TS姉ガイル   作:ヴァルプルギス

2 / 9
とりあえず投稿。


とりあえず、比企谷小町はいつも可愛らしい。

 

 

朝食を食べ終え、汚れた食器を洗う。泡で汚れを落とし、水で流すと傍らに待機していた我らが愛しの小町に手渡していく。

 

小町は今俺が着けているのとお揃いのエプロンを着けてニコニコと嬉しそうに笑いながら、受け取った皿を布巾で軽く拭いて食器棚に置いていく。

 

つい最近まではこれらの仕事は俺が一人でやっていたのだが、なぜか小町が手伝いたいと申し出てきてくれたのだ。

 

そして家事を教えてくれとも。なんでも、俺だけに任せきりにするのも心苦しいし、女の子として得意料理の一つでも持っていたいらしい。

 

それを、ちょっと恥ずかしそうにはにかみながら上目遣いで我が妹が頼んでくる。

なんということだろう。俺の妹がこんなにも可愛い。諸君、真理はここにあったのだ。

妹は常日頃から可愛い可愛いと思ってはいるが、最近はさらに磨きがかかったようだ。

 

俺は顔を緩ませながらもちろんと快諾しつつ、少しの寂しさを感じてもいた。

前まではまだまだ子供だと思っていた妹や弟が、少しずつではあるが確実に自立してきている。いつかはこの家を出て行ってしまうのだろう。

年齢的には俺の方が先に出ていくことになりそうだが。

 

承諾を得て嬉しそうにしつつ、俺のわずかなマイナスの感情を敏感に感じ取ったのか、不安そうな顔で迷惑だった?とおそるおそる聞いてくる小町。そんな小動物系小町もまたいとうつくしと思いながら、先程考えていた事を正直に伝える。

 

小町はさっきのことでもわかるように他人、ことさら家族のような親しい人間の感情の機微にはとくに敏い。下手に誤魔化したりする方がかえって小町にはよくない。

 

それを聞いて、少し呆れた顔をしながらも照れ臭そうに、

 

「もう、ホントにお姉ちゃんはシスコンだよね·······。大丈夫、まだまだ当分は小町はお嫁には行きませんから。ごみいちゃんをお姉ちゃん一人に任せるのも気が引けるし。だから安心しなよ」

 

とにぱっと笑う小町。やばい、可愛い。

感動のあまり思わず抱き締めると、顔を赤くしながらアワアワしている。 

 

前までは八幡にもしていたのだが、最近になって嫌がられるようになってしまったのだ。ていうかやろうとする気配を敏感に察知してささっと距離を取るのだ。すばやい。

 

少なくなる姉弟間のスキンシップを嘆きながら、それならと八幡の分まで小町を抱き締めることにする。

 

ちなみにそれを小町に言ったら思いっきり呆れた顔で八幡にはもうやっちゃダメ、と釘を刺されてしまった。また外ではなおさら気を付けるように、とも。凹む。

と、俺が凹んでいると急に怖い顔をしてまさか他の人にもやってないよねと凄む小町。そんな小町も可愛いです。

さすがにそんなことはしませんて。するとしても親しい女友達だけだし。

 

どこか疑わしげな顔をしながらも俺の言葉に嘘を感じとれなかったのか、一応納得したようだ。そして改めてあまり他の人にベタベタしちゃダメだよとも言われた。特に男の子にはと。

 

失礼な。そんなことぐらいわかっていますとも。いくらなんでも男に無防備に抱きついたりなんてしないよ。お姉ちゃん心外だな。

 

でも、男への警戒心もちゃんと生まれているようで俺は少し安心した。小町は可愛いし、器量もいいので将来はいい女になるだろう。それこそ男が放っておかないぐらいの。

 

だから今の時点でも男にモテていても不思議ではない。もちろん小町に近づくゴミ虫はみつけしだい狩っていくが。

 

と、そんなことを考えながら洗い物を片付けていると、二階から新品の総武高校の制服に身をつつんだ八幡が降りてきた。

 

「もう行くの? まだ時間だいぶ早いけど」

 

「あぁ、散歩しながらのんびり行くことにしたんだよ」

 

よく見てみると口角は持ち上がっていて、いつもの腐った目が三割ほど澄んでいた。よっぽど楽しみなのだろう。なにせ小学校から中学までほとんど友達がいなかったのだ。

 

小学校から人間関係がだいたい引き継がれる中学とちがい、高校は人間関係が一度ほぼ完全にリセットされる。

 

つまり、学校が始まった当初は誰もが知らない人なのだ。

中学では小学校からのこともあって友達をろくに作れなかった八幡だが、だからこそ新たな高校生活に期待が高まっているのだろう。

 

八幡は友達なんかいらないなどと嘯いてはいるものの、何だかんだで本音としては友達がほしいのだ。

 

俺も昔から八幡に付き合っていろいろ遊んだりしてきたけど、やっぱり姉と同年代の同性じゃあ全然ちがうからな。少し寂しいが。

 

「ん、わかった。車に気を付けるんだよ?はいこれ今日のお弁当。もう給食じゃないからね」

 

「あ、あぁそっか。そうだった。でも、別に購買で買って食うからわざわざ作ってくれなくても········」

 

「ダーメ。毎日そんなんじゃ健康に悪いし、何より月日の出費がかさむよ? 今日発売でしょ、あのラノベ」

 

「あ········忘れてた! 悪りぃ姉ちゃん、俺もう行くわ」

 

「ん、行ってらっしゃい」

 

慌ててどたばたと家を飛び出していく八幡。ひねくれてはいるが、基本的に素直に言うことを聞いてくれるし、何より暴言を吐かない。前世の弟とは偉い違いだ。

 

 ま········一時期血迷っていた時期があったのは否めないけれど。その時の写真はまだ俺の部屋に保管してあるので、今度小町とじっくり鑑賞しよう。

 

そんなことを考えながら、さて、ぼちぼち俺も学校へ行く支度しなきゃなと制服に着替える。さすがに17年やってれば慣れたもので、ブラウスのボタンをとめ、ブレザーを羽織り、スカートを履く。

 

前言撤回。いくらなれたといってもやはりスカートだけはどうしても慣れない。

何度も思うんだけどなんで女の子達はこんなに防御力が低いものを嬉々として身に付けたがるのだろうか。理解に苦しむ。

 

 え? お前も今は女だろって? 聞こえないな。

 だから普段の俺はスカートを履かないし、持ってもいない。小町や母さんにはもったいないとよく嘆かれるが、別に美人ってわけでもないしいいだろ? あ、小町はもちろん美少女ですよ!

 

鞄のなかをチェックして、そろそろかなぁと時計を見ていると、ドタドタとものすごい勢いで小町が俺の部屋に飛び込んできた。

 

「お、お姉ちゃん! ど、どどうしよう! お兄ちゃんが······お兄ちゃんがッ··········!」 

 

「ど、どしたの小町!? ほら、まずは落ち着いて。ゆっくり深呼吸してごらん」

 

すーはーすーはーと大袈裟に深呼吸を繰り返し、ようやく少し落ち着いたようだ。

だが、依然顔は悲壮そのもので、涙や鼻水でぐしゃぐしゃになっていた。

 

ティッシュで顔を拭ってやりながら何があったのだろうと思考を巡らす。

 

まさか何か事件を起こしてしまったのだろうか?それとも何かに巻き込まれたのか?

 

「それで、何があったの?」

 

「お、お兄ちゃんが·········お兄ちゃんが車に轢かれたって······さっき······病院の人から連絡があって·······小町どうしていいかわかんなくなっちゃって······ひぐっ······も、もしお兄ちゃんが死んじゃってたらって思ったら、頭の中真っ白で······グスッ······」

 

 え······? 八幡が、事故に······?

 

 




八幡の口調難しい···。感想とかくれると作者の励みになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。