自由人のための天空城【完結】   作:おへび

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幕間

 幕間

 

 マチュピチュ天空城はとても特殊なギルド拠点である。ギルド拠点らしい防衛機構というものがまるでないのだ。それはギルドマスターが持つ世界級アイテムの力があれば防衛力が足りていたというのと、奇人変人の集まりと噂された彼らにちょっかいをかける者が殆ど居なかったからである。ぱりっとした身なりをしているのに焦点の合わない目をして千鳥足で歩いているような人が目の前にいるとしよう。そんな人間に積極的に声をかけたりちょっかいを出すような人間が多く居るだろうか?答えはノーだ。誰だって気味悪いものからは身を離したくなるものだ。

 もちろん多少はそんな馬鹿もいるにはいた。例外というのはどの世界にも発生するものだからだ。だが、ギルドメンバーはそんな奴には容赦なく襲いかかった。まるで肉食の鳥が一頭の獣を骨も残さず喰らうように襲いかかって知らしめたのだ。自分達に手を出せばどうなるかを。焦点の合わぬ目を真っ赤に充血させ、端正な口元をにいっと耳まで裂けさせて、両手に持った包丁を的確に振り回しながら追いかけてきて人間がミンチ状になるまで切り裂いたのだ。しかもそんなのが複数人。恐ろしいとかそういう言い方で収まるものではない。

 とにかくそういうわけでこの拠点には防衛の必要がなく、故にNPCは防衛戦力として全く期待されなかった。そのため代わりに制作者の趣味を詰め込んで作られた。そうして作られたNPCの筆頭がタンとチョウという、一見するとバードマンだが実は自動人形というややこしい設定を持つ兄弟である。何故自動人形なのかというと、それは彼らが「城の防衛機構の一部」という設定を背負って創造されたからだ。古来より空に浮かぶ城の守り手はロボットと決まっているのである。飛行石は王家の証なのである。

 彼らは防衛の監督役兼来訪者の案内役というフレーバーテキストを与えられた。それが開花したのは異世界にギルドごと転移した時だ。彼らは自由人しか居ないギルドの中で瞬く間にそのフレーバーテキストに合致するポジションを得た。即ち城の内部の統率役と外への対応の統括役だ。

 そんな経緯があってタンとチョウはナザリック地下大墳墓に来た。自分らの主人がここの主人を命の賭けに誘ってしまったから暫くこちらに居ることになりますというお知らせをするためだ。こんちはー三河やでーすくらいのノリで彼らはナザリック地下大墳墓入り口でルプスレギナに声をかけ、来訪の意図とナザリックの主人が陥っている状況を伝えた。賭けの内容は命と仲間。成功すれば仲間に会えるが失敗すれば君達のご主人死にますさようならざんねんごめんなさいという内容を。

 

 当たり前のことなのだがナザリック地下大墳墓は大爆発した。比喩的な意味で。あとちょっと物質的な意味で。

 

 入り口横に作られたログハウスは爆発し、階層守護者は飛び出し、ゴキブリは溢れだしアンデッドは雄叫びを上げ溶岩は荒れ狂い吹雪き吹き荒れ光は輝き闇は渦巻きもうほんとにてんやわんやの阿鼻叫喚になった。カルネ村がすわ世界の終わりかと皆してビビッたレベルである。

 だが、荒れ狂う忠義厚き者達の魂の籠もった拳を、魔法を、特殊技術を、刀を、砲丸を、体当たりを、その全てをバードマンの兄弟は無効化してしまった。彼らの身は世界級アイテムの支配下にあるのだ。一切の攻撃は効かず、また一切の攻撃は為せない。

「アインズ様を、かえ、せぇええええ!!!」

 黒い鎧に身を包んだアルベドの咆哮がびりびりと大気を揺らす。病んだような緑の光を刃に宿したバルディッシュはあきれ顔のバードマン兄弟の首を何度も何度も何度も何度も通過する。けれど彼らの体には傷は一つもつかない。鬼気迫るなどという表現では追いつかないアルベドの叫びを、行動を、しかし兄弟はまるでテレビの向こうの暴徒を見るかのような気安さで見ている。

「まさか伝言一つでここまで正気を失うとは…」

 あきれ顔のタンが身動きせずに脳天に叩き込まれたまま地面を穿つバルディッシュを見る。壊れた大地にぴょいぴょいと飛び移る彼に、隣のチョウが背後に煌めく電撃を背負いながら声高に言葉を放つ。

「ハッ…まさかこれが正常な反応だったりするのでは」

「まじか。狂うが正常っておっかないなぁ」

 おっかないのはたぶんこの世界でも超一級の、次元を超えかねないレベルの攻撃を受けてケロッとしている兄弟の方である。けれど彼らはそれには気づけなかった。当然だ。彼らの主(プレイヤー)が狂人であり、彼ら(NPC)はその性質を受け継いだ者なのだから。正常な者から狂っている者を見れば狂っているように見えるように、狂っている者から正常な者を見れば狂っているように見えるのである。

「アインズ様アインズ様アインズ様ぁあああ!!今アルベドが参ります!死ねぇ糞虫どもめが!!!」

「誰かこのお嬢さんに言葉っていうもの教えてくれません…?」

「どうせあなた私達よりも強いんですから落ち着いて下さいよ」

 どうどう、と兄弟は両手の平を下にして手を上げ下げする動作をする。そういう仕草こそ相手の神経を超絶逆撫ですることには気づかないところがこの兄弟の人生経験の浅さとおかしさを物語っていた。




ここから先はマジでくじを引きダイスを振っていくのでアインズくんのリアルラックが試される物語になります。アインズくんが天秤をボーダーの20牌集めるまで成功に傾けさせ続けられるか、それは私にもわかりません。

途中で終わったらごめんなさいネ!その時はなるべく無慈悲に劇的に終わらせます。
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