自由人のための天空城【完結】   作:おへび

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本編開始です。

序章のあらすじ:モモンガくん、千年前に来ていた他ギルドを発見する。そこのギルドマスターと不可侵の約束(ただし友達関係はOK)を結ぶ。


第一部 神の誘惑
第1話


 悪魔も天使も使役する死の支配者にすら甘言もたらし危うい道に誘い出す。

 そんなことができるのはきっと正真正銘の神様だけだろう。

 

 

 

 

「そういえばモモンガさん、この拠点ってどうやって手に入れたか知ってます?」

 天空城との接触から暫くの時が過ぎたある日のこと。アインズがなんとか守護者達を説得し「千年溜め込まれた情報を閲覧してくる」という名目で来ていた天空城の、埃まみれの図書室の中。採光用の大きな窓から差し込む光に照らされながらのんびり閲覧者に話しかけたのはこの城の主人だ。名をリュウズという。神羽蛇種という隠れ種族を発見した運のいいユグドラシルプレイヤーである。図書室はおしゃべり禁止とか言ってはいけない。彼女はこの城の主人でルールなのだ。彼女の行動を止められる者などいない。

「知りません。入り口から入って上部階層に向かって上がっていくとかじゃないんですか?」

 話しかけられた閲覧者、アインズ・ウール・ゴウンは酷いくせ字がみっちり書かれたボロボロの羊皮紙を乱雑に糸で綴じただけのノートをめくりつつ答えた。彼の白い手が撫でるノートに書いてあるのはリュウズの仲間が世界を見て回った時の覚え書きのようなものだ。あちらにはこんな生物がいた、こんなことができた、クリスタルがない、生産職ってここじゃどういう扱いなんだ、とか、益あることから愚痴まで雑多に書いてある。どうやら千年前から百年ごとにユグドラシルのプレイヤーが転移してきているということを、彼はぼろぼろの羊皮紙の束から発見した。

 その束の中にたまに「残してきた妹が心配だ」とかそういうプレイヤーらしい記述を見つけて鈴木悟の精神が震えたのは仕方のないことだろう。自分にはそんな心配がないようで、あるようでもあるからだ。具体的に言うとギルドとしてのアインズ・ウール・ゴウンのメンバーである。ここの書物に触れる度、アインズは彼らがこの世界に来ている可能性が薄いということを理解していった。だからこそ、『リアル』にいるであろう友人達が心配だった。最後の時に一緒に居てくれない者達に怒りや憎しみを抱きはしたが、それは確かにあるのだが、モモンガはやっぱり彼らが好きなのだ。心の中では好きの方がでかいのだ。心配するのもしょうが無いことだった。

 そんな彼の動揺をリュウズが察して話しかけたことにアインズは気づいてるのだろうか。おそらく気づいて等いないだろう。支配者ロールやってる割に中身は結構普通の人だからなぁ、などと内心で微笑むリュウズは、羊皮紙から顔を上げちらりと視線をよこしたアインズに微笑んだ。

「違います。一階の大広間に延々敵が出てきて一人を除いてみんなで戦うんです。入った瞬間後ろでばたーんって扉閉められるわわらわら敵がでてくるわで超大変だったんですよ」

「へぇ。ナザリックとは違いますね。……一人を除いて?」

 不思議な言葉が入り込んだ。一人除いて、とはどういうことだろうか。眼窩の奥の赤い炎を揺らめかせてアインズが問いを向けると、リュウズはクッションにもたれながらくすりと笑いつつ答えた。

「挑戦者の中で、一人だけ賭場に行くんです。そこでこの城と賭をする。チップは戦闘している味方の装備。賭けに勝てば戦闘役の味方にかかったデバフが剥がれて、賭けに負ければデバフは剥がれず負けてしまう。これが何を意味するかわかりますか?」

「えっと…勝つためにはそれなりの装備をしなければいけないけれど、もしもそれなりの装備をして賭けに負けたらデバフが剥がれず装備を取られて…うわ、最悪雑魚キャラにボコられるんじゃないですか」

 敵を強化するのではなく自分を弱くしてくる。なんというギミックだ。性格が悪いにも程がある。しかもデバフが剥がれる条件も性格がねじ曲がっている。なんだ、賭けに勝てというのは。

「そうです。逆に、賭けに勝てばデバフが剥がれて有利になる。さらに次の戦闘で剥がれるデバフの量が上がるんです」

「うっわえげつないギミックですねそれ!?誰ですかそんなシステム考えたの」

「運営に決まってるでしょう?」

「デスヨネー」

「デスデス」

 はは、と乾いた笑いが二人の間に流れる。ユグドラシルプレイヤーにとっては運営をこき下ろす会話なんてある意味お約束の会話だ。それくらいとんでもないことをやらかす運営だったのだ。いい意味でも悪い意味でも。変なところに頑固にパッチを当てないとかやっていたし。

 笑い声が流れた後、アインズは開いていたくたびれノートをパタンと綴じて閲覧用の机の上に置いた。

「で、そんな話題をいきなり振ってきたのはなんでですか?」

「いやー。ここを占拠したってことは私達『翼持つ人々』が胴元になるわけですよね?ていうことは最後の一人が胴元になるわけですよね?でもここを占拠した後挑戦してきた人が誰も居なくて一回もやったことないんですよ、賭け事。

 と、いうわけで、モモンガさん」

 光の中で翼と鱗を輝かせ、リュウズは善良な悪魔のようでもあり意地悪な天使のようでもある不思議な笑みを浮かべて身を乗り出した。

 

「私の城で一つ賭け事なんてやってみませんか?」

 

 くふ、ではなく、くす、と笑う神様に、アインズは鳴らないはずの喉がごくりと鳴った気がした。

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