執事一誠の憂鬱   作:超人類DX

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この時期までは眷属さん達にもコミュ障なんだよねー


無礼な執事

 一誠の脅しのおかげなのか、不穏な動きを見せていた堕天使の団体は、その日を境に街から姿を消していた。

 そして神器を持つ少女は兵藤イッセーの下で静かに生きている。

 

 うん……どうであれ平和に終われて私としてはちょっとホッとしているし、暴力的なものの解決してくれた一誠には感謝しかない。

 これで親や居場所を含めた全てを奪い取った彼が一誠という存在の生存と、奪われた事を糧に信じられない強さを持ったことに恐怖でもして、この先は何もしないでくれると助かるのだけど、堕天使の事を知ってる素振りを見せていたからにして大人しくしてるとは思えないと思うのは私だけなのか……。

 

 

「え、この前の神器使いの女の子が転校してきたの?」

 

「どういう訳か『お上手すぎる日本語』引っ提げてな。

十中八九奴が何かしたんだろうぜ。ご苦労な事だ」

 

 

 その予感は間違いなく当たってる気がするのよねー……なーんて。

 

 

「一誠と同じクラスなんでしょう? 何か言われなかったの?」

 

「いや別に。

最初は何か言いたげだったけど、クソ野郎に止められて言えなくなってる。

まあ、俺が奴を目の前で半殺しにしてやった事に対しての文句なんだろうが……」

 

「でしょうね、優しそうな子だったし」

 

「もしそうだったら馬鹿らしいって笑ってやったよ。

俺はああいう『話し合えば皆平和に解決です!』とほざく輩は殴り倒してやりたくなる」

 

「まさしく相容れないって奴かしら……。

昔からアナタはそうだものね」

 

「その分、そこら辺をちゃんと割り切って行動してるお前等はまだマシだよ」

 

 

 アーシア・アルジェント……だったかしら。

 どうであれ救われたその命、大切して欲しいものね……。

 頼むから兵藤イッセーと一緒になって一誠を挑発する真似はしないで欲しいわ……。

 一誠は男女平等に――それこそ躊躇なく女の子の顔面を物理整形しちゃう程度には容赦ないから……ね。

 

 

「ちょっとソーナの所に行ってくる」

 

「あら、ソーナに呼び出されたの? それは良いけど、帰りは?」

 

「多分アイツの事だからお前と合流するんだろ。で、そこから俺はじゃじゃ馬姫二匹のお守りだ……ハァ」

 

「ふふ、それだけ想われてるって事で我慢してよ一誠?」

 

 

 

 

 

 

 兵藤イッセーが私達の正体を知っているという事から推測するに、多分彼が保護とやらをした神器使いのシスターも自動的に私達の事を知ったと思う。

 偶然校舎内でリアスや私を見ると怯えるアクションを見せてるし。

 

 

「出身上仕方ないと言えばそれまでですが、バッタリ鉢合わせしただけであんなにも露骨に怯えられると、一般生徒に変な誤解をされそうね……」

 

 

 誤解されても別に痛くも痒くも無くもないが、余り良い気分では無い。

 とはいえ、悪魔である私達と一緒である一誠が街中で赤龍帝の籠手を使って堕天使を殺そうとしていた兵藤イッセーを過剰に沈黙させたのを目の前で見てしまえば、イメージも自ずと最悪なんだろうとも想像できるし……はぁ。

 

 

「気持ちは解るけど、非力な女性を目の前にやり過ぎたわね一誠……あ、ハサミはどこかしら?」

 

「知るか。

神滅具なんてもんを人間界でぶっぱなそうとしてたのを止めてやっただけありがたいと思え。

そもそも、あの時点でまだ何もしてない堕天使をもし奴が殺してたら悪魔と堕天使の只でさえ良くは無い関係がもっと悪くなるんだろ? 俺はそう聞いてるが?

ハサミならオメーの机の引き出しにしまった」

 

 

 暇ならという事で一誠を生徒会室に連れ込み、来月の標語を載せた簡単なポスター作りを手伝って貰いつつ、アーシア・アルジェントと兵藤イッセーの話をする。

 予想通り一誠に反省なんてものは無く、私自身も彼との『嫌な因縁』の事を思えば強く責めるつもりも無かったりする。

 

 悪魔的にはファインプレーなので。

 

 

「アナタらしいわねホント……っと、出来ました」

 

「……。さっきから折り紙で何かやってるなと思ってたが、『それ』は何だ?」

 

「えっとウサギ……のつもり」

 

「…………。俺には生物災害と突然変異で生誕した生命体にしか見えねーんたが?」

 

「ぅ……ウサギよ! よく見なさい、このお耳なんか特にウサギさんです!」

 

 

 それはそうとポスター作りをしている私と一誠なのだが、私の渾身なる力作を見るなり半笑いで馬鹿にしてくる一誠にムッとなってしまう。

 どうも一誠には私のウサギさんがウサギさんじゃないとの事なのだが、作った私がウサギさんだと言ってるのだからウサギさんなのだ。

 

 

「……。得意そうに見えてホントオメーは手先が不器用だよな。ほら貸せや」

 

「あっ……」

 

 

 だと言うのに呆れた様に私の事を不器用だと言ったばかりか、折り紙を一枚手にした一誠はさっさと慣れた手つきで折り始め…………。

 

 

「特徴さえ掴めばこんなもんだろ」

 

「……………。リアルすぎて可愛くない」

 

 

 ものの1分で、リアルなウサギさん――いや兎を造り出し、嫌味っぽく私の作ったウサギさんの隣に置いた。

 悔しいけど、一誠は戦闘技術だけじゃなく中々に多才というか……1度型に嵌まると凝りっぽくなるというか……。

 

 

「絶対私のウサギさんの方が可愛いもん」

 

 

 上手いのは認めます。負けてるとも思う。

 でも可愛さで比べるなら私のウサギさんの方が断然良い。

 でも一誠は負けず嫌いなのでそれを認めようとしない。

 

 

「良いもんとか全然可愛くねーし、オメーのはゾンビゲーに出てくる只の化け物じゃねーか。

そもそも左右の均一すら取れて無いじゃねーかよこれ」

 

「む……」

 

「デフォルメさせた奴を作りたいなら俺が口出してやるからやってみろホラ」

 

「む……む……はい……そこまで言うならやりますよ」

 

 

 兎に角駄目だろと新しい折り紙を寄越してくる一誠のプライドを尊重するために仕方なーく私は折れてやる。

 じゃないとまた拗ねてしまうから、此処はちょっとお姉さんな私が大人になる時だ。

 

 

「そこを内側に折れ――って、そこじゃねーよその脇だよ」

 

「むむ……こう?」

 

「だから違うっつーの」

 

 そして唐突に始まった折り紙レクチャーなのだが、一誠の説明が下手っぴなせいで上手く進まなく、それを私のせいだと言い張っている。

 

 

「え? え???」

 

「だから……ハァ……ったくもう」

 

 

 さっきから作業もせず、何故かジーッと私達を見てる眷属達の視線に変な居心地の悪さを感じるのは私だけなのか……というか眷属の前で不器用を連呼しないで欲しいのだが、一誠はそれらを全部無視して席を立つと、向かい合って座っていた私の背後に回り――

 

 

「良いか? こうして、こうだ……」

 

 

 後ろから両手で私の手を握り、操る様にして動かして来た。

 

 

「え……ぁ……こうなの?」

 

「そうだって言ってんじゃねーか……お前マジでこの系統のジャンル苦手だよな」

 

「む! だから一誠の説明が下手っぴなだけで私は――」

 

「あーはいはいわかったわかった。良いから続けるぞ? 次は此処を山折に折るんだ……こう」

 

「むぅ……」

 

 

 年頃の男女ですから、ちょっと気恥ずかしい――なんて気持ちは今更沸かない。

 そもそも最近からまたリアスと一緒にお風呂の時は一誠に身体を洗ってもらってるのだ。

 つまり全部――文字通り自分の全部を見せてる今となっては、あの時はテンパってしまったにしても今は平気なのだ。

 

 

「つーかお前もリアスも手ェ小さいっつーか、力入れたらポッキリ折れそうだなオイ」

 

「女の子ですから。

というか二、三年前まで私とリアスより小さかった一誠に言われたくないわ」

 

「今はデフォルトで見下せるがな……クククッ」

 

 ……………。まあ、後ろから抱き締められてる気になれて悪くないですけどね……。

 

 

「あっ……! どさくさに紛れて今私の胸を触ったわね?

もう……学校では我慢しなさいってリアスと一緒に言った筈――」

 

「触れるほど無いだろ。盛ってんじゃねーよ貧乳」

 

「む……リアスと比べたら確かに負けてますけど、無いわけじゃないと一誠ならわかるでしょ? ほら……」

 

「あぁ? テメーから押し付けんじゃ俺のせいじゃ無いだろ。

つーか……ほらと言われても、服越しでも変わって無いのが解るんだけど」

 

 

 

 

 

「!?」

 

「わ……わわっ!? か、会長と日之影君が凄い事してる……」

 

「ど、どうしよ? 私達お邪魔――ってさ、匙くん?」

 

「グッギギギギギィィィィ!!!!」

 

「ち、血涙が出てる……」

 

 

 それが普通というか……折り紙の出来で揉めていた主と主の幼馴染みにて最も信頼を寄せられている人間の少年の夫婦的なやり取りをついつい眺めていた眷属達は、気付けば主の胸の大きさについて触診紛いな行為で確かめてる姿を見せ付けられ、気恥ずかしさやら何やらで殆どの眷属達は惚けながら眺めていた。

 

 一人、血涙を流す少年を除いて。

 

 

「女ってのは大きいだ小さいだに拘りすぎなんだよ……。そんなにリアスとセラフォルーに劣ってるのが嫌なのかねぇ……」

 

「別に劣等感なんて――――一誠は拘らないのですか?」

 

「別に。

そもそも恋人を欲しがる性格じゃねーし」

 

 

 折り紙も完成し、作成間際のポスターに貼り付けながらソーナのわっかりやすいアプローチに一誠は気付いているのか居ないのか――めんどくさそうに答える姿もまた親しいを通り越した何かにしか眷属達には見えなかった。

 そもそも日之影一誠の性格を考慮すれば、ソーナとリアスだけが異様に特別なのだから余計思ってしまう。

 

 

「なら浮気の心配をリアスと私――と、ついでにお姉様がする必要が無い訳ね……安心したわ」

 

「浮気? そもそもお前等と恋仲になった事なんて無いだろ……あほらし」

 

「正式には、ね。

でも私もリアスもお姉様も一誠が大好きだから――――他の人に行かないでね?」

 

「…………。ケッ、馬鹿らしい。好かれる要素ゼロ野郎にそれを言っても意味ねーよアーホ」

 

「ふふふ♪」

 

 

 

 

「す、凄い……殆ど完成してる仲ね」

 

「でも日之影君は絶対私たちとは会長みたいに会話してくれないんだよね……」

 

「急に無言になっちゃうというか……やっぱり私達は他人扱いなんだよね……あはは」

 

「つ、付け入る隙すらない……だと……? ちくしょー!!!!」

 

 

 独り身には辛いというか……ソーナの楽しそうな表情に眷属達……つまり女の子達は一種の憧れを感じていた。

 自分達もあんな関係な男の子と出会いたい……そんな気持ちを。

 

 

「いっそ私がリアスの家に住もうかしら。そうしたら一誠とも毎日一緒だし、お風呂の時だけわざわざ行く手間も無くなるし」

 

「うっせー女が二匹も居たら疲れるだけだし嫌だ。リアスだけでも怠いのに」

 

 

 年頃の女子達から羨ましがられた視線を気にせず、一誠とソーナは独特の空気を放ちながら放課後を過ごすのであった。




補足

まあ、ほら……他の子と比べたらってだけだし、ソーナさんもあるさ……うん

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