多分続かない
転生、ってあるだろう?最近巷で人気のアレ。
二次創作とかで主人公が異世界あるいは物語の世界に転生して俺TUEEEE!!するやつ。
かくいう俺も好きだったので何とも言えないが、やはりああいうものは物語とかで他人事として見るのがいいのだ。間違っても自分で体験なんかするもんじゃない。
何でそんなことが言えるか、って?
お れ が 被 害 者 だ か ら だ !!
何でこんなことになったのかは、はっきりいってわからない。
当たり前だろ?こちとら前世はただの一般ピーポーだったんだぜ?全知の精霊なんていなかったし、根源に接続してたわけでもない。まぁ、というか経緯はもはやどうでもいい。
知ってどうにかできるもんでもないし、その気もないからだ。
では俺の前世は、というと記憶に靄がかかったような感じで、あまり思い出せない。
住んでいたのが日本というのはわかる。おぼろげに覚えている景色から、都会であったのであろうこともまぁわかる。けど、それ以上詳しくは思い出せない。何県何市に住んでたか、とか。
家族構成は覚えているが、顔や名前は覚えていない。
前世が男で、好きだったものややったことは多少は覚えているけれど名前や顔はさっぱり、といった具合に。
だが、今問題なのはここではない。ここではないのだ。
え?じゃあ今のくだりはなんだったん?と思っているそこの君。話は最後まで聞きたまえ。成功しないぞ?
問題はそう、俺は前世が男であったが、今の俺は女なのだ。
お ん な な の だ!!!
大事なことなので二度言いました。
いわゆるTS、トランスセクシャルというやつだね。
なんでや!何でなんや神はん!あんたなんちゅうことしてくれはったんや!
と自我が芽生えて数年は思わず関西弁になるくらい久々にキレちまったよ···状態で、神絶対殺すウーマン(ロリ)だった私だが、慣れとは恐ろしいものである。
転生して早18年、今ではすっかりこの体に馴染んでしまっていた。
体育の着替えで他の女子の下着姿を見ても興奮なんてしないし、自分の裸にも特に何とも思わなくなった。性欲とはいったい······ 。
胸にぶら下がっている二つのブツは邪魔だがそれももう慣れっこである。
さすがに恋愛とかは無理だけど。だって中身男だし。まぁ実際転生するときによくあるテンプレの神を名乗るじっちゃんに会ったとかそういうことは一切無かった訳だけどね。
じゃあ別に神関係なくね?って?
······うるせえこういうときは大体神が悪いんだよ!(偏見)
と、そろそろだな。
我が家では一応長女である俺が飯の支度をすることになっている。いやほら一応俺が年長ですし?年長者の威厳とかありますし?
本当は両親の分も作ってやりたいのだが、二人とも朝は早く出ていくし別にいいと母さんが言ったのでやっていない。
父さんは、
「クッ······俺も愛娘の手料理を食いたいのにッ!!かくなる上は会社を辞めて···」
とかアホなこと言って母さんに雷を落とされていた。代わりにお弁当作ってあげるからと言ったら泣いて喜んでいたが、単に前の晩の残りを詰めているだけなので誰がやっても変わらないのは内緒である。
さて、火にかけていた味噌汁をよそい、トーストを二枚セットする。妹と弟の分だ。今日のメニューはベーコンエッグとトマトとレタスのサラダ。どこにでもあるごく一般的な朝食だ。ちなみに俺は朝はご飯派なので、御釜から炊きたてのご飯をよそう。
あ、ちなみに今の俺の家族は俺を入れて五人。母さんと父さんと、妹と弟が一人ずつ。
妹は中学生で、弟は今日から高校生だ。
この二人、はっきり言ってめっちゃ可愛い。ホラ、よくリアルの妹はダメだとかクソ可愛くねぇとかよく言うだろ?俺も前世ではそうだったからわかる。
まぁいたのは妹じゃなくて弟一人だったんだがね。
だけど今俺は声高に宣言しよう。
うちの妹は世界一ィィィィ!!!と!!
もうね、何が可愛いって全部よ、全部。外見は言うまでもないが、やっぱり性格かね。気遣いもできるし家事に掃除に洗濯もできるし何よりあざとく笑ったり甘えたりしてくるのがもうたまらん。
目に入れても痛くない。父さんと弟とは親子妹保護&愛護条約を締結している。世界遺産に登録したいまである。ユネスコ協会登録はよ。この可愛さを世界中に知らしめるべし。あと妹に近付くゴミ虫は殺処分不可避。しかたないね。
妹もそうだけど、弟だってもちろん大好きだ。ちょっっっっっっっとばかしひねくれてるところはあるけれど、それを補ってあまりあるほどいいところがある。
目は腐ってるけど。何よりも優しいし。もうね、今のモテる男の子の資質っていったら優しさですよ、優しさ。あと行動力ね。イケメンがモテるのなんて高校生までですよ、ホント。
小学校から中学までの間に色々あったりして未だに友達/zeroのぼっちなのが心配だが、さすがに俺がそこまで介入するわけにもいかんしな。
顔立ちは整っているので、腐った目さえ直せばもっといいのだが。まぁいくらかわいいといっても、構いすぎると嫌われるので注意が必要なのだ。思春期の男の子は繊細だしね、わかるとも。
お、噂をすれば、どうやら我が弟が起きてきたらしい。いつもは妹の方が早いのだが、今日が高校の入学式だからだろう、いつもより一時間も早い。
「おはよう、八幡。今日は早かったね」
「······お、おはよう」
「今運ぶから、ちょっと待っててね。あ、ついでに小町、起こして来てくれる?」
「お、おう。わかった」
若干どもっているが、いつものことなので気にしない。だが弟よ、そういう所は直さないと、女の子にはモテないぞ?
「「「いただきます!」」」
八幡に起こしてもらった小町に制服を着させ、三人で食卓を囲む。これがこの俺こと比企谷穂乃花の、かけがえのない日常風景である。