Fate/Grand Order -Overlap control- 作:外山紡司
東京の空は青い。
途方もなく大きくて、途方もなく深いその空は恐ろしい。
Sは思う。あの空の彼方から、何かが降ってくるのではないか。空の広大さは、未来に繋がっているようでもあり、可能性に繋がっているようでもあった。
失敗した計画に未練はなかったが、それでも一抹の不安は残る。本当にカルデアに手を貸した自分の判断は正しかったのか。
Sは空から目を落とし、ビルの跡地に目をやる。
もともとD社のあった土地。焼け野原になった東京も元通りになり、世界線ももとの状態に戻ったが、その土地だけは更地になってしまった。そこにビルがあったことを覚えている者は少なく、そもそも魔神柱を見た記憶が残っている者もごくわずかだ。Sと藤丸達カルデア組と探偵たち以外に知る者はいない。
それに加え、魔神柱の姿はどこにもなかった。どこに行ったのかも知る由はない。討伐できていないことは確かであり、その内また現れるのかもしれないと思うと、ぞっとする。
48番目は藤丸立香に戻り、今はカルデアに帰った。何事もなかったかのように。
彼はこの空を見てどう思うだろうか。
彼が否定しないことだけは確かだった。彼らはこの空のために戦った。暗澹たる収束した世界からの脱却を試みて、成功した。
だから、保証するものなど何処にもない。今の安全は、この都市は、そして未来は保証されてなどいないのだ。どこから脅威に襲われるのかも分からない。地の底から何かが湧き上がるかもしれないし、宙から人ならざる者たちが降りてくることだってあり得るのだ。全ては白紙であり、白紙であるが故に黒く染めることだってできる。
次に彼らの敵が現れるのだとしたら、そういうものだ。
Sの目指していた未来は、可能性と戦わない未来。全てが決定された未来。だが、彼等が選ぶことにしたのなら、次に彼らは可能性と戦うことになる。
そこに選択する意思を示さなければならなくなる。この世に正義は一つではない。目指すべき理想の世界は人の数だけあるだろう。
数多ある正義は衝突し、そして混乱する。
藤丸立香は自分の世界を描くことを望んだ。白紙の上で描くことを望んだ。
しかし、それは衝突する正義の一つになる選択に過ぎないのだ。
正義同士の衝突に最適解なんてない。ただ、泥沼が広がるだけ。誰の心も晴れることはない。他者の正義を捻じ曲げるためには暴力が不可欠であり、暴力は暴力が持つ悲劇を誘発する。それをどこにも受け止める悪はいないのだ。
Sはビルの跡地に背を向けて歩き出す。昨日まであった、彼の居場所はなくなった。行く先も未来も不透明で、不安が喉元にせり上がってくる。それを飲み下し、人混みの中に溶けて行く。
読み返してみると「めっちゃ歪! 書き直したい!」と頭を抱えていたわけですが、「書き終えなければ!」と思い直し、どうにかここにたどり着きました。
FGOの一部は「人類の営みの肯定」の物語だった。既に亡くなった過去の偉人たちに出会い、成長し、「有限の生の中にある意味」をマシュ(プレイヤーの成長は描けないので、その代わりにマシュが成長するシステムになってる)が見つける物語だった。そして、未来あっていいじゃん! となる。
だから、二部は現代が舞台になるはずだと予想していた。そして、現代が舞台なら、可能性の中から自分の未来を選ぶ話になるのではないかなと思っていた。
だから先取りしてやろう、という傲慢な考えだったけど、少し予想を外したようです。
自分の世界を「選択する」物語であることは変わらないけれど、まさかああなるか。
ともあれ、二部もたいへん面白いです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。FGOの更なる発展を願っております