TS要素があんまりない···だと···
燃え尽きたぜ···文字通り、真っ白にな···
夕方の病室、夕日が差し込む中で俺は一人灰になっていた。
あのあと、一通りの事情を説明した俺を待っていたのは案の定姉ちゃんのお説教という名の地獄だった。
「ふぅーん、へぇーなるほどねぇ。で、気付いたら体が動いてた、と?とりあえず言っておくよ。バカなのかな?」
1st Attack!
「そもそも、こうして骨折だけで済んだのがすごい幸運なことだってわかってる?下手したら、というか下手しなくても死んでたかもしれないんだよ?」
2nd Attack!
「確かにね?八幡の行動は立派なことは変わりないよ?その件の犬君も助かったし、八幡も骨折とはいえ怪我だけで済んだし結果的に見ればまさにラノベ主人公だよね。でも、それは結果論であって、もし八幡が死んでたら残された私達はどうすればいいの?」
3rd Attack!
「小町は八幡が目を覚ますついちょっと前まで泣きながら八幡の手を握りしめてたんだよ?“もしこのままお兄ちゃんが目を覚まさなかったらどうしよう”って。」
4th Attack!
「ねぇ、八幡。実際私はその場にいなかったし、見ていたわけでもないからあまり偉そうなことは言えないんだけど···もう、自分の命をそうやってあえて危険に晒すようなことは止めて欲しいかな。八幡の命は八幡だけのものじゃないんだから。普段はあんなことばっかり言ってる父さんだって、仕事ほっぽって真っ先に病院に駆けつけてくれたんだから」
5th Attack! KO !
こんな具合に、俺はとことんまで姉ちゃんに絞られた。
事故とは別に心に罪悪感という大ダメージを負ったものの、姉ちゃんの言葉は真実そのものなのでどうしようもない。何より少し自覚が足りなかったらしい。
でもそうか···みんな心配してくれたのか。
よかった。これで小町が全然心配してくれてなかったとか言われてたら軽く死ねる。
姉ちゃんのあの説教だって心配故のものだってことぐらいひねくれてる俺でもわかる。
親父は正直意外だったけど。だっていつも姉ちゃんと小町に構われてる俺のこと睨んでくるんだもん···。まぁ、あれだ、今度帰ってきた時にお疲れ様くらいは言ってやらんでもないな、うん。
え、他に?無いです。
だって親父だし。
と、つらつらと考え事をしていると、コンコンという扉を叩くノックの音と共にガラッと扉が開けられた。
ねぇ、俺まだ何も返事とかしてないんですけど。何で許可する前に開けちゃうの?ノックの意味ないだろ。
「やぁ、比企谷。事故に遭ったんだって?聞いたよ。いきなりだったから驚いたけど」
「ねぇ、俺まだ何も返事とかしてないんですけど。何で許可する前に開けちゃうの?ノックの意味ないだろ」
言っちゃった。でもまぁいいよね、イケメンにつかう気とかないし。
「ははは。冗談。今さら俺が比企谷に気を遣うとでも?」
ですよねー知ってた。見舞いの品とばかりにMAXコーヒーを放ってくる。うむ、よくわかってるじゃないか。
このいけ好かないイケメンの名は葉山隼人。
さっきも言ったがイケメンで、リア充である。つまり俺の敵だ。·······敵、なのだが、こいつとはそこそこ昔からの付き合いがあるのだ。
こいつと初めて顔を会わせたのは俺と葉山が中学二年生の時。その日俺は姉ちゃんに公園に連れられて、そこでこいつと会った。
最初はいくら姉ちゃんの紹介とはいえこんなイケメンでいかにもリア充してますみたいな奴とは仲良くなんて出来るわけないと思っていた。どころかまさか姉ちゃんの彼氏なんかじゃないかと警戒すらしていた。
今となっては思い出したくない黒歴史ではあるが。
そんなわけで最初こそぎすぎすしていた俺達だったが、とある事件をきっかけに少しずつではあるが話すようになり、今のような感じに収まった。
どうやら葉山は葉山で八方美人に疲れていたようで、当時学校も違くていろいろ遠慮のない俺と話すのは苦ではなかったらしい。
俺としてはそんなことで悩んでいた葉山は滑稽に見えたりもしたが、踏み込む理由もないので止めておいたが。
葉山が持ってきたMAXコーヒーをあおる。
うむ。この甘さがいい。残念ながら比企谷家では愛飲者は俺しかいないのだが。嘆かわしいことだ。
と、葉山はそわそわと挙動不審になりながら俺のベッドの脇の椅子に腰掛けて、
「·······なぁ、今日は穂乃花さんはいないのか?」
なんてことを聞いてくる。
「昼頃まではいたけどな。着替え取りに行くって言って一旦小町連れて帰ったぞ」
「あ、あぁ·····そうか。そうだよな」
「何だお前さっきからキョドって。姉ちゃんになんか用事でもあったのか?」
「ん、いや。ただ今日は入学式だったろ?せっかくだから制服姿見てもらおうと思ったんだけどな····」
「はーん。ていうかこれから同じ学校なんだし、いつでも見せられるだろ」
「いや、そういうことじゃ無くてな···はぁ、まぁいいや。比企谷だしな」
あん?それは喧嘩を売っているのかな?買うよ?八幡ダースで買っちゃうよ?
「それにしても病室が個室なんだな。お前の家ってそんな金持ちじゃないだろ?」
「いやまぁそうだけど。それなんかバカにしてるように聞こえるぞ」
「大丈夫。こういう風に言うのは比企谷だけだし」
いや、野郎に言われても嬉しくねーよ。美少女に生まれ変わってから出直してください。
あ、でも仮に美少女に言われたとしても警戒して遠ざけるな。あるいは俺の方から遠ざかる。どっちにしろ一緒だった。八幡うっかり☆
「なんか相手方と姉ちゃんが話つけてくれたみたいだぞ。その名前までは聞いてないけど」
「············ふーん、そっか。穂乃花さんが言わなかったんなら俺から言うこともない、か」
「あん?何のことだよ」
「いや、なんでも。じゃ、俺はそろそろ行くよ。お大事に」
ピシャリと扉が閉められ、また部屋の中が静寂に包まれる。
結局ただ駄弁ってただけだな。まぁ、家族以外誰も来ないよりはマシだけど。
ちなみに誤解のないようにいっておくが、俺とあいつは端から見たら友達のように見えるかもしれないけど、俺とあいつは友達なんかじゃない。
ビジネスパートナーとか、共犯者といった方がしっくりくる。あいつは俺というある意味都合のいい相手で日頃のストレスを吐き出し、俺は家族以外の相手と多少喋ることで家族には言えないようなことを言ってうさを晴らす。ほら、家族だからこそ言えないことってありますやん?何かって?言わせんな恥ずかしい。
ま、ちょこっと言い方を変えているだけで、やってることは一緒なのだ。つまり、互いに利害が一致しているだけ。俺とあいつの関係なんて、一皮剥けばそんなもんだ。
学校が同じになった以上顔を合わせる機会も増えるだろうし、もしかしたら同じクラスになることだってあるかもしれない。
けど、俺とあいつの関係上おそらく学校ではほとんど話すことは無いだろう。
あいつはイケメンで、コミュ力があり、ヒエラルキーのトップに位置するような人間で、対してこちらはぼっちで最下層の住人である。
一時は俺にも友達が作れるんじゃないかと思ってはいたが、それもこの怪我で無くなった。医者、というか医者から俺の代わりに話を聞いてくれた姉ちゃんによると2~3日経過を見て、それから退院ということだから学校に行けるのは早くても一週間ちょっと先のことらしい。
少なくとも一週間あれば大体クラスでのグループ分けは終わってしまい、ある程度人間関係が固まってしまうので、あとから参入した俺は問答無用でぼっちというわけだ。
別に嫌なわけじゃない。今までもずっとそうだったし、慣れたものだ。それに仮に今日事故に遭わずに登校していたとしても俺が自分から他人に友達作りのために話しかけられるわけがない。
つまり、立場が互いに違いすぎるのだ。そんな二人が仲良くするのは周囲の人間が許さない。ぼっちにはぼっちとしての振る舞いが暗黙のうちに求められ、同時にトップカーストの人間も同時にそんな不文律に縛られる。そして、あいつは周囲の和を乱すことを嫌う。
あいつはそういうのにずっと縛られてきたし、そしてその現状を壊さずに息抜きがしたかったからこうして俺との関係が出来ているわけで。
そしてそんなリスクリターンを計算してやるような関係を友達とは言わない。少なくとも俺にとっては。さすがに某委員長みたいに命まで懸けないと、とはもちろん言わないが。
結局、あいつとの関係はどこまで行っても偽物で、本物じゃない。
俺が今信じられる本物は家族だけだし、これからも多分そうだろう。
··················さて、面倒な客も帰ったことだし、また一眠りしますかね。
八幡のひねくれ度が足りない·······!と思ったのでこうなりました。まぁ、ひねくれてない八幡とかただのイケメンだしね。仕方ないね。
おや、葉山の様子が···?