TS姉ガイル   作:ヴァルプルギス

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感謝! 圧倒的感謝ッ! と、言うわけで、記念というかなんというか、ちょっとした過去編をば。


閑話:割と頻繁に、比企谷穂乃花は失敗してる。

 

 

 

「新しい部活動をつくりたい?」

 

「ええ。だから、申請の仕方などを教えてほしいのだけれど···」

 

ごくん、と口の中に放り込んだハンバーグをのみ込みながら、俺は先ほどの雪乃ちゃんのお願いについて考えを巡らせていた。

 

俺たちは今、特別棟の空き教室で雪乃ちゃんと二人きりで昼御飯を食べている。二人きりでだ。大事なことなので二度言いました。

 

俺は基本的にお昼なんかは友達と食べるよりも一人で食べる方が好きなのだ。自分のペースで食べられるからね。なので大体は生徒会室に行くのだが、たまーに空き教室なんかで食べることもある。自分以外誰もいない教室ってなんかよくない?そういうときに生徒会をやっていると便利である。職員室から鍵を借りているところを先生や誰かに見られても不審に思われたりしないし、生徒会特権様々である。

 

で、そのときにちょうど雪乃ちゃんに会って、それ以来こうして空き教室で二人で食べることにしている。雪乃ちゃんいわく、教室よりもここの方が静かで落ち着けるからとのこと。

 

二人で食べるといっても基本的には食事中はあまり喋らないし、二人で静かに過ごすことの方が多い。雪乃ちゃんはあまりお喋りなタイプではないし、俺は基本的に聞き役なことが多い。だってほら、中身元男だし。イマドキ女子高生みたいな会話は期待されてもできないのだ。特に下着とかの話になるとなんかこう、いたたまれない気持ちになる。別にいやらしい気持ちになったりする訳じゃないが、聞いてはいけないことを聞いているような気がして罪悪感を感じるのだ。

 

そういう意味では、雪乃ちゃんと過ごすこの時間はなかなかに心地よい。何て言うか、沈黙でも嫌な感じの沈黙じゃない。

 

 

ちなみに、生徒会特権なんてさっきは言ったが、別にどこぞのラノベやアニメみたいに生徒会の権力が教職員よりも強い、何て言うようなことはなく、俺がしていることは普通に校則違反だったりする。だがこうも言う。ばれなきゃ犯罪じゃねぇ、と。ちなみにこれを雪乃ちゃんに話したら呆れた顔をされて、しばらく説教された。うぅ···少しぐらい良いじゃないかよぅ···。昔と比べて少しばかり丸くなったとはいえ、やはり雪乃ちゃんは雪乃ちゃんである。

 

というか常識で考えて生徒に教師より大きい権力与えんなよ。絶対にろくなことにならないじゃんそれ。まぁラノベやアニメにガチの突っ込み入れだしたらキリないしいいのだけどね。

 

そんなわけで、話は冒頭に戻る。そっかぁ、部活ねぇ···。

 

「で、部活っていっても何するの?雪乃ちゃんのことだから、多分普通なことをするわけじゃないんでしょう?」

 

「私は世界を変えたいんです。この部活は、そのための第一歩、いわば足掛かりのようなものです」

 

お、おおう。なんか壮大なこと言い出したぞこの子。そっか、世界を変える、ねぇ···。世界を、変えて、

 

「新世界の神に、なる···?」

 

「そこまでは言ってないです。ええ、まだそこまでは」

 

「えっ? まだって言った? え何、本気でそんなこと企んでるの?」

 

「企むだなんて人聞きの悪いこと言わないででください。全く、先輩は···。冗談に決まってるでしょう?」

 

むむ、そうか···。ていうか、いつの間にかそんな冗談言えるようになったのね。ちゃんと成長してるようで、おいちゃんは嬉しいぞよ。

 

「でもなんていうか、結局それって高校の部活でやるようなレベルのことじゃないよね。思いっきり逸脱してるよね。未来の反乱分子でも育てるつもりじゃないよね?」

 

それだったら困る。俺としても可愛い妹分がテロリストになるのを見過ごすわけにはいかない。

 

「なにをいってるんですか、そんなわけないでしょう···まぁ要するに、人助けの部活です」

 

人助けの部活ねぇ···確かにまあ、名目としては悪くはないと思うけども。スケット団的な?

 

「でも、ただ助けるというわけではなく、いわゆる魚の釣りかたを教えるというような方針をとります。魚を釣ってあげるだけではその人のためにならないので」 

 

「ふーん。まぁでも、やろうとしてること自体ははいいことだし···。よっし! 引き受けよう! 細かいことは、この私に任せておくがいい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

とりあえず善は急げ! ということで、やってきました生徒会室。だがしかし。

 

「え? 新しい部活の創設? ······うーん、結構難しいと思うよ。まず部員が一人とか話にならないし。あと顧問の先生も誰かしらにはお願いしないといけないし、部費も新しくかかるようになるから他の部とも交渉して過半数の賛成を得ないと」

 

「そこをなんとかしてよめぐえも~ん!」

 

「い、いやいや、こればっかりは規則だし···。生徒会長っていってもそんな権限は持ってないし···」

 

ぐっ···やはり一筋縄ではいかないか···!

よくあるラノベとかですぐに部活創設が通るの、あれマジでご都合主義だと言うことがよくわかった。ちくせう。だがめったに言わない雪乃ちゃんのわがまま? だ。叶えてあげないのは男(今は女)が廃るというもの!

 

やってやるぜッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かひゅぅ···かひゅぅ···」

 

「はぁ···大丈夫ですか? 一人でやろうとするからそうなるのよ」

 

す、すまねぇ雪乃ちゃん···。オイラ、君の夢を叶えることが···できなかったよ···。ガクッ。

 

「茶番はいいです。ほら、早くこの申請書に必要事項を記入してください。他にも色々やることがあるんですから」

 

「う、うん···。くっ今回は雪乃ちゃんの手を煩わせないでやってやろうと思ったのになあ···」

 

「それであんな風になってちゃ世話無いでしょう···。めぐり会長から授業中も寝てはいなくてもボーッとしてうとうとしてたって聞きましたし、無理してもいいことなんて無いと思うけれど」

 

まあ確かに雪乃ちゃんの言うことは一理どころか普通に正論である。いやね、確かにそれぐらいはわかってたけどもさ···。

 

「いやほら、雪乃ちゃんってあんまり他人を頼らないでしょ?親しい人でもさ。だから今回やり方を教えてって頼まれた時嬉しくってさ···。でもま、こうして一緒にやるのもそれはそれで悪くないね」

 

雪乃ちゃんの目をまっすぐみてニッと笑う。

 

この雪ノ下雪乃という少女はいつだってそうだ。他人を頼らない。独力で、己一つで問題をどうにかしようとしてしまう。この娘の姉である陽乃もそうなのだが、やはり二人とも元々のスペックがずば抜けすぎているだけあって他人などいなくても大抵のことは一人でできてしまう。できてしまえば、そのわりと高めなプライドも手伝ってますます孤高に身をおくことになるだろう。陽乃はそうでもないように見えるが、それは表向き体裁をある程度整えているからだ。まあ見えるだけなのである。

雪乃ちゃんはそういうとこも結構潔癖だから取り繕ったりしてないけど···。

 

俺は別にそのやり方というか考え方を否定している訳じゃない。どんなやり方であろうとその人の自由だし、一人で何でもできるなんてそりゃももちろんカッコいい。誰にでもできることじゃないしね。

 

ただ俺としては、それ以外にもやり方はあり、それは別に恥ずかしいことだったり難しいことだったりするわけではないということを知っておいて欲しいだけなのだ。

できるけどあえてやらないのとできないからやらないのとでは大きな隔たりがある。

 

これから先、今のやり方でうまくいかなくなったときになんとかできるように─────何て言うのも俺個人の考え方の押し付けでしかないのだが。

だけどまあ、今回の一件だって、そもそも雪乃ちゃん一人で出来ないことでもないし、逆にそっちの方が速くうまくいってたような気がしないでもない。あ、これ自分で言っててもガチ凹みするな。泣ける。

 

でも、それでも雪乃ちゃんは俺に話を振ってくれた。それが俺の押し付けに少しでも応えてくれようとした証のような気がして、とても嬉しかったのだ。

 

「そ、そう···。私は別にそうでもないのだけれど。不甲斐ない先輩を持つ後輩は苦労するわ」

 

早口で言った後、素早く持ち上げた書類で隠れてしまったのでどんな顔をしているのかはわからないが、俺の見立てだとそんなに満更でも無さそうな気がする。いや、あくまでも俺の勘でしかないから一概にそうとは言い切れないけどもね。

 

「ん? 雪乃ちゃん、耳が赤くなってるようだけども」

 

「な、何のことかしら?そんなことよりも、早くそれを仕上げて頂戴。私は職員室にこれを出して来るので、それまでに書いておいて」

 

そう言い捨て、さっさと出ていってしまう雪乃ちゃん。うーん、照れていると思ったのは思い違いだったのだろうか···。相変わらず、女の子というのはよくわからない。

誰が言ったんだったか、「女という生き物は男にとって永遠の謎である」というフレーズが頭を掠めた。付け加えるとすれば、「女になっても女の子というものは謎である」

というところか。

 

ただまあ、少しは彼女に信頼してもらえていると自惚れてもいいのではないだろうか。今回のこともあるし。多分だけど。

 

そんなことをつらつらと考えながら、目の前の紙のちょっとした小山をみてげんなりする。部活一つ作るのに手続きが面倒すぎやしないだろうか。逃げ出したいのを必死にこらえながら、今日も今日とて仕事に精を出すのであった。

 

 

 

 

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