごげぇ!?」

 

「き、貴様! 此処を何の席と心得――――ぐぎゃぁ!?」

 

 

 けれど一誠は最終的にそれが死ぬほど気に食わず、立場がどうなろうと知ったこっちゃ無いとばかりに現場へと突撃し、狼狽えるボンボンを何時もの5倍増しにぶちのめして二人を無理矢理連れ去った。

 

 これは後に『冥界略奪婚』としてドラマ化までされる一幕となり、当然の事ながら一誠の横暴で暴力的な脅しによりこの婚約騒動が滅茶滅茶に壊れたのは云うまでも無く、ボンボン二人はグレモリー家お抱え人外である一誠少年に対して完璧なトラウマを刻まれたのであったとか――――

 

 

 

 

 

 

「何て展開はないかしらねぇ……」

 

「良いですね。一誠によって連れ去られた私達は、その後人間界の自宅に戻ってメチャクチャ子作り――」

 

「うるせぇよ馬鹿女共」

 

 

 ……等と言う事はシスコン魔王二人と、グレモリー家シトリー家の両家が殆ど公認して一誠少年に二人を将来云々全部ひっくるめて任せてしまっているのである訳が無かった。

 

 

「つーかセラフォルーのバカに俺の電話番号教えたのは誰だ? 毎日毎日くそウゼェ電話が来るんですけど」

 

「うざいも何も、一誠がセラフォルー様の服をケタケタ嗤いながらビリっビリに引き裂いたからそうなったのよ?」

 

「そうそう。

あの事件から姉は一誠に責任取って貰う気満々ですからね」

 

「人聞きの悪いことを言うな。

適当に竹尺振ったらアイツの服が吹き飛んだだけだろうが」

 

 

 そしてシスコン魔王の一人は妹と同じく、前に一誠から受けた恥辱によって責任を取らせるつもりであったとか。

 なので、二人の少女と婚約する純血悪魔のボンボンは皆無であり、その少女二人は今も無愛想の極みである少年とナチュラルにくっつきながら休日を過ごしていた。

 

 

「ええぃ、一々くっつくな鬱陶しい!!」

 

「えー? でもこうでもしておかないと、アナタから襲ってきそうもないし……」

 

「早く両親に孫の顔を見せたいという子供心が……」

 

「知るか!! そこら辺の貴族ボンボンでも誘惑してろバカ!!」

 

 

 ナチュラルに一緒。

 ナチュラルに距離が近すぎる。

 

 三人を見守る大人達の見解は『一番近くて学生結婚』との事だが……。

 

 

「なによぅ。昨日だって裸で抱き合って寝たのに……」

 

「私の胸にかぶりついたのに……」

 

「よ、よくもまぁいけしゃあしゃあと抜かせるなテメー等……! 頼みもしてねーのに勝手に潜り込んだ癖によぉ……!」

 

 

 多分、その見解は当たらずとも遠からず――なのかもしれない。




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